因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST- 作:猫丸又三郎
今後も割と間隔が空くかもしれませんが、根気強く更新を続けていきます。
仮面ライダーエグゼイドも参戦させたいなぁ……
追記)
私の作品の昭和10大ライダーは「SPIRITS」基準です。
【某所自衛隊基地】
特殊災害対策機動部二課のメンバーは各々作戦遂行の為に地上に出ていた。
一つ、ソロモンの杖を岩国の米軍基地まで輸送する手伝い。
二つ、東京に落下してきた謎の機動兵器「ブラック・エンジェル」の調査
三つ、風鳴翼のライブの護衛。
ユーゼス・ゴッツォは機動兵器の調査を行う為に、自衛隊基地内で待機していた。
「………これで準備は完了したな」
ユーゼス自ら指名したスパイ疑惑男は今頃、護衛兵に連れられている筈だ。
あとは彼がやって来ればコチラは「ブラック・エンジェル」の調査へと向かえる。
まだ余っている時間を、ユーゼスは静かに過ごそうとしていた。
と、その時であった。
「―――貴方は、ユーゼス・ゴッツォ博士ではありませんか!?」
ふと、ユーゼスは男から声を掛けられた。
男もユーゼスと同じく白衣を身に着けているところを見ると、どうやら同業者――研究者であろう。
メガネを掛けた白髪の研究者はユーゼスに近付いてきた。
すると、何処かで見たことがある気がしてきた。
「お前は………確か聖遺物研究の……」
「はい、米国にて聖遺物研究を行っているウェル、と申します。 ……いやぁ、まさか世界を驚愕させた世紀の博士が日本に居るとは、思いもしませんでしたよ!」
ウェル博士は気さくに握手を求めてきた。
成程、岩国の米軍基地からアメリカまでの輸送及び本土での解析作業に従事するのは彼なのだろう。
ユーゼスは握手に応えようと手を差し出そうとして、ふと自身の掌を見た。
先程まで自身の研究課題である、超神ゼストの為のエネルギーコンバーターの調整を行っていた。その時に着用していた真っ黒煤まみれな手袋を今の今まで着けている事をすっかりと忘れていた。
「済まんな、今手袋を外そ――」
「いえいえ! 世界を救える貴方がわざわざそんな事をする必要はありません!」
そう言って、ウェル博士はそのままユーゼスと握手をした。出会えた嬉しさなのだろうか、彼はユーゼスの腕をそのまま上下にブンブンと幾度も振った。
多少のうざったらしさを抱えつつも、ユーゼスはこのウェルに対しては好意的であった。
(少し抜けているが、彼は相当優秀な人材なのだろう……)
だが、そんな人間がとんでもない過ちを犯す危険性がある事を、ユーゼス自身が身をもって知っていた。
しかし価値観や意識が暴走していしまうのは天才故なのか。
次回の研究発表の議題にしてみるのも良いのではないか、と考え始める。
「あぁ、失礼しました! ……私、貴方が学会で大気浄化弾を発表した時の会場に居たんですよ。いやぁ、あの時はたまげました。貴方はこの世界を救う英雄となりえる人物です!」
「英雄、か」
―――私は英雄等では無い。
そう一言口にしそうになって、直前で止めた。
『英雄』というものの価値観は、所詮個人個人が抱く理想像だ。ユーゼスが思い描く英雄というモノがウルトラマンであるように、彼はユーゼスの事を英雄だと思っている。
それに一々口出しをしていては、彼にも失礼であるし、何より自分自身の存在を否定している様にも思えた。
「私程度は英雄の器ではない。君の様な、次世代を担う者達こそが英雄になる事が相応しいだろうな」
適当にはぐらかしつつ、自身は英雄という存在ではない事を言った。
しかし、この言葉を聞いたウェル博士は何故か尚更ヒートアップする。
「確かに、次の時代の英雄は僕たちが担っていくべき………。だから、僕は英雄になるんだ。この世界を救う英雄にィ! ウルトラマンすらも越える英雄にィ!」
一人そんな事を叫び出したウェル。何だか顔が崩れてきている気がしなくもない。
この男の「英雄に対する執着心」が異常である事に、ユーゼスは少し引いていた。流石にそれはない、という感じで静かに冷めた眼で眺める。
(仮にウルトラマンを越えるとして、どうやって越える気だ)
冷静に突っ込みを考えつつ、この男をどうやってなだめようか考え始める。
すると、丁度そこに風鳴弦十郎司令が姿を現す。
「ウェル博士、ここに居らっしゃっていたのですか!」
「……ああ、はい。憧れのユーゼス博士にお会い出来たので、少し話し込んでしまいました」
(それはお前が一方的に語っていただけなのだがな)
先ほどまでの顔芸――もとい顔面崩壊は瞬時に収まり、ウェルは最初の好青年風に戻っていた。
そんな豹変ぶりにユーゼスは少し気味が悪くなっていた。
(成程………私もあのような感じに成り得る可能性があった訳か………)
