今回は頑張って長くしました。
これからもばんばん悪いところは言っちゃってください!
目が覚めて、俺は早速自分の姿を確認するために鏡のようになっている湖面をのぞきこんだ。
体は思ったより巨大で1メートルを軽く越えている。黒光りする複数の目、強靭そうな顎、重量のある体、そしてそれを支える八本の足。自分で決めておいてなんだが、ひどく恐ろしい姿だ。人によっては一目見ただけで卒倒するかもしれない。
(まあ、どうせ妖怪というだけで恐れられるだろうし、いいか)
この体ならば、そうそう殺されることは無いだろう。後は何とかして、力の使い方を身に付けるだけだ。
ようやく余裕が出てきた俺は、まだまだぎこちない歩き方で森へと入っていった。
森にはいって数時間、俺は空腹に苦しんでいた。
(不味い、このままじゃ餓死しちまう)
その時、甲高い悲鳴が近くから聴こえてきた。人間、恐らくは若い女の声だ。よく耳をすますと、獣のうなり声も聞こえてくる。
(近いな、行ってみよう)
悲鳴のもとにたどり着くと、妖怪に今にも食われそうな少女がいた。
妖怪の姿は熊のような姿をしているが頭部には大きな角が生えていた。
(人間か……食えるだろうか)
俺が人間を見て真っ先に思ったのは、食えるかどうかという事だった。空腹とはいえ、元人間の考えることとは思えない。
とにかく、もはや空腹は到底我慢できるものではなくなっている。だが、あの人間を食べるにはこの不慣れな体であの熊の妖怪を倒す必要がある。
(やれるか? いや、やらなきゃ死ぬだけだ! )
空腹であった俺は、あの怪物と戦うという危険な行為を決断する事を戸惑わなかった。直後、俺は声を上げて熊の妖怪へと飛びかる!
「キシャアァァァァ! 」
自分のものとは思えない、恐ろしい声が口からでる。獲物を追い詰め、気を抜いていたせいで、熊は声に気づき身構えるのが遅れた。その不意をついた俺は飛びかかった勢いで熊を押し倒した。熊は必死で抵抗するが、俺の八本の足がそれを容易に押さえ込む。そのまま俺が顎で熊の頭を思い切り噛むと、熊の頭は簡単にくだけ、熊はしばらく痙攣した後絶命した。
「シャアァァァ! 」
思わず勝利の喜びが口から漏れ出す。どうやらこの体になって、すっかり精神が変わってしまったようだ。
それから俺は当初の目的であった少女の方を向く。少女は恐怖のせいか、叫ぶことも叶わず、逃げる事もできなかった。
俺はそのまま少女に近付きその頭にかぶりついた。
人間を食らったというのに、俺は罪悪感を全く感じていなかった。むしろ満足感を感じている。
(すっかり妖怪に染まったかな)
一応空腹感は消えたが、恐らくまたすぐに腹が減るだろう。
(子供が一人で遠出するとは思えない。近くに人間の集まっている村か何かがあるはずだ)
そう考えた俺は、早速行動を始めた。
森を抜けてようやく目的のものを見つけた俺は、唖然としてたたずむしかなかった。
少し前に食らった少女の服装はどうみても、縄文時代かそこらの格好だった。だが俺が見つけたのは村ではなく、高層ビルが立ち並ぶ大都市だった。
(馬鹿な、たった少しの時間でここまで発達したとでもいうのか。……そんな馬鹿な。いや、あれは? )
よく見ると、少し離れた所には、まさしく縄文時代のような集落がある。どうやら、文明が発達しているのはあそこだけのようだ。
(なぜあそこだけ? 考えられるとすれば……能力か? )
そう考えると恐ろしくなる。仮にあれが能力によるものだとすると、能力とは俺が考えていた以上に強力な力であることになる。ならば、この体でも能力を持つ者には簡単に殺されてしまうのではないか。
(やばい! 俺に能力はないのか!? )
焦って能力を出そうとするが、当然出す方法など知るはずもないし、そもそも自分に能力があるのかも怪しいところだ。
(どうする? 誰か、力の使い方なんかを教えてくれるやつを探すか? いや、そんなやつがいるわけが……)
「お前、なにを唸ってるんだ? 」
はっとして振り向くと、そこには俺を見下ろす巨大なカマキリがいた。
「まさかお前、あそこを襲う気じゃないだろうな」
「いや……」
「止めとけ止めとけ、あそこはやばい奴等がうようよいるぜ。襲うなら向こうの村にしときな」
「やばい奴等? 」
「そうそう、例えば……」
そのカマキリは少し考えるように頭部を真横に傾けた。
「八意永林……だったかな?なんでも、あの場所があんなになったのはあいつがとんでもない天才だからだとか人間が言ってたのを聞いたぜ」
八意永林……一人の天才であそこまでの発展を成し遂げられるとは思えないが……。一応覚えておくか。
「何であそこだけあんなに発展してるんだ? 近くにも村があるのに」
「俺もそんな詳しくは知らんが、あそこにいる奴等はほとんど外に出てこないって話だぜ」
なるほど、あそこにいる奴等が閉塞的で助かった。もしあの都市の技術が各地に広がっていたら、俺達妖怪はとうに駆逐されていてしまっていただろう。
「ところでお前、生まれたばかりか? にしては妖力が多い気がするが」
「ああ、何でわかった? 」
「妖力が垂れ流しになってるからな、生まれてしばらくたてばそうはならない」
「そうか……。なあ、俺に力の使い方を教えてくれないか? 」
「別にかまわないが……」
そういうとカマキリは俺をまじまじと見つめてきた。
「そうだな……条件がある」
「条件? 」
「そう。それさえ飲んでくれれば、妖力の使い方を教えてやる」
「その条件ってのは? 」
その条件は、思ったより軽いものだった。
「俺の仲間になってくれよ」
「仲間だって? なんでそんな」
「軽い条件だと思ってるだろ? でもな、最近はあそこにいる奴等が俺達を絶滅させようとしてるからな。そんな状況で仲間がいるってのは、結構重要なんだよ」
……成る程、確かに一匹でいるよりも仲間がいた方が安全だろう。それならば、この条件は、俺にとっても利益になるはずだ。
「わかった、条件を飲もう」
「へへ、だと思ったぜ。そんじゃ、まずは場所を変えるか」
そうして、カマキリは俺を森の奥へと案内し、俺はそれについていき森の奥深くへと進んでいった。
感想、アドバイス等よろしくお願いします。