「光太郎さん、光太郎さん……だめですね」
ダカール市にある参謀ビルの最上階にいる大型コンピューター、ハロ9000は電波の繋がった光太郎の通信機に会話を送っていた。
しかし繋がったのは一瞬だけであり、すぐに電波は途切れてしまったのだった。
ゼウスのメンバーに渡してある小型ハロタイプの通信機は、コミカルな形とは裏腹に非常に高い性能を有しているのである。
通常ならば携帯電話などはちょっと地下に入ったりすれば、電波は悪くなるがこの通信機は、海底都市の最深部に入っても電波の通じる優れ物でありしかも、電波は世界中どこへ行っても基本的に繋がるのだ。さらに少しだけとはいえ解析機能なども入っている、小さいが非常に便利なツールなのだ。
光太郎が行方不明となったと同時に、この通信機の電波も途絶えたので当初は故障したものと判断したのだが、先ほど突如として繋がったのだ。残念な事に光太郎とは会話出来なかったが、それでも繋がった事は事実なのでハロ9000は場所の特定を急ぐのだった。
暫くし発信源を突き止めたが、不可解な事があったのだ。
「皆さんに連絡します、先ほど数秒の事ですが光太郎さんの通信機と電波が繋がりました。それを踏まえて皆さんにお伝えしなければならない事が出来ましたので、一度ダカール市の本部までお集まりください」
ハロ9000からゼウスのメンバー達に連絡が入る、これは自分だけでは解決できないような事だったので、一度メンバーを集めることを決定したのだった。
電波の発信源それはゼウスにとって因縁の深い場所であった……
一方その頃光太郎が学院にやって来てから数日が経過していた。
そしてとある事があり、ルイズの事をゼロとバカにする者は殆ど居なくなっていた。
まずフーケから破壊の杖の奪還に成功した事が皆に知れ渡った。
それについてはトライアングルであるタバサとキュルケが、主にやったことだろうと思っていたのだが、なんとルイズの使い魔が倒したというのだ。
タバサは元々あまり人付き合いが良い方では無いので話を聞くものは居なかったが、キュルケには取り巻きの男もかなり居たので情報はそれなりに入ってくる。
そして彼女らに同行したというギーシュからも話は聞けた。彼は派手好きであり、こんな武勇伝をひけらかせそうな話題であったら多少の脚色が入っても自分の活躍を話すだろう。だが彼はそこまで自分の活躍も言わず、トライアングルの二人の事も言わずにルイズの使い魔が大活躍したことを話したのだ。
元々名誉挽回のために参加したはずなのに、自分の事よりも光太郎の事を言ったのには、RXの勇士を見てそれに憧れたせいでもあった、ギーシュは軍人の家系であり彼自身も将来はそちらの道に行くつもりである。それ故に多少なりとも戦いの教育は受けて育っている、その中には英雄と呼ばれたり勇者とする者はいることはいるがごく僅かな例であり、実際にはまずそんなものには成れないということも言われている。
だがRXという勇者の実物を見てすさまじい衝撃を受けたのだ、それを前にして中途半端な事は話せないと思い自分のことは自重して話したのだ。
結果として光太郎の活躍は事実ということで周りに知れ渡る事になったのだ。
だが事実として認知はされたもののやはり疑う者はいた、そしてそれを決定的にしたのは光太郎がルイズから逃げ回り爆破されたのを何回も目撃されたからだ。
「ちょ!!やめ……どわぁあああ!!」
「うるさい!!ツェルプストーには近づくなって言ったでしょ!!!」
と、この様に結構情けない姿をさらしていたのだ。前にも言ったが光太郎は美人に目が無くナンパだって結構やっている、そんな彼が美人でボン、キュ、ボンな彼女に言い寄られては、付いて行くのも仕方ないだろう。そんな訳で光太郎はルイズの爆発を何度も喰らっていたのだった。
