焔光の夜伯と剣巫の英雄譚   作:カラムイラス

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 三巻までの内容を飛ばしました。(そうしないと古城の活躍が見れませんから)
 キャラ崩壊があったらすみません。


十一話

 季節は進み、今は七月下旬。破軍学園も七星剣武祭の出場選手も予選の結果決まり、一般生徒は夏休みに入った。しかし出場選手には休む間もなく合宿に入った。通常破軍学園は奥多摩にある合宿場で合宿を行うが今年は山形にある巨門学園との合同で合宿している。どうやらそこの近くで巨人騒動があったらしく、合宿をそこでできなくなったのを理事長である黒乃が巨門に頼み込み、今回の結果に至ったようだ。合宿は基本的に模擬戦用のリングでの打ち込み形式で、外部からもプロの選手を呼んでいたりする。そのほかにも取材やら手伝いやらでここに来るものも多く、人は割といたりする。そんな中、暁古城の姿も見える。

「くそ、騙された」

 彼は恨めしそうな口調で吐き、すぐに項垂れた。彼がここにいる理由は補修の代わりだったから。彼はあることが理由で度々遅刻をする。そのため出席数が足りずに補修になったが担任である那月が補修の代わりに手伝いという形でここに送り込んだのだ。

「何が簡単な仕事だ。だよ! 思いっきり雑用じゃねえか」

 俯いたまま弱々しく呟き、これまでのことを思い出していた。

「去年使われた時から使われてない部屋の掃除。破軍生徒だけでもそれなりに多いのに巨門の生徒の分も押しつけられた洗濯。それに人が少ないからって手伝った食堂。いっても皿洗い、シンク磨き、広い食堂の水拭き、油まみれの換気扇の掃除とか絶対必要ないだろ」

 古城はここに来てから続く雑用に疲れきっていた。彼が今ここにいるのは休憩の為であり、まだその職務から逃げ切れた訳ではないのだ。彼が頭を抱えていると誰かが近づいてきた。

「お疲れ様です、先輩」

 話かけられ彼は顔を上げる。するとそこにはよく見る笑顔があった。

「おお、姫柊か」

 古城の目の前には雪菜の姿があった。彼女がここにいる理由としては古城のような補修ではなく、理事長の黒乃が彼女に出場選手の練習相手になってほしいという依頼を引き受けたからだ。元より古城がこちらに来るに当たって監視役である彼女が同行するつもりでいたのと、学年主席でありながら七星剣武祭にでないという選択を尊重してくれた教師陣にお礼を込めてという気持ちで引き受けた。

「先輩、これをどうぞ。相当疲れているご様子ですね」

 先ほどの言葉が疲労で満ちていることに気づいた彼女は手に持っていたペットボトルを差し出した。

「ああ、ありがと。ったくここの人達は俺の事、召使いかなんかと勘違いしてんじゃねえのか」

 彼は愚痴をこぼしながらペットボトルをを開け、口をつけた。雪菜はそれを聞いて微笑みを浮かべた。

「仕方がありませんね。先輩は朝に弱いですから」

「好きでこんな体質になったわけじゃねえよ」

 古城はため息交じりの声で呟いた。それを聞いて雪菜はまた微笑み、模擬戦用のリングを見渡した。すると、その中の一つで目が止まった。

「どうしたんだ? 姫柊」

「先輩、あそこを見てください」

 雪菜が真剣な眼差しでその方向を見るように促した。そこでは出場選手であるステラ・ヴァーミリオンと最終戦で一輝に敗れた学園最強の東堂刀華が戦っていた。刀華は自分の戦闘スタイルである居合いの構えをとっていた。

「相変わらず凄げぇな、生徒会長は。最終戦で勝った一輝も凄いと思うけど」

 古城は彼女の姿を見ながら正直な感想を述べた。雪菜もそれに同意するように頷き、それに続けた。

「はい、そうですね。私でも〈雪霞狼〉無しで勝てるかどうか」

 雪菜の声はから真剣味を感じた古城は目を再びそのリングに向けた。ステラが今前に見た炎の竜を出して刀華に襲いかかっていった。彼女はそこで賺さず自身の居合い技である〈雷切〉を抜き炎の竜を霧散させた。ステラはそこを好きとみて彼女に近づき剣を振り下ろした。しかし刀華は先ほど打った〈雷切〉の勢いを殺さずにいた。結果彼女は一回転してもう一度〈雷切〉放った。さすがにステラもこれは予想してなかったのか直でそれを受け、対戦結果は刀華の勝利で終わった。

「惜しかったな。あそこを切り抜けたらなんとかなったんじゃないのか?」

 古城は割と楽観的な事を口にする。それをきいて雪菜はいままで固まっていた表情を崩した。

「そうかもしれませんね。最後の攻防でステラさんが東堂先輩の攻撃を読めていたら結果は変わっていたかも知れませんね」

 

 

「なによ! 私への嫌みなの? それは!」

 

 