それも私だ、それも私だァァァァッ!、と叫びまくるビジョンが一瞬見えた気がした。
「そろそろ岩国に出発します、ご準備を。 ……ユーゼス博士、失礼」
未だ喋り足りない感じのウェル博士だったが、弦十郎は彼を引きずってそのまま退散する。岩国輸送組には時間があまり残っていない様子であった。
因果律の鎖を越えて -URTLA・ZESTー
第十話 招かれざる異邦者(Ⅱ)
ウェルと別れたユーゼスは、懐から一つの結晶を取り出していた。
深い青と淡い緑が混ざり合い、異質なコントラストを描く結晶体。
それは、かつてユーゼスがカラータイマーの研究を行っていた時に得たデータを元に開発した、いわば「超神ゼスト版ベータカプセル」であった。
特に名称を決めている訳でもなく、単に「コンバーター」と呼んでいるコレの実践的な起動実験は未だ行っていなかった。
一応、こんな仲介器が無くとも超神ゼストに変身する事は可能であろうが、如何せん爆発的なエネルギーの制御が出来ないのが弱点であった。
二か月前、ベムラーとの戦闘においては何ともなかったが、その時に微かに異常さを感知していた。
暴走、という事はないであろうが、それなりに異変が起こらない事は保障などされていない。
邪悪な力と光の力。二律背反である二つの力は、それぞれが+と-のエネルギーであるにも関わらずに反発する。
二年前の邪心戦争時、イーヴィルティガと呼ばれる邪悪なウルトラマンが出現したらしいが、それも二つの相容れない存在の力同士が存在した事によって暴走したのだろう。
ウルトラマンオタク、とも言えるユーゼスのウルトラマン研究はここまで導き出していた。
「……いくら今の私が正義として立っていても、ふとしたきっかけで悪に染まる事も有り得るのだろうな」
かつて犯した罪の事も含めて、ユーゼスはそう思った。
そんな風に干渉に浸っていると、数人の武装した自衛隊員たちが近付いてくる。
「ユーゼス博士、例の男―――アクセル・アルマーを連行してきました」
兵士に引っ立てられながら歩くアクセル。数日間も独房に入れられていたせいか、少し怒っている様でもあった。
「ちっ、今度は何の用だよ、博士さんよ」
そう食って掛かるアクセルに、ユーゼスは少しだけ笑った。
「フッ………なに、お前の嫌疑を晴らす事を兼ねて、私の護衛をすればいいんだ」
そう言うと、ユーゼスは一人の自衛隊員に合図を送った。その兵士は渋々、という顔で、大きなトランクを担いでくる。
「これは………!」
「お前の持ち物……唯一の記憶を探れるかもしれないモノだろう?」
「ミズチ・ブレード!」
愛刀を手にしたアクセルは、それの感触を確かめるかのように軽く振る。
空気を引き裂くブンッ、という音が響くと、彼は今までとは一変して笑顔になる。
「なんだよ、アンタ話分かってくれるじゃねぇか! なら、今日はしっかり働くとしますか!」
ケラケラと笑いながらミズチ・ブレードの切っ先を折り畳む。そして、それをトンファーの様に持ちながらユーゼスの前に立った。
「宜しく頼む。アクセル・アルマー」
「ああ、宜しく!」
二人は堅く握手を交わした。
【車内 移動中】
「―――そう言えば、俺とアンタが行く所は一体何があるんだ?」
アクセルはそう問う。
「東京に落下した未確認の人型機動兵器―――通称『ブラック・エンジェル』の調査と回収だ。……もし、危険な勢力に奪取されては困るのでな」
そう言いながらユーゼスは窓の外を眺める。
落ちた時の衝撃か、それなりのクレーターが出来上がっていた。
割と都心から離れた郊外であったものの、街のビルは幾つも倒壊し生活インフラは完全に停止してしまっていた。
住んでいた住人達は廃屋の撤去に追われながら、各自明日からの生活をどうするか考えなければならなかった。住む場所も仕事も失う者達が続出したからであるが、こういう状態を解消出来ないのが「この世界」の日本政府であった。
(かつての――アノ世界であったならば、こういった災害の復興が万全かつ迅速に行われたが………怪獣騒ぎが無くなった途端に政府は堕落したか)
この世界の日本は、数々の災害や事件に巻き込まれてきたらしい。
幾度も現れる怪獣の恐怖。その度に多くの犠牲が出て、人々は恐れ慄いた。
邪神戦争もそうであったが、それよりも甚大な被害を出したのが十年前に起こった世界規模の戦争「第一次異星人戦争」であった。
全世界に現れた怪獣、異星人の総攻撃によって都市機能は長らく停止し、あわや人類滅亡が迫っていたらしい。
3人のウルトラ戦士が死力を尽くし、どうにか撤退に追い込んだらしいが、それ以降、3人のウルトラマンは現れる事がなかった。
以降、人類は自らの手で地球を守る為にパーソナルトルーパーを製造し、防衛戦力の増強をしていった。
(……ウルトラマン以外にも、この世界を護る戦士達は数多く存在する。門矢の様な、仮面を被りし戦士達が)