この光景を見て本当は強くないのではないか?と元々疑っていた連中も、そうでない者もそう思うのは無理もなかった、何せ自分たちがゼロとバカにしていたルイズにボコボコにのされているからだ。
そしてその状況を利用しようとした者がいたのだ。
彼の名前はヴィリエ・ド・ロレーヌ、彼はそれなりに優秀な風のラインメイジであるのだが、ちょっとした事が原因で汚名返上の機会を探っていた。
簡単に言うと風のトライアングルメイジであるタバサに恥を掻かされたのだ。まぁ自業自得としか言えない内容なのだが、汚名を拭いたいのは人としてましてや貴族ならば当然と言えよう。
学院の生徒でもトップのトライアングルの二人である、タバサとキュルケが活躍できなかったフーケの討伐、それを成しえたという平民であるルイズの使い魔、それを倒せば汚名返上になると思ったのだ。
フーケの討伐を成しえたという話し、タバサ達よりも活躍したという話し、だがゼロのルイズに負けている事実、きっとタバサ達が謙遜してそう言ったに違いないと判断し行動に出るのだった。
まずはルイズに挑発を仕掛け、使い魔の活躍も嘘だろうといちゃもんをつける、そして
「嘘じゃ無いのを証明したければ、このヴィリエ・ド・ロレーヌが実力を測る相手になってやろうか?」
と大勢の生徒の前で言ったのだ、これは決闘を申し込んでいると言っているようなものだ。決闘は校則で禁止されているのだが、それは貴族の決闘が禁止されているのであって平民に戦いを挑むのは問題ないと思ったのだ。
実際には何の力の無い平民では魔法に太刀打ちすることは難しく、学院内の平民に手を挙げる奴などまず居ないのし逆らう者も居ないので、書いていないだけなのだが、どこの世界にも書いてないからやってもいいと思う奴は居るのだ。
しかし断ろうにも大勢の人間の前で言われては断るのは難しい、しかも周りの生徒が煽りだし逃げるのはダメという空気を作り出す。野次馬というものは昔から刺激が欲しい生き物であり、面白ければ善悪の判断は鈍ってくるものなのだ。さらには本当に光太郎の実力も知りたいと思っていた者が、大半なのでせっかくの機会を逃す事はしなかったのだ。
周りの反応にルイズは困る、もし光太郎の強さを知らなかったら、憤慨しつつも大人しく引き下がる道を選んだだろう、だが光太郎の強さを知っている今では逆に相手の事を心配していた。
「リボルクラッシュ!!」
「ぎゃぁああああああ!!!」
という光景が頭に浮かぶ、もしそんな事になったら相手はまさに骨も残らず消え失せるだろう、そのリアルな場面を想像してしまい顔から血の気が失せる、それを見て弱気になっていると思ったヴィリエはさらにたたみ掛ける。
「どうした?やっぱり使い魔の事は嘘なのかな?」
何を言ってるのよこの馬鹿は!!自分で死刑台の階段を上っているのに気付いてないの!!!と心の中で叫ぶ。だが今は目の前のこいつに文句を言うよりも、光太郎と決闘させない方向に持っていかねばならない、そのためにルイズは、ドンドン続けて放たれるヤジと挑発を無視し頭をフル回転させていた。
だがそんなルイズの考えを無視するように光太郎が乗り出す。
「おい、クソガキ、俺の事だけでも頭にくるけどよ、こんなか弱い女の子虐めて楽しいのか?」
光太郎も頭に血が昇りやすく熱くなりやすい男であるが、子供に少し弄られたくらいでは怒ったりはしない、だが何かにつけてルイズまでバカにしているクソガキを見ては流石に黙っては居ない。
さならがイジメを見つけた近所のお兄さんといった心境であろうか、光太郎が挑発に乗ったと思いニヤリと笑みを浮かべるヴィリエ。
「ならば、どうすると言うのかな?」
「俺の実力が見たいんだろ?なら見せてやるよ」
