ゼベルに連れられ、アラモードとエリアスはウンディーネ領の街の角に有るレンタル式のプレイヤーホームを訪れた。
「おじゃまします、アスナさん。入っても構わないですか?俺とアズワルドのクラスメイト二人を紹介したいんですよ」
「別に構わないわよ、ゼベル君。アズワルド君の通う学校のクラスメイトに会って話せればいいなと思っていたし、入って構わないわよ」
ゼベルに続いてアラモードとエリアスもプレイヤーホームの中に入ると、リビングに水色の長髪をした綺麗な女性の姿が見えた。名前はゼベルが言っていたのでアスナだと解っているが、その名前に聞き覚えが有った二人はゼベルに尋ねた。
「ゼベル、聞きたい事が有るんだけどいい?」
「何だ?」
「アスナさんって、もしかしてアズワルドの過去の話で出てきたSAOのプレイヤーだったアスナさんの事?」
「そうだぜ。そのアスナさん本人だ。アズワルドから紹介されて知り合ったんだ」
「そういう事よ。一応、説明しておくけど私はアスナ。種族はあなた達二人と同じウンディーネ、それとアズワルド君同様にSAO帰還者の一人よ」
アラモードとエリアスの二人にアスナが自己紹介を済ませると、二人もアスナに自己紹介をする。
「私はアラモードです。アズワルドとは現実の学校の教室で隣の席です」
「私はエリアスと言います」
「アラモードちゃんにエリアスちゃんね。エリアスちゃんの名前はALOの女性プレイヤー達の間に広まっているから聞いた事有るわよ。三日前にALOを始めたばかりなのに高い実力を持ったプレイヤーだと聞いたわよ。それでその辺の男よりはカッコいいと噂されているとも聞いたわね」
「私はカッコいいと言われるのは求めていないんですけどね・・・」
「やっぱり、そうよね。女性としてはカッコいいよりは可愛いと言われたいモノよね。私はエリアスちゃんと少し違うけど、回復魔法を唱える後衛だけでなく、前線に出て攻撃する前衛型の戦いをしているんだけど、私と一緒のパーティーにいた人達からはバーサクヒーラーなんて言われたのよ。本当に失礼だと思わない?、私だって回復や魔法での援護ばかりじゃなくて、前線に出て戦いたいのよ!」
『そ、そうなんですか・・・(バーサクヒーラーって呼ばれてる理由が何となく理解出来るんだけど、言ったら恐そうだから言えないから黙っておこう・・・)』
アスナがバーサクヒーラーだと呼ばれる理由が何となく解るが、アラモードとエリアスの二人は口に出すべきでは無いと思い、アスナの話に相槌を打っておく事にした。
アスナは少し落ち着くと、アラモードの装備を見て初期装備だと気付いたのか自分のアイテムストレージから複数の種類の武器を取り出した。
「アラモードちゃんの装備は見たところ初期装備よね?今、私のアイテムストレージに有った武器なんだけど、この中からアラモードちゃんがしっくり来る武器が有ったらあげるわよ」
「えっ、いいんですか!?」
「いいのよ。この武器だってクエストで得た報酬や戦闘でドロップした物だし、好きな武器を選んで持っていていいよ」
アスナがこう言うので、アラモードは有り難くアスナが出した武器から自分に合う武器を選ぶ事にした。アラモードは手にして確かめながら、しっくり来る武器を探していると、レイピアがしっくり来たのでレイピアに決めた。
「これかな。私は前線に出て戦うのは少し向いてなさそうだから、魔法を使って援護する後衛の方が向いてると思ったの。レイピアならヒット&アウェイの戦術が出来そうだし、後方から魔法での援護を中心にするならこれがいいかな」
「そうね。私もレイピアを使うんだけど、レイピアでの攻撃はスピード重視だからヒット&アウェイを主にする人にはオススメね」
「じゃあ、このレイピアは貰っておきますね。ありがとうございます、アスナさん」
「どういたしまして、アラモードちゃん。今日はキリト君達は現実で予定が入ったみたいでログイン出来ないらしいから、私で良ければ今日1日同行するけどいいかな、ゼベル君?」
「はい。そのつもりで来たので、アスナさん。アラモードへのレクチャーをお願いします。エリアスはどうする?」
