因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST-   作:猫丸又三郎

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 気づかぬ間に前回の投稿から一か月が過ぎていましたゴメンナサイ。
 第三次スパロボZの周回プレイ7周目だったんです……。(精一杯の言い訳)

 長期の休みの代わり……なのか、今回は割と長い話(と言っても回想ばかりだが)です。
 楽しんで戴ければ幸いです。


<追記>
 後書きに次回予告的なナニカを作りました。
 順次前回までの話にも追加していきます。




第九話 招かれざる異邦者(Ⅰ)

  ――――そこは、極めて近く、限りなく遠い世界――――

 

 

 

 

【ホワイトスター内部】

 

 

 

 薄れていく意識。

 激痛が走る肉体。

 異形の神を創造させるフォルムの機動兵器はその機能を殆ど破損し、静かに地面に伏していた。

 コックピット内でぐったりと横たわる男、イングラム・プリスケンは眼前のモニターを見る。

 目の前に映る、鋼の巨人。

 対異星人用の切り札、スーパーロボットタイプエックス―――通称「SRX」と呼ばれるその機体の手によって、彼の乗機「R-GUNリヴァーレ」は大破した。

 

『終わりだ、イングラムッ!』

 

 SRXに乗る元部下、リュウセイ・ダテの声がスピーカーから響いた。

 機体はもはや爆発寸前。数々の悪行を繰り返した彼にも、もうじき神の裁きが訪れようとしているのだ。

 彼は死への恐怖など感じていなかった。

 むしろ、“解放された”事に対しての感謝を感じていた。

 

「フ……フフフ………」

 

 イングラムの口から笑みがこぼれる。

 やっと宿った自身の人格は、この結果に満足している事が分かった。

 

『何がおかしい!?』

 

「…よくやった、リュウセイ………」

 

『!?』

 

 明らかに彼は驚いている。

 イングラムは今までやって来た事が実った事を嬉しく思っていた。これで、この世界の“奴”は倒される事だろう。

 

「これでいい……」

 

 そう、これでいい。課せられた使命はこれで果たされた。

 虚空の使者としての、使命を……。

 

「俺が…ジュデッカの枷を解くには……この方法しかなかった……」

 

『枷だと!? てめえは一体何者なんだ!?』

 

 無限に続く因果の鎖………それは、“あの時”から重く圧し掛かり、彼自身の運命を定めてきたモノ……。

 あの時………仲間たちと共に超神ゼストを葬ったあの時からこの結果だけは変わる事など無かった。

 今回も、結局は運命を覆せなかった。

 

「俺は……地球人でもなければバルマー人でもない……」

 

 ましてや、バルシェムシリーズですらない……。

 並行世界を彷徨う定めを背負わされた、イングラム・プリスケンという男。

 

「任務を遂行するために…作られた……虚ろな存在に過ぎん」

 

『な……!? 虚ろな存在…って?』

 

『……作られた人間、という事か……?』

 

 リュウセイに続いて、キョウスケ・ナンブがそう訊く。

 頷こうと頭を動かすが、イングラムの体は既にいう事が聞く状態では無かった。

 

(そう、俺はユーゼス・ゴッツォのクローンとして生み出された存在……。神へなろうと画策した、愚かな男の半身……)

 

「だが……俺の任務も終わった。お前達の手によってな……」

 

 これからやって来るであろう、“あの男”との戦いに向けて――地球を守る守護者達を覚醒させるという任務は完了した。

 確実にクロスゲート・パラダイム・システムの力で世界が崩壊する事はない。

 

(――仮に敗北したとしても、アイツが奴を葬る事だろう……因果からは逃れられない………)

 

 コックピットの各部からスパークが飛び散る。どうやら、この機体もここまでの様だ。

 イングラムは残された力で、コンソールパネルを操作する。

 そして、モニターに映し出されたのは一機の機動兵器。

 憑依させていたアストラナガンをR-GUNリヴァーレから放出した。機体内にあった力がすべて抜けた様に、体がボロボロと崩れ始める。

 

『て、てめえ……何を!?』

 

 リュウセイはイングラムがどういう人間であるかすらも理解出来ていない様子だ。

 

(まだ少し……教えておくべきだったな………)

 

 多少の心残りが生まれたものの、それを押し殺して決められた運命を受け入れる。

 機体の崩壊が大きくなり、内部フレームが剥き出しになっていく。

 

