太陽の子、ゼウスの使い魔   作:ブライ

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三話 ゼロの少女と使い魔の行方

今日一日ルイズは不機嫌の極みだった。

 

昨日は使い魔を呼び出すことに成功したもののその使い魔には逃げられた、しかも成功とは言ってもドラゴンやペガサスといった凄いと、一発で分かる使い魔ではなく人間でしかも平民あった、自分は平民一人も満足に従わせる事も出来ないのかとみじめに思う。

 

そして今朝になってオールド・オスマンとミスタ・コルベールに相談しサモン・サーヴァントとコントラクト・サーヴァントには成功したので、進級は出来るようにして貰ったのは良いのだが使い魔がいない事には変わりは無い。

 

新しい使い魔を呼ぼうにも、サモン・サーヴァントをもう一度唱えるには現在の使い魔が死亡している必要がありコントラクト・サーヴァントが成功してしまっているので使う事が出来ない。

 

 

「見ての通りの好青年さ」

 

 

と言っていた顔を思い出すと本気で殺してやろうか、と少し思ってしまうほど黒い考えが出てくるほどイラだっていた。

気に入らないし逃げてしまったとはいえ、流石にそんな理由で殺しはしないが、彼女の置かれている境遇を考えれば少しくらい思ってしまうのも無理はないだろう。

 

 

朝食を取った後に出た最初の授業ではクラスメイト達に使い魔が居ない事を馬鹿にされた。

 

 

クラス中から飛んでくる罵詈雑言に反論するが、実際に使い魔が逃げしまって居ないのだ、半端な反論は火に油を注ぐような物でさらに笑われるのだった。

 

授業の担当教員であるミセス・シュヴルーズがフォローに入り、それでも止めない生徒には錬金で作りあげた土でもって口を塞ぐという強硬策でようやく静かになったが、それは口をふさがれるのが嫌なだけであってルイズを馬鹿にするのを止めたわけではないのだ。

 

夜になり自室に戻り一人になるとじわりと涙が浮かぶ、プライドの高い彼女は人前で涙を流さなかったが一行に好転しない自分の状況に心は折れかかっていた。

 

 

「なんなのよ……ようやく成功したっていうのに……」

 

 

誰にも聞こえないような小さな声で彼女は呟く、日中の内には殺してやろうかと黒い事も思ったが一応の成功の証である光太郎に帰ってきて欲しいと思う。少ししか話さなかったし生意気な平民であったがそれでも自分に相性の良い生き物だから召喚されたわけで愚痴くらいは言えたかも知れない。

 

 

「勝手にどっか行っちゃうなんて……戻ってきなさいよ……バカ……」

 

 

そういいながらルイズは緑色をした丸い玉の様なものを弄りながら泣いていた。

 

誰かに頼ることも弱みも見せることも出来ない状況は、思考をさらにマイナスの方向に加速させる、そのせいでもう少し先の事になるのだが彼女は無謀とも言える方法で汚名返上を図ろうとするのだった。

 

 

 

一方その頃、学院長室ではオールド・オスマンとコルベールが話し合っていた。内容はルイズの使い魔のことである、今朝にルイズと話したように取りあえずは進級に関しては問題ないようにはした、ルイズは非常に真面目で魔法の実技以外は優秀な生徒であり立派な貴族になろうと努力しているのは分かっている。なので何とか進級はさせてあげたかったのでそれについては問題ない。

 

問題は居なくなった使い魔自体のことである、あの後にガンダールヴについてもう一度よく調べ分かった事といえばやはりとんでもない事になりそうだという事だけである。

 

始祖ブリミルが使っていたとされる、火、水、土、風、とは違う系統の虚無と呼ばれる魔法はとてつもない威力を秘めている反面、発動するまでに時間がかかるのが欠点だという、そのために始祖ブリミルは4つの使い魔を率いて行動していたそうだ。

 

神の左手ガンダールブ

 

神の右手ヴェンダールヴ

 

神の頭脳ミョズニトニルン

 

そして語ることすら憚れる四つ目

 

