これからも、投稿の間が空いてしまうでしょうが、頑張って続けていきます。
妖怪達の軍勢は、津波のように都市へと押し寄せていく。
俺達はその最後列にいた。妖怪は一丸となって突っ込んでいるので、最前列とは結構距離がある。
「おい。このままじゃ乗り遅れるぜ」
「別にいいんだよ。俺達はそんなに速さがあるわけでもないしな」
空を飛ぶ蜂はともかく、陸を走る俺達、特にダンゴムシはお世辞にも速いとは言えない。連携をとるためにも、足並みを揃えるべきだろう。
だがヤル気満々のカマキリと蜂はそれが不満のようだ。
「だけどよ~。これじゃ俺様の獲物がなくなっちまうよ」
「そう言うな、どうせ最前列にいてもたどり着く前に迎撃されるのが目に見えてる」
と、いまいち緊張感に欠ける話をしていた俺達は、すぐに相手をなめきっていたことを思いしることになる。
それに最初に気づいたのは蜂だった。
「ん? 」
「どうした? 」
「今、何かがあっちで光っ……」
その言葉が言い終わるよりも早く、俺達の横を光が通り過ぎる。
「うわ! 何だよあれ!? 」
その光は妖怪達の群れを飲み込み凄まじい轟音を鳴り響かせる。
「おい、マジかよ? 」
「嘘だろ? 」
光の奔流に飲み込まれた妖怪達は跡形もなく消え去っていた。
「おのれ人間め! 皆! あれは近くに行けば撃ってこれぬ! 恐れず突っ込めー! 」
鬼の鼓舞に妖怪達は恐れを押さえ込み、突撃を再開する。
「また来るぞー!! 」
誰のものかもわからぬ叫びに、妖怪達が恐怖に硬直する。だが、あの恐ろしい光の奔流は、妖怪達には届かなかった。
「ヌウウウン! 」
鬼のうなり声と同時に俺達の前に結界が作られる。結界は、光の奔流を見事に受けきり耐えてみせた。
「おお! 」
「さすが大将! 」
これにより、妖怪達は勢いを取り戻し、今まで以上の勢いで突撃する。
また都市の方が光る、だが、もはやその驚異は恐れる物ではない。
そう誰もが思っていた。
妖怪達が驚愕の声をあげる。
「何! 」
「嘘だろ! 」
「うわああ! 」
光の奔流がまた壁にぶつかる。すると、壁に当たった光は、壁を這うように拡散し、壁を越して後ろの方にいた妖怪達へと殺到した。当然、俺達の方にも光のひとつが襲ってくる。
「やばい! 」
「避けろー! 」
「無茶言うな! 」
慌てる俺達をよそに、ダンゴムシは冷静に対処する。
妖力を放出し、鬼と同じように結界を作る。その結界は俺達を包むように半球の形をしていた。
「おお! お前やるじゃねえの! 」
「能力があるから。これくらい余裕」
相変わらずの静かな声で、うるさい蜂の賞賛に答える。
「能力持ちだったのか。頼もしいな! 」
「誉めても結界しか出せないよ」
「十分さ! 」
おかげで、軽口を叩けるくらいには余裕が出てきた。だが、全体としては、厳しい状況だ。とにかく、一刻も早く都市へとなだれ込むしかない。都市内部に侵入すれば、あの砲撃はもうこない。
そこから、妖怪達が都市内部に侵入するのにはそう時間はかからなかった。しかし、その頃には妖怪の数は半数にまで減少していた。大損害だが、ここまで来ては、もう撤退は出来ない。戦って勝つか、負けて死ぬかだ。
都市を守っていたのは、近未来的な防具で身を固め、銃などで武装した兵士達だった。ここから、ようやく妖怪達は反撃が出来る。どちらにとっても、ここが正念場だ。
「うおおお! 」
俺達のなかで、真っ先に突っ込んでいったのは蜂だった。兵士に向かって凄まじい速さで突進する。兵士は銃で迎え撃とうとするが、蜂の速さは、兵士に攻撃を許さなかった。
一瞬で距離をつめた蜂の顎が兵士の体を容易く砕く。その光景に、恐らく実戦を経験していないのであろう別の兵士達が恐怖で硬直する。その隙に俺達も接近する。
「おらあ! 」
カマキリは自身の能力により、自分の鎌を強化する。