「フフフ……さらばだ…選ばれし戦士達よ………これからの戦い、お前達に勝利あらん事を……」

 

『な……………ッ!?』

 

『少佐……!!』

 

 アヤ・コバヤシのその一言に、イングラムは薄れつつあった意識を呼び戻す。

 体力など残っていない。それでも、最後に自分を信じていた彼女に最後の力を振り絞って言葉を掛けようとする。

 惨めだと分かっている。贖罪し切れない罪ばかり背負ってきた。

 だが、これも“TIMEDIVER”の使命であり、運命であった。

 

「……アヤ…。これからは…過去に囚われず……新しい道を歩め………」

 

 最後の力は全て使い果たした。

 だが、彼女にこの一言は言っておかねばならないのだ。

 彼女にこれから絡みつく“鎖”は重く過酷なモノだと知っている。だからこそ、それに打ち勝つ為の楔を打ち込んだ。

 

「イングラム………少佐…! あぁ……!!」

 

 機体のフレームが徐々に砂の様に崩れ落ちる。バラバラになるリヴァーレに、アヤは悲しみを隠し切れない。

 イングラムはその声を聞いて、一息つく。

 

(……ようやく得た完全な自我が…死の狭間にあったとは……)

 

 当然の報い、と思えた。だが―――

 

(例え、一瞬でも……俺はイングラム・プリスケンという人格を…確立…出来たのだ………)

 

 それが、何回目なのか、何人目のイングラムなのかは定かではない。だが、一つだけはっきりしている事がある。

 

(……迎える結末は……全て同じ………らしい…………………)

 

 視界が徐々に白く輝き始める。

 それはイングラムを暖かく包み、やがて全てを持ち去っていく。

 

「ま、待て、イングラム!」

 

 リュウセイはそう咆える。

 だが、それと同時にリヴァーレは完全に崩壊し消滅した。

 そこにはイングラムの姿はない。まるで、“この世界から消えた”かの様に…………。

 

「くそっ………イングラムゥゥゥゥゥッ!!」

 

 リュウセイのその咆哮は、彼に届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  因果律の鎖を越えて -URTLA・ZESTー

 

 

  第9話 招かれざる異邦者(Ⅰ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

「ここは………何処だ?」

 

 ユーゼスは、宙に浮いていた。結構な高さの空中に漂う彼は、自身に起きている状況がうまく理解出来ずにいた。

 兎も角、彼は状況を整理しようとする。だが―――

 

「ジュワァッ!!?」

 

「ッ!?」

 

 ウルトラマンの声が響いた。苦しみ痛みを含んだ声。

 ユーゼスはすぐに後ろを振り向いた。

 そこにあったのは、二体のウルトラマンが戦い、その内一方がガッツウィングを護っている様子であった。

 

「あれは……ウルトラマンティガ………!!」

 

 ウルトラマンティガはカラータイマーを点滅させながらも、後ろを飛行するガッツウィングの盾になってもう一人のウルトラマンの攻撃を受けていた。

 そのウルトラマンは女性型であり、黒っぽい色と黄色のカラーがゼットン等の凶悪怪獣を連想させる。

 

「何だ……これは!? 私は、一体何を見ているというのだ!!」

 

 光の鞭で体中を攻撃されるティガ。点滅が激しくなり、瀕死である事を周囲に知らせている。

 更に、ティガに追い撃ちを掛ける様に、大量のノイズ達が攻撃を仕掛けていた。

 

「ニセモノのウルトラマンだけでなく、ノイズまでもが………!?」

 

 恐らく炭化される事は無いのだろうが、それでも物理的なダメージは受けている筈である。

 ユーゼスはこの突然の窮地を救う為に、懐から一つのクリスタルを取り出す。

 菱型で青と緑の二つが交わる様に光るそれは、二カ月前の戦闘後から開発していたモノであった。

 一種のエネルギーコンバーター、とでも言うべきか。

 それを使えば、超神ゼストの能力を更に活用できる代物である。

 

「私の力は、こういう事を防ぐ為にあるのだ………ならッ――」

 

 それを片手に、空へ掲げようとしたその時――

 

「――ッ、グォッ!!?」

 

 唐突に、全身に電撃の様なモノが流れた。

 走る激痛に、つい手を降ろしてしまう。

 

「デュワァッ!!」

 

 その時、ティガは最後の力を振り絞ってゼペリオン光線を放っていた。

 出力はいつもより遥かに少ない。だが、目の前に立つ者を倒す為にはコレしかなかった。

 

