焔光の夜伯と剣巫の英雄譚   作:カラムイラス

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 遅くなりました。それでは十四話、どうぞ。


十四話

「なあ、あんたら。さっさと破軍学園(ここ)から出て行っちゃくんねえか?」

 そんな声を耳にした者達は誰もが思っただろう。いったい誰が来たのか? ということとを。破軍学園の生徒会長でもある東堂刀華もそれを思い、声のする方に目を向けた。そこには破軍学園のワイシャツの上にパーカーを羽織っている生徒。暁古城の姿があった。

「あなた達は・・・・・。どうしてここに?」

 疑問に思い呟く様に声にすると目の前で王馬の技を止めていた女子生徒が刀華に目を向けゆっくりと頷いた。彼女は直ぐに王馬の剣をはね除け、刀華の直ぐ近くまで下がってきた。

「南宮先生の応援で来ました。大丈夫でしたか? 東堂先輩」

「!! そうだったのね。助かったわ、姫柊さん」

 刀華はほっとした表情で言葉に為ると、雪菜は一瞬だけ彼女を見て微笑んだ。しかし直ぐに対面している者達に目を向ける。

「まずは襲撃の理由をお聞かせいただきましょうか。風の剣帝、黒鉄王馬」

 鋭い視線で彼に目を向ける雪菜に王馬は苦い顔を見せた。

「先ほどの体技。まさかお前までいるとは思わなかったぞ。獅子王機関。いいや高神の巫女」

 その言葉に暁学園の誰もが雪菜に目を向けた。それぞれ驚愕しているのだ。

「基本的にお待てに出ないお前達がなぜここにいる。お前達の使命はこんなところで油を打っている事では無いはずだからな」

「あの・・・何の話をしているの?」

 状況について行けない刀華は思わずそんなことを口走った。彼女はこの中で唯一知らないのだ雪菜の属している組織の事を。

「獅子王機関というのは国家公安委員会に属する特務機関ですよ」

 刀華の言葉に応えたのは当事者である雪菜だった。彼女は目線を外さないまま口を走らせた。

「その役割は大規模魔導災害災害や魔導によるテロ行為の阻止などがあります」

「つまり日本は獅子王機関の存在があるために解放軍が手を出せない状況にあったわけだ」

 雪菜に言葉に続き王馬がそんなことを口にする。が、彼は「しかし」といって話を続ける。

「今回の事は察知できなかったようだな。所詮は政府の犬ということか」

 彼の言葉はどこか落胆している様に聞こえる。それをただ雪菜は俯き気味に聴いていた。

「貴様がここに潜入している理由は無かったように思えるな」

「黙れよ、テロリスト共」

 王馬の声を遮ったのは古城の声だった。王馬はいつの間にか雪菜の背後に立っていた古城に目を向けた。

「お前らが姫柊を攻める権利なんてねえんだよ!」

 彼の怒声にその場にいた誰もが一歩引いた。

「そもそもなんで破軍学園を襲うような事をした! てめえらはなにが目的でこんな事をした!!」

 そんな問いかけにしばらく静寂の後にピエロの風貌の平賀玲泉が笑いを溢しながら答えてきた。

「怒っている理由はそんなことですか。・・・まあ、いいでしょう。そういえば言ってませんでしたね」

 未だ笑いが収まらないのか、そのまま仰々しく両手を大きく広げて彼は宣言した。

「我々、暁学園はこのたびの七星剣武祭に参加します。その実力を世間に知らしめるために今回この破軍学園を襲いました。如何に伐刀者が通う学校であっても我々の実力ならこの通り。壊滅状態にも出来るのですよ!!」

 かれの宣言に雪菜は目を見開き、玲泉を問いただす。

「そんな事の為に・・・。破軍学園を襲ったんですか!」

「そんなこととは面妖な事を聴きますね? 我々には必要なことですよ」

「だけど、そのせいで破軍学園に通う生徒達に危害が加わるんですよ!」

「それが何か? 必要な犠牲です」

 珍しく声を荒げる雪菜の声は彼には何も響かない。それをみて古城の怒りはさらに増した。そんな時に場違いの様な声が聞こえてきた。

「先ほどの魔獣! あれは汝の眷属か!」

 古城は怒り混じりな目線を声の主に向けた。しかし一瞬呆気にとられた。向けられた先には小柄の少女が目を輝かせていたのだ。

「あれはまさしく魔獣。我の紛い物の僕とは違う純粋の魔力の塊。あれほどの威力の魔獣を従えられるのは古より生きている神に呪われた者だけだ」

 うれしそうに語るその言葉はいつの間にか大きくなりつつあった。

「そしてここ数ヶ月ある噂が世界に広がりつつある。一切の血族同胞を持たず、ただ災厄の化身たる十二の眷属を従える。唯一無二にして最強の吸血鬼。第四真祖が現代に復活したという物だ」

