雪菜が怒った声で二人に言うと辺りは静かになった。それは先程からいがみ合っていたステラ達でさえだ。
「理事長からの許可を無しにあなた達は
雪菜はそのままの体勢で二人に言い放った。
「で、でもこれは私達のことであってあなたには関係の無い事でしょう」
「そうです。部外者は引っ込んで」
「それを周りを見て言えますか?」
二人の訴えを雪菜は周りを見るように促し、正論を言ってのけた。
「だ、だったら雪菜もそうでしょ。あなたも無断で〈固有霊装〉を出している」
揚げ足を取るような発言をしたステラに雪菜はため息を吐き、〈雪霞狼〉の柄尻で床を叩いた。すると人混みが割れて二人の人物がその場に来た。
「いや。姫柊に私が頼んだんだ。お前らを止めろってな」
一人の人物。黒乃が煙草に火をつけながらそういった。黒乃を見て、二人は驚愕した。
「というわけだ。彼女は悪くない。というか感謝するんだな」
「感謝?」
ステラはその言葉の意味が分からず首を傾げた。
「だって、そうだろ。お前ら二人の異能を消してくれたから損害物は何も出ていない。よかったな!」
黒乃の発言で二人は自分の周りを見渡した。しかしどこも異常はなく、普通の状態だった。そこで気付いた。普通の状態はおかしいと。何といっても二人のランクはAとBだ。何もない状態はありえないのだ。
「なにをしたの」
ステラは雪菜を問いただすと雪菜はただ苦笑いをするだけだった。
「とにかく、二人とも理事長室に来い。姫柊、すまなかったな。お前はここでいいぞ」
雪菜は「はい」と答えてその場を後にした。その後ろ姿をステラはただただ見つめた。
「もう、心配したんだからね」
「ごめんね。凪沙ちゃん」
「うんうん、もういいの。雪菜ちゃんが無事でよかった」
凪沙の小言に雪菜は苦笑いをして謝った。
「で、このあとどうする? 私は古城君に会いたいんだけど」
「じゃあ、部屋に案内するね」
雪菜はそういうと、凪沙に部屋を案内を始める。しばらくの間。凪沙の最近のこと教えてもらいながら歩いていたがその間に部屋に着いた。
「へえ、ここが雪菜ちゃんたちの部屋か。うん、きれいにされているね」
「凪沙ちゃん。姑さんみたいなこと言ってるよ」
「一応、小姑だからね」
そういって二人は笑う。そのタイミングでドアが開いた。
「ただいま」
「あ、先輩。おかえりなさい」
「古城君おかえり」
「・・・・・・。はあ?」
しばらくすると古城の叫び声が聞こえた。
「なんで、凪沙がここにいるんだよ」
古城の叫び声に凪沙は耳をふさいだ。
「うるさいよ、古城君」
「あのな、それは驚きもするさ。なんでほかの所に行ったと思われる妹がいまここにいるんだよ」
「それはここに入学したからに決まっているじゃん」
「聞いてねーよ。まず親父が許すはずがない」
「言ってないもん。それに牙城君も許してくれたもん」
「なんで言わねーんだよ」
「妹がどこに行こうが古城君には関係ないでしょ」
二人が言い争っている間、雪菜は真ん中で両者の顔を見て、あわあわしていた。
「ったく、心配させんじゃねえぞ」
「ま、まあ先輩。落ち着いて」
雪菜がそういうと古城が床に座った。それを見て凪沙も座った。雪菜はその様子を見て安心した。
「あ、私お茶淹れてきますね」
「え、いいよ。そんなことしなくても」
「うんうん。久しぶりの兄妹水入らずを邪魔したくないしね」
そういうと雪菜はキッチンの方にいった。
「ねえ、酷いと思わない。牙城君私には無理だって言ったんだよ」
「ああ、そうだな」
凪沙がそういうと古城は適当に返し、雪菜が淹れた緑茶を口にした。
「ねえ、聞いてる?」
「おお聞いてるぞ」
古城のその声に凪沙はため息をした。
「まあ、いいや。ねえ、今度の週末。三人でショッピングモール行こうよ」
その問いかけに古城は首を傾げた。
「なんでだ」
「だって私まだここに来たばかりだから日常品をそろえたくて」
「まあ、それだったら」
雪菜はそれを了承した。
「なんで俺まで」
「古城君は荷物運び」
古城はそこまで聞くと肩を沈めた。
「はあ、まあいいぞ」
「やった。じゃあまた後で来るね。詳細はそのときで」
「また来るのかよ」
それを言い終えると凪沙は部屋を後にした。
「凪沙ちゃんはやっぱりああでないとですね」
「元気すぎるだろ」
古城はため息を吐き、雪菜はただ微笑んだ。
ステラは隣の部屋から同じクラスの暁凪沙だ出てくるのを見て疑問に思った。それはなんで彼女が姫柊雪菜と暁古城の部屋から出てきたのかと。それを一輝に聞いた。すると、
「彼女は多分、古城君の妹だよ」
と帰ってきた。一輝はそれにと続けた。
「彼女と姫柊さんはこの学園に入る前から知り合いだったらしいし。中がいいのも分かる」
「妹ね。珠雫と同じタイプじゃあないでしょうね」
「多分違うと思うよ」
一輝はそういうと部屋に入っていき、自分も入って行った。
その夜。古城はある夢を見ていた。
「やめろ。やめてくれ、アヴローラ」
燃え盛る瓦礫の真ん中で古城と虹色の髪をした少女だけが存在していた。
「余の願いは叶えた。次は汝の番ぞ」
そういうと彼女は両手を広げた。すると古城の体が勝手に動き出し、手に持ったボーガンをアヴローラに向けた。
「やめてくれ」
古城の悲痛の声が空しく杭は射出されアヴローラの胸に深々と突き刺さった。彼女が倒れる時には古城はボーガンを捨て、彼女に近づいた。しかし、その途中で彼女は霧となって消え去った。古城はその場で膝を折った。その瞬間古城に急激な痛みが走った。気絶していき彼は割れたガラスを見て驚いた。古城の目が深紅色に染まっていたからだ。それはまるで吸血鬼のように。
古城は夢から起きると息が絶え絶えになっていた。
「あの、大丈夫ですか」
横から声がして、そこを見ると心配した顔の雪菜がいた。
「あ、ああ。大丈夫だ」
古城は汗を拭いながら答えた。しかし、雪菜の表情は変わらなかった。古城は観念したのか夢の事を離した。
「今見ていた夢は、俺が・・・・アヴローラを殺すところだった」
雪菜はそれを聞いて驚いたようで顔を歪めた。
「ということは先輩が」
「ああそうだ。俺が真祖になったときだ。だがこれまでこんな夢を見ることはなかった」
古城の言葉に雪菜はただ静かになった。
「そろそろ受け止めろってことなのかもな」
古城の言葉だけが部屋に静かに響いた。
というわけで五話目終了です。書いてみて三雲先生と海空先生の偉大さがよくわかりますね。