相変わらずの不定期更新で申し訳ありません。あまり間を空けないように努力します。
今回、三点リーダーを使ってみましたが、使い方合ってますかね?
2柱の神から逃げ切ってから1ヶ月、漸く俺の脚が全快した頃。
空には巨大な入道雲が浮かび、辺りにはセミの声がけたたましく響く。
そんな真夏の真っ昼間、俺は標的を待って街道近くの林に潜んでいた。
(3・2・1・行け! )
漸く来たそれに狙いを定め、三つ数えてから妖力弾を勢いよく打ち出す。
高速で飛んでいったそれは、一直線に目標へと向かっていく。
(命中! ミツバ! )
目標である人間達の足元へと見事着弾した妖力弾は、地面をえぐり、砂ぼこりを舞い上がらせた。
「襲撃だー! 」
人間たちは慌てだし、次の攻撃に備える。だが、俺達の行動の方が明らかに早い。
「いやっほおおお! 」
声をあげて人間達の真上からミツバが襲いかかる。
地面へと一直線に飛びつつ、針の形をした妖力弾を広範囲にばらまく。
突然の空からの攻撃に対応しきれず、次々に人間が死んでいく。
「おらああああ! 」
わずかに残ったここまでの攻撃を耐えきる実力を持った人間がミツバに気をとられていると、今度は俺が潜んでいる林からマギリが突っ込んでいく。
妖力を纏い、更に能力によって強化された鎌から放たれる凶悪な斬撃によって、残った人間達も呆気なく死んでいった。
「今回も楽勝だったな」
暫く狩った人間を食べるのに夢中だったミツバが人間の腕をくわえながら、唐突に言った。
「ああ、アシダカの脚も治ったし、ここら辺のやつには負ける気がしねえな」
「またあの神みたいな奴と戦うのは御免だがな」
マギリが咀嚼していた頭を飲み込んで答え、俺も死体から内臓を引きずり出すのを中断して答える。
その時だった。
「お食事中失礼します。少し、お時間いたたげるかしら? 」
突如感じた妖力と聞こえてきた声に振り向く。
そこには、紫色のドレスを着こなした女性が立っていた。
驚きはしたが、その身から発せられる妖力を感じて、気を緩める。
「妖怪か、何の用だ? 」
「少し、相談事が」
「俺様達に相談!? と言うことは、あんたは1ヶ月くらい前の俺様の大活躍や、ここ最近の俺様の噂を聞いた俺様の追っかけと」
「少し黙れ、ミツバ」
「ごふっ! 」
いったい何を勘違いしたのか、いきなり調子にのって騒ぎだしたミツバを脚で踏みつけて黙らせる。
見れば、女性の笑みも心なしか苦笑いに見えてくる。
気をとりなおしてマギリが尋ねる。
「こいつは気にしないでくれ。それで、あんた、何者だ? 」
「あら、自己紹介が遅れましたわね。八雲紫です」
「ふーん、八雲紫ね。俺はマギリ。んで、こいつがアシダカ。そこでぶっ倒れてるのがミツバ。今こっちに向かって来てるのがカダンだ」
八雲紫と名乗る女性の自己紹介にマギリが俺達を代表して返す。
ちょうどその時、カダンがやって来て言った。
「誰か来たみたいだけど、その人だれ? 」
カダンの問いに俺が答える
「八雲紫って妖怪だ」
「ふーん、何の妖怪なの? 」
今度は八雲紫自身が答える。
「私はスキマ妖怪と言います。お聞きになったことは? 」
「いや、初めて聞いた。どこら辺の妖怪だ? 」
「色んな所を旅してますから、縄張りなんかは有りませんわ」
八雲とマギリの受け答えの間にミツバの体が少し動く。
まもなく、ミツバが起き出した。
「うぐぐ。アシダカ~。いきなり踏みつけるのはひどいぜー」
「あら、気がつきました? では、そろそろ本題に入ってもよろしくて? 」
「ああ、そういえば相談事が有るんだったな」
漸く本題に入ると言う八雲に、俺が答える。
「ええ。実は私、式を探していまして」
「式? 」
初めて聞く言葉にミツバが首をかしげる。
「式というのは、術者に術式を組み込まれた従者のような者です。式になった者は、術者から力が供給されたりと様々な恩恵を受けることが出来ますわ」
「ほう。で、その式に俺達がなれと? 」
「ええ、理解が早くて助かりますわ」
俺は八雲に更に尋ねる。
「なんで、式を探してるんだ? 」
「私には夢があるんですわ。」
「唐突だな。夢ってのは? 」
「あなた方は人間をどう思っています? 」
突然の問いにミツバが真っ先に答える。
「食糧だな」
「獲物だ」
その次にマギリが答え、俺は少しの悩んだ後答える。
「……糧かな? 」
「僕は別に何とも」
「……そうですか」
最後のカダンの答えの後、八雲は一瞬暗い表情を浮かべる。
「そういえば、まだ食いきってなかったな。お前さんも一緒にどうだ? 」
思い出したようにミツバが先程狩った人間の死体に近づき、八雲へその内の一体の腕をちぎって差し出す。