その言葉に、おお、と歓声が巻き起こる、光太郎のセリフを聞きルイズは青ざめ観衆は沸き立つ。
「コ……コータロー……」
ルイズは光太郎の腕にしがみ付き懇願するように見つめる、それを見て光太郎は優しく頭に手を置いて。
「安心しろよ、全力は出さないで軽く捻ってやるからさ」
と話すのだった、そしてさらに光太郎はヴィリエに話しかける。
「戦うのは別に良いけどよ……」
そう言うと近くにあった机に歩み寄り、腕を上にあげて振り下ろす、すると机はドゴォっとまるで重いハンマーを叩き下ろしたかの様な音をたてて圧し折れる。
一瞬で周りが沈黙したのも見計らって、再びヴィリエの方に向き直り。
「怪我してもしらねぇぞ」
とギロリと睨みつけるのだった。
全ての仮面ライダーはおやっさんこと立花 藤兵衛の特訓を受けている。おやっさんの特訓はすさまじいを通り越して正気を疑うレベルの物まである、その一つとして2mを超える様な大岩を崖から落として拳で打ち砕く訓練があるのだが、大体の仮面ライダーはこれをクリアしている。それに比べれば机を圧し折る事など造作も無いことだ。
結果として決闘は無事に終わった、光太郎の腕力を垣間見たヴィリエが近づけさせまいとして魔法を放つ、だが光太郎はそれを軽くよけて急接近し杖を奪うと軽くデコピンして気絶させたのだった。
「こいつが起きたら二度とバカはやるなよって言っといてくれ」
と実にあっさり片付けその場から立ち去る光太郎であった。
その光景に周囲は唖然としフーケの事は本当であったと悟るのだった。そして光太郎のこの活躍は思わぬ副産物を生む、こんなに強い使い魔を従えているルイズも実は凄いのでは?という物と、あんなに強い使い魔が逃げ回り負けているルイズは怒らせないようにしようと言う物だった。
前者は陰険なルイズへの行為を減らし、後者は直接的な罵倒を減らす、そしてルイズはダメな落ちこぼれという前提を見直そうと思う者まで出てくるのだった。
決闘騒ぎからまだ余り時間が経っていないためルイズは自覚出来ないが、光太郎はルイズの状況を劇的に改善させたのだ。主を守る神の盾の面目躍如というべきか、仮面ライダーの面目躍如というべきかはともかく、光太郎は見事に使い魔として主の役に立っているのだった。
そして光太郎自身にもこの決闘はプラスに働いた。
平民にとって貴族は絶対に逆らえない存在であるのだ、権力と純粋な力、その両方を備えた貴族は人間社会の支配者であり平民にとっては雲の上の存在と言える、そして逆らえ無い権力と暴力を持っていれば、それを持って横暴になる者も出てくるのは必然とも言える、無論そんな支配者ばかりでは無いし、ちょっと平民が無礼を働いたからと言ってすぐ処刑を行うような者など殆ど居ないが、それでも貴族が強権を使えば逆らえないというのは恐怖の対象になる。
なので貴族を毛嫌いしている平民は割と多く、この学院でもそんな者は結構いるのだ。
特に学院コックの料理長のマルトーなどは、光太郎のことをべた誉めし「我等の勇者」とか呼ぶ始末である、その光景は光太郎が何か言えばそれを全て肯定的な意見として捉えて騒ぎ出す、そんな宴会じみた厨房であった。
そんなこんなで光太郎は学院での生活をそれなりに楽しんでいた、しかしもう少し先に途方もない困難が待ち受けているのだった。
〇〇〇〇〇〇〇
ここでもう二人、物語の重要な参加者の話をしよう。
まずは最初の一人。
話は少々前に戻る、それは光太郎がルイズによってハルケギニアに呼ばれる前の話、場所はトリステイン王国とは違うガリア王国と呼ばれる地でのことである。
このガリア王国はハルケギニアで最も栄えた国であり人口も多く豊かな土地である、しかし王であるジョゼフ一世が政治にあまり興味が無く魔法の腕もたいしたことが無く【無能王】と言われている。
