メルル&ルイズのアトリエ~ハルケギニアの錬金術士~ 作:ジェイソン@何某
最近は色んなものに目移りしちゃってダメですね…今は海外の某オーディション番組ばっか見てます。グレース・ヴァンダーウォールちゃんマジ歩く奇跡←
ではでは、またあとがきでお会いしましょうosz
「…な…な……」
「………」
先程までの喧騒がまるで嘘のように、ヴェストリの広場は静寂に包まれていた。
呆然とした表情を一様に浮かべる貴族の子弟たちが視線を向けるのは広場の中央――尻もちを突いた状態のルイズ…の目の前に
貴族の証であるマントこそしていないが、宙に浮遊していることからメイジだと思われる。一応“女性”と呼んではいるものの、外見年齢はルイズたちとそう離れているようにも見えない。
服装は非常に豪奢なドレスである。装飾などは何故か首から提げている懐中時計や赤いリボンぐらいしか無いが、遠目に見ても非常に上質な作りであることが分かる。頭のハーフボンネットや大胆に開いた胸元、そして大量のヒラヒラなど、特徴自体はとても多い。そして、それらを着ている女性自身もまた、左目の下の泣きぼくろや、ドレスのカラーと同じ紫のふんわりとしたロングヘア、キュルケに負けず劣らずの抜群のプロポーションを備えた美女であった。
そんなある意味強烈な外見的特徴もあり、ルイズの決闘相手であるギーシュや、貴族の子弟たちに混じって観戦し、ルイズを応援していたシエスタまでもが驚愕を顔に張り付け声も出せなくなっている中で、口元に手を添え呑気に欠伸を零す女性に声を掛けたのは、その眼下にいるルイズであった。
「―――あ、アンタ……誰…?」
この場にいる全員の疑問を代表したその言葉に、眼尻に溜まった涙を拭っていた女性は漸く視線をルイズへと落とす。
「あら…あらあらあらぁ…! やっっっ…と、起きたのね~! もう、目を覚ましてくれるの、ずっと待ってたんだからぁ…!」
暫くぱちくりと瞬きしてルイズを見つめていた女性は、やがて表情に喜色を滲ませると、相変わらずふわふわと浮遊したまま体をルイズの方に傾けてやはり嬉しそうに告げる。
だが、それらはまずルイズたちが求めていた答えではない。それに、ルイズとしては訳が分からない。
「は…? い、いやいや…だからアンタ誰よ? 何を、ワケ分かんないこと…」
「えぇ~? そんな、酷いわ~。あたしとあなたの仲じゃないの、そんな他人行儀なこと言わないで、ほら…パメラさん、って呼んで」
「さ、さんって…いやいや、だから私はアンタなんて知らないって…」
「そんなこと言って…あたしははっきりと覚えてるんだから~。あなたはあたしの初めてを…」
「ちょ、おいおい…ルイズ!」
思わず返してしまった言葉の通り、ルイズは眼前のパメラと名乗った女性に一切見覚えなどなかった。色々な意味で衝撃的な登場を果たした、色々と特徴的なこの女性。それこそ物心つく前に出会ったとかでない限り、一度でも顔を合わせれば嫌でも記憶に残りそうだ。
しかし、そんなルイズの返事を耳にしたパメラはひどく悲しそうに眉尻を下げ、ほんの少し焦ったようになおも言葉を返してくる。
だが、何度言われたってパメラに関する記憶が思い浮かんでくることはない。
すると今度は怒ったゾと言わんばかりに頬を膨らませ、かと思えば頬に両手を添え、僅かに紅潮しながらもいやんいやんとかぶりを振る。
コロコロと感情を変えるパメラの様子に早くもゲンナリしつつも、なんだかトンデモ発言が飛び出しそうになったその時、両者のやり取りに置いてけぼりを食らっていたギーシュがハッと我に返り、慌てて声を張り上げる。
「…なによ」
「“なによ”!? いやいや、僕との決闘を忘れないでくれよ!! もし、そこのレディ。聞いたところルイズのご友人のようで、思わず彼女を庇ってしまったというのならばそのお気持ちは分かるが、邪魔をしないでいただきたい!」
「いや、だから私はこんな奴知らない…」
「決闘…? あら、なぁに? あなた、あの子と喧嘩してるの~?」
たった数回の言葉の応酬だけで疲れてしまったルイズは、ギーシュにぶっきらぼうに返事をする。まさかの態度に逆に驚かされたギーシュであったが、口元を引きつらせながらもまだ決闘途中であることを指摘。ついでにパメラにも注意を投げかけつつ、心の中では後で是非ともお近づきになりたいなどと考えていた。
対して、パメラはやはりマイペースさを崩さず周囲をゆっくりと見渡し、それからギーシュのことを見つめて――何故か目が合うと赤くなった――から、今更ながらに現在の状況を把握しようと努め始める…といっても、自分じゃ考えずにルイズに聞いているが。
「喧嘩って…いや、まぁ…そうよ。だから、アンタはさっさと…」
「やだぁも~! そうならそうって言ってよね~! そういうことなら…あたし、あなたの為に頑張っちゃうんだから~!」
「「………は?」」
