焔光の夜伯と剣巫の英雄譚   作:カラムイラス

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 三話目です。一応戦闘回ですが、古城と雪菜の出番は少ないと思います。


三話

「というわけだ。とりあいず姫柊」

 黒乃に呼びかけられた雪菜は姿勢を正した。

「はい」

「お前は、ヴァ―ミリオンを控室に案内してやてれ」

「わかりました」

 黒乃の要求に雪菜は凛とした声で返した。

「それではステラさん。私の後についてきてください」

 雪菜はステラに向きなおし、軽くお辞儀をし扉の方へ歩いて行った。扉を開けた雪菜は先に行くように促され苦い顔をして向こうへ消えていった。

「失礼しました」

 雪菜の声と共に扉は閉じられ、そこで黒乃は息を吐いた。

「全く、困ったものだな。我が強い王女というものは」

 口にしていた煙草を灰皿で押しつぶし、新しい煙草に火をつけた。

「お前も大変な奴に目をつけられたな。一輝」

 古城が横目にそういうと一輝はただ苦笑いをした。

「そうだね。だけど模擬戦で負ける気はないよ」

 一輝はそういうと笑みを浮かべてこぶしを作った。それを見た古城は「やれやれ」といって頭を掻いた。

「それじゃあ僕も行くね」

 そういって一輝は扉を出て行った。少しの間、理事長室は静寂に包まれたが古城が切り出した。

「それで俺たちに何か用事があったのか」

 うんざりしたような声を出して黒乃に説いた。すると彼女は煙草を口から離した。

「ああそうだったな、すまなかった。後回しになってしまったな」

「それはいいさ。姫柊も多分同じだろう」

 古城の言葉に黒乃は笑いを返した。

「で、お前の用事はこれなんだが」

 黒乃は机の引き出しからある書類を出し、古城に渡した。

「・・・・・・・。別に俺はいいぞ」

 しばらくの沈黙の後に古城は口を開き、書類を置いた。発せられた声はどこか気だるげだった。

「本当にいいのか。今のお前は学生騎士に他ならないんだぞ」

 古城の言葉に黒乃はため息をした。

「別にいいさ。俺がこういう扱いをされるのはいつものことだからな」

 空笑い気味に答えると黒乃はしばらく考えこみ、黙って頷いた。

「そうか。お前は自分の力を使わないことを選ぶのか」

 この問いかけに古城は即答で「ああ」と答えた。

「この力は元々俺の物じゃない。あの馬鹿に押し付けられたものだ」

 黒乃は黙ってそれを聞きいれた。そこに古城はそれにと続けた。

「この力は俺が私利私欲の為に使っていいものじゃない」

「・・・そうかもしれないな。その力はお前に渡った。だからその力の使用権はお前にしか無いわけだな」

 黒乃がそう解釈して黙って頷いた。

「そうかもな。だが元々俺には過ぎた力だ。俺が扱っていいものじゃない」

 古城は肩を竦め、そういって扉に向かった。

「だがこのことに姫柊は文句を言うだろうな」

 古城はその言葉で立ち止まり、振り返った。

「姫柊の奴なら許してくれるさ」

 そういって古城は扉を出た。黒乃は置かれた書類に再び目を通した。

「まったくいつも大人の我儘に付き合わされるのは子供達だな」

 黒乃はやるせなさを声に出した。いつものことながら馬鹿馬鹿しい理屈ばかりを子供に擦り付ける。その書類にはこう書かれていた。

 

 

 貴君、暁 古城 殿に《七星剣武祭》への参加辞退を申請する

 

 

「はあ。どうするかね」

 黒乃のため息をして立ち上がり理事長室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ステラは雪菜に連れられて控室まで来ていた。