「せっかくですが、人肉は食べませんの」
「そうか。旨いのになー」
断られたことを気にせず、ミツバは差し出した腕をそのまま口に放り込み食べ始める。
「で、何でこんな質問を? 人間がどうかしたのか? 」
「ええ。…………」
いきなり黙ってしまった八雲に俺が話す。
「どうした?さっき言ってた夢と、人間が関係あるのか? 」
俺の言葉に反応し、漸く八雲が口を開く。
「妖怪と人間の共存。それが私の夢。そのために、あなた方の力を借りたいのです」
俺達は言われたことが暫く理解できず。唖然とするしかなかった。
俺は直ぐに我を取り戻して、確認するように言う。
「共存ってのは……その……つまり、妖怪と人間が仲良くするって事か? 」
「まあ、そんなとこですわ」
今度はマギリとミツバが言う。
「そんなことが、可能なのか? いくらなんでも、それはあり得ないことだろう? 」
「そうだぜ。俺様が人間と仲良くするなんて、想像できねえ」
「だからこそ。そんな困難な夢を叶えるために、強い仲間が必要なのです。2柱の神と十分に戦えるあなた方なら、十分に強力な味方になってくれるはずです」
八雲の言葉に不信感を覚え、俺が尋ねる。
「何で、その事を知ってる? 」
「っ! 」
表情は変えていないが、明らかに焦った様子を見せる八雲に、更に尋ねる。
「あの場に居たのは、俺達とあの神2柱だけだ。人間はみんな殺したし、他の妖怪も辺りには居なかった」
「……噂で聞きまして」
「俺達は1ヶ月間あの場所から離れるように移動し続けたんだ。噂が広まって、お前の耳に届いてからどうやって追い付いたんだ?見つけ出すのだって不可能に近いぞ」
「…………」
「それに、お前はいきなり俺達の背後に現れたな。あれはどうやったんだ。妖力どころか、気配すら微塵も無かったぞ」
「お食事に夢中だったのでしょう? 私も、こっそりと近づいていきましたし」
「夢中になってたのはミツバだけだ。俺とマギリはあの距離で妖力に気づけないほどにはなってなかった」
「…………」
完全に沈黙した八雲に俺がとどめに言う。
「お前、能力かなにかを使って、俺達を以前から見てたんじゃないのか? 」
その言葉を聞いて、八雲は不意に笑みを浮かべる。それと同時に八雲の気配が変わったのを感じ、俺達は身構える。
「ふふふ、見かけによらず、それなりに賢いようね」
「そりゃ、どうも。それで、どうすんだ。さっきの相談の答えは悪いが否だ」
「人間を襲ってるのを見てましたから、断られるのは想定ずみです。出来れば話し合いだけで済ませたかったんですけど、残念ね」
そう言いはなつと共に八雲は妖力を一気に解放する。俺達よりもずっと大きい妖力だ。
マギリが鎌に妖力を纏わせながら言う。
「力ずくって訳か」
「ええ。降参しても良いのよ」
余裕の表情で答える八雲にミツバが言う。
「ふん! 誰がそんなこと! お前こそ、俺達をなめてると痛い目見るぜ! 」
強がるミツバの言葉を八雲は涼しげな顔で聞き流す。
完全にこちらを下と見ているが、別に俺は気にしない。油断してくれているのなら、遠慮なくその油断を突かせてもらう。
いつでも攻撃できるよう、妖力を集め始める。
いきなり現れたことや、俺達に気づかれることなく監視してきた事を考えて俺は八雲の能力は隠れる事に優れた能力であると思っていた。それと同時に、既に戦闘に入っているこの状況では、役に立たないだろうとも。
「いっくぜー! 」
ミツバが真っ先に八雲に突撃していく。妖力を纏って思いきりぶつかる気なのだろう。
八雲はそれを妖力弾を複数自身の周りに形成し、放つことで迎撃する。
かなりの数だが、ミツバは向きを変え、急上昇して回避する。あっという間に遥か上空まで上昇したミツバは今度は八雲めがけて垂直に落下していく。
それを見て先程と同じ様に八雲が迎撃する。だが、最初の突撃よりも速度を増したミツバは妖力弾を弾き飛ばしながら八雲に迫る。
後少しで、両者が激突する。
その時、八雲の真上の空間が裂けた。更にその真下にも同じ様に空間の裂け目が現れる。
「は? 」
異常に気づくも、止まれないミツバは裂け目に吸い込まれ、下の裂け目から出てきた。
「おわあああ!! 」
当然、どうすることも出来ずミツバは地面と接吻するはめになる。
かなりの速度で、しかも妖力を纏っていたため、ミツバは地面にその巨体の半分が埋まってしまった。
大地に突き刺さり、地上に出ている脚を暴れさせてもがく姿はひどく滑稽だ。
「うわあ……」
その醜態にカダンが声を漏らすが、ミツバはそれどころではない。
