因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST-   作:猫丸又三郎

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 部活の大舞台が終わったので、これからは1ヶ月程は数話ほど更新出来そうです。
 今年中に話数を貯めておかなければ……



第二話 破壊者と調停者

『お台場近くに怪獣が出現した』

 

 

 そんな事を聞いて、急ぎ赤いバイクを駆る男が一人いた。

 多くの人が逃げ惑う中で、唯一逆方向に向かって愛車を走らせる。

 恐怖がない、という訳では無かった。だが、真実を公表するというOREジャーナルの方針の為にも、この騒ぎを報道し切ろうと心に決めたのだ。

 バイクを走らせている間も、爆音や悲鳴が絶えず響く。とてつもなく心が痛い。だが、今の自分は何も出来ない程無力だ。

 人、一人の命すらも護る事なんて出来ないかも知れない。

 

 ―――人々を護る『力』があれば………。

 

 ふとそんな言葉が浮かんだが、頭を振って考えを払った。一介のジャーナリストが、そんな事を持てる筈ないのだから。

 

 ―――ここは素直にウルトラマンを信じよう。

 

 そう思って、城戸真司はバイクのスピードを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………仮面ライダー、だと?」

 

 聞きなれない単語に、ユーゼスは多少だが首を傾げた。

 

「そう。……お前の言葉で言えば、正義の味方、って事か?」

 

 そう言うと、持っていたデバイスらしきモノ――ディケイドライバー――を腰に当てた。すると、それがベルトとなり、腰に巻かれる。

 更に士はライドブッカーから一枚のカードを取り出した。中央に描かれるのは、トイカメラと同じくマゼンタピンクの色をした仮面の戦士。

 そのカードを裏返すとベルト――ディケイドライバーに装填、サイドハンドルを勢い良く押し込んだ。同時にある言葉を言いながら。

 

「変身」

 

 ――――KAMEN RIDE  DECADE!――――

 

 突如、士の周囲に10人の似たような影が出現し、次々にそれが体に組み込まれる。更に幾つかの線が空に浮かび、それが顔面に刺さった。

 体を覆うスーツがマゼンタに染まり、目が緑に輝く。

 左右非対称の体。胸には漢字の「十」の様な意匠。

 

「―――仮面ライダーディケイド」

「ディケイド……」

 

 その姿を見た時、ユーゼスはある事を思い出していた。

 転生以前の世界にも、似たような戦士達が居たからだ。

 

 共にバード星からやって来た宇宙刑事達、ギャバン、シャリバン、シャイダー。

 地球人によって造られた人造の戦士達、キカイダー、メタルダー。

 士の様に変身し、戦闘スーツを身に纏う男、快傑ズバット。

 

 彼らとディケイドの違う所は(一応色々と差異はあるが)、彼らは仮面ライダーとは名乗らなかった所くらいだろうか。

 

「見て分かったか?コレが俺だ」

 

 そう言うとドライバーのサイドハンドルを引っ張る。すると、一瞬でディケイドから門矢士へと元通りに戻った。

 ギャバン達もそうだが、この機能はどうやったら出来るのだろうか。科学者の血が騒ぐのも無理もない。

 

「さて、それじゃあアンタの正体を見せてもらおうか?」

 

 士は近くに倒れていた古木に座ると、興味と警戒が織り交ざった眼でユーゼスを見つめた。

 

「………まだ、私は自身の力を試した事がない。無意味にこの『力』は使いたくないな」

 

 ユーゼスは自身の変身を明かす事を拒んだ。

 如何せん、まだ一度もこの『力』を使っていないし、何よりライダーの様な変身が出来るかすらも分かっていないのだ。

 化け物、果て待てデビルガンダムの様な異形になってしまうやもしれないのだ。

 

 仮に『力』の加減を間違って暴走した時にこの男――門矢士と言ったか――が止められるならまだしも、それでもし超神ゼストと同等、それ以上の力ならばこの世界が崩壊してしまう可能性も有った。

 かつての浄化弾の様な事は繰り返してはならないのだ。

 

「全能なる調停者という割には、思った以上に臆病なのか?」

「貴様ッ……!」

 

 ユーゼスは士に駆け寄り、胸倉を掴んだ。臆病、という言葉が、彼の中で大気浄化弾の失敗に重なっていた。

 浄化弾の失敗、警備隊に拘留され、重症を負い、アイデンティティを失いかける……。

 ユーゼスにとっては、二度と思い出したくもない記憶だ。その失敗があったからこそ今持っている『力』を使おうとはしないのだが。

 