『………その程度なのかしら、ダイゴ?』

 

「…何だ、コレは………思念会話か?」

 

 ウルトラマンと同等の力を持つユーゼスは、その言葉が聞こえる様だ。

 

『例え僕が力尽こうとも……お前を倒す……!!』

 

『それは出来ないわ………例え光の力があろうとも、私の中にある闇は消す事は出来ない……』

 

 闇、という言葉にユーゼスは反応する。

 

「闇の力……ティガは、その力を光に変換して戦える筈だ………!!」

 

 そう言ったユーゼスは直後、自身が放ったその言葉に疑問を抱く。

 

「っ、な、何故私はそんな事を知っているのだ………!?」

 

 自分の放った知らない情報に、恐怖する。そして、ある事を思い出した。

 

「まさかこれは………私の脳内のクロスゲート・パラダイム・システムが……!」

 

 そう自覚した途端、急に彼の視界が歪み始めた。

 色々な色が混じって、混沌が空間に生まれる。

 

「待て! 私はこの未来の結果を知らない!! 教えてくれ、何が起こるというのだ!?」

 

 だが、そんな言葉で収まる事などなく、ユーゼスの周囲の空間を残して全ての世界が『無』へと還っていく。

 

「これが、訪れる未来だと言うのか!? 混沌すらない、虚無となると言うのか!」

 

 やがて、ユーゼスの体が光の粒子となって消え始める。パラパラと空間に霧散し、消えていく。

 

「認めない………私は、この未来を認めんぞォォォォ―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――ッ!!」

 

 唐突にユーゼスはベッドから跳ね起きた。

 全身から嫌な脂汗が吹き出し、両手は少しだけ震えている。

 ベッドボードに置いてある時計を見ると、朝の4時を示していた。

 

 

【特異災害対策機動部二課仮設本部・潜水艦内】

 

 

「………やはり、まだ脳内に残っていたのか」

 

 かつての大罪の一部が、未だ体内にある事に恐怖し始めた。

 あれは、クロスゲート・パラダイム・システムが見せていた「訪れる未来」だった。

 かつて自分がいた世界で、脳内に埋め込むナノマシン型CPSを開発し自身に投与したが、それがまだ残っている事には気が付いていなかった。

 

「くそっ……こんな所で能力を発揮しなくてもいいだろう!」

 

 完成したCPSはアルティメットガンダムとカラータイマーの力と共に超神ゼストの一部になった。

 今現在のゼストには、完成版CPSの力など残っていない。

 狂気の発明がない事で安心していた矢先の事だった。

 

「………もしや、この未来を覆せという事なのか?」

 

 ユーゼスはこの世界に訪れる事を知っている事となる。

 もしそういう意味を持つのであれば、この情報はとんでもなく重要になってくるだろう。

 だが、そんな嘘の様な話を信じる者が居るのかが一番の心配である。

 

「幾ら私が忠告しようとも、聞く耳は持たんだろうな」

 

 そう考えると、ユーゼスは一つの結論に辿り着いた。

 

「………この組織と、GUTSのみで全て対処しなければならないという事か」

 

 数日前に特異災害対策機動部二課に協力者として迎え入れられた二人の仮面ライダー、門矢士と城戸真司、シンフォギア装者達、そして未だ接触出来ないGUTSにある戦力を動かす事が出来れば、来るべき未来を阻止する事も可能に思えた。

 

「………この件は、時を見て報告するとしよう」

 

 今はまだ開示する時ではない。

 立ち向かうべき力を集めた時に、全てを打ち明けようと心に決めた。

 ユーゼスは一度深呼吸をし、そして立ち上がった。

 手の震えは収まっている。だが、胸の高まりだけは抑え切れない。

 

「私の力で、この世界を救うのだ………必ず……」

 

 贖罪ではない。

 未来を知ってしまった者としての、使命。

 人々を護ると決意したユーゼスの覚悟であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝早くに起き、それ以降部屋に籠って個人的な研究を行っていたユーゼスは、朝のブリーフィングの時間にやっと表に出て来た。

 

「お、やっと出て来た様だな」

 

 部屋を出たそこに、門矢士が立っていた。

 二か月前に出会って以来、喋る事すら無かった男が何の用なのか気にしつつ、自室の施錠をする。

 

「お前か………正式に協力者としてここの所属になったらしいな」

 