そのせいなのか国の支配体制が一枚岩でなく良からぬ企みを企てている者も多い。
そしてその中の一人がジョゼフの娘であるイザベラに暗殺者を仕向けたのだ、今のジョゼフには王妃がおらず血のつながりを持つ娘が一人居るだけなのだ、それが亡き者になれば色々と美味しい思いが出来ると考える者も居る。
ローブを被った一人の人間がゆっくりとイザベラの居城であるプチ・トロワに侵入する、この者は地下水と呼ばれる凄腕の暗殺者でありガリアの裏社会で恐れられている、名前の所以は地下で音もなく流れる地下水の如く誰にも気づかれず目的を果たすと消えてしまうことからそう呼ばれている。
地下水は事前に調べていた情報を元にイザベラの寝室に入る、しかし予定通り進入には成功したのだがイザベラの姿は無かった。
「暗殺者さんよ、目当てが外れたな」
突如として声が聞こえ地下水は振り返る、そこには帽子を被り背中にギターケースを背負った男がいた。
地下水は驚いていた、先ほどまでまったく人の気配がしなかったというのに、その男はまるで瞬間移動でもしたかのように急に存在感をあらわにしたからだ。
「誰にも悟られずここまで来る腕、スマートに物事を済ませようとする姿勢、どれを取っても一流なのは間違いないな」
男はまるで舞台のワンシーンでも魅せるかのように語りだす、普通ならばこのような時にキザったらしいセリフにポーズまで付ければ陳腐に見えそうなものだが、不思議と様になっており地下水もそれに乗るように話す。
「お誉めくださって光栄ですね、私の行動を読んで待ち伏せするとは中々の使い手とお見受けしますが」
すると男は被っていた帽子を少し下げ
「ふっ、さっき誉めておいて何だが、あんたの腕は一流だがこの世界じゃあ二番目だ」
「ほぅ、では私以上のスキルを持った者が存在すると……それは誰ですかな?」
男は軽く口笛を吹き、顔の前で人さし指をたて、チッチッチッと指を振り親指で帽子をあげ「俺だよ」と言わんばかりに自身を指す。
その自信に満ちた行動に普通なら舐めやがってと思うところだろうが、地下水とて一流の暗殺者、目の前の男がタダのハッタリをかますだけには到底見えなかった。
「まぁここで証明してもいいんだが、ちょっと五月蝿くすると可愛いお姫様に何を言われるか分かったもんじゃないんでな、またの機会にさせてもらおうか」
そう言うと男はドアの方に向かって歩いていく。
「見逃すのですか?私が言うのもなんですが暗殺者に城内に侵入された上にそのまま放っておくのは普通はしないでしょう?」
「ああ、放っておく、見た感じであんたはこうなったらもう仕事はしないだろ?」
その言葉を聴き地下水は黙ってしまう、自身の目的で一番重要なのは報酬でも権力でも無く楽しむ事なのだ。行動を完璧に読まれた上に見逃してもらった状態で、目標を始末しに行くなど興ざめもいいとこだ。
しかしやる気が無くなったので仕事を放棄しますなど出来るはずも無い、プライドがどうこうではなく信用が一度下がればそれだけ次の機会が減るのだ。
「諦める理由が欲しいならくれてやろうか?」
男は地下水に語りかける、彼が物語の表舞台に出てくるのはもう少し先の話である。
〇〇〇〇〇〇〇
最後にもう一人の参加者について話そう。
場所はガリアともトリステインとも違うもう一つの国、浮遊大陸アルビオン王国にある小さな村に現れる。
「私はいったい……助かったのか……」
男は自身に起こった事がまったく理解出来ていなかった、気がついたら森の中に出てきたのだから、それも人間の姿で。
「あ、あの……」
どうやら彼の目の前に誰かが居たようだ、彼も後に物語の重要な役割を持つのだが今はまだ己に起こった状況を理解しようとするので精一杯だった。