能力によって、凶悪な切れ味を持った鎌は、兵士を上下に両断する。
更に俺も負けじと足を使い突きを放つ。突きが直撃した兵士は、後方に吹き飛び、壁に激突して動かなくなった。
その時になり、動き始めた兵士が銃を乱射するが、俺達には届かない。ダンゴムシの結界により、銃弾はすべて弾かれた。その兵士に向かって蜂が妖力で作った針を飛ばす。針が刺さった兵士は、しばらく苦痛で悲鳴をあげていたがやがて動きをとめた。
カマキリの「切り裂く程度の能力」
ダンゴムシの「護る程度の能力」
蜂の「毒を生成する程度の能力」
そして、今は使う必要がないが、俺も特訓のなかで能力を見つけている。
全員が能力持ちだったのは、実に幸運だった。能力のおかげで、敵を圧倒している。
周りでも、妖怪達は身体能力の高さをいかして兵士の数を減らしている。乱戦となっているこの状況で、銃は性能を発揮できず。妖怪達の反撃はどんどん勢いを増していく。
「これなら勝てそうだな! 」
「ああ! 最初は不安だったが、案外なんとかなるもんだ! 」
「ははは! 俺様の活躍のおかげだな! 」
もはや、妖怪達の勝利は時間の問題。この戦場にいる誰もが思っていているだろう。
その時、都市の中心部から何かが空へと昇っていった。
「なんだよ、あれ? 」
「あれは……ロケット? 」
空へと昇っているのはロケットだった。
宇宙にでも脱出するつもりなのだろうか。もうこちらからは手が出せない高さまで行ってしまったロケットから、声が響いてきた。
「やってくれるな。穢らわしい妖怪どもが。だが、もう貴様らともお別れだ。兵士諸君もよく時間をかせいでくれた。これは礼だ。受け取ってくれ。さあ! 妖怪どもよ、おとなしく、消え去るがいい!! 」
声が消えると、ロケットから何かが投下されたのが見えた。俺はその物体と、先程の声の内容について考え、恐ろしい考えに行き着いた。
今までのことから、奴等が技術の流出を快く思っていないのは間違いない。そうなると、放棄した都市をそのままにしておくはずがない。
それに、奴等は妖怪達を強く嫌っている。と、なると俺達を絶滅させたいと考えるのは明らかだ。
置き去りにした兵士達はもう、どうなっても構わないだろう。つまり、兵士達が巻き添えをくらっても奴等は何とも思わない。
つまり奴等がやろうとする事は妖怪共々、都市を消し去ることだ。そして、そんなことをするのに最適な兵器を俺は知っている。
『核兵器』
気づいたときには、叫んでいた。
「結界をはれ! 急げ! 」
その叫びから、非常事態であることを察した仲間達が結界をはる。
もう逃げることは叶わない。ならば、今出来ることは全力で結界をはり、後は天に祈るだけだ。
ロケットから投下された物体が地面に衝突した瞬間、視界が白く染まった。
「おい! 起きろ! 生きてるだろ! 」
「う……」
目を覚ますと、眼前にカマキリの顔があった。
「どうなったんだ……? 他の奴等は? 」
「あの二匹ならそこにいる。だけど、他の奴等は……」
体を起こし、周りを見渡すと、確かにすぐ近くに蜂とダンゴムシはいた。だが、それ以外には何もなかった。妖怪の軍も、人間の兵士達も、先程まで戦場と化していた大都市も何もかもが消滅していた。
「これは……」
「俺達以外は皆死んじまった。あいつら! 仲間まで殺すなんてなに考えてんだ! 」
「怒っててもどうしようもない。それよりあいつらを起こそう」
程なくして目覚めた蜂とダンゴムシは、俺と同じように、驚愕を隠せなかった。
「こりゃあ……ひでえな」
「そうだね、人間ってのは仲間意識ってものがないのかな? 」
周りは荒れ地となって生き物の姿が1つも見られない。完全な静寂が満ちている。
「これからどうするよ? 」
「そうだな……」
人間どもには逃げられ、こちらは壊滅状態。考えれば考えるほど、認めたくない事実が頭に浮かんでくる。
俺達は負けた。