東方蜘蛛記   作:ヒトゲノム

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第三話 総攻撃

「これ以上、奴等にやられてばかりなのは我慢ならん! 皆の者! 私についてこい! 奴等に地獄を見せてやろうではないか! 」

怒りのこもった演説に賛同する歓声が暗い真夜中の森に響く。その歓声に演説をしている鬼は、満足げな表情を浮かべている。

 

「なあ、俺達はどうするよ? 俺は正直やばい気がするんだが」

「おいおい、ここまで来ておいてそりゃないぜ。ここは参加すべきだって! 」

「そうか? 」

 

現在、俺はカマキリと一緒に妖怪の会議のようなものに来ていた。

力の使い方を習い始めて一週間たち、妖力等の使い方がやっと様になってきた頃、カマキリが俺に言った。

 

「なあなあ。なんか、鬼が妖怪を集めてなんか始めようとしてるらしいぜ」

「鬼が? なんで? 」

「詳しくは知らねえんだけどよ。もう大妖怪が何人も来てるらしいぜ!」

「それは……随分とでかそうな話だな」

「だろ! 俺達も行ってみようぜ! 」

「……まあ、いいか」

「よっしゃ。場所は森の真ん中らへんにある広場だ。さっそく行こうぜ! 」

 

 

俺達を集めた鬼は、頭のてっぺんから角が一本生えている事以外は完全に人間の姿だった。鬼というから、全身が赤かったり、青かったりするやつを想像していたが、別にそんなに恐ろしげには見えない。そいつ以外にも、集まった妖怪達は人間の姿をしているものが以外と多い。なんでも、人の姿をした妖怪は、普通の妖怪より強いらしい。俺にはとても信じられないが、確かに妖力の多い妖怪は人の姿をしたものばかりだ。むしろ怪物のような奴等はほとんどが小妖怪だ。かといって、俺は人間の姿になる気はなかった。普段から人間を襲い、殺している俺はどうしても人間の姿をとるよりも、この化け物の体の方が強いとしか思えなかったのだ。

周囲の妖怪が自分の考えに乗っている事を確かめた鬼は、堂々とした声を響かせた。

 

「皆、やる気があるようで何よりだ! では、総攻撃は一週間後に行う!皆、 準備しておいてくれ! 」

 

そうして、妖怪達は解散していった。

住処へと帰ってきた直後、カマキリが俺に言った。

 

「さあ! 総攻撃に備えて特訓だ! 今まで以上に厳しくいくぞ! 」

 

……行くべきではなかったかもしれないな。

 

 

「どうした! もうばてたのか!? 」

「勘弁してくれ……。いくらなんでも厳しくしすぎじゃないか……? 」

「なにいってんだ! もう一週間もないんだぞ! 」

 

あれから帰ってきた後、俺はカマキリから厳しく特訓を受けていた。

……やはり、行くべきではなかったと考えてしまう。

猛特訓の甲斐があり、何とか一人前に妖力を扱えるようになった。厳しいという範疇を越えていた気がしたが。

このカマキリは、何故か妙に熱くなる事がある。

しかし、妖力を扱えるようになっても、俺は人間だったために、どうしても総攻撃に不安を感じずにはいられなかった。だが、俺ひとりが不安がったところで妖怪達がやめる事などあり得ない。そうなると俺にできるのは、何とか仲間達が頑張ってくれるのを祈るだけだ。

そんな情けない考えのまま総攻撃の日を迎えるのだった。

 

「皆の者! よく集まってきてくれた! では、作戦を説明する! 」

 

鬼と、恐らくはその仲間達が考えたのであろうその作戦は、実に簡単な物だった。自分達の力にものをいわせる単純な一斉突撃である。そんな神風特攻隊のような作戦で、あの都市の近代兵器で完全武装しているであろう軍隊に立ち向かうのかと思うと目眩がした。これでは、仲間達が戦いに勝つのを期待するのはきつそうだ。自分で何とかして生き残るために、何らかの足掻きをしなければならなそうだ。

 

「ふーん、簡単で良いじゃねえか」

 

隣のカマキリは、どうも相手を侮っているようだ。……まあ、こんなに集結した妖怪達が負けるなど想像しがたいものではあるが。とりあえず、カマキリに注意をしておく。

 

「あまり油断するなよ。やばい奴等がいるって言ったのはお前だからな? 」

「はいはい。分かってますって。油断しなけりゃいいんだろ? 」

 

この楽観的な思考の妖怪は本当にちゃんと分かってるのだろうか? いざとなってからでは遅いとゆうのに。

 

「では、皆の者! 総攻撃はそろそろだぞ! 周りの者と組もうと言うものは今のうちに組んでおけ! 」

 

(へえ、何も考えていないと思ったけど、連携をとらせようという事くらいは考えていたのか)

 

おそらく、鬼の仲間であろう妖怪が集まっている妖怪の端の方へとかけていく。同じことを伝えに行ったのだろう。

 

「どうする? 俺達も組むやつを探すか? 」

「そうだな……彼奴なんてどうだ? 」

 

そう言って俺が指差したのはかなり目立つ黄色と黒の色をした巨大な蜂の妖怪だ。

 

「ふむ。まあいいかもな」

 

カマキリも了承し俺達は蜂のもとへと向かい、俺が声をかけた。

 

「なあ、あんた。俺達と組まないか? 」

「お! 俺をご指名とはお目が高い! 伊達にたくさんあるわけじゃないってか! まあこの俺様のあふれでる雰囲気っていうか? そんな強者の感じは隠せるものじゃないっつーことだな! いいぜ! 期待以上の働きをしてやるよ! ここで活躍して、俺様の名を世界中に知らしめてやるぜ! 」

「お、おう。期待してるよ」

 

なかなかに騒がしい蜂だ。しかも自信家、これは我ながら、癖のあるやつを選んだものだ。

 

「ねえ。僕とも組んでくれない? 」

 

その時、横から今度は蜂とは随分と違う、控えめな声で話しかけられた。

 

「うん? 」

「おう! いいぜ! 仲間は多い方がいいしな! 」

 

まだまともに相手を確認すらしていないだろうに、蜂は勝手に返事をしてしまった。

声をかけてきたのは今度は巨大なダンゴムシだった。全身が黒っぽく、甲殻はいかにも頑丈そうだ。

 

「まあ、俺も別に構わないぜ」

 

カマキリも特に異論は無いようで、あっさりと了承する。まあ、俺も別に構わないのだが。

 

「ああ。俺もいいよ。これからよろしくな」

「よろしく」

 

こいつはどうも口数が少ないようだ。蜂とは正反対である。

 

「よし! 皆組んだな! いよいよ運命の時だ! 覚悟を決めてくれ! 」

 

鬼の励ましに、妖怪達が雄叫びで返す。

『ウオオオー!』

 

妖怪達の雄叫びは大地を震わせているように響き渡る。

 

「突撃ー!! 」

 

更に大きな鬼の号令で、妖怪達が都市に向かって我先にと押し寄せる。

戦いの火蓋はきられたようだ。




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