 するといきなりステラが話しに割り込んできた。古城と雪菜は驚愕した顔をするが言われた本人は不機嫌そうだった。それに気づいて雪菜は少し慌てた様子で口を開いた。

「いえ、その。悪気があったわけではないんです。すいません」

 彼女はステラに頭を下げた。するとステラは以後事が悪そうな表情に変え、ため息を吐いた。

「まあ、そのことはいいわ。ところでまだ時間あるでしょ?」

「え、ええ。そうですね。まだ大丈夫だと思います」

 雪菜がそう発するとステラは「そう」と呟き、言葉を続けた。

「なら私とも試合してくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、行くわよ!」

「はい」

 

 ステラと雪菜は今、模擬戦用のリングで対面していた。

 

「傅きなさい! 〈妃竜の罪剣(レーヴァテイン)〉」

 

「来てください! 〈雪霞狼〉」

 

 二人は〈固有霊装(デバイス)〉を展開して準備は整った。

 

 最初に動いたのはステラの方だった。彼女は雪菜に向かって走り出し、距離を詰めたところで剣を振り下ろした。

 

「ふんっ!」

 

 雪菜はそれをなんなく躱して距離を取るように後退した。しかしステラは彼女を逃さないように立て続けに納めている剣技をくりだしていく。しかしそれも雪菜は槍で器用にいなしていく。

 

「いい加減当たりなさい!」

 

 当たらないことに焦りを覚えるステラは声を荒げもと激しく剣を振る。一輝との習慣の訓練のおかげで剣速も早くなった。いままでいなしていた雪菜もそれに戸惑いを覚えた。しかし同時に違和感も感じた。

 

「はああああああ!」

 

 繰り出される剣の怒濤は止まらず、ついに雪菜もいなしきれなくなり、そこでステラの違和感の正体に気づいた。。

 

「っ!」

 

 ここで雪菜は後退を止め、初めて自分から前に出て穂先を突き出してきた。ステラはそれを寸で躱し、それがうれしいとは感じた。

 

「これでやっとあなたと戦えるのね!」

 

 その声から嬉々とした感情を雪菜は受け取った。

 

「今のは危ないところでした」

 

「あなたは何を抑えて戦っているの?」

 

 槍を構えながら目を反らさない雪菜の姿を見てステラは疑問を口にした。

 

「まだ本気を出してない相手に私だけ本気を出すのは不公平ですから」

 

「!・・・・。そういうこと。だったら私も本気でやるから」

 

 ステラはそういうと剣から炎が吹き出した。

 

「こちらこそ謝るわ。私はあなたを見くびっていた。七星剣武祭の出場選手だからといってあなたに勝っているわけではないものね。ところでいつから気づいていたの?」

 

「先ほど、剣速が上がったくらいのところでしょうか。そこの時点ではまだ小さな違和感でしたが、私が貴女の剣をいなしきれなくなってきたときにその正体に気づきました」

 

 雪菜の声が少し低くで淡々と説明した。ステラはそれを聞いて小さくため息をした。

 

「では次は私から行かせてもらいます」

 

 雪菜はそういうと先ほどのステラのように距離を詰めた。しかし彼女と違うのはそれほど近くまでは近づいていないというとこ。彼女の〈固有霊装(デバイス)〉は槍。そこまで近づかなくても攻撃できる。雪菜は距離を詰める途中で槍を振り上げていた。ステラはそれをそのまま振り下ろすと思い頭の上に剣を掲げた。しかし彼女は寸での距離でそれを降り下げ突きを入れた。それにはステラも対応が遅れ脇腹を掠った。そこを隙とみて雪菜は連続して突きを入れる。しかしさすがにステラも慣れてくるためそれは入らなくなった。そこで彼女は外した突きの行き来の連続運動に切りつける左右の運動を加えた。すると急に新たな動きが加わった為すぐには対応できず、ステラの体に生傷が増えていった。

 

「なめるなあああ!」

 

 大声で発せられた声とともに彼女は炎の剣で横薙ぎを放った。しかしそこで雪菜は冷静に対処し、自分で〈雪霞狼〉を手放し炎の斬撃を潜ってステラの懐に入った。

 

「なあ!」

 

 ステラは懐に入った雪菜に対応為べく剣を振るおうとしたがその前に掌が彼女の腹部に触れられていた。

 

「若雷!」

 

 その言葉とともにステラは後方に飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 雪菜がステラに近づき一言かけた。ステラは腹部を押さえながら起き上がってきた。

「いてて、ええ大丈夫よ」

 それを聞いて雪菜はほっとしたのか息を吐いた。

「そうですか。よかったです」

 雪菜はそういうと微笑んだ。

「やっぱり私より強いのね、ユキナは。なんで七星剣武祭に出なかったの?」

 ステラは首を傾げながら訪ねた。すると彼女は曖昧な笑みを浮かべた。

「そのですね・・・。私には他にやることがあるので」

「ふうん、そうなんだ。まあいいわ。だけど覚えておいてね」

 ステラはここで区切ってユキナに指を向けた。

 

「次戦った時、勝つのはわたしだから!」

 

 その言葉に雪菜は一瞬驚愕し、すぐにいつもの微笑みを浮かべた。

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