 ああ、と言うと、士は歩き始める。それに並ぶ様にユーゼスも付いて行く。お互い、ブリーフィングルームに向かう為である。

 今はこの潜水艦は何処かの港に停泊しているので、廊下は揺れ無く静かであった。

 

「……ユーゼス・ゴッツォ。並行世界にて神に成り替わろうとしたものの失敗、その後因果地平へと堕ちていったが、何らかの力でこの世界へやって来た……」

 

 士は自身が知っているユーゼスについての事を独りでに呟き始める。

 

「うむ………一体、誰が私の情報をお前に与えたのだ……?」

 

 自分しか知り得ない情報をこうもスラスラと並べられると、奇怪というより興味が湧いてきたユーゼスである。そういう性分、とでもいうのか?

 

「俺の腐れ縁の男……鳴滝って奴と、もう一人の男からな」

 

「もう一人?」

 

 鳴滝、という者についてもっと聞きたい事もあったが、それ以前に二人目の情報提供者について知りたくなってしまう。

 

「お前をよく知る人物………早川健、とか言ったな」

 

「何っ!?」

 

 士の言葉にユーゼスは驚愕した。

 早川健。人呼んで「快傑ズバット」であり、かつてユーゼスと対峙した男でもある。

 彼は、ユーゼスについての記憶を持ち合わせたままあの虚構の世界から元の世界に戻されたのだろうか。

 

(……いや、それ以前に、この世界は「快傑ズバット」の世界ではない。幾つかの世界が繋ぎ合わされた世界の筈だ。何故、奴がこの世界に………?)

 

 士に彼がこの世界に来た理由を聞こうとした時、彼は歩みを止めた。

 丁度ブリーフィングルームの前まで来ていたからだ。

 

「……その質問の返答は、後々で良いか?」

 

「そうだな……ブリーフィング後に話して貰うぞ」

 

 約束を取り付けて、ユーゼスと士はブリーフィングルームのドアをくぐった。

 

「―――おっ、ゴッツォ博士も到着しましたか」

 

 既にシンフォギア装者と城戸真司がパイプ椅子に座って待っていた。

 彼らの目線がユーゼスに突き刺さる。興味、疑心と様々な感情が見えるが、ユーゼスは敢えてそこに触れない事にしておく。

 

「……司令、別にユーゼスで構わん。そっちの方が呼び慣れているからな」

 

 そう言いつつ、ユーゼスは空いている席に座った。

 隣には風鳴翼が座っている。

 先日、協力の条件としてシンフォギアシステムの開示を要求した事が災いして、疑いの眼差しが横から飛んでくる。

 

(……この少女、読みは良いが、まだ私の正体には気が付いていないな………)

 

 まさに防人、とでも言うべきか、風鳴翼という少女は年に似合わず十二分な考察力と判断力を持つ。

 そんな考察をしつつ、正面を向く事にした。

 

「さて……正式に善意の協力者として共に戦う仲間になった士君、真司君にも、今度の作戦から任務を与える事となった。精一杯励んでくれ」

 

 弦十郎は嬉しそうに言う。

 慢性的な人手不足の自体が続いていた二課にやって来た仮面ライダーの存在はとても大きい様だ。

 

「期待に応えなきゃなぁ……」

 

 真司は気合を入れる様に「っしゃぁ!」とガッツポーズをした。

 それを眺めつつ、弦十郎は少し顔を厳しくしながら言葉を続ける。

 

「さて……今回の仕事だが、米軍の基地がある岩国に『ソロモンの杖』が輸送される。その護衛を響君、クリス君、士君、あおい君に頼みたい」

 

「……『ソロモンの杖』輸送の護衛、だと?」

 

 士は何だそれ、と言いたげに呟く。

 

「ソロモンの杖……三か月前のルナアタックにおいて、フィーネがノイズを召還する際に用いた完全聖遺物、か」

 

 ユーゼスが事前にリークしていた情報にあった『ソロモンの杖』は、かつての事件においてもっとも重要なポジションにあったモノである。

 今現在も、ノイズを召還する事が可能らしく、それ故に厳重な管理体制が敷かれているとか。

 そんな管理のモノを岩国にある米国基地まで輸送するのに、何故シンフォギア装者と仮面ライダーディケイドを付ける必要があるのだろうか、とユーゼスは思う。いや、多分士達も同じ事を考えているであろう。

 

「……ここ最近、ノイズの発生は比較抑えられているが、奴等や“悪用しようと企む他の勢力”によって杖が奪取される可能性もあるんでな。」

 

