因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST- 作:猫丸又三郎
ゼストに変身するのはもうちょい後かなと。
第一話 転生、目覚め
名も無き何処か。
幾人かの人間達が集まっていた。
「―――ユーゼス・ゴッツォが?」
「ああ。奴は因果地平に漂流していた筈だが、何時の間にか輪廻転生を行った」
「あの場所には誰か居たのか?」
「例の『負の無限力』らしき力を運んできた者が二人、それと奴だけだった」
空中に映し出されるフォロモニターには、ある世界からやって来た二人の人間の姿しかなかった。
かつて「御使い」と呼ばれた、因果律の番人よりも位の高い高次元生命体。その一派の一人であるアドヴェント。
もう一人は、黒の英知によって力を得た幾つかの人間の集合体。ジ・エーデル・ベルナル。
「二人共『Z』の世界で大罪を犯した人物であり、自ら望んで因果地平へ降りたそうだが?」
「因果律を捻じ曲げる事は至高神Zですらもかなわなかった。ユーゼス・ゴッツォが可能性へと至ったのだろうな」
一つの空間に集まった人間達。
因果律を乱そうとする者から、本来あるべき因果律を守る為に戦う使者。彼らはそれぞれが各並行世界の因果律の番人であり、虚空からの使者であった。
「今のあの男は、クロスゲート・パラダイム・システムを悪用するであろうか……?」
議長の様な立ち位置の男が、一人の男に向かって訪ねた。
白銀色の髪をした青年。その顔は、ユーゼス・ゴッツォに若干酷似していた。
「……イングラム・プリスケンの虚憶からCPSを造った奴ならまだしも、イングラムを認めた方のユーゼスなら、まだ変えられると思います」
青年は多少ためらいを感じながら、モニター上に映るユーゼスの姿を見た。
バルシェムシリーズを作り、打倒霊帝を掲げていた『α』世界の彼だったならば、遠慮なくクロスゲート・パラダイム・システムを使用するだろう。
だが、今転生したユーゼスはイングラムを駒としてでなく一人の地球人として認め、ウルトラマンの力を知っている。あんな暴走は起こさないと踏んだ。
「……最悪の場合、あの世界ごと彼を消さなければなりませんが」
「その時は、アレを使うがいい」
議長は重々しい面持ちでそう切り上げると、解散を指示した。
(……ユーゼス、貴方はまた因果律に縛られてしまうというのか……?)
光。
直視した瞬間、光が目を通り、網膜を刺激し、脳内に信号が届く。
それと共に、彼の意識が覚醒した。
「―――ッ、私は……………!」
体が上手く動かない。
とても長い時間眠っていたかの様に筋肉が萎縮しているのだろうか。
「動く……のか、動けるのか………?」
力を込め、やっとの思いで立ち上がった。両足が震え、筋肉痛で酷く痛む。まだ歩くには時間が必要だろう。
「痛み………私は、生き返ったのか!」
体中に激痛が走る中、彼は喜び歓喜した。生き返った、という表現が正しいのかはっきりとは分からないが、だが現にユーゼス・ゴッツォは此処に存在していた。
体の痛みを噛みしめる様に、少しずつ歩き始める。同時に、この場所の散策を始めた。
「民家……という事か?」
人気が少しも感じられないし、何より内装がボロボロでとても人が住んでいる環境ではなかった。
「………何?私の顔が……………ッ!」
壁に掛けられた鏡を覗いて、彼は息を飲んだ。
顔が、元に戻っているのだ。
ユーゼスはかつて重症を負い、顔をザラブ星人に整形されていた。だが今の顔は、その整形前の顔であった。
「単に時を遡ったのか、それとも並行世界の私に今の私の意思が流れ込んだのか………」
いずれにせよ、現状を整理する必要があった。その為にも、早く表に出なければ。
まだ体が本調子でないにも関わらず、ユーゼスは足を引きずるように廃屋から出ようとした。
その時であった。
「ギュルルアァァァァァァッ!!」
奇声だ。だが、人間が出せるような声ではない。酷く響く叫び声に、ユーゼスは顔をしかめる。
「鳴き声……これは、怪獣の声か!」
かつてはETF、フーマを使役していた事もあってか、怪獣、怪人、超獣についての知識があった。だが、こんな声をした怪獣は、ユーゼスも知り得ていない。
突然変異した怪獣若しくは超獣が打倒といった所であった。
「……ともかく、一度確認する必要があるか」
もし元の世界を遡っていたならば、この世界の自分が犯すミスを取り消す事も出来るし、それに第二、第三の超神ゼストを生む事も阻止できる。