「そうね、ここで会ったのも何かの縁かと思うし、私も一緒に行く事にするわね」
アラモードがアスナからレイピアを貰った後、四人はアズワルドと合流する為にウンディーネ領の街の入り口前に移動したところでタイミングよく飛行していたアズワルドが降りてきた。それとアズワルドの後ろにいる男の姿も確認した。一応、アズワルドからゼベルに送られてきたメッセージで岡島のアバターであるフォーカスの存在は知っていたが、1日で現実での知り合いにここまで会うとさすがに驚くが、アズワルドは皆に向けて少し待たせた事を謝罪する。
「少し待たせてしまった様でごめんね。一応説明しておくけど、この世界で僕はアズワルドという名前で種族はインプだよ。後、僕の後ろにいるのが」
「フォーカスだ。種族はノームな。それにしても驚いたぜ、まさかお前らまでいるなんてよ」
「こっちの台詞だよ。今日1日で現実での知り合いにALOの中で出会うとは思ってなかったよ。私の名前はアラモードで種族は言わなくても解るだろうけど、ウンディーネだよ」
「同じくウンディーネで、名前はエリアスよ。まさか、岡じ・・・いや、フォーカス。あんたまでALOにいるなんてね・・・間違っても追跡魔法のトレーサーを悪用してスカートの中とかを見ようとしたら只じゃ済まないからね!」
「まだ覚えてないから、スカートの中を覗き見しようにも使えないからな!」
「それって使える様になったら、悪用する気が有るって事だよな・・・まあ、お前らしいと言えば良いのか・・・俺の名前はゼベル、種族はサラマンダーだ」
「私はアスナよ、宜しくねフォーカス君。でも、魔法を悪用して覗きとかしたら只じゃ済まないから、肝に命じておきなさい!」
「何で俺が追跡魔法を悪用する事前提で話が進んでいるんだよ・・・まあ、やるかもしれないけどよ」
『結局、やるのか!?』
何だかんだでぶれないところがフォーカスらしいのだが、ゲームの中と言えど覗きは犯罪なので追跡魔法を習得した後は悪用しない様に注意する事にし、アズワルド達はウンディーネ領近くの平原に移動して、アラモードのレクチャーとフォーカスのステータス上げを行う事にした。
「それじゃ、まずは適当に戦闘して実力の確認からしてみようか」
まずはアラモードにフォーカスの実力を確認するべきだと思い、アズワルドは呪文を詠唱し、近くにいたリザードマンの群れに闇属性の魔法を放ち、黒い球体状のエネルギーがリザードマンに命中し、リザードマンが一体消滅すると群れにいたリザードマン4体がアズワルド達に迫ってきた。
「リザードマンが迫ってきたね。アラモードとフォーカスは1体ずつリザードマンの相手をしてみて。残り2体のリザードマンはエリアス任せるけど、構わないかな?エリアスの実力も確認したいからね」
「別に構わないわよ。私も少し戦いたかったところだしね」
エリアスは両手剣を構えると、リザードマンに突っ込んでいき、リザードマンが剣でエリアスを切り付けようとするが、エリアスは両手剣を横に振り回すとリザードマンの剣は折れ、リザードマンは剣が折られた事に動揺したのか隙が生まれたので、エリアスはソコを見逃さずに両手剣を振り下ろしてリザードマン一体をまるで紙切れの様に簡単に真っ二つに切り裂いた。
エリアスの戦闘を見てゼベルは本当にALOを始めて三日目でこの強さなのに驚愕した。
「エリアス、本当にALOを始めて三日目なのかよ・・・両手剣を軽々と振り回す姿は本当に男顔負けの腕前だし、そもそもリザードマンって思ったより柔いモンスターじゃないぞ!?エリアス、お前ってストロング過ぎないか?」
「ストロングって言わないでほしいなゼベル・・・」
エリアスはゼベルの発した言葉に少し傷付きながらも、呪文の詠唱を行う。ゼベルは詠唱を終えるまでリザードマンに弓矢で威嚇射撃して注意を引いて時間を稼ぐ。呪文の詠唱が終わるともう1体のリザードマンに向けてエリアスは水属性の中級魔法[アクアピラー]を放った。するとリザードマンの下から水が勢いよく吹き出し、リザードマンを空中に浮かび上がらせると水柱がリザードマンを飲み込み溺れさせ、リザードマンは溺死したのか光を放ち消滅した。