「あと数分で闘技場が開かれるそうなんで、もう少し待っててください」

 雪菜は携帯端末に目を向けて届いたメールの内容を説明した。ステラは頷いて近くの椅子に腰を掛けた。

「ねー、雪菜」

「はい、なんでしょう」

「なんでさっきから丁寧口調なの?」

 ステラはこれまでの雪菜の口調が気になっていた。

「あの。・・・・・・何か失礼なことでもありましたか」

 雪菜はそれを聞いて反省したような声で呟いた。

「いや、最初は私に対しての敬意なのかなって思ったんだけど。私が「畏まらないで」って言ってもその口調は変わってなくて。もしかして馬鹿にされているんじゃないかって」

「そ、そんなことはありません」

 ステラの問いに対して雪菜は大声で即答し、それを否定した。

「私は人を陥れる行為は絶対にしません。この口調は。その。・・・・・しょ、性分なものですから」

 最後の方は少し恥ずかしかったのか俯きなが言葉にしていた。

「そ、そうなんだ」

 対するステラは大声を出されたことで少し引いてしまい身を捩っていた。

「まあ、性分なら仕方ないわね」

 ステラはそう言って体を戻して、頷いた。

「それにしてもまさか来ていきなりあなたと遭うとは思わなかったわ」

「そうですよね。私もまさかいきなりステラさんに遭うとは夢にも思いませんでした」

 二人はそういって笑った。そこに雪菜の端末に連絡が入った。

「闘技場の準備が整ったようですね。案内します」

 雪菜が立ち上がろうとすると肩に手を乗せられた。

「いいのよ。ここまで連れてきてくれてありがとう」

「しかし、案内するようにいわれているので」

「真面目なのね。だけど案内は本当にここまででいいの」

 ステラは睨むように雪菜を見つめた。その目から何かを察した雪菜は頷いた。

「わかりました。闘技場への道は端末に入っていると思うのでそれを見ながら進んでください」

「わかったわ。ここまでありがとう」

「いいえ、それほどのことはしてませんので」

 その言葉を最後に雪菜は扉へ向かった。扉から出るときも「失礼しました」というところ真面目な彼女らしい。

「あれが、私から主席入学を奪った姫柊雪菜か」

 呟き、ステラ控室を出た。

 

 

 古城は闘技場の後ろの方の観戦席にいた。

「おー、古城。ここにいたのか」

 声をかけてきたのは先程あった矢瀬基樹だった。

「またお前かよ矢瀬」

 古城は嫌そうに顔をした。

「なんだとはなんだよ」

 矢瀬はから笑いをした。

「ところで姫柊ちゃんはどうしたよ」

「ああ、姫柊なら今から試合する相手を道案内しているところさ」

 そういい終えると雪菜が観戦席の入り口から出てきて、古城に近づいてきた。

「お、噂をすれば」

 矢瀬がにやにやと笑い、揶揄うような声を出した。

「探しましたよ先輩。矢瀬先輩もこんにちわ」

「おお」

 雪菜の挨拶に矢瀬は軽い感じに返した。

「ずいぶんと早かったな」

「はい、ステラさんにこれ以上の案内は必要ないといわれたので」

 雪菜は苦い顔をして古城の隣に座った。

「お前も大変なんだな」

 古城は雪菜の答えに少し笑った。

「そんじゃ、俺はもうちょっと前で見るとするか。部活の後輩なる子が待っているんでね」

 矢瀬は軽く手を振って前の方へ歩いて行った。 雪菜はそれを見て微笑んだ。

「ふふっ。やっぱり矢瀬先輩は変わらないですね」

「あいつが変わったら気持ちが悪いわ」

 古城は少し声を荒げた。

「それにしても先輩。私たちがいなくなった後、理事長先生からの要件は言われたんですか?」

「ああ。それに関しては気にする問題じゃなかったな。何が「大事な話がある」だ。人騒がせにもほどがある」

「そうですか。それは良かったですね」

 古城は少し怒気を言葉に込めた。それを聞いた雪菜は何も問題がなかったのを察して笑った。

「おお、もうそろそろ始まるな」

 古城の声で雪菜も闘技場に目を移した。

「来てくれ、陰鉄」

「傅きなさい。妃竜の罪剣(レ―ヴァテイン)

 二人は各々の《固有霊装》を出して模擬戦が始まった。

 最初に仕掛けたのはステラだった。彼女は炎を纏った剣を一輝に向かって振り上げた。防御しようとした一輝はすぐに身を引いて剣を交わした。

「よくわかったわね。私の剣はあなたの剣ごとたたき切る」

「危なかったよ。もしあそこで僕が防御していたらそこで試合が終了だ」

「ふん、だったら次で終わりにしてやるわ」

 傲慢そうに言いのけた後、ステラは再び攻めこんだ。振りかぶり、一気に一撃を決めようとしていた。しかしそれも一輝は右に逸れることで避けた。ステラは様子を見てそのまま剣を横の薙ぎ払った。それを屈んで回避した一輝は後退するようにジャンプをした。それでも尚、責める手を緩めずにステラは追撃をした。三度浴びせられる冗談からの剣劇に一輝は陰鉄の剣先を横に掲げた。

「ふん、砕けなさい」

 ステラの声と共に剣同士が接触した。しかし、陰鉄が砕けることはなかった。

「ふえっ」

 間抜けな声を出したステラは驚愕した。今、ステラの剣は一輝の陰鉄によって軌道を反らされたのだ。それも完璧なタイミングで。一瞬の動揺が見られたがそれをすぐに立て直し、追撃した。

 

 

「姫柊は姫さんの実力はどう思う。俺にはわからないからさ。」

 試合を観戦していた雪菜に古城の問いかけた。雪菜は顎に手をあてて考えた

「少なくとも相当の実力者だと思いますよ。剣も流れに乗れていますね。しかし、黒鉄先輩なら大丈夫だと思いますよ。彼女は今、なぜか剣だけで戦っていますから」

 古城の問いに雪菜は少し困りながらも解説のように回答した。

「それにもうすぐ攻守は交代すると思いますよ」

 雪菜はそういうと再び闘技場に目を移した。

 