子犬でも追い払うようにしっしと手を振るルイズの言葉を途中で遮り、パメラはなぜかやる気満々に声を上げる。それを聞いて固まったのはルイズだけでなく、ギーシュと…さっきから黙って様子を窺っていたシエスタを含む野次馬全員だった。
「…いや、いやいやいや!! な、なにを言っているんだいレディ! そんな危険なこと…っていうか、これは1対1の神聖な戦いであってだね…!」
「1対1って…そっちには何人も居るじゃない~!」
「えっ…いや、これは僕の
「問答無用よ~! え~い!」
「…っ!!?」
なんだかんだ言って女性であるルイズとの決闘自体そこまで乗り気でなかったギーシュとしては、そこで更にパメラという美女までもが加わることは何としても避けたかった。故にこの決闘を単なる“喧嘩”として受け取っているパメラに決闘の神聖さを説こうとするが、何故かルイズの力になろうと躍起になっているパメラを止めることは叶わなかった。
気の抜けるような掛け声だけを聞けば思わず脱力してしまうが、次の瞬間ギーシュは驚愕に目を見開くことになる。
まず視界に飛び込んだのは、先ほどまで持っていなかったはずの深紫の
慌てて横に飛ぶと、光弾はギーシュの後ろにいた野次馬たちに飛んで行ったりはせず、空中で小規模の爆発じみた衝撃と共に掻き消える。
「なっ…なんだ今の!?」
「何って…ま、魔法だろ…?」
「じゃあれ、杖なのか…!?」
光弾が消え、ようやく野次馬たちはざわめきだす。普段ならば乱入者が出たとなれば余計に面白い展開になってきたとより騒ぎ出すだろう彼らも、今回ばかりは困惑のほうが大きいようだ。
それは、野次馬たちから少し離れたところにいる2人の少女たちも同じようで…
「…なんなの? あの女…」
「………」
「ちょ、ちょっと…タバサ…!? そんな握ったら、マントが皴くちゃになっちゃうって…!?」
「(あ、ありえないだろ…だって…だって彼女は、詠唱も何も!?)」
周囲の野次馬たちがパメラの正体をメイジだと決めつけて自分を納得させようとしている中で、ギーシュだけは冷静に矛盾点を見つけてしまっていた。彼女は魔法と思わしき光弾を放った際、確かに掛け声は上げたが魔法を唱えるのに必要なスペルらしき言葉は一言も発していないのである。
得体が知れない存在…一気に込み上げてきた恐怖を寸でのところで飲み込んで、ギーシュは自身の杖である薔薇を握る手に力を籠める。
「くっ…君がそうくるのなら、僕だって容赦はしないぞ!」
「あら~、レディにはもっと大人の余裕をもって対するべきよ~?」
「……はっ!? ちょ、ちょっと待ったー!! 私を置いてけぼりにして勝手に話を進めようとするんじゃないわよコラー!!」
キッと強くパメラを睨んだギーシュに対し、パメラは相変わらずのんびりとした口調を崩さない。
そんな2人に対し、パメラに庇われる状態で呆けていたルイズは漸く我に返ったのであった。
「ギーシュ! ちょっとそこで待ってなさいそこで!! 一歩でも動いたらアレ、アレだかんね!」
「アレって何だい…待ってる、待ってるから、早く話を終わらせておくれよ…」
なんだかもうこのグダグダのまま決闘を流してしまってもいいんじゃないかとは思わなくもないものの、今それで流したってどうせ明日には周囲の野次馬たちが再燃させようとするだろうから、大人しく待っておくギーシュであった。
「ちょっとアンタ! なにを勝手に乱入してんのよ!」
「やぁね、乱入だなんて…あたしはただ、あなたの力になりたいだけなのに~…」
「それが余計なのよ! アンタが私に肩入れする理由なんて、なにもないじゃないの!」
「えぇ~? 力を貸す理由ならちゃあんとあるじゃないの~。 だって、あなたはあたしの…や~ん、恥ずかしい~!」
「クネクネしないでよ、無駄にデカい胸揺ら、し…て……ぁ…あぁーーー!!!??」
「「「!!!?」」」
再び始まった、癇癪持ち女とマイペース女の漫才染みたやり取り。いい加減にうんざりした様子で2人のやり取りを見る野次馬たちであったが、それでもその場から立ち去ろうとしないのは流石、まだ決闘が終わっていないからだろう。
先程も言いかけていた謎の…恐らく爆弾発言と思わしきもの。それをいよいよ口に出すのかと思った矢先、またも頬に手を添えて頭を振るパメラに、ルイズは苛立ちを隠そうともせずに鋭い目つきを向けて…硬直。そして響いた絶叫に、パメラを含む全員がびくりと肩を震わせる。
「きゃっ!? …んもぅ、びっくりするじゃないの~。
「ちょ、ちょっと“それ”…!!」
「あぁ、これ~? だから何度も言ったじゃないの~、あたしはあなたに…」
「しぃっ! ちょ、ちょっと声抑えて…」
驚かされたことに対して不満を述べるパメラであったが、ルイズは其れを無視してとある一点を指さす。彼女が何を指したのか気付いたか、パメラは柔らかな笑みを浮かべると、その後は互いに声量を抑えヒソヒソと話し合いを始めるのであった。
