因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST- 作:猫丸又三郎
今回から少し書き方変わってます。
第八話 新天地、そして新世界
【都内シェルター付近】
周囲一帯のノイズの反応が消えた頃、特異災害対策機動部二課メンバーが地上で情報操作や被害情報の収集を行っていた。
その中で、司令である風鳴弦十郎もまた、最前線にて立ち仕事を行っていた。
「―――全く、とんでもない被害だな」
二ヶ月前の怪獣再来騒ぎに比べればまだマシなレベルだが、それでもここ数か月分のノイズ出現での被害にしては大きかった。
活動の活発化が激しくなった一端があるとすれば、ここ最近“ルルイエの遺跡”で計測されつつある高いエネルギー係数が関係するのであろう。
未だ関係性は不明ではあるが、かつてから怪獣が出現する度にノイズの活動も連動して高まっていた。
つまり、ノイズの活性化=怪獣の出現とも取れる。
現在の特異災害対策機動部二課が巨大怪獣に対抗する手立て。
それはシンフォギア装者と、今は封印されし“あの機体”―――。
『司令、例の男三人を連行してきました』
耳に入れたイヤホンからオペレーターである藤尭朔也の声。彼らがやっと到着したらしい。
弦十郎はタブレットを操作し、カメラ映像を眺めた。
「……ノイズの大量出現、それとノイズを倒せる事の出来る奴らか…………」
視界に捉えられた三人の青年、その内の二人が“あの存在”であるらしい。
未来の報告にあったそれは、自分も聞いたことがある都市伝説であった。
「仮面ライダー。人類の味方、か」
今まで観測出来たライダーは1号・2号を初めとした、10人の仮面ライダー。
彼らはクライシス帝国の滅亡後に各地へ旅立ち、そこの地を護っているらしい。
だが、伝えられてきた情報にはない、新たな仮面ライダーがこの世界に現れた。
ディケイト、龍騎の両者。
それぞれがノイズの炭化攻撃を無効化出来、特殊な力を持ったカードを使役するらしい。
彼らの力、そして、訪れて来るあの男の力があれば―――
弦十郎は、来るべき時を予感していた………。
因果律の鎖を越えて -URTLA・ZESTー
第8話 新天地、そして新世界
【特異災害対策機動部二課仮設本部・潜水艦内】
「―――ようこそ、特異災害対策機動部二課へ!」
そんな弦十郎の声を合図に、複数のクラッカーが鳴らされる。
二課の仮設本部となっている潜水艦のブリッジは、異様な空気に包まれていた。
天井から吊るされたパネルには『ようこそ、ユーゼスさま!』等と書かれ、歓迎の意がこれでもかと表されていた。
そして、大量の職員たちの拍手に迎えられたユーゼスは若干顔を引き攣りながら「何だコレは……」と呟いた。
無理もない。
試しに、と思って訪ねた先に現れたのは潜水艦。そして、スーツを来た青年(何か忍者に見えたのは気のせいか?)に案内されて入ったその中にあったのが、こんなお祭り騒ぎだったのだから。
「いや~、大気浄化弾を開発した世紀の科学者、ユーゼスさんにお会い出来て光栄です」
そう言って近付いて来る司令官の風鳴弦十郎は、ユーゼスと半ば無理やり握手を交わした。
ユーゼスがそんな彼を訝しむ事に反論は出来ない。
赤いTシャツに変にボサボサに見える髪、何故か胸ポケットに先端を入って曲がったネクタイ。こんな男が司令というのはどう見てもおかしい。
ユーゼスはしらっと「この組織……マトモじゃないのか?」とも思い始める始末であった。
「あぁ、ありがとう……で、いい加減手を離してくれないか? 凄く痛いのだが」
結構な力で手を握られていたので、ユーゼスの手が真っ赤になっている。弦十郎には悪気は無かった様子だが、どうも思考を読めない雰囲気にユーゼスは困惑していた。
「あ、失礼した…………では、本題へと入りましょうか」
そう言うと、弦十郎は先ほどまでのおちゃらけた雰囲気から一転して、真剣な顔になった。
「……我々、特異災害対策機動部二課は現在、世界中で依然発生している特異災害……通称、ノイズによる人的被害を最小限に抑える為に活動しています」
そんな事はユーゼスは下調べし尽していた。
三ヶ月に起きた『ルナアタック』にて、落下する月の破片を破壊した三人の英雄、シンフォギア装者と共にノイズと日夜戦っているらしい。
ルナアタック以前までは極秘であったシンフォギア・システムの開示によって、世界中でやっとノイズに対するマトモな対策が取れる様になったのだ。
「………ですが、我々には未だシンフォギアやその他の設備も完全に揃わず、防衛もままならない状況です。そこで―――」
弦十郎は頭を下げながら、言葉をつづけた。
