※すいません、投稿をミスったので、投稿し直しました。
没一話
気付いたら見知らぬ場所にいた。
よくある小説のようなトラックにひかれただとか、眠って気がついたらだとか、そういったものが一切なく、見知らぬ場所に立っていた。
「…………は? 」
急に変わった視界に思わずすっとんきょうな声が出る。
「来たか」
今度はどこからともなく、よく響く低い声が聞こえてくる。
思わず辺りを見渡すが、声を出したと思われるものはどこにもいない見。見渡しても、何もない白い床がどこまでも広がっている。
「ど、どなたですか? 」
いきなりのことに混乱しつつも何とか声を出す。
「私は……神とでも言っておこうか」
返事と同時に、突然老人が現れる。
「うわあ!? 」
思わず声が出て、しりもちをついてしまう。
現れた老人は、白い服を着て、口の周りとあごに豊かに髭を蓄え、目付きは鋭く荘厳な雰囲気がある。
「あなたは……? 」
「神だと言ったはずだが? 」
「そんな馬鹿なことが……」
「お前が信じるか信じないかなどどうでもよい。今はもっと重要な事がある」
そう言うと老人は一枚の紙を手渡してきた。呆然として受けとると、そこれは履歴書のように項目と欄が書かれていた。
「これは? 」
「お前の新しい書類だ」
「書類? ちょっと待ってくれよ、いったい全体何が起きているんだ!? 」
叫ぶように目の前に立つ老人に問いかけると、老人はその鋭い目をこちらに向け、事情を話し始めた。
「つまり、あなたのミスで私はなかったことにされたと? 」
老人の説明を要約すると、先ほど渡された紙は生きている者の戸籍のようなもので、目の前の老人が俺の紙を間違えて処分してしまったため、自分は元いた世界から消え最初から存在しなかったことになったらしい。思わず怒りで目の前の老人に殴りかかろうとすると、体が硬直し動けなくなった。
「お前の怒りは分からなくもない。そこで、次のお前の書類をお前自身でに書かせてやることにした」
そう言うと体の硬直はとけた。
……なんてこった。
目を覚ますとそこは広い草原だった。周りには少し大きめな湖と、少し離れた所に森がある。
俺はそこでたたずみ、まだ寝ぼけているような頭で先程までの事を整理していた。
攻撃を容易く封じられた俺は、大人しく書類の欄を埋めていた。といっても欄は一つしかない。
「種族」。たったこれだけ。
特に考えもせず、前世でそうであった人間と書こうとしたが、すぐに思いとどまった。
なんせ人間はそこまで強い種ではなない。食物連鎖の頂点であるように思えるが、それは文明が発達しているからであり、人間そのものは貧弱だろう。そうなると強い種族とはなにかと考える。やはり、どんな世界に生まれるかによるだろうという考えにいたり、神にどんな世界に生まれるのかと聞くと、
「基本的にはお前がいた世界と変わらないが、一つ違うところは妖怪が存在しているということだ。他にはお前の世界には無かった能力等の力がある」
妖怪がいるならば、人間よりも妖怪にした方が良いだろう。何せ妖怪と言えば、人に恐れられるものだ。しかし、「妖怪」といっても一体どんなものにすれば良いのか。暫く悩み、結局蜘蛛の妖怪にした。なんとなく強そうだ。という、安直な理由である。
そして、ようやくたった一つの欄を埋めた俺に、神と名乗る老人は言った。
「やっとか。随分と悩んでいたようだな。さっさと人間にするものだと思っていたが……蜘蛛とはな。まあ良い、転生を始めよう」
その言葉が終わると共に俺の意識は闇へと落ちていった。
「では、元人間よ。次に目が覚める時がお前の次の命の始まりだ」
(ちょっと待ってくれ。まだ聞きたいことが……)
まだ聞きたい事があったが、気づいたときには口は動かず、そのまま意識を無くしてしまった。