この四つの使い魔はそれぞれに強力な能力を持っており始祖を補佐していたという、もしルイズの呼んだ使い魔が本物のガンダールヴであったのなら事態は【ルイズがすごい使い魔を召喚した】では済まない。

 

始祖の使い魔の復活という情報は争いの火種を生みかねない、今のトリステイン王国は王の不在で次代の王権は誰が持つのかで揉めている、王という絶対的な権力者による抑止が無い状態で、そんなことが知られればヴァリエール家を祭り上げて内戦を仕掛けかねないバカな貴族も出てくるだろう。

 

 

このハルケギニアに置いて始祖ブリミルを信仰するブリミル教の影響力は非常に高い、それ故にそんなバカな貴族の声も強く聞こえ、権力、財力を手に入れようとするために便乗する者が増えれば、それこそ洒落にならない事態になるだろう。

それほどまでにこの始祖関連の物はとんでもない威力を持っているのだ。

 

 

「しかし……なぜ彼は逃げてしまったのでしょうかね」

 

「まぁなんじゃ、冷静に考えて見ればいきなり知らぬ場所に飛ばされて使い魔にされれば逃げたくもなるかもしれんの」

 

「……そうですね、少々配慮が足りなかったのかもしれません、そういえばミナミコータローとか言う名前からして平民とは言えあまり聞かない名前と格好でしたし、もしかしたら東方出身なのかもしれません」

 

 

 

実際は東方どころか異世界なのだが二人には分からない、だがそれよりも問題は光太郎の所在だ、ルイズのためにもトリステインのためにも光太郎を探し出さねばならない。

しかし公に探し出すにも一人の平民を大々的に捜索させるわけにも行かない、正体をばらして王宮に言えば人員は確保出来るだろうがそれでは元も子も無い。

 

二人が何か良い案は無いかと頭を悩ませていると、誰かが扉を開けようとするのが見えた。

 

今この部屋には消音の魔法であるサイレントが掛けられている、学院内に族は居ないだろうが万が一聞かれたら困る内容なので念には念をというやつだ。

 

二人は出してある資料をしまってサイレントを解き外の人物に声を掛ける。

 

 

「夜分遅く失礼します、ロングビルです」

 

 

それはオスマンの秘書のミス・ロングビルであった、彼女は秘書の仕事である書類が出来上がり学院長室の明かりがついていたので夜分だが書類を届けにきたという。

 

 

「やや、これはすまんのぉ、しかし相変わらず仕事が速いのミス・ロングビル」

 

「それが仕事ですので、それにしてもノックをしても反応が無かったので失礼なことをいたしました」

 

 

と軽く頭を下げる、さらにそう言えばと話をする。

 

 

「昨夜もお二人で何かお話なさっていたようですが、何か大変な事でも起きましたか?手伝える事があるのならば遠慮なくおっしゃってください」

 

 

その問いかけに二人は目で会話をし、ガンダールヴ辺りの事をぼかして協力を頼んだのだった。

 

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

「まったく、何を話しているのかと思えば使い魔が逃げたってか」

 

ミス・ロングビルはため息を吐きながら部屋を後にする、トリステイン魔法学院長の美人秘書とは仮の姿

その実態は今トリステイン王国を騒がせている盗賊、土くれのフーケ、である。

 

貴族から高価なマジック・アイテムを盗み、その後に自分の犯行の証である【〇〇は頂きました】というメッセージを残し、警備を強化してもことごとくそれを突破することから、普段威張りきった貴族を毛嫌いしている一部の平民の間では英雄扱いもされている盗賊である。

 

実際に彼女が盗みを働いているのにはそれ相応の理由があるのだが、それは置いておき今回のターゲットは学院内にあるとされている【破壊の杖】の入手である。

 

それを手に入れるためにわざわざ秘書としてこの学校に潜り込み念入りに準備をしていたのだが、保管場所である宝物庫の攻略に手を焼いていた。

メイジにはランクが存在し、ドット、ライン、トライアングル、スクウェアの順に上がっていく、フーケはトライアングルのメイジでかなり強力なのだが、それでも宝物庫を突破するのは容易ではなかった。

 

 