「……おいルイズ! いつまで待たせる気なんだよ!」
「そうだそうだー! いい加減に待ちくたびれたぞ!」
「ギーシュとの決闘を続けるのか降参するのか早く選べよー!!」
「あとそちらの彼女に俺の事紹介してくれー!!」
「……」
いい加減2人の密談に待ちくたびれた野次馬たちが野次――若干おかしな内容のものも含む――を飛ばす中、ギーシュは特に何も叫んだりすることなく黙って様子を窺っていた。
ルイズが放つ失敗魔法やパメラが放つ魔法と思わしき謎の光弾による不意打ちへの警戒だけでない。ルイズがパメラを説得してこの決闘から抜けることを秘かに願っているのだ。
だが、事態はそうギーシュの都合の良いようには転がらず、寧ろ彼のみならず周囲にとっても意外な展開を迎える。
「――…よし……待たせたわね、ギーシュ」
「…あぁ、そうだね、流石に少し待たせすぎだよ。それで、ルイズ…まだ続けるのかい?」
パメラとルイズは互いに頷き合うと顔を離し、まずはギーシュに向き直ったルイズが声を上げる。
彼女のプライドの高さからしてまずないだろうとは思っていたが、不意を突くような真似に出なかったことをまずは安堵し、そして問いかける。まだこの決闘を続ける気はあるのか否かと。
「えぇ、当然でしょ」
「…そうか」
やはり、此処でお流れにはならなかったか。残念だが仕方ないと瞬時に気持ちを切り替えて、ギーシュは視線を鋭くするとルイズを油断なく見据える。現在『錬金』している3体の
それらを見て、ルイズは
「さぁ、いくわよ……パメラ!!」
「はいは~い!」
………
「……はぁ!!?」
まさかの台詞にギーシュが硬直する中で、パメラは漸くルイズに名前を呼ばれた嬉しさもあるのか先ほど以上の上機嫌を隠しもせずに、相変わらず宙に浮遊した状態で前に出る。
咄嗟に静止の言葉を投げかけようにもパメラは「いっきま~す♪」なんて既に傘の先端を向けていて
「くっ…ワルキューレ!!」
まずは彼女の攻撃を防ぐのが先決だと判断し、開いていた口でそのまま傍らのワルキューレに指示を出す。
迫る光弾からギーシュを守るべく進み出たワルキューレ。青銅製の戦乙女に紫紺の光弾が命中し、そして…炸裂する。
「う、おぉっ…!?」
防ぎきれないと悟ると、ギーシュは慌てて横に飛びのく。先ほどまでギーシュが居た場所を通り過ぎ、ギーシュを守ったワルキューレはそのまま後ろの野次馬たちのもとまで吹き飛んだ。
ルイズの失敗魔法ほどではないにせよ、あの光弾に秘められた威力の高さを物語るには十分だ。
「まだ安心するには早いわよ、ギーシュ! 『イル・アース・デル』!」
「うわぁっ!? く、ぅっ…やってくれるじゃないか!」
横に飛んだギーシュに追撃するように、ルイズは『錬金』のスペルと共に杖を振る。やはり直撃はしなかったが、空中での爆発によって生じる爆風はギーシュを脅かすには十分で、パメラとルイズ両者の遠距離攻撃に強く歯噛みする。
ここまで来たら、女性だから手加減どうのと言っている場合ではない。本気を出すのが大人げないだなど思っていたが、そんな子供ならではの背伸びは止めるべきだ。
「ここからは…本気でいかせてもらう!」
目つきが変わる。それに気付いたルイズはより強くギーシュを睨むように見据え、パメラもいつものようなぽやぽやした雰囲気を…いや、相変わらずの脱力ぶりだ。
ギーシュが振るった薔薇型の杖。その花弁が4枚落ちて形を成すことで、ワルキューレは新たに4体…計7体に数を増す。
ルイズにとって最悪なのは、それらワルキューレが皆武器を装備していることだ。新たに生み出された4体は片手剣――実は刃を潰してある――を、初めから居た3体は地面から迫り出してきた盾を構え、油断なく此方の様子を窺っている。
「…パメラ、いけるわね?」
「えぇ、もっちろんよ~。ルイズちゃんの、為ですもの~」
「“ちゃん”はやめて!」
ルイズは言わずもがな。パメラに関してもあの外見や戦闘スタイルからして後衛型なのは間違いないだろうと考え、ギーシュは盾持ちと剣持ちを1体ずつ自身を守るように配置し、残りの5体を迫らせる。2人の攻撃は強烈だが、距離さえ詰めてしまえば此方の勝ちだ。
緊張感を高まらせるルイズに対して全く様子の変わらないパメラに若干の不安を抱いたものの、だからと言って攻撃を止めることもせずにワルキューレはもとよりあまり離れていなかった距離を詰める。
「そぉれ~!」
「『ウル・カーノ』!」
密集して一網打尽にされては危険だとワルキューレ同士の距離を離していたのはやはり正解だった。盾を持っていた1体はパメラが放った紫紺の光弾に吹き飛ばされ、剣を持っていた1体はルイズの失敗魔法が直撃してバラバラに崩れ落ちる。やはり、あれらの直撃を受けるのは不味い。
「『ファイアー・ボール』!」