「―――我々と共に世界の為に戦って下さい、ユーゼス・ゴッツォ博士」
そう言われて、ユーゼスはうつむきつつ少しだけ考える振りをした。
ここに来るまでに大体そんな事を言われるだろうとは気が付いていたが、ユーゼスは未だどこの組織に組するかを検討している最中だ。
大体、最初に望んでいた組織はGUTSであった訳である。
ウルトラマンティガや過去のウルトラ戦士のデータを持っているのもそこであるし、何より昔の経験が一番生かされそうな場である。
ノイズもそれ相当に重大な存在であるが、倒す事の出来ない怪物相手にどうやってゼストで立ち向かえばいいのやら分からずじまいなので、ここまで決断するのを渋っていた訳である。
「無論、衣食住や自由、超法的な措置の提供もご用意できます。国際問題になりえない程度の事ならば、無理にでもご用意するつもりです」
弦十郎は中々悪の顔をしつつそう言う。どう見てもヤバい集団臭がするのは気のせいではない。
だが、そんな言葉に騙される程安い男ではないのがユーゼス・ゴッツォであった。
「…………なら、『シンフォギアシステム』の構造を開示して貰えるか?」
流石に無理だろう、等と思いつつ無理難題を引っ掛けてみる。あっさり開示したらそれはそれで『セキュリティどうなっているんだ?』とでも思い、開示しないならば立ち去るのみだ。
やっている事は酷いとは分かっているが、これ位したって損はないと思う。
「シンフォギアシステムの開示………ですか。それは、我々の組織に加入して頂ける事として受け取ってもよろしいのですかな?」
「開示し、そのデータを渡して頂ける約束が守られるなら、宜しいでしょう」
こう口先では言ったが、ユーゼスはシンフォギアと呼ばれる装着兵器に興味がある訳ではなかった。
どうせ解析し生産可能になったところで基となる聖遺物はそうそう手に入るものではないし、手に入ったとしても起動できる程のフォニックゲインを持つ者を見つけ出すのは相当骨が折れるであろう。
そんな面倒な事をしてまでGUTSに取り入る必要もない。
この問答も、特異災害対策機動部二課を試している、とでも言うべきか。
「………分かりました。我々の持つシンフォギアシステムの詳細なデータ、全て開示しましょう」
弦十郎はそう言って笑った。人柄の良い男である証拠が見える。
ユーゼスは彼の笑顔に釣られ、少し笑う。
だが、簡単に了承した弦十郎とは反対に一気に焦る者たちが数人いた。管制オペレーターの藤尭朔也、友里あおい、それとシンフォギア装者本人である風鳴翼である。
「し、司令!? そう簡潔に処理出来る問題ではありませんよ!!」
「幾らシンフォギアシステムがある程度開示されたと言っても、ウチで管理する三基全て開示するなんて……」
「司令、この男を組み入れる為とはいえ、その様な事は……!?」
そう言われた弦十郎だが、彼はあっけらかんとしている。
ユーゼスはブレる事がない弦十郎の態度に若干感銘を受けつつ、「三人の言う事の方が当たり前じゃないのか?」等とも思っていた。
「一応形式上は斯波田事務次官にこの件を上申するが、あの人はどうせ了承してくれる。だから、俺はこうして大きく構えられるのさ」
そう格好つけて言う弦十郎だが、例の事務次官のイメージがいつも蕎麦を啜っている風景しかない事に気が付き渋い顔をし始める。
ともかく、突然現れた天才科学者を組織に勧誘する事に成功した事で、特異災害対策機動部二課はある程度(?)の技術力向上を行えたのだった。
「―――さて、ユーゼス博士の次は君たちの処遇だが……」
別室に待機させていた三人組、アクセル&真司&士の方を訪ねた弦十郎は、彼らの顔を一通り眺めてから一言だけ言った。
「シンフォギアシステムがある程度開示した今日とはいえ、その装者である者達の事は明かされてはいない……だが、それを知ってしまった以上、コチラは黙って帰す訳にはいかないな」
先ほどとは打って変わって、ドスの効いた声でそう言う弦十郎。
だがアクセル・アルマーと門矢士はその雰囲気を感じないかの様にケロリと、
「おいおい、俺はシンフォギアなんてモノの存在を今日初めて知ったんだぜ?」
「俺はそんなモノには興味はない。早く離せ」
と口々に言う。
だが、それなりにそういう規則を知っている城戸真司だけは顔を青くしていた。
「口止めだけじゃなくて、もしかして退社させられるのか……いや、それ所か禁固とかまで………(泣)」
大久保編集長のコネ程度じゃ、とても救われそうにはない。実に終わった。
とことん運がない自分を嘆きつつ、訪れそうな未来を予感していた。
シンフォギア装者の立花響、風鳴翼、雪音クリスと小日向未来は、そんな残念イケメン三人組を壁の端から見る。