仮に違う世界の場合でも、ユーゼス自身の知識が怪獣退治の為に必要になるかもしれない。
そして、あの光に願った『力』がどのように発現するモノなのか確認しなければならないのだ。本当に願いが叶ったとなれば、その力をどう生かしていくのか重要にもなってくる。
この世界を護るのか、敵として立ちはだかるか………。
それを見極める為にも、一刻も早く外に出なければならなかった。
扉を蹴破る様にして開けた。瞬間、外の光に照らされ、一瞬周りが見えなくなった。
「……コレは………!?」
大きな港。高層ビルが幾つか建つ此処は、どうやら日本の様だ。それも首都である東京。
世界有数の先進国の街が、怪獣一匹相手に半分以上が破壊されていた。
「何という事だ、コレは!?」
流石のユーゼスも、これには驚きを隠せなかった。
廃屋はどうやら小山の中にあったようで、周囲の風景が見渡せる。所々から火が出て、黒煙の筋が幾つも空高く立ち上る。
逃げ惑う人間達の波が出来ており、間違いなくあの中では事故も起きているだろう。
目の前にそびえる怪獣……ベムラーに良く似た怪獣は人間の存在など無いに等しいと思っているのか、蠢く人の波を構わずに歩みを進めていた。
遠く過ぎるせいでよく見えないが、ベムラーが歩く度に奴の脚周りが赤くなっている様に見えなくもない。市民の犠牲は途方もないだろう。
あの巨体を相手に、宇宙刑事や超人機などの人間クラスのヒーローでは太刀打ちなど出来る筈などない(転生前、何度かギャバンやメタルダーがサイズ感関係なくブン殴ってた気がするが、眼の錯覚であろう)。
だが、防衛隊が出てくる様子もない。この世界にはウルトラ警備隊は無いのか?
そう思っていると、ユーゼスは音に気が付いた。
ブオォォォォ、という風を切る音だ。こんな音を出すは、彼の知るモノであろう。
『各機、連携して怪獣を潰すぞ!』
『『了解!!』』
「あれは………アルブレードか」
前の世界でも目にした事がある、人型機動兵器「パーソナルトルーパー」の量産機だった。ブレードトンファーとGレールガンの携行武装を持つが、果たして怪獣に効くのかは謎である。
「軍が戦っている間に……私は自分の力を知るべきか」
そう呟くと、廃屋から立ち去ろうとした。
アルブレード隊が展開している今、怪獣の目はそちらを向いている筈だ。
今が絶好の機会だった。あの『力』が直ぐ発現出来るのであれば、戦う事も可能なはずだ。
ウルトラマンと同じ力をもってして………。
「―――何処へ行くつもりだ、ユーゼス・ゴッツォ?」
突如、目の前の空間に何かが覆われた。白銀色のオーロラ。そのカーテンの中から現れたのは、一人の青年であった。
「っ!……貴様、何者だ」
ユーゼスは即座に戦闘態勢を取った。
生身で戦えるかはだいぶ疑問点が残るが、それでも最低限、喧嘩程度なら出来る。
「おいおい、そう身構えるなって」
青年は、少しずつだがユーゼスに近付いた。一歩一歩、慎重な足取りで。
それと同時に、首から下げるマゼンタカラーのトイカメラを手にした。
今時珍しい二眼レフ、フィルムタイプだ。
(まさか、アレは武器なのか?)
等と思考していると、
―――パシャリ
「クッ!」
突然の出来事に驚き、一瞬でバックステップを取った。カメラレンズから不可視光線でも出たと思ったからだ。無論、そんな攻撃ならユーゼスは回避も防御も取る事は難しい。
だが、青年は一向に攻撃を仕掛けてくる様子はなかった。
「考えすぎだ。俺は戦うつもりなどない」
青年はそう言うと、両手を上にあげた。降伏の意なのか、非交戦の意なのか。
先ほどのシャッター音は単に、ユーゼスを撮っただけの事。どちらだろうと、今のユーゼスは安心した。
「貴様は何者だ?……何故、私の事を知っている」
問い詰める様に訊くユーゼスを睨みつつ、青年は口を開いた。
「俺は、門矢。門矢士」
そう言った瞬間、士はあるモノを取り出した。
辞書より小さいサイズの箱。カメラにも一見見えるソレを手にして、言った。
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
―――今ここに、全能なる調停者と世界の破壊者が並び立った。
前書きの通り、ユーゼスさんが変身するのは次位かなと。
士の登場は、最後の一文を書きたかっただけです。
大体3000文字ペースをキープかと思います。