 他の勢力……とは、例えばかつて世界を恐怖に陥れようとしていた悪の組織、ショッカー等の事を指しているのであろうが、敢えてそこには触れない弦十郎である。

 

「――それと、このソロモンの杖輸送と並行して、もう一つ作戦を遂行してもらう」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 その場に居た装者&ライダー&超神はほぼ一斉に同じ様な驚いた顔をした。

 今までの二課は、基本的に単一の作戦――「ノイズの殲滅」にのみ焦点を絞って来た。だから、そんな彼らが部隊を二つに分けてまで行う事などなかったのだ。

 ……単純にシンフォギア装者3人しか居なかったから、というのは秘密である。

 

「こちらにはユーゼス博士にお願いしたいと思っていますが……宜しいでしょうか?」

 

「別に、私は一向に構わない。恩を返す、とまではいかないが努力しよう」

 

 ユーゼスはいつも通りの仏頂面だが、言葉に想いを乗せてそう言った。

 

「ありがとうございます。 ……全員にも知らせておくが、二つ目の作戦は正体不明の物体の調査だ」

 

 そう言うと、弦十郎はフォロモニターを付ける。空中に浮いた画面に映し出されたのは、青空の中に佇む真っ黒いナニカであった。

 

「司令、な、何でしょうかそれ?」

 

 響が興味津々に訪ねてくる。いつもより眼が輝いている気がするのは気のせいか?

 

「うむ……これは昨夜撮影された写真なのだが、これを拡大処理してみるとトンデモないモノが写っている事が分かった」

 

「トンデモないもの…?」

 

「空飛ぶ豚、とか、金色のカエル、とか珍動物ならOREジャーナルに載せられるんだけどなぁ……」

 

 画像がスクロールされ、拡大されたモノが表示される。

 黒い物体がより鮮明になり、そして、それはあるシルエットを映し出していた。

 

「……人型か。何処かの国が造ったパーソナルトルーパーか?」

 

 士は呟く様に言う。

 それに反応してか弦十郎は頭を横に振った。

 

「国連全体でも調査されたらしいが、これは何処かの国が造り上げたPTではないらしい。ましてや、テスラ・ライヒ研究所が造った特機でもないときた。だから、国連はこの所属不明機を捕らえたいそうだ。」

 

 真っ黒な人型機動兵器は、二つの翼の様な物体を背負っている。

 その姿は少しだけ――本当に少しだけだが、『黒の天使』に見えなくもない。

 そんな見た目からか、国連軍はこの機体を「ブラック・エンジェル」等と呼んでいるらしい。

 

(黒い天使……何だ、この、頭に引っ掛かる感覚は………?)

 

 ユーゼスは唐突に謎の気分の悪さを感じ始めた。

 脳裏に引っ掛かる、というより自身に宿っている過去の記憶――虚憶と脳内にあるクロスゲート・パラダイム・システムが何かを知らせている様にも感じられない。

 

(……成程、アレは『別の世界』で私に関係する何か、なのだろう)

 

 二か月前から時折感知する気分の悪さは、やはり並行世界のユーゼスから発せられるナニカの意思であろう。

 今のところ解決の見込みが見えないでいたが、現れた正体不明の機動兵器が何かを知っている筈だ。

 ユーゼスはブラック・エンジェルの拡大写真をもう一度まじまじと見つめた。

 

「――なお、翼君は合同ライブを控えているので今作戦には参加できない。 それと、真司君には彼女の専属カメラマンとして同行して貰いたい」

 

「ま、マジですか!? いやぁ~、ここに来て俺付いてるぜ!」

 

 真司は大層嬉しそうに笑顔を見せる。大方、SP代わりになるからでだろうが、そういった事まで考えないのがこの男であった。

 

「……そうだった、ユーゼス博士は現地にて調査の専門家達と合流してください。それと調査の結果は、コチラに持って来て貰えれば助かります」

 

「了解した。 ………それと風鳴司令、一つ頼み事があるのだが」

 

 解散しようとしていた弦十郎を呼び止めたユーゼスは、立ち上がって彼の目の前に立つ。

 

「何でしょうか、博士?」

 

「例の青年……アクセル・アルマーを調査に同行させたいのだが、良いか?」

 

 そう言った瞬間、ブリーフィングに出席していた者全員がポカンとなった。

 士と真司は無事に二課のメンバーとなっていたが、アクセル・アルマーのみは一人独房の中に押し込められていた。

 