「え~い!」
ルイズの次弾は辛うじて避けることに成功したが、避けた都合で盾持ちと剣持ちのワルキューレの距離が詰まる。それを見逃さず、パメラは距離の縮んだ2体のワルキューレの丁度ど真ん中に先ほどよりも少し大きめの光弾を放ち、後方に吹き飛ばす。
だが…ギーシュは僅かに口角を上げる。勝利を確信したのだ。
「もう一度! 『ファイアー……ッ!!」
「遅いよルイズ! 残念だが、君さえ倒せばこの決闘は僕の勝ちだ!」
再び爆発魔法を起こすべくルイズが杖を振り上げようとしたその瞬間を狙い、未だ健在のワルキューレが身を低くして一気に地を蹴った。1体の操作に気を遣う分残りのワルキューレ達の動きは若干悪くなるが、このワルキューレが剣でルイズの杖を斬ってしまえばその時点で勝ちは決まる。
狙いが杖であることを悟らせぬためにも表向きは『倒す』つもりであることを堂々と宣言しつつ、ワルキューレは硬直するルイズが振り上げたままの杖を狙い、一閃を――
「危ないわよ~?」
「なっ!?」
「えっ!?」
信じられない光景に、ギーシュだけでなくそれを見ていた全員がぎょっと目を見開く。
ルイズとパメラは隣り合っていた為、咄嗟に狙われた方を庇われたり援護されることのないようにギーシュはそれなりの注意を払っていた。
なのに、今…ワルキューレがルイズに攻撃しようとしたその瞬間。パメラが音もなくルイズの目の前に
いや、この際そんなことはもうどうでもいい。今一番の問題は、このままだとパメラが危険だということだ。ワルキューレはもともとルイズの杖を斬るつもりであったため、その剣の軌道は少し高い位置になる。この軌道なら、ルイズが急にジャンプしたりでもしない限り彼女の身には傷一つ付くこともないだろう。
だが、パメラはそうもいかない。何せ彼女は浮いているのだ、どう見ても剣の軌道の範囲内に入っている。
しかも、何を考えているのか彼女はワルキューレに対して開いたパラソルを向けているだけ。あんなもの、いくら高品質の布地で作られていたって所詮は布なのだ。
「ッ、ワル…!!」
「あっ…!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!??」
パラソルもろとも彼女を斬る未来が浮かび、ギーシュは咄嗟にワルキューレに静止命令を出そうとし、ルイズは血の気の引いた顔で彼女の背中を見上げ、シエスタは他の野次馬たちに混ざって正体不明だがルイズの味方をしてくれている彼女の危機に悲鳴を上げる。
そして、無情にもワルキューレは剣を振りぬいた―――
「……や~ん、痛~い♪」
「「「「…………は……???」」」」
予想していた絶叫とは違う、『痛い』と言いながらもなんの緊張感も感じられない気楽な声に、その場にいる全員が全く同じタイミングで呆けた声を上げる。
視線を向けてみれば、ちょうど開いていたパラソルを閉じてクスリと笑みを零すパメラの姿。閉じる直前のパラソルにも、彼女自身にも、怪我らしきものは微塵も見受けられない。
思わずその視線はパメラの目の前にあるワルキューレに向かうが、ワルキューレは剣を振りぬいた体勢のまま固まっていた。恐らくはギーシュの静止の命令があのタイミングで届いたのだろう。
…ということは、ワルキューレは間違いなく彼女を斬った。斬った、筈なのである。
「…な、何故…?」
ギーシュの口から思わず零れた呟きは、その場にいる全員の疑問に違いない。庇われたルイズですら、何故あんなにも彼女がピンピンしているのか分かっていないようだ。
驚きに固まるギーシュ。しかしそれは、驚愕していることを知らぬ者にとっては大きな隙でしか無くて。
「いっくわよ~!」
「……!! ワ、ワルキューレ!!」
相変わらず緊張感のない間延びした声ではあるが、お陰様で我に返ることのできたギーシュは慌ててワルキューレに指示を飛ばす。
すると、パメラの目の前にいたワルキューレも含めて大きく彼女と距離を取り、またワルキューレ同士の間隔も先ほどより広くなる。
これで、少なくとも彼女の光弾による攻撃で一気に全てのワルキューレが倒されることはないだろう。
…光弾“では”…
「いっただっきま~す! 『ホーンテッドダンス』!」
「…っ! い、一体、なに…を……」
先程の光弾と違い、確かに紡がれた魔法名らしきもの。唱えるためのスペルはなく、そもそも聞いたこともないその名前にいい加減周囲の野次馬たちも気付き始めたのかパメラを見る目が少しずつ変わっていく中、その魔法の対象者であろうギーシュは焦り彼女の魔法が何なのか見極めようとして…固まった。
彼の…彼らの視線の先には、淡い光を纏い微笑むパメラの姿。宙に浮かぶ姿が僅かに高度を上げると、宙でくるりと縦回転する。一見すれば何の意味も見いだせず、ただ自ら隙を曝け出したようにも見えた、が
――その姿はとても神秘的で、美しかった。
