「何があったんだ?」
古城は隣から聞こえた叫び声に首を傾げた。雪菜も「さあ」としか答えられずにいる。
「とにかく確認した方がいいのか」
「そうですよね」
二人は意見を出し終えると玄関の方へと足を進めた。玄関を開けると先ほどの叫び声が聞こえたのか各々が自室の玄関から出てきていた。
「皆さんも同じような感じで出てきていたんですね」
雪菜の問いかけに「そうだな」と返し問題のある隣の部屋に向かった。その前にはもう数人が屯っていた。そこには知っている顔もいた。
「矢瀬、お前も来ていたのか」
「なんだよ、古城。お前も来たのか」
矢瀬基樹は飄々とした感じで返してきた。
「来て悪いか。隣の部屋なんだよ。突然あんな大声を叫ばれたら嫌でも文句を言いたくもなる」
「ふうーんそっちか。俺はてっきり姫柊ちゃんとイチャイチャしてたのを邪魔した文句を言うもんだと思っていた」
古城は思わず固まり、雪菜も「なっ‼」と発して顔を赤くした。
「な、何言ってんだ。お前は。俺と姫柊はただのルームメイトだ。そ、そうだよな姫柊!」
古城は必死になって矢瀬に説明をして雪菜にも同意を求めた。しかし雪菜からは怒気を放ったような気配がした。
「そうですね!どうせ先輩にとって私はただのルームメイトですもんね」
雪菜は口調を普通にしようとしていたが僅かに怒りが宿っていた。
「あの、姫柊・・・・さん?」
「なんでしょうか。先輩」
「もしかして・・・・・・・・怒ってる?」
その問いかけに対して雪菜は古城に笑みを浮かべた。
「怒っ・て・ま・せ・ん‼」
「怒ってんじゃん」
「もう知りません」
雪菜はつぶやき顔を背けた。古城はため息をして矢瀬に問いかけた。
「で、なんでここにいるだけなんだ。中には入らないのか」
「いやー。入りたいのは山々だけどさすがに他人の部屋だしな」
「そうか。そうだよな」
矢瀬は笑いながら気まずそうに答えると古城も納得がいったという表情になった。
「ああ。だからな、まずはこの部屋の住人が早く出てくることを祈るばかりなんだわ」
「それはしょうがないよな。はあ」
古城が俯きため息を吐いたその瞬間。問題のあった部屋の扉が勢いよく開かれた。しかし間が悪かった。古城は今通路の扉側にいた。それにこの扉は外から引く構造になっていた。その結果。
「えっ‼」
古城が顔を上げたら突然目の前に現れた扉に対応できず
「ゴフッ」
扉の勢いには逆らえずに後方へ吹っ飛ばされた。
「なん・・・・でだぁ」
背中から床に叩き付けられた古城はその言葉と共に本日二度目の気絶を味わった。
「せ、先輩‼」
最後に聞こえたのは雪菜が呼んだこの声だったという。
「ったく、なんで俺まで酷い目に遭わされないといかないんだよ」
ぶつけた場所を手で摩りながら文句有り気に言葉を口に出す古城は今理事長室に向かって歩いていた。
「まあまあ、先輩。そんなことを言わないで」
その隣には雪菜の姿もあり、古城を宥めていた。
「しかしまあ、理事長室に行くのはいいとしてなんで制服なんだ」
「校舎に入ってるんです。制服じゃなきゃ入れませんから」
そう今二人は魔道騎士を育成するための学び舎。〈破軍学園〉の制服を身にまとっていた。二人は今この学園に通っている生徒なのだ。古城は二年。雪菜は一年である。
「それになんで俺たちまで呼ばれなきゃならんのだ」
「先輩は一応被害者としてでしょうね。私は目撃者といったところでしょうか」
雪菜は顎に手を当て、呟いた。今言った被害者というのはある人物によって起こされたことによって古城が気絶した件ことだ。雪菜は古城が吹っ飛ばされた処を一番近くで見ていた為その詳細を伝えるようにということで呼び出されている。
そんなことをしていると理事長室前に着いた。しかし扉の前に明らかに低身長にゴスロリ幼女に見える人物がいた。
「来たか。暁古城。それに姫柊雪菜。少し遅かったな」
「来たか。じゃねーよ。俺たちは理事長に呼ばれたんだよ、那月ちゃん」
名前を呼んだと同時に南宮那月は古城に向かって扇子を投げた。投げた扇子は先程ぶつけた場所に当たって古城は悶えた。
「教師にちゃん付けをするな。私はお前より十年前に生まれた」
「あの、南宮先生。なぜここに?」
雪菜は隣で悶えている古城に近寄って屈みそのまま那月に問いかけた。
「お前たちが来る少し前にあのじゃじゃ馬姫が来てな。今中に入ると面倒ごとになりかねん。だからお前たちをここで待たせている」
そういうと那月は扉に目を向けた。中からは何やら言い争っているような声が聞こえた。そのお扉からスーツ姿の女性が出てきた。
「おお、来たか。暁と姫柊。丁度いいところに来たな。そろそろ来る頃じゃないかって思っていたよ」
中から出てきた女性。神宮寺黒乃は煙草を口にしたまま挨拶をしてきた。
「おはようございます。神宮寺理事長。あの今なかで何が起こっているんですか」
雪菜は挨拶を返すと恐る恐る聞いた。
「何、なんでもないさ。ただのじゃれあいさ」
「《伐刀者》の」と付け加えて黒乃は笑った。それを聞いて雪菜は苦虫をかんだような表情をしてため息をした。すると中から重なった声が聞こえた。
「「どういうことですか理事長先生」」
黒乃は笑みを崩さないまま再び中に入っていった。
中には入るとなぜか室内が水浸しになっており、絶賛スプリンクラーが稼働中だった。
「おい、なんでこんなことになってんだよ」
「そうですね制服が濡れてしまいます」
黒乃に続いたのは古城と雪菜だけ。那月はその場から離れた。
「あ、古城君」
すると向こうの方から呼ばれた為そっちを向いた。
「おい、一輝。お前のせいで俺まで酷い目に遭ったじゃねーか」
「うん。その件に関しては本当にごめんね」
古城は旧友のように悪態を吐き、黒鉄一輝は笑いながら謝罪した。
「二人とも今はそれよりもステラ姫の方を対応するべきだと思います」
雪菜の言葉で古城は初めてもう一人いたことを思い出した。
「初めまして、ステラ・ヴァ―ミリオン王女殿下。私はあなたと同じ一年の姫柊雪菜といいます」
雪菜はステラに対して深々と頭を下げた。横にいた古城は困ったような表情をして頭を掻いた。
「えっと、初めまして王女殿下~。俺は暁古城と申すものであります」
雪菜に遅れながらも挨拶をしたがその声は棒読みをした感じでやる気を感じられるものでは無く、適当なものだった。
「私はあなた達の知っての通りステラ・ヴァ―ミリオンよ。そう、あなたが姫柊雪菜ね」
「私の名前をご存じだったんですか?」
雪菜は驚くように頭を上げた。そして分かった。ステラは今少し悔しそうな表情であったことを。
「それはそうよ。なんたってあなたがいたから私は学年主席を取り損ねた」
「す、すいません」
「謝ることはないわ。それにたかが試験程度で私はそんなに怒ってません」
そういうとステラは微笑んだ。それを見て安心した様子の雪菜は息を吐いた。
「あと、私に対してはそんな風に畏まらないで。今はクラスメイトなんだし。ステラでいいわよ」
雪菜は少し困ったような声で「はい」と返した。そしてステラは古城の方に向いた。
「さっきはすまなかったわね」
「別にいいさ。もう問題はない」
「それは良かったわ。それに文句があるならそこのケダモノにいいなさい」
ステラは低い声で一輝を責めた。それに対して一輝は少し笑って理事長を問い詰めた。
「あの、さっき少し話聞いたんですけどあの部屋の鍵をステラさんに渡したのって理事長先生って聞いたんですけど」
一輝は困ったような声を出した。それに対して理事長は笑いながら答えた。
「なんだ、まだ気づかなかったのか。お前たちは同じ部屋。所謂ルームメイトってことだ」
一輝とステラは大声で驚愕した声を出した。
「なんでこんな男と一緒の部屋のよ。私は一人部屋だと思っていたのに」
「学生にそんな贅沢させられるか」
ステラの期待に黒乃はバッサリと切り捨てた。
「あの僕、留年してるんですけど」
「えっ‼、あなた留年しているの」
ステラは再び驚愕したような声を出した。
「うん。それにお恥ずかしながら総合ランクもFランクだよ」
ステラは絶句した。こんな落第生と一緒の部屋に住むなんて。
「理事長先生。なんでこんな奴と一緒に住まなきゃならないのよ。しかも男と同じ部屋だなんて」
ステラの言い分はもっともであった。しかし黒乃はため息をして返した。
「今年から男女関係無く、能力が近いもの同士を住まわせることにしたんだ」
「だけどこいつは落第生で私はAランクの魔力を持っている。それなのに能力が近いもの同士っていうのはおかしいと思うんですが」
最後の方は感情が高ぶったのか声を荒げていた。それを見た黒乃は腕を組んで難しい顔をした。
「しかしだなヴァ―ミリオン。こればっかりは正直どうしようもない。言っては悪いがお前二人はハブれたんだ。所謂余りものだよ。魔力を通常の十分の一しか持たない黒鉄と通常の人より十倍の魔力を持つヴァ―ミリオン。ある意味じゃ似たもの同士だな。ほかの人物とペアにできなかった余りもの二人をペアにしたというわけだ納得してくれたかね」
「それだったら私は雪菜と一緒の部屋だと思うんですけど」
ステラはそう主張すると雪菜はいきなりのことで驚いた。しかし黒乃表情変えないでそれを否定した。
「いや、それは出来ない。まず姫柊はもう暁と同じ部屋に住んでいる。それに君と彼女じゃ全然タイプが違う」
その言葉にステラはなにも言えず息をのんだ。ここまで言われたらもうなにもできないかったのだ。
「そういう訳だ。一緒の部屋に住むのは了解してくれ」
黒乃は疲れたような声を出した。
「ふん、まあいいわ。しかしそこの男には条件を出させてもらいます」
「できることなら何でもするよ」
一輝は少し困ったように微笑んで答えた。ステラはそれを見て口角を上げた。
「大丈夫あなたにもできる三つのことだから」
そういうとステラは指を三本出した
「話しかけないこと、目を開けないこと、息をないこと」
「三つめだと僕死んじゃうよね。息はさせてよ」
「いやよ。あなたが私と同じ空間で息をして私の匂いをかいで変な想像するんでしょ」
「しないよ。だったら口呼吸するから」
そんな二人を見ていた二人は呆気に取られたような表情をしていた。
「お姫様の想像力はすごいな」
「先輩は人事ではないと思うんですが」
「そんなことはしてない」と古城は主張したが雪菜は「どうだか」と息を吐いた。そんなことをしていると黒乃からある提案がされた。
「やれやれ、これではいつまで経っても決まらんな。なら二人で模擬戦でもしろ。で、勝ったほうが部屋のルールを決める。これでどうだ」
一輝はそれをすぐに承諾した。ステラは一輝がやる気になっているのを見て自分には敵わないと言ったが、一輝の「やってみなければ分からない」発言に頭がきたのか模擬戦を承諾した。
こうして黒鉄一輝とステラ・ヴァ―ミリオンの模擬戦が決定した。
「なあ、姫柊」
「なんですか?先輩」
「俺たち後で来てもよかったんじゃないか」
古城の問いかけに対して、雪菜は弱弱しく「はい」とだけ答えた。
というわけで二話目はこれで終わりとなります。あと独自設定でステラを学年次席にしてすいません。これには訳があるのですがそれはそのうち本編でやるのでそれを楽しみにしてください。