 他国――特に、お隣の自由な国からのスパイであるという疑惑は晴れる事なく、結局は観察保護的扱いを受けていた。

 独房にぶち込められた日には「オイオイ、俺はスパイじゃねぇって!」等と一日中怒鳴っていたが、流石に数日も入れられていれば大人しくなっていた。

 毎日腹筋や腕立て等のトレーニングをして過ごしているらしい。

 

 ユーゼスは、この不思議な男の事が気になり今回の調査に同行させ素性を探ろうとしていたのである。

 

「そうですよ、アクセルさんを出してあげましょうよ、司令」

 

「いや! あの色男は何か気に食わない! 私は反対だ!!」

 

「クリスちゃん、まだ引きずってるんでしょ、言われた―――」

 

「あーっあーッ! な、何を言ってるんだ響オマエー!(棒)」

 

 夫婦漫才みたいな響とクリスの掛け合いを横目に、ユーゼスは何時になく真剣な眼をして弦十郎に迫った。

 

「だが、しかしなぁ………」

 

「もしもの時は、私が責任は取ろう。 だから、彼を私の護衛に付けて戴きたい」

 

 深々と最敬礼し、ユーゼスはそう言った。

 思えば、こうして人に頭を下げるのはユーゼスにとって大分久しぶりな気がしていた。

 

「………分かりました、彼を護衛として同伴させましょう」

 

 渋々、といった顔をした弦十郎に、ユーゼスは「勝った…!」等と心の中で思うのであった。

 

「ちょ、ちょっと待てよ! あの軽口色男を仲間にするのか!?」

 

「お、落ち着け雪音! どうした今日に限って!?」

 

 響どころか翼にもなだめられる。だがそれでもクリスはアクセルの事が気に入らない様だ。

 

「いやぁ、あの人はいい人だと思うんだけどなぁ……」

 

 未来と共に避難民を助けていたアクセルを思い返す真司。

 危うく真司が被害拡大の手助けをしそうになった事は今は忘れているのだが。

 

「悪いが、これが決定らしい。 ……お前達は心配しなくても良い。私がしっかり見張っておくのでな」

 

 ユーゼスはそう言いながら静かに冷笑した。完全に悪者のする顔である。

 

 ―――たかが一瞬だったその顔を、翼は見逃さなかった。

 

(……やはりあの男、何か気にくわない………)

 

 ある意味クリスと同じなのだが、そこを気にしないのが防人スタイル。未だガミガミと言うクリスと片手で制しつつ、彼女が彼女なりにユーゼスという存在を危険視し始めた。

 

「―――さて、それじゃあ全員、作戦開始だ!」

 

 弦十郎の発破が掛り、約一名を除くほぼ全員が即座に出動の支度をし始める。

 ユーゼスもその仕草をしつつ、ブリーフィングルームを出て行こうとする士を見つけた。

 

「待て。 約束だったな、早川健について……何を知っている?」

 

 すぐに追いかけそう問い詰める。

 士は瞬時に「面倒なヤツに捕まった」と言いたげな表情になる。

 

「俺も詳しく知っている訳じゃない。 ただ、偶然声を掛けられただけだ」

 

「偶然?」

 

「二か月前……お前と別れた後に、な。 どうせ鳴滝の野郎が仕組んだんだろうが、俺にユーゼス・ゴッツォの恐ろしさ、強さ、そして全てを一方的に言ってきやがった」

 

 成程、やはり早川健――快傑ズバットはかつてユーゼスが居た虚構の世界の記憶を持ち合わせているらしい。

 だが、ユーゼスには引っかかる点が一つあった。

 

「……あの時、微かだがあの世界に居た者全てが元の世界へと帰還していくビジョンが見えた……もはやそれすらも虚構だった、という訳なのか?」

 

「さあな……それはそんな世界を創ったお前に聞いてみな」

 

 そう冷たく言うと、士はその場を後にする。

 残されたユーゼスは士が放った言葉を噛み締めながら、一人茫然とするしかなかった。

 

 

 

 




 サブタイトルの元ネタはスパロボBGMより。
 次回、ユーゼス視点がメインです。


~次回予告~

 トウキョウに突如落下した謎の機動兵器「ブラック・エンジェル」。
 それは、ユーゼスにも、この世界にも関係ある存在であった。


 次回、因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST-

 招かれざる異邦者(Ⅱ)


 宿命を越え、顕現せよ! 漆黒の堕天使!

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