それまでずっとぽやぽやとした雰囲気を纏い、笑顔と自分のペースを乱すことのなかった彼女が、何かに祈るように目を瞑る。そこに感じた儚さに誰ともなく息を呑み…ギーシュが我に返った頃には、もう全てが遅かった。
「…はっ!? な、んだ…こ……っっ!!?」
ワルキューレ、ギーシュ、そしてパメラ自身のもとまで届くほどに巨大な魔法陣が形成され、パメラが祈るようにして両手にためていた紫紺の光が彼女自身を包んでいた光と共に解放されるように消え去る。
この状況では満足にワルキューレに命令を送ることなど出来ず、出来たとしてもこの魔法陣の外に出る余裕はないだろう。
魔法陣の中心から全体に広がるように、まるで薔薇のような真紅の光が上空に向かっていく。その光による影響を受けたのはほかでもないギーシュのワルキューレ達。まるで精気を吸われた人間のようにガクガクと膝を震わせ、1体、また1体と崩れ落ちていく。
「なっ…!!?」
「…あら~? 変ねぇ…なんで魔力が回復してるのかしら…ま、べつにいいかしら~」
驚愕するギーシュと野次馬たち。
ギーシュの傍らに居たのも含めて全てのワルキューレがただの土へと還り、それに合わせて足元の魔法陣も綺麗さっぱりなくなると、魔法を使用したであろうパメラは不思議そうに首を傾げた。
『ホーンテッドダンス』…本来は対象の体力を吸い取り自身のものにするという結構えげつない彼女の技であるが、人間と違い『体力=ギーシュから供給される魔力』であるワルキューレ相手には、本来と違い魔力を吸い取る効果があったようだ。
「くっ…だ、だがしかし! 僕が居る限り、ワルキューレ達は何体でもまた作り出せる!」
正確には彼が居る且つ彼の魔力が残っている限りなのだが、まぁその辺はいいとしよう。
あの魔方陣の中にあって、何故自分の傍らに居たワルキューレには影響があったのに自分には無かったのか。ギーシュは焦りのあまりに大事なことを見落としている。
この決闘の相手は、決してパメラではないのだということを
「そこまでよ」
「…っ!!?」
突然真横から飛び込んできた声に、ギーシュは薔薇を振り上げた体勢のままぴたりと動きを止める。そして、ようやく彼は自身の失態に気が付くのであった。
「……してやられたね」
「残念だったわね」
ゆっくりと目を瞑り、深い溜息を零してからちらりと視線だけを横に向けてみれば、そこには此方に杖を突きつけるルイズの姿があった。ワルキューレの攻撃をパメラが庇ってから暫しの間はギーシュたち同様に呆けていたルイズであったが、一寸遅れて我に返ってからの行動は早かった。
足元に巨大な魔法陣を作るといったド派手なパメラの技によってギーシュたちの意識が釘付けになった瞬間を狙い、彼女は大きく迂回するような形でギーシュの横まで移動していたのである。
ルイズの失敗魔法である爆発はどこに発動するのか正確な場所を指定が出来ない。だが、仮に自身の杖なり足元なりを『錬金』されたりなどすれば…ルイズ自身もただではすまないだろうが、確実に自分も爆発に巻き込まれる。
杖を突きつけられただけで、ギーシュはそこまで理解すると杖を持っていない方の腕もあげて
「…降参だ」
静かに、しかし周囲にもしっかりと聞こえるようにして、負けを宣言したのであった。
「…降参…」
「…じゃ、じゃあ」
「ルイズの…勝ち…?」
ギーシュの宣言を、すっかり静まり返っていた野次馬たちが反芻する。それが何を意味するのか、野次馬の1人が呟いたその瞬間、1人の貴族が前に出て叫んだ
「そ、それは違うよ!」
「!! …マリコルヌ?」
進み出てきたのはギーシュと同じ金髪で、しかしギーシュと比べると随分とぽっちゃりとした体形のリンゴほっぺの少年。『マリコルヌ』と呼ばれたその少年は、どういうわけか焦ったような表情を浮かべながらもパメラに視線を向け…すこーしだけ見惚れてからびしりと指をさす。
「今回のルイズの勝因は彼女が乱入してきたからだ! 神聖な貴族の決闘に乱入して、しかもそんな彼女と結託して勝ちを捥ぎ取るなんてズルいじゃないか!!」
「はぁ?」
「え~?」
「……」
マリコルヌの指摘に、ルイズとパメラはなんとも心外そうに眉を顰める。一方でギーシュは僅かに苦々しい顔をしていた。この後の展開が読めてしまったからである。
「…そ、そうだよ! 確かにその通りだ!」
「誰なのか知らないけど、関係ない奴が首を突っ込んでくるんじゃない!」
「そうだそうだー!」
マリコルヌの言葉に同調し、また騒ぎ始めた野次馬たち。実はこいつら、マリコルヌを含めてとある共通点がある。
此度の決闘で秘密裏に行われた賭けで、今月の小遣いの大半をギーシュの勝ちに賭けてしまった者たちだ。だから、彼らとしては何としてもこの結果を覆したいのである。
予想通りの展開にどうしたものかとやはり苦々しい表情のギーシュは、ちらりと隣のルイズに視線を向ける。