「それに、俺の相手をしている暇があるのか?あの怪獣、もっと被害を増やしているぞ」

「何っ!?」

 

 たった数分間目を離していた隙に、ベムラーは先ほどのアルブレード隊を全滅に追いやろうとしていた。

 大破しながらも辛うじて動いている一機が、ベムラーの頭部目掛けてGレールガンを放った。

 投射される実弾がベムラーの左目を抉り、そのまま左側頭部を吹っ飛ばした。

 飛び散る脳漿と肉片。だが、ベムラーは何事も無かったかの様に残った右目でアルブレードを睨みつけた。

 

『うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 

 通常種ならば細い腕だが、このベムラーは片手でアルブレード一機を軽々と持ち上げる。握りつぶされた頭部からはオイルが噴き出し、まるで断頭された騎士の様に見える。

 そのままアルブレードを頭一つ分程高く上げると、コックピットが丁度口と同じ高さになった。

 ベムラーは大口を開け、口の中では閃光が灯る。

 

「マズい、あの距離で熱線をまともに食らうとなると……」

 

 ――ギャアオオォォォォォォッ!!

 

 叫びを上げながら、ベムラーは熱線を放射した。無論コックピットに直撃する。

 放射された直後はまるで効いていないが、徐々にその装甲が飴細工の様に蕩け出す。そして、

 

『助けてくれェ、助けてくれェ!!』

 

 パイロットは迫りくる死への恐怖に、ただ泣き叫ぶだけであった。

 無慈悲にも叫びは届く事なく、熱線は装甲を次々溶かし、アルブレードを両断した。

 

「まさか……この世界の怪獣は、あそこまで進化しているのか!?」

 

 ETFにもヤプールが開発した超獣が居たが、あそこまでの凶暴な進化を遂げた者は少なかった。

 ベムラーなど、ユーゼスにとってはアルブレードの様に使い捨てる駒の様なものであった(そもそもEFTが駒だったけども)。

 

 とてもじゃないが、PT程度では止められる筈もない。SRXやウルトラマンでなければ―――

 

「……………この『力』を使わなければならない、という訳なのか?」

 

 確かに『力』に興味はある。だが、そんな興味が招いた結末を知っている故に動く事が出来ないのだった。

 

 超神ゼスト。

 

 捕獲したウルトラマンのカラータイマーを分析、複製を行い、その力を利用しあらかじめ造らせておいたアルティメットガンダムとクロスゲート・パラダイム・システムに力を与えた後の最終形態。

 その姿はどことなく彼の光の巨人と似ており、繰り出す技もまた酷似したモノであった。

 CPSの力を完全に使える様になった状態のゼストはまさに生命を超越した存在、神の如き力によって因果律を支配出来た。

 イングラム達にヤプール人が何度倒されても、気が変わらない限り復活させる事が可能であったし、それ所かイングラム達の存在自体を消す事も出来ただろう。

 再びその能力を手にした時、また同じ事を繰り返しかねない。そう自覚しているのだ。

 力は人を増長させ、理性を消失させる。

 ユーゼスの様な頭の良すぎる人間程、飲み込まれやすいのだ。

 

「この世界にはウルトラマンが存在する筈だ。彼らが居れば、私など必要ない」

 

 そう言い切ると、ユーゼスは士に背中を向け、何処かに行くのか歩き出した。

 

「………此処にそんな奴らが居るかなんて、俺が知る由もないけどな」

 

 ぶっきらぼうにそう一言だけ士は言った。

 

「何を言う。お前はここの世界の住民では無いのか?」

 

「ああ。俺は、並行世界から来たからな」

 

「何………」

 

 ユーゼスは、自分と似た様なこの男を一睨みした。

 

「……私の事を知っていた、という事も関係あるのだな?」

 

「そうだな……アンタの事を知らされて、こんな世界に来たからな」

 

 士はそう言うと立ち上がり、ユーゼスに近付く。

 

「―――お前、因果律を操作する気なのか?」

 

「ッ!!何故、その話を!?」

 

「前の世界で会った奴からそんな話を聞いたからな。……もしそんな事を再びやり始めた場合、ソイツを殺してでも止めろ……ってな」

 

 大方、その者は因果律の番人が寄越した使いなのだろう。ユーゼスが犯した罪は重い。

 だがそもそも、別世界のユーゼスが並行世界を無理やり繋げ、虚構の世界を作り上げていたのだ。

 要注意人物に指定されるのも、当然といえよう。

 