まず固定化と呼ばれる物質をその状態に固定しあらゆる変化から防ぐ魔法が存在する、それを自分よりも高位のメイジが幾重にも掛け宝物庫を頑丈に守っている、それのせいで練金で壁の物質を変えて進入するといういつもの手口が使えない。

さらに唯一の弱点が物理的な攻撃だと言うが壁自体がかなり厚い、破壊する手段も無くは無いのだが目立つ上に失敗したらやり直しが効かない。

 

なので如何した物かと思っていたのだ、そんな時にオスマンとコルベールが重要そうな会話をしていたのだ。

 

この魔法学院は有力が貴族の跡継ぎが多く在籍することから時たま外に聞かれたくない話しも入ってくる。しかし最も機密性のある学院長室と言う場所で施錠し、しかもサイレントを使うなどよっぽどの事だ、しかも二日連続で、ひょっとすると何か別のお宝の情報が手に入るかもしれないと思いダメ元で言ってみたのだが……

 

 

「そりゃあ人間が使い魔になるなんて珍しい……と言うより聞いたことも無いことだけどさ、そこまで隠して話すことかね」

 

 

オスマンはひょっとすると凄い力を持っているかもしれないと言っていたが、どう考えてもお宝には結びつかないので自分には関係が無い、それどころか協力すると言ってしまった手前何もしない訳にはいかず、表面上だけでも探すことをしなければならないので余計な仕事が増えたのだった。

 

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

そして惑星エルピスの方では……

 

 

「こうたろう、いなくなったほんとか!?」

 

「おい……いきなり窓から飛びこんでくるなドアから入れよ」

 

「わるいケイスケ、で、こうたろうどうなった?」

 

「ああ、今ゼウスのメンバーや一文字先輩達も捜索を手伝っているけど手がかりすらつかめていないそうだ」

 

「……ケイスケ、たのみある、どうぶつまもるやくめある、だから……」

 

「分かってるって、俺の方は復興作業もひと段落着いたしもう変身も出来るからな、お前の分までやってくるさ」

 

「ケイスケ!!ありがとう!!!」

 

「おわっ!!抱きつくなって……それに個人的にも光太郎には会っておかなきゃならないんでな」

 

「?」

 

と捜索隊も少しずつ増えていったのだった。

 

〇〇〇〇〇〇〇

 

そして自分が今非常にやっかいな事に巻き込まれているとも知らないこの男は……

 

 

「うん、以外にいけるなこれ」

 

 

川で魚を取って食べていた。

 

 

村を出てから数日が過ぎその間色々な事があった、まずエルピスとは違う異世界のため持っていた通貨が使えず、糧を得るために魚や獣を倒して食べていたのだった。

 

次に夜になって野宿をしていたところ誰かが近づいてきた、それは小さな女の子でこんなところで何をしているのかと聞いたら、帰れなくなったと泣きついてきたのだ。

 

しょうがないなと思い帰り道を一緒に探そうと隙を見せたら、突如として首に噛み付いてきたのだ、数秒その状態のまま固まると女の子は苦しみだし、悲鳴を上げて灰になったのだった。本当に不思議な事であった。

 

しかしそれ以上に不思議なことがあったのは突然イラっとしたり突然何か悲しくなったりしたのだ、別に何かされたわけでは無いし変な事を思い出したわけでもない、何か急に別の人間の感情が自分に入り込んだような感じがするのだ、さらにそんな現象の極めつけに不可解なことは昨夜に起こった、目をつぶって寝ようとしたらいきなり変な映像が右目に映りこんできたのだ、それは大きな石のような土のような大きな人の形をした物が建物を襲っている映像だった。余りのことに驚くがすぐにその映像は消えたのでなんだったのか結局分からずじまいであった。

 

せめて誰かと連絡が出来ればよかったのだが、どこかに通信端末を落としたらしく(恐らく繋がらないだろうが)状況は積む寸前であった。

 

 

「さて、飯も食ったしどっかに雨風しのげる場所でもないか……」

 

ここ数日は野宿ですごしてきたのでそろそろ家で眠りたい物である。

 

すると少し先にちょっとぼろいが家が見える、もしかしたら眠れるかも知れないと思い、光太郎はその家へ向かうのだった。

 

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