未来にとっては自分の命を助けてくれた恩人、響たちにとっては共にノイズ達を倒した戦士。
そんな彼らを敵と疑うのは失礼だが、唐突に現れた彼らが某お隣の自由な国とかからのスパイである可能性も拭えなかった。
「あの人達……疑われちゃうよね、そりゃ」
「でも、記憶喪失のアクセルさんまで疑われるなんて……私を助けてくれたのに」
その場に偶然居合わせた……もとい目覚めたアクセルは、潜入スパイの容疑がかけられていた。
まず、公園で平然と寝ている時点でだいぶ怪しい人間なのだが、唯一の持ち物とも呼べる変形機構付刀「ミズチ・ブレード」の存在
響と未来は、出会ったばかりの時のアクセルを思い浮かべる。
あんな風な阿呆(?)みたいな雰囲気の男にはスパイなんて器用なマネなど出来ないだろうし、そもそも記憶喪失で潜入するという新しいスタイルで来る事もないだろうに。
「へっ、あの野郎を信じるっていうのか、じゃあ!? あからさまに怪しい奴だろ!!」
クリスは懐疑的な目をしてそう言う。……いや、よく見ると頬がほんのり紅くなっている。
響と未来は、最初に出会った時にクリスがアクセルにセクハラ的発言をされていたのを思い出す。
「何だったっけクリスちゃん……確か『………君の様な美人がキスしてくれたら思い出せるかもな』だっけ?」
そう訊いた響に反応してか、クリスは更に顔を真っ赤にさせる。
「ばっ、馬鹿な事を思い出させるなッ!」
だが本人的にはあの言葉が十分に効いていたのか、プルプルと真っ赤になって震えている。こんなクリスを見たのは、響もクリスも初めてであった。
どうやらそういう言葉に対する免疫は無かったらしい。からかえる素材を手にした響は悪い笑みをこぼす。
「ふふふっ…………」
「な、何だよその笑い…………(汗)」
年相応なじゃれ合いを繰り広げる響たち。
その姿を、ユーゼスは遠くから見つめていた。
「………まだ年端もいかない少女達が戦わなければならない世界、か」
かつての世界でも学徒兵はいた。だが、彼らが前線に駆り出される事は殆どない。
目の前にいる少女たちは、命を懸けて戦っている。
一瞬で灯が消えるかもしれない戦場で歌っている。
ユーゼスは彼女たちをイングラムの仲間たちと重ねる。
決戦の最中、最後の力を振り絞って散っていった超人機メタルダーこと剣流星。
彼と同じ末路を辿る者がいずれ現れてしまう事を、ユーゼスは恐れていた。
「……彼女たちを戦わせない世界にしなくてはな」
自分に出来る事はゼストとして戦う事だけではない。
この頭脳を生かし、仲間たちを可能なまでサポートする事も彼の戦いだ。
「必ずこの知識と経験を生かさなくてはな、イングラム…………」
この世界には居ない自分の半身を思い、ユーゼスは歩き出した。
生きていくべき新天地へと―――
【???】
「―――世界の終焉が訪れる……もう間もなく…………」
暗闇の中に佇む、一人の男。
手に持つ箱は起動スイッチらしく、幾つかのボタンが並んでいる。
「もはや、誰も我々を止める事は出来ない………“影”が現れる時が来たのだ!」
スイッチを押し込む。
すると、部屋中を激しい光が包んだ。
時折電流が迸り、壁伝いに閃光をまき散らす。
「フハハハハッ、我らに栄光あれェェェェェ―――」
その男の狂気と共に、その実験施設は光に包まれた。
「一足、遅かったか…………」
閃光と共に爆炎が響く中、研究所が崩落していくのを目撃する。
あと数分早ければ、こうはならなかっただろう。
漆黒の闇と同化した黒鉄の亡霊、ゲシュペンストTypeRはメインカメラを赤く光らせる。
「……だが、これではっきりした。やはり“彼ら”は私のいるこの“世界”にやって来る筈だ。その前に、立ち向かう為の力を集めなければ……」
コックピットに座るギリアム・イェーガーは操縦桿をより一層強く握りしめながら、自分が出来る事を模索していた。
彼のせいでこれから起こる事を、なるべく早期に終結させる為に。
「俺の予知が正しければ……彼が力になってくれる筈だ。どうにか接触しなければならない様だな………」
そして、その男の顔を思い浮かべる。
「超神ゼストいや、ユーゼス・ゴッツオ………彼なら、この“世界”を縛る鎖を破壊出来る………」
世界を包もうとする影が、侵攻を始める…………。
次回はゼストォ……
追記)ゼンガー親分は生身でも斬艦刀振れるよね……
~次回予告~
突如として現れた、謎の夢。
ユーゼスに刻み込まれた過去の大罪が、彼に絶望を見せ始める。
そして同時刻、この世界に漆黒の機体が堕ちる……
次回、因果律の鎖を越えて -ULTRA・ZEST-
招かれざる異邦者(Ⅰ)
因果の鎖は、深く彼らを縛り続ける………