こういった時、短気な彼女は癇癪を起こすのがいつもの流れだ。そしてその矛先は周囲の野次馬と、乱入してきたパメラに向くだろうとギーシュは思っていたのだが…
「…はぁ…あんたたち、その目は節穴なワケ?」
「…は?」
「「「「はぁ!!?」」」」
意外や意外、彼女は怒るでもなく寧ろ呆れたように溜息を零した。それを見て呆けたギーシュと、馬鹿にされたと憤る野次馬たち。返ってくる野次を右手で制し、隣に移動して浮かんでいたパメラに視線を向ける。
「パメラ、見せてやって頂戴」
「えぇ、わかったわ~」
ルイズの言葉に頷き、パメラはにこやかにほほ笑むと…胸元を今以上に見えるようドレスをやや下へとずらす。
「…お…」
「「「「「「おぉぉぉぉ!!!!??」」」」」」
さらに、その状態で胸の谷間に両手の指を差し込んで、両側に開いた。
「「「「「「おぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉ!!!!!???」」」」」」
突然の大胆な行動に、多感な少年たちは素早くパメラの正面に移動して声を上げた。周囲の女子生徒の冷たい視線には、まるで気付いた様子が…いや、マリコルヌだけがその視線に気づいて秘かに悶えている。
…じつは男子生徒たちと同じような声をこの学院でいっちばーん偉い人も上げているなんて、誰も知る由もない。
「おぉぉ……あれ?」
「…ん? どした?」
「いや…あれ…」
「……あれは…」
「はいそこまでー!! パメラ、もういいわよ」
「「「「「「「えぇー…」」」」」」」
「……何かしら、なんか1つだけ大人…というか老人の声が聞こえたような…」
自分が指示したこととはいえ、いつも以上に胸元をさらし且つ広げるという行為
明らかに残念がる男子生徒たちに対し、ルイズは「これでわかったでしょ?」と彼女の胸元を凝視していた生徒たちに目を向ける。
一番早い反応をしたのは、さりげなく男子たちを押しのけ親友と共に最前列で彼女の胸元を――どことなく恨めしそうな感情も含めて――見ていた青い髪の少女、タバサであった。
「……“使い魔のルーン”」
「その通り!!」
そう、パメラの胸元を横に横断するようにして、使い魔のルーンが刻まれていたのである。
胸元という特徴的な位置であったが、如何せん彼女の胸は豊満だったものでそれがルーンであったと気付きにくく、ルイズも揺れる彼女の胸元を睨んでいた時に漸く気付いたのである。
「…でも、それがなんだって…」
「…ま、まさか…」
ここで思い浮かぶのは、昨日の『使い魔召喚の儀式』――一番トリであり且つ、笑いの種であったルイズの召喚したクマのぬいぐるみは、ここにいた誰もが見ていたし覚えていた。あの小さな体…胸元の部分にルーンが浮かんでいたのを、記憶力の良い生徒たちは思い出していた。
「そのまさかよ!! ここにいるパメラは、何を隠そう私が召喚した使い魔だったのよ!!」
「「「「な、なんだってェーー!!!??」」」」
「うふふ、みんなの驚いた顔、素敵だわ~…」
ルイズの言葉に分かりやすく衝撃を受ける生徒一同。ルーンを確認した時点でなんとなく予想の出来ていたタバサとキュルケも驚いたように――タバサは一瞬だけだが――目を丸くしている。一方のパメラは、そんなみんなの反応がお気に召したのか相変わらず上機嫌だ。
「……な、なるほど…君の使い魔だったのならば、主人の手足として参加する資格はあるね」
「えぇ、そういうこと……ギーシュ、なんでまた顔に紅葉作ってんのよ?」
「ふふ…たわわな果実に見惚れていたところを、戻ってきたばかりのモンモランシーに見咎められてしまってね…」
「…自業自得とはいえ、アンタほんとに運がないわね…」
そういえば、タバサたちの隣でギーシュも彼女の胸元を注視してたんだったと今更ながらに思い出す。
「…って、それより! ギーシュ、さっきの言葉…」
「あぁ…これで何も文句も問題もないだろう。この決闘は、君の勝ちだ」
「…っ…ふ、ふんっ! ま、まぁ、当然よねっ!」
「「「「あぁぁ~…」」」」
「デカい…あの胸も、払う代償も…」
改めて敗北を宣言したギーシュに、ルイズは今更ながら込み上げてきた喜色をなんとか隠し無い胸を張る。ギーシュは野次馬たちから一歩離れた場所でずっと事の成り行きを見守っていたシエスタのもとへと謝罪しに行き、現実に戻ってきた男子生徒たちは皆項垂れた。
「うふふ、ルイズちゃんが嬉しそうで、私もすっごく嬉しいわ~」
「うっ、嬉しくなんて…! …それよりも、パメラ…あんたもなんでもっと早くに正体を見せてくれなかったのよ。どんな魔法使ったのか知らないけど私、あのクマのぬいぐるみがあんたの擬態だったなんて全然…」
「え…? 擬態って、なにがかしら~?」
「……えっ?」