「エリアス、両手剣での接近戦だけでなく、魔法での遠距離攻撃も出来るのか。いわゆるオールラウンダーってところか。本当にストロングだな、名付けてストロングレディエリアスってか!」
「ゼベル、私は女性だからストロングって呼ばれるのは少し傷付くから、他に良い褒め言葉とか無いの?」
「そうだな・・・じゃあ、パワフル乙女エリアスとか?」
「それ同じ意味よね!?もういいや・・・その内に慣れてくるだろうしね・・・」
エリアスはゼベルからストロングレディとパワフル乙女の称号を与えられたが、エリアスからすれば嬉しくない称号なのでエリアスは涙目になっていた。アスナはそんなエリアスに何処か親近感を感じたのか、ゼベルから変な称号を与えられた彼女に同情した。
一方、アズワルドはアラモードとフォーカスの実力を確認していた。
「アラモード、リザードマンの脇下は鎧に覆われていない。ソコを狙うんだ!脇下をレイピアで刺せば怯む筈だよ」
「脇下を狙えばいいんだね。了解!」
アラモードはレイピアでリザードマンの脇下に目掛けて刺突を喰らわせると、素早く退いて、リザードマンの剣での攻撃が届かない範囲に移動し、呪文の詠唱を行い、リザードマンが徐々に近付いてくるが詠唱を続け、呪文を唱え終えると同時に水属性の初級魔法[スプラッシュアロー]が放たれ、リザードマンに目掛けて水が数本の矢となり飛んでいき、リザードマンを撃ち抜くがリザードマンはまだ倒れていないので、アラモードは接近してレイピアでリザードマンの胸を貫くと、リザードマンは光を放ち消滅した。
「初めての戦闘にしては良い動きをしていたよ。レイピアを当ててから敵と距離を取って、離れた場所から魔法を使ってダメージを与えていたし、もしかしたらアラモードは才能が有るんじゃない?」
「そうかな?私としては結構、苦労してやっと倒せたって感じだし、アズワルドからの評価に素直に喜んでいいのか解らないな」
「自分がそう思ってなくても、ヒット&アウェイで敵に攻撃して離れて距離を取ってから魔法でトドメを差す戦術が向いているから魔法を主にするべきだと思うからステータスは魔力を上げながらも、接近された場合に備えて敵に一撃を与えてから敵と距離を取れる様にする為にもスピードを上げた方がいいし、筋力も余裕が有ったら上げるべきかな。後、魔法は攻撃魔法だけではなくて、回復魔法やステータスを上昇させるバフ効果を持った魔法も覚えた方がパーティーを組んだ時に味方の補助が出来るよ」
アラモードはアズワルドから少し高評価を貰えたが、自分ではまだまだだと思っているのか素直に喜んでいいのか解らない様だが、アズワルドから自分に向いた戦術とステータスの振り方を教えてくれたので、参考にする事にした。
アズワルドはアラモードの実力を確認し終えたので、フォーカスの実力を知る為に彼の戦闘を見ると、フォーカスはリザードマンの剣による攻撃をバックラーで受け止めながら、メイスをリザードマンの鎧に集中して叩き付けていた。
フォーカスが何度もメイスで打ち続けた結果、リザードマンの鎧は砕け散りリザードマンは丸裸にされてしまい、肌を晒したのでフォーカスがメイスでリザードマンの身体を思い切り殴り付けると、リザードマンは背中から地面に倒れると同時に消滅した。
「フォーカスはリザードマンの鎧をメイスで打ち続けて鎧を砕いて、鎧が砕けたところをメイスで思い切り殴り付けて倒したところから考えると、敵の特徴を捉えてから効率良く戦える方法を探す観察眼に優れているって考えられるかな」
「そうか?確かにリザードマンの防御力を落とす為に俺はメイスで鎧を砕いたけど、こういう戦術って時間が掛かるしな。少し効率が悪くないか?」
「いや、そうでもないよ。通常のモンスターなら効率が悪く思うだろうけど、ボスクラスとなると今のフォーカスの様な戦術が向いているよ。ボスは破壊出来る部位を見つけたら、その部位を破壊してボスを弱体化させる事が攻略に繋がるから、通常のモンスターとの戦闘でそういう観察眼を鍛えておくのも悪くないと思うよ。フォーカスはメイスを使うならステータスは筋力特化でいいけど、ノームは体力が多い種族だからそれを活かす為に防御力を上げるのもオススメかな。もし魔法を使うってなら、フォーカスの場合は攻撃魔法より回復魔法とステータスを上げるバフ効果を持った魔法で十分かな」