仮面ライダー、と呼ばれる存在が、ユーゼスの脳裏に浮かんだ。
それまで、一部の人間しか知っていなかった。
………仮面ライダー、という存在を。
だが、現在彼らは都市伝説として、人々の記憶の中に語り継がれている。
例え、歴史に名前が刻まれなくとも、彼らは確かに存在していた。
公で人々が知る事になったのは、第一次異星人戦争終結から1年にも満たない頃であった。
世界各地で復興が進む中、突如として「それ」は名乗りを上げた。
―――神に愛されし者「BADAN」―――
彼らの世界征服によって、世界は、特に日本は大打撃を受けた。
再び滅亡が始まろうとしていた矢先、バダンを壊滅させた者達がいた。
自らの死すら厭わず、無償で戦う戦士達。
強靭な機械の肉体を持つ者達。
仮面を被り、マシンに乗り颯爽と駆けつける彼らが、世界を救った戦士達「仮面ライダー」であった。
10人のライダーによって世界は救われた。英雄として語り継がれる彼らはその後、行方をくらませたらしいが、一説には再び悪を追い続けていたらしかった。
その後、日本に出現した秘密結社ゴルゴム、クライシス帝国と戦った者も仮面ライダーであるとされたが、その真相は闇の中である。
独自ルートで調べた「仮面ライダー」に関する事を思い出し、ユーゼスは物思いにふける。
(………仮面ライダーという存在は11人の筈だった。私と同じく時空を渡って来た門矢士はまだしも、何故城戸真司の言う『13ライダー』の事だけ存在がないのだ?)
城戸真司が仮面ライダー龍騎へと変身した後、取り調べにて明らかにされたのは「13人の仮面ライダーによる潰し合い」であった。
城戸が戦っていた当時、ミラーモンスターと呼ばれる怪物と13人のライダーを巡る戦いが勃発していたらしい。
その戦いで城戸真司は一度死んだが、神崎兄妹の手によって世界は『修復』され、元ライダー達は記憶を失って蘇った。
―――世界は『修復』された。
(いつも引っ掛かる………。何故、「ミラーワールド」に関する事だけが消され、残りを修復したのだ? 怪獣や怪人の事まで含めて消去すれば良かったのではないのか?)
そうなれば、他の仮面ライダーも普通の「人間」として生きるのではないだろうか?
怪獣が襲来する事も無かったのではないだろうか?
ユーゼスの疑問は絶えないが、それに答えられる者は居ない。その事に絶望するしかなかった。
そして、こんな考えをする自分が一人生き急ぐ様な感覚がし、少しむず痒さを覚えた。
(一度死んだこの体は、もう死ぬことを恐れないというのか………)
フッ、と息を吐くと、車が突然揺れた。
その揺れで、こっくりこっくり船を漕いでいたアクセルが目を覚ました。だらしなくよだれが垂れている。
どうやら、ユーゼスは長い間考え事をしていた様だ。
「おいおい、どうしちまったんだよ?」
「路面のアスファルトが剥離していただけです。車体には、何も問題ありません」
運転手の自衛隊員はそう答える。
ユーゼスは窓の外に視線を合わせた。
先程から見えていた廃墟が殆ど無くなり、一方でコンクリート片の残骸ばかりが目に入ってきた。
「もう近いな」
「はい、もう間もなくです」
そう言われた時に、検問所に辿りついた。
隊員が書類を渡すと、そのまま車を通す。どうやら、この先が落下の中心地点らしい。
数十秒の間揺られた後、ユーゼス一行は現場に到着した。
「着いたか………あれが調査団か?」
「ひえ~、あれはパーソナルトルーパーじゃないか?」
アクセルは車から降りると、目の前で片膝立ちする黒いパーソナルトルーパーを見上げた。
長く使われているのか年季が入ったそれは、その場を護るかのように配置されている。要人警護の為であろう。
「―――貴方が、ユーゼス・ゴッツォ博士ですね?」
調査団のテントから、一人の女性がコチラに向かってきた。
メガネを掛けた彼女もユーゼス同様、白衣を身に着けている。
「そうだが………確か貴方は、エリ・アンザイ博士でしたか」
そうユーゼスに言われ、安西エリは光栄です、と一言返した。
「本職は考古学なんですが、この調査にも協力させていただいています」
本部に案内します、と言われ、アクセルを引きずりながらユーゼスはテントに向かっていった。
「少佐、お二人をお連れしましたよ」
安西に「少佐」と呼ばれた男が、ユーゼス達の方を振り向く。
どうやら国連軍の軍人らしい。だが、立ち振る舞いは一介の研究者と言われてもおかしくはない。
「これはどうも、遠路はるばる起こして頂いてありがとうございます。……私は、国連軍の秘密情報部で活動しているギリアム・イェーガー少佐です」
ギリアムはそう言いながら手を差し出した。
「私はユーゼス・ゴッツォ……いや、もう私の説明は不要だろう?」
ユーゼスも応える様に手を出し、握手を交わした。
――瞬間、
(………!? こ、コレは………!)