想像していたような華々しさはなかったとはいえ、出来れば今しばらくは勝利の余韻に浸っていたかったルイズであったがパメラの一言でかぁっとその顔が赤くなる。本人としては平静を装っていたつもりだったのだろうが、口元が綻んでいるのがバレバレだった。
気恥ずかしさを誤魔化すように、ルイズは少しだけ非難するような視線をパメラに向ける。もっと早くに
それに対し、パメラはきょとんとした顔を浮かべた。その反応が意外で、ルイズもきょとんとした後、慌ててシエスタのいる方を指さして。
「だ、だから! マジックアイテムを使ったかなんかで、今までずっとぬいぐるみのフリをしてたんでしょっ!?」
「ミス・ヴァリエール!! おめでとうございます!!」
「あぁシエスタ、ちょうど良か…った…」
なんでこんなことを説明しなおさにゃならんのかと語尾を強めるルイズであったが、やはりパメラはきょとんとしたまま。そこに、謝罪を受けたシエスタがギーシュと共にルイズの元へと戻ってくる。
先ほどまでぬいぐるみを抱きしめていたであろうシエスタが来てくれたなら説明がしやすいと顔を明るくしてシエスタに顔を向けたルイズは、そこでピシリと固まった。
シエスタが依然として、ぬいぐるみを抱えているからである。
「…シ、シエスタ…? そのぬいぐるみは、何かしら…?」
「えっ…な、何って…ミス・ヴァリエールからお預かりしたクマさんですが…」
「…………」
震える指でぬいぐるみを指すルイズ。彼女としては、あのぬいぐるみはシエスタが自分で持ってきた物であることを祈っていたが、それまでの流れを知らないシエスタはあっさりと答えた。というか、答えるまでもなく分かっていた。あんな見るからに高品質のぬいぐるみ、2つとあってたまるか。
と、いうことは…ゆっくりと振り返ると、宙をふよふよと浮かぶパメラと目が合って彼女は微笑んだ。それにぎこちない笑みを返しながらも、ルイズは…否、周囲の生徒たちもまた、今更ながらに疑問を抱いた。
「…ア、アンタ…何者なの?」
今更…ホントに、ほんとーに今更な警戒心を受け、パメラは困惑するように眉尻を下げながらも周囲を見渡す。代表としてルイズから告げられた疑問に対する答えは、空気を凍り付かせるには十分だった。
「何者って…ルイズちゃんったら酷いわ~。
見ての通りの、可愛い幽霊じゃないの~」
「だから“ちゃん”はやめ………は? ……ゆう…れい…??」
「そうよ~?」
「「「「「………」」」」」
人間、あまりにも予想とはかけ離れた事態に陥ったりした時にはあんなにも頭が真っ白になるものなんだなと、彼らは後に語るのであった。
そうして、数分ほどの時間を要して
「「「「「………はぁぁぁぁぁ!!!!??」」」」」
「きゃあっ!? …んも~、だから、“そういうの”はあたしの仕事だって…」
「そんなのどうでもいいから!! アンタ、本気で言って……」
一斉に上がった悲鳴に近い声に驚くパメラ。やはり彼女は自身が驚かされるのが不満なようだが、そんなことはどうでもいいとルイズは彼女に掴みかかろうとする。
しかし、伸ばした両手が何も掴むことはなくパメラの体を通過して、初めてルイズたちはパメラが言ったことが事実なのだと理解した。
「…ひっ」
誰が漏らしたのかも分からない小さな悲鳴。その場にいた全員のパメラを見る目が変わる。
エルフや吸血鬼、亜人を見るかのような…“恐怖”の感情が、そこにはあった。
「……ルイズちゃん?」
「…っ」
戸惑い、此方を見るパメラに肩が跳ねてしまった。そしてパメラもそれに気づいたのか、伸ばしかけていた手を引き、小さく口を開いた。
「……みんな…あたしが、怖いの…?」
「…ぁっ…」
その時の表情は、さきほどまでの温和な笑みとは程遠い。ほんの一瞬だけまるで信じられないというように目を見開いて、それから探るように問いかけてくる。
その問いかけを耳にして、ルイズは自身の態度を酷く恥じた。
彼女は、自身の「何者なのか」という質問に正直に答えてくれた。そして、正体をバラしたうえで今もこうして大人しくしている。彼女の強さを目の当たりにした今、此方に危害を加えようと思えばそれは楽なことだろうに。
それをしないのは…彼女が自分たちが思ったような危険な存在ではないからだ。決して確定したわけではないが…少なくとも、主人である自分はそう考えるべきだった。
「そう…そうなのね…」
両腕を垂らし、俯いた彼女の表情は前髪とハーフボンネットに隠れて見えない…しかし、その体が微かに震えていることに気付くと、ルイズはたまらず口を開いた。
「パ、パメラ! 私…私は…!!
「か、か……感動だわ~!!」
…………はい?」
パメラ以外の人間が、再び固まった。
「いや~ん! これよぉ、これこれ~! “向こう”じゃもうだぁれもあたしに怖がらなくなってから久しかったから、すっかりそんな霊活に慣れちゃってたけど…やっぱり、人を驚かせるのって素敵だわ~!!