 それを聴いた刀華は思わず、古城に目を向ける。

「元々吸血鬼というのは伐刀者の能力の一つであり、血を〈固有霊装〉として使う者達の事を指す。そしてその者達はその血に様々な魔獣を飼い慣らしているという。それは眷獣と呼ばれ、個体によって能力が違うというらしい。それこそ〈固有霊装(デバイス)と同じように」

 次第にその場にいた誰もが古城に目を向け始める。

「吸血鬼はその能力の上に不死だと言われている。そしてそれを統治する者。王の事は真祖と呼ばれている。世界で確認されている真祖は三人。東欧の支配者忘却の戦王(ロストウォーロード)。西アジアの盟主滅びの瞳(フォーゲイザー)。南北アメリカ大陸を統べる混沌の皇女(ケイオスブライド)の三人。しかし今、我らの目の前にいるのは存在しなかったはずの第四真祖。のう! そうであろう! 第四真祖。いや、焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)

 皆が驚愕の表情を浮かべている中、王馬一人は雪菜を見据えて納得したような表情をしていた。

「そうか。だからお前がいたのか。高神の巫女」

 呟く様に口にだしと近くにいた天音が「どういうこと?」と聞き返し、王馬はそれに答えた。

「そこにいる高神の巫女は言うなればそこのい吸血鬼の監視役だろうな。その性質上吸血鬼から離れられない。だから今回の事を知ってはいながらも対応出来なかった」

「おい! 王馬。我の話を遮るでない! 我の話はまだ半分なのだ」

 王馬に話を遮られた事に怒りを覚える凛奈は彼に文句を言った後、彼女はすぐに古城に目を向けた。

「我は決めたぞ! 汝を我が眷属にして汝の魔獣を我が貰う。我はずっとそれが欲しかった」

「ふざけんじゃねえぞ!」

 彼女の宣言に古城は怒りにまかせて怒声を上げた。

「俺が誰か。姫柊が何者かなんて言うのはどうでもでも良いんだよ。お前らは実力を発揮したいというのなら違う手段をすれば良かっただけの事だ。なのに襲撃をしたってことはお前らは考えるのを止めただけじゃねえか」

「考えたのを止めたとは、言ってくれますね。我々は上の命令に従っただけですよ」

 反省の色を見せない玲泉の言葉に古城の怒りはより増した。

「そういうところが考えるのを止めたっていうんだよ! 上が命令した? それだけが理由でここを襲う理由にはならねえんだよ!」

 古城の怒声に王馬は鼻で笑った。

「ふっ、所詮は自分の能力を使いこなせない弱者の戯言だな」

「何が弱者だ。不意打ちしか出来ない奴なんかにそんなこと言う権利なんか無えだろ」

「何?」

 古城の言葉に王馬は顔をしかめた。

「確かにあんたらは強いのかもしれない。だけどなあんたらは何の備えもしていない破軍学園を襲ったんだ。それは不意打ちとしか言わねえんだよ」

「生意気なことを言ってくれるな。世界の理不尽さを知らない青二才が!」

「その理不尽というのを俺たちに押しつけるんじゃねえよ。理不尽って言うのは自分で感じる物だ。お前らが勝手に押しつける物じゃねえんだよ、テロリスト。そんなことも分からないなら俺が教えてやる。こっから先は第四真祖の戦争(俺の喧嘩)だ!」

「第四真祖!!!」

 王馬は手に持った〈竜爪〉を上に構えて古城に向かって走り出した。その表所には怒りが見える。古城は彼に備えるべく腕に魔力を集中させ、あと二メートルまで近づいている彼に向かって繰り出そうとした。王馬の攻撃に迎え撃とうとした瞬間、目の前に銀の閃光が現れた。

「いいえ、先輩。私たちの聖戦(喧嘩)です!」

 技を繰り出していた王馬の剣を〈雪霞狼〉の柄で阻みながら雪菜は言った。

「確かに私の役割は果たせませんでした。しかしこれ以上被害を大きくする事は許しません」

「そこを退け! 高神の巫女!」

 王馬は雪菜を邪魔に想い、彼女に向かって剣を振り続ける。しかしその全てを彼女は防ぎ、致命傷は疎か傷すら付けられない。彼は武が悪いと判断し、一度後退した。

「王馬、どうやらお前一人では手が余るようだな」

「ならば我々も手を貸しましょう」

 王馬の元に暁学園の生徒達が集まっていた。

「姫柊。準備は良いよな」

「先輩こそ大丈夫ですか?」

 そんな光景を見ている二人は軽口を叩きながらお互いを確認し、少しだけ笑った。

「行くぞ! 姫柊」

「はい、先輩」

 彼らは暁学園の面々の方向に走りだした。戦いはここからが本番である

 

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