未だにもがき続けるミツバを、まさか無防備に助けようと行く訳にもいかない。妖怪なので、窒息する心配はしばらく無いだろう。とは言うものの、敵がいるのにあの状態のままでいるのは危険だ。
幸い、八雲は直ぐに追撃を加えるつもりは無いようだ。口元を押さえ、可笑しそうに笑っている。
完全になめられているが、時間稼ぎになっているのは間違いないだろう。マギリ達に近づき、八雲に聞こえないように小さな声で言う。
「能力を使う。隙ができたら突っ込んでくれ」
無言でうなずき返してくるマギリとカダンを見て、早速準備に取りかかる。
まずは、八雲に能力を使わせる必要がある。想像を遥かに超える危険な能力を持っていたようだが、うまくいけば直ぐに片はつく。
今まで以上の妖力を込めて妖力弾を作る。流石にこれを結界で受け止めようとは思わないはずだ。能力を使わず回避を選ぶ可能性はあるが、それなら別の手を考えるだけだ。
妖力に気づいた八雲が一瞬驚きを見せるが、直ぐにまた余裕を取り戻す。よほど、あの能力に自信があるのだろう。
攻撃してくる気配はない。能力を使って俺達に攻撃を返そうと考えているのなら、作戦通りだ。
狙いを定め、妖力弾を放つ。
高速でそれは飛んでいき、八雲に迫る。
距離はそこまで近くではないため、回避は容易なのだが八雲はそうしようとしない。
能力を使う。そう確信した俺は自身の能力をすぐに発動出来るよう準備しておく。
妖力弾の前の空間が裂け、先程と同じ裂け目が現れる。先程は横から見ただけだったが、前から見るとその内部はひどく不気味だ。中は紫色に染まり、無数の目がこちらを見つめている。
妖力弾はミツバと同じく裂け目に吸い込まれそうになる。が、その直前で裂け目は消滅した。
「なっ!? 」
予想外の出来事に、八雲の表情が今度こそ驚愕に染まる。
回避はもう間に合わないと判断したのか結界を張り防御するが、急ごしらえの結界ではいささか無理があったようだ。
結界は呆気なく壊れる。しかし、俺が撃った妖力弾は着弾と同時に破裂したため、八雲本人へ直接当たることは無かった。
とはいえ、妖力弾が目と鼻の先で破裂したのだから、当然八雲は吹き飛ばされる
八雲は地面に背から叩きつけられる。あまりの激痛に起き上がれずにいるところを見ると、打たれ強さはそこまででも無いようだ。
八雲の放つ妖力が爆発的に増大する。その力の大きさに、一瞬冷や汗が吹き出る。
だが、もう決着はついた。恐れる必要はない。
「動くな」
「っ! 」
起き上がろうとする八雲の首に、マギリが鎌をかるく押し当てる。
「勝負ありだ。式のことは諦めな」
そう言い放つマギリの言葉に、八雲は苦々しい表情を浮かべる。
しかし、すぐさま気を取り直し、悔しがっているのは無意味と考えたのか、表情を戻し、俺に話しかけてくる。
「降参よ。……あなた、何をしたの? 」
「簡単に手の内をさらけ出すつもりはないぞ」
戦闘は不可能と考えて、おそらく、話術で情報を引き出しにかかっているのだろう。
付き合う必要はない。さっさと終わらせるのが得策だ。
なおも口を開こうとする八雲を見て、マギリに言う。
「そんなこと言わずに」
「マギリ、次にこいつが勝手に口を開いたら殺してくれ」
「あいよ」
これには流石に黙り混む八雲に続けて言う。
「さて、さっきマギリが言ったが、俺達のことは諦めるよな」
「しょうがないわね。ところで私を殺さないのね」
「殺してもどうしようもないからな。それより、取引をしないか」
「取引? さっき諦めろと言っておいて? 」
俺の提案に八雲は疑問を示す。
「確かにそう言ったな。だが、それはお前の下で働くことが嫌だと言う意味だ。お前が俺達に利益を与えるなら。こちらも何かしらの形で返そう。どうだ? 」
「……ちなみに断ったら? 」
「マギリ」
マギリが鎌を押し当てる力を強める。八雲は慌てて言う。
「わ、分かったわ」
「よし、マギリ」
マギリが俺の言葉に頷き八雲を解放する。
「……また会いましょう」
八雲は解放されるやいなや、先程の裂け目を作り出しその中に入っていき去っていった。
「アシダカ、逃がしてよかったのか? 」
「ああ。随分と強い妖怪だったからな、関係を作っておいた方が良いだろう」
「ところでさ」
「どうした?」
急に話しかけてきたカダンの言葉にマギリが返す。
「ミツバを助けなくていいの? 」
思わずマギリと目を合わせ、ミツバの方を見る。
そこにはもがき疲れ、ぐったりとしているミツバが未だに地面に突き刺さったままでいた。
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