「「「「「………」」」」」
周囲を完全に置いてけぼりにしていやんいやんと興奮するパメラの様子を見て、周囲よりも少しだけ早く我に返る事の出来たルイズは思った
「(……な、なんて馬鹿馬鹿しいこと考えてたのかしら…)」
怖がられること、驚かれることを無邪気に喜ぶ子供のようなこの幽霊に警戒をしていたこと其れ自体が、馬鹿馬鹿しくてたまらない、と。
……まぁ、かなり悪戯好きみたいなので、敵に対する其れとは違う意味で警戒すべきなんだろうが。
「…あー、ミス・パメラ…? ちょっとお聞きしたいことがあるのだけれど…いいかしら?」
「あらぁ、あたしのことはパメラって呼んでいいわよ~。それで、聞きたいことって何かしら~?」
周囲もだんだんと警戒していた自分が阿保らしくなったのだろう、コアラのように背中にタバサがしがみついている状態のキュルケがおずおずと挙手をした。
それに対してやはりぽわぽわとした微笑みを浮かべるパメラに対し、この温厚というか能天気というかマイペースな態度は誰に対してでもそうなのだと理解したところで、キュルケは先ほど舞い上がっていたパメラが零した言について、とある指摘をする。
「…ミス…あー、じゃなくて…パメラ、アナタさっき『昨日も楽しかった』って言ってたわよね…?」
「えぇ、本当に面白かったわよ~。ルイズちゃんが起きるまでちょっと散歩しにフラフラしてたら、行く先々で出会った人たちが驚いてくれたんだもの~」
「……へぇ…」
「……」
深く追及するまでもなく詳細を語ってくれたパメラに、キュルケの顔が僅かに引き攣る。そしてそれは、この場にいるほとんどの女子生徒も同じであった。
それらの反応を見て、今朝がたの女子陣の異変を知っていた一同の顔色が青くなった――特に、ルイズ。
「…そう、そうなの…ふふ、フフフフ…つまり、昨日ワタシとタバサが見た“幻覚”は…」
「「「私達が魘されたのは…」」」
「私のせいね~♪」
あまりにもあっさりと自身が仕出かした所業についてを認めるパメラ。折角の睡眠を邪魔され、怖い目にあわされた乙女たちの恨みは深い――キュルケの後ろから眼鏡を光らせるタバサなんかは特に。
しかし、幽霊であり人を驚かせることに生きがい――死んでるけど――を感じているパメラ1人を怒っても、あまり効果は望めそうにない。
…ならば、その怒りの矛先は自然と増えて…。
「…ウフフ…覚悟はいいかしら、パメラ…そして…」
「「「「「「…ルイズ~~~~!!!!!」」」」」」
「なぁっ!!? な、な、なんで私まで!!」
「アンタの使い魔でしょうが~~!!」
「……監督不行届」
「連帯責任よ~~!!」
ルイズとしてはたまったものじゃないだろう。パメラが皆を驚かせて回っていたのは自身が不貞寝してしまった最中だ。そもそもその時はパメラの存在自体知らなかったのに…こんなのってあんまりだ。
とはいえ、女子生徒ほぼ全員の怒りの剣幕にいつものように言い返す気力はもう残っていない。あまりの気迫に後退り、漸く自身もまずい状況にいると気付いたか困惑するパメラをちらりと見て。
「う、うぅっ…」
「ミス・ヴァリエール!! オールド・オスマンが呼んでいます。其方の使い魔と共に学院長室まで…」
「!! は、はいわかりました!! シエスタ、ぬいぐるみありがと!! パメラ、行くわよ!!」
「え、あ、は、はいっ!」
「あぁん、ちょっと待って~」
「えっ、ちょ…私が案内を…」
「「「「待て~~~!!!」」」」
始祖ブリミルの助けとはまさにこのことか。今までずっとこちらの様子を窺っていたのだろうミス・ロングビルの声を聴き、その内容を理解するや否やコレだ! とまずはシエスタからぬいぐるみを返してもらい、それからパメラにひと声掛けて一目散に走りだす。
慌てて追いかけたパメラと、土煙を上げて2人を追いかけ始めた女子生徒が離れていって、完全に置いてけぼりを食らったミス・ロングビルは呆然とその後姿を目で追いかけるのであった。
…
……
………
…………
これは、とある少女と使い魔の物語。
悠久の時を生きてきた、人ならざる使い魔は主人に語る
――揺り籠から…は無理だったけど~。こうなったら、墓場から
その身に伝説を宿す少女は言った
――それは流石に勘弁して と
あなたに初めて(のキス)を奪われ、あなたに(ルーン的な意味で)傷物にされたと頬を染める幽霊少女と、其れに取り憑かれた不幸属性持ちの伝説の少女の話は未だ、始まったばかり―――
ちょっと後半かなり駆け足になっちゃって、いつもよりも終わり方が陳腐ですが…何?メルルの時と全く一緒?…まぁ、時間が出来たら手直しします^^;
このIFストーリーを書き始めた当初、パメラさんは普通にガンダールヴにする予定だったんですが、『まおゆう』のアニメを見た時に、魔王がこう魔王の紋章を見せる為に胸元を広げるその行動にグッときましてね…ついでに幽霊なのに『神の心臓』とか面白そうじゃんってなワケでリーヴスラシルになってもらいました。
生命力を消費してルイズの魔力を増幅する…って、パメラさんもう死んでるやーん…でも、そこは流石のご都合主義、パメラさんの能力と相性抜群にしちゃおうZE☆
つまり…パメラさんが敵から体力か魔力を吸い取る→自動的にルイズの魔力に還元しちゃえばええやん、的な。
そうするとどうなるか…具体的に、対峙する敵がどうなるか。
・ワルド
『ライトニング・クラウド』で倒したと思ったら勝手に復活した挙句ミイラの一歩手前まで精気を吸い取られたでござる。
『偏在』は半自動魔力供給機。
・メンヌヴィル
パメラさん幽霊なんで匂いも気配も音も何にも感じないでござる。
結果、半自動魔力供給機化。
・シェフィールド
後半あたりで対策は練ってくるだろうけど、普通のガーゴイルなど大半のマジック・アイテムは殆ど半自動魔力供給機。そして物理攻撃は全然効かないでござる。
ボスクラスは流石に無理そうですね(笑
でもパメラさん、魔法にはそこまで強くないからね…上手い立ち回りは必要だろうね。すぐ回復しちゃうけど←
タバサとエレオノールさんはパメラのお気に入りになること間違いなしでしょうね。主に驚かせ相手として。
…まぁ、そんな感じで幽霊少女編はこれで終了です。
時間があればの話ですが、メルル関連のキャラはもう1人だけ考えています。
誰かな~? …たぶんわっかんないだろうな~(笑
まぁ、あくまでも考えているだけ、まだ書き始めてすらいませんが。
…なーんて微妙なフラグを立てたところで、年内最後の更新を〆させていただきます。
ではでは皆様、良いお年を。