フォーカスはアズワルドから観察眼を鍛えておいた方が良いとアドバイスされた。フォーカスは難しい注文だなと思いつつも、アズワルドの言う通り観察眼を磨ける様に頑張ってみる事にし、その為に色んなモンスターの情報を調べて特徴を掴んでおいとくべきかと考えた。
リザードマンとの戦闘を得て、アラモードとフォーカスにエリアスの実力を確認した後、適当にモンスターと戦闘してアラモードとフォーカスを戦闘に慣れさせると同時にステータスを上げる手伝いをし、ある程度戦闘を行った後に随意飛行の練習を行う事にした。
「それじゃ、戦闘には慣れてきたと思うし、随意飛行の練習をしようか。アラモードちゃんは翅を使っての飛行をまだやってないし、フォーカス君は昨日始めたばかりだから飛行は疑似コントローラーで行っていたと思うけど、随意飛行出来る様にしといた方が空中での戦闘は楽になるわよ」
「アスナさんの言う通りだよ。随意飛行は出来る様にしといた方が色々と楽になるよ。疑似コントローラーで飛行していると片手が使い辛くなるから、随意飛行が出来れば空中での動きを増やせるから随意飛行の練習を行う事にしようか」
「うーん、確か翅が背中に付いているってイメージだけじゃ飛ばないんだよね?」
「そうだぜ、アラモード。背中に生えた翅の筋肉に骨格もイメージして、それを動かす事で初めて随意飛行は出来るんだ。飛べたとしても、少しでもイメージするのを忘れたりすると落ちるから、結構ハードなんだよな・・・俺はALOを始めて1週間位になるけど、随意飛行は出来るんだけど未だにふらつくんだよな・・・」
「そうなの?私は始めて三日目だけど、既に随意飛行のコツは掴めたから普通に随意飛行で飛べるけど」
「マジかよ!?始めて三日目のエリアスは既に上手く飛べるのに、始めて1週間経っているのに未だにふらつく俺って一体・・・」
随意飛行の練習を行う事になったのだが、ゼベルはALOを始めて三日目のエリアスが既に上手く随意飛行で飛べると知って落ち込んだが、直ぐに立ち直り自分も随意飛行の練習を行う事にした。
アズワルドとアスナにエリアスから随意飛行のコツを教えてもらいながら、アラモードとフォーカスは随意飛行の練習をし、ゼベルはふらつかずに飛べる様に練習を始めた。
「アラモードちゃん、もう少し肩の力を抜いてみて。リラックスした方が随意飛行も上手く出来るわよ」
「あっ、本当だ。少しふらつくけど、コツは大体掴めたかな。難しいけど、自分の意思で翅を動かして飛べるのは嬉しいな」
「そうでしょ。私も最初はふらついていたんだけど、上手く飛べる様になると飛ぶのが楽しくなってきたわ。だから、アラモードちゃんも頑張って自分の意思で上手く翅を動かして飛べる様に頑張ってね!」
「はい、アスナさん!アスナさんの教え方が上手いから、思ったより早く随意飛行が出来そうだよ」
アラモードはアスナの教え方が上手い事も有ってか、思ったより早く随意飛行に慣れそうと考えられる。一方、フォーカスもアズワルドからアドバイスを貰い、随意飛行の練習を行い少し遅い滑空スピードだが随意飛行が出来る様になっていた。
「ふうっ、コツを掴めば思ったより飛べるな。空中戦を行う為にも、もう少し上手くなりたいところだな。昨日、俺が集団PKされた時は相手が全員空中から奇襲してきた奴らだし、そんな目にまた合った時の為にも空中戦は出来る様になりたいしな」
「そうだね。空中戦を行うにはある程度随意飛行が上手くないと厳しいから、随意飛行に慣れてきたら空中戦の練習を行う事にしようか」
アズワルドはある程度、アラモードとフォーカスが随意飛行に慣れてきたら空中戦の練習も行うべきと考えた。ゼベルはふらつかない様に随意飛行の練習をし、エリアスは空中に漂って皆の練習を見物していた時だった。
「後方からくる!?避けろ、ゼベル!」
「えっ?うわっ!?危ねぇな・・・」
アズワルドが何者かが魔法でゼベルに向けて炎の球を飛ばしてきたのを