ユーゼスは、何かが流れ込んでくる様な感覚に襲われた。
こんな経験は流石の彼も初めてである。
(ユーゼス・ゴッツォ………。俺と同様、並行世界を彷徨う宿命を背負った男、か)
(!? 心の中に話しかけているのか?)
ギリアムの声と共に、ユーゼスの中で徐々にナニカが入り込んでいく。
侵食されている、という訳ではなく、共鳴していると言った方が正しいのだろう。
(ああ……。だが、コレは俺の力じゃない。あの「機体」が俺達を仲介しているんだ)
すると、「機体」のイメージが徐々に浮かび上がる。
(……ブラック・エンジェル)
(あれは、我々を求めている様だ。……いや、俺よりも貴方の方だろうがな)
(どういう………、ッ!?)
突如、頭痛の様な鈍い痛みが走る。
意識に深く抉る様に走るそれは、ユーゼスの体を蝕もうとしていた。
(限界か………。これ以降は、口頭で説明させて貰おう)
ユーゼスの中に流れ込んで来ていたモノが、消えていく。そして、徐々にユーゼスは五感を取り戻していった。
「………!」
目の前には、ギリアムが立っている。
だが、既に握手は解かれていた。
「――それでは、あの機動兵器についての説明をしてもよろしいでしょうか?」
「あ、あぁ………」
先程起きた共鳴現象の影響が残っているのか、少し立ちくらみがしたが、ユーゼスはそれを振り払いながら説明を聞き始めた。
【???】
何一つ見えない闇。暗闇。
無限に広がる虚空の中に、ポツンと浮かぶ影が一つあった。
人間。
いや、それはかつて“ニンゲン”であった存在。
「―――ここは……?」
意識が覚醒した男は、自分の周囲の現状を確認するかのように眼をぐるり、と廻した。
「因果の果てよりも深い場所にある深淵の果て……か」
周囲には何も見えない。それどころか、自身の肉体すら見る事すら出来ない。
その深淵は、存在が消えた者たちが堕ちていく場所。
“彼”もまた、幾度、幾十度目の死によってこの場所を訪れていた。
「……まだ俺は、因果に縛られるのか」
男はそう言いながら溜息をついていた。
縛られた鎖は、未だ強く絡みつく。
何度脱出を試みようと、抜け出すことなど出来はしなかった。
だから、彼は半ば受け入れる様な形で、その宿命を背負ってきた。
無限に彼を取り巻く転生と死の輪廻の中で、かつて彼と共に戦った者たちに『力』を与える為に……。
「……俺は、何の為に……」
ふと、彼の体が軽くなっていく。
まるで体が少しずつ消えていくかの様な感覚。
それはもう飽きる程体験した、転生する合図であった。
男の存在は、再び何処かの世界に彷徨う。
だが、その世界には確実にある三つの存在がある。
自身の半身である、漆黒の堕天使。
自身が育て、やがて刃を向けなければならない、雌伏の戦士
自身を縛る因果の元凶であり、彼という存在を造った、『ユーゼス・ゴッツォ』という男。
「―――ユーゼス、今度こそ俺たちの因果は断ち切る事が出来るのか……?」
男は、イングラムはそう小さく呟いた。
仮面ライダーSPIRITSを久しぶりに読み返したら、すぐさま取り入れてしまいました(笑)
仕方なかった、アレが面白いのが悪い!
時系列的にはバダン壊滅から10年ほど経っています。
ぶっちゃけ、バダンとの決着はTVSP版みたいな感じでついています。
~次回予告~
ブラック・エンジェルに惹かれる様に、突如として怪獣が出現。
安西達を守るべく、ユーゼスはゼストへと変身するが……?
次回、因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST-
招かれざる異邦者(Ⅲ)
因果の鎖は、再び二人を縛り付ける……