「で、どうなんだ?今の所」

 

「………今の私は、かつての罪を償おうとも考えているのだ。あんな真似はもうしなくはない」

 

 ユーゼスは素直な感想を言ったが、聞いてきた本人である士は特に面白くなさそうな顔をしている。

 そんな事に若干イラつきを覚えるも、どうにか心を静めた。

 

「……しかし、参ったな。幾らディケイドの力があっても、あんなバケモン相手にどうしろって言うんだ?」

 

 士はそんな事を言いつつ、ベムラーを眺めながら少し頭を掻いていた。

 

『世界の破壊者』なんて名乗っていたのだから、多少の『ルール無視』も容易そうだ。だが、あんな巨体相手ではどうしようもない。

 仮面ライダーJのカードがあればまだしも、ソレを持っていたのは仮面ライダーディエンドこと海東大樹だ。別に40m程の大きさで戦わなくとも良さそうだが、現在の力だけであの怪獣を吹っ飛ばせられるかが問題だった。

 

「……それに、殆どのライダーにも変身出来ないしな」

 

 ボソッと小声でそう呟いたので、ユーゼスには聞こえはしないだろう。

 何故かは知れないが、士はこの世界では他のライダーに変身出来なかった。

 クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、カブト、キバ。

 7種のライダーカードを試したが、いずれも何故か『ERROR』扱いされて変身出来ずにいた。

 その原因と思ってユーゼスを訪ねたのだが、どうやら彼の力ではなさそうだ。

 ユーゼス自身、その力がどういう物なのか分かっていない為、確証は持てないが、彼から放たれる違和感はディケイドライバーとライダーカードに干渉する様な感じではなさそうであった。

 無論、士の考えであるから、どう転ぶか分かったものではないが。

 

「ユーゼス・ゴッツォ自体がどうなるか分からないんじゃ、話にもならないな………俺は傍観者を気取ってみるか」

 

 そう言うと、士の背後に再びオーロラが出現した。

 ……それに、まだ確認しなければならない事があった。

 

「っ、貴様、何処へ行く!」

 

「これ以上、この場所にとどまっとくのも危険なんでな。俺は一旦退散させてもらう」

 

 そう言い残すと、ユーゼスを残し一人オーロラの中へと消えていった。

 完全に士を飲み込んだオーロラもまた消滅し、元あった空間に戻る。

 彼がそこに居たという証拠は一つ残らず消えていった。

 

「………私の力を傍観する気か」

 

 大体の士の予想を立て、ユーゼスはそう結論付けた。

 ユーゼス自体、能力を知らないのであれば、外から観察する事が一番だろう。

 

「……なら、その手に乗ってやろう」

 

 ユーゼスは小山を降り始めた。

 目指すべきはベムラーのいる街の埠頭。

 そこならば被害が出ても最小限で済むと思ったからだ。

 

 ―――奴と、戦う―――

 

 どうなるかは分かったものじゃない。だが、これで再び死ぬのであればそれでも良かった。

 どうせ因果律から逃れられる訳ではない。その時が終わりだったという事だ。

 

「だが、この命は最後まで使わせてもらうぞ……」

 

 かつてユーゼスが起こした事を、誰かが知っている訳でもない。

 だが、彼はそれでも贖罪をしたかった。

 ウルトラマンが教えてくれた事。宇宙に神など要らない。ウルトラマンもまた、人間と同じ銀河の同胞だという事。

 それを命を懸けて気付かせてくれたあの巨人達に、今度は別の方向から近付きたかった。

 同じ、同胞として………。

 

「―――私に応えろ、ゼスト。正義に立ち上がれるのであれば、再びその力を……ウルトラマンと同じ力を、この私の示して見せろッ!!」

 

 ユーゼスの咆哮は、彼を取り巻く空間に響き、そして―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――虚空の彼方から、かつて『超神』と呼ばれた者を呼び起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 少しづつ参戦作品の人達を消化しなければ……
 毎話毎話でどうにか顔見せだけでも出来ればいいなぁ、と思っています。今回の冒頭の城戸ちゃんの様に。

 ディケイドもユーゼス同様、因果律の番人に追われてそうな気がします。

 ……もしかして、鳴滝って……!?

ー追記ー

何のボケなのか、初投稿の際にサブタイトルを入れ忘れておりました。誠に申し訳ありません。
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