 ステラは攻めきれないでいるこの状況に焦りを感じていた。先程からやっているのは全てが決定打になりうるものだった。しかしそれが全く当たらない。ある時はいなされ、ある時は反らされ、またある時は避けられる。その状況に対しての焦りを感じられた。観客席で見ている生徒たちは「ステラ様はすごい」だの「やっぱり、落第生じゃ敵わないだの」と言っているがそれも違う。ステラの剣は全てが決定打。一撃で相手が沈むのが当たり前の剣である。それをここまで美味く避けられた経験がステラにはなかったのだ。

「うまく逃げるばかりじゃ私には勝てないわよ」

 口では出まかせをいえるがこれでも焦りを声に宿らせないようにするのに必死だった。

「いや、ギリギリさ。ステラさんの努力がよくわかる」

 その言葉に一瞬言葉を詰まらせたがすぐに返した。

「そう。だけど私の剣はそう簡単に見切れるものじゃないわよ」

「いや。もう見切った」

 そういうと一輝が攻めに入った。ステラは剣で防御しようとするとその間を縫うようにして陰鉄がすり抜けてきた。

「くっ‼」

 咄嗟に剣を動かして剣は反らしたがその顔は驚愕していた。なぜなら今一輝が使ったのはステラの習っていた〈皇室剣技〉そのものだったからである。

「一体、・・・・・どうやって」

「〈模倣剣技〉(ブレイドスティール)

 ステラの問いかけに一輝は今やっていたことをいった。

「僕は昔から嫌われていたからまともに剣術を習うことができなかった。だからこういうことばかり上手くなってね。大体の相手は数分剣を交えるだけでその剣術の事が理解でき、それを超える剣術を作ることができる」

 一輝がまた責めた。それも今度はステラに受けるという選択をさせた。それでも一輝は責める手を緩めなかった。次々と責めていった。ステラもそれに対応しようとして、自分が絶対しないことをした。

「はああああー」

 ステラはわざと避けて、一輝の隙を作った。彼女はそこに集中して横薙ぎを放ったし。

「太刀筋が寝ぼけているよ」

 しかしそれは陰鉄によって防がれた。なぜ防がれたのか理解できないステラは目を見張った。

「つ、柄」

 そう一輝はステラの一撃を柄で受け止めたのだ。そして一輝はそのまま上段の姿勢をとった。

「そして、今の君が自分を曲げたこの一撃は致命的だ」

 そのまま必殺でなるであろう太刀はステラの体に吸い込まれた。

 

「終わった・・・・・・のか?」

「・・・・・・いいえ。まだです」

 古城は疑問気にそういうと雪菜がそれを即座に否定した。

 

 

 一輝が放った一撃はステラの体を割くことはできず、その直前で阻まれていた。

「やっぱりか」

 一輝はそういって剣を引いた。

「分かっていたんだね。僕の剣じゃ君の魔力を切れないって」

「そうよ。だからあなたに剣で勝負を挑んだの。才能だけでなく剣技でもあなたに負けないためにね。・・・・だけど今回私が勝てるのは才能のおかげだわ」

 ステラは剣を上に掲げた

「終わりよ。敗北を受け入れたほうがあなたの為になるわ」

 そういうとステラは自分の剣に炎を集めだした。彼女はいま一輝を倒すために自分の最強の技を放とうとしていた。

「天壌焼き殺す竜王の炎《カルサリティオ・サラマンドラ》」

 振り下ろされた剣から巨大な炎の竜が出てきた。その竜はいま一輝を蹂躙しようとどんどん近づいてきた。

「確かに負けを認めたほうが僕のためかもしれない。だけど僕はそんな自分を否定する」

 言いのけると一輝は剣を構えた。

「《一刀修羅》」

 その言葉を発すると一輝から青白い炎が発せられた。その瞬間、一輝は今目の前で出された炎の竜の前から姿を消した。ステラは一瞬見逃したがすぐに居場所を突き止めて剣を使い、竜を操って一輝のいる場所に差し向けた。しかしそれでもまた姿を消した。

「一体、どうなっているの。今までのあなたからはFランクの魔力しか感じなかったのになぜ今あなたそれ以上の力を感じる」

「それはそうさ。今の僕は文字通り全力で戦っているんだから」

 意味が分からないと感じているステラに対して一輝はステラの攻撃をすべて避け切っている。

「魔力の少ない僕が君に勝つためにはもう自分のすべてを賭けないといけない」

 ステラの目の前に来た一輝はそう言ってのけ、上段に構えた。

「僕の最弱(最強)を持って、君の最強を打ち倒す」

 ステラは剣で受けようとして、竜の制御権を捨て、防御に徹しようとしたがそのときにはすでに切り裂かれていた。倒れる瞬間に暴れる竜が見え、観客席に向かっているのが見えた。多分あそこに被害があるだろうと思いながら倒れていくと

「〈雪霞狼〉」

 という声と共に炎の竜は消え去った。そこでステラの意識は途切れたのだった。

「そこまで。勝者。黒鉄一輝」

 勝者宣言がされると一輝も崩れ落ちた。

 

 

 

 




 三話目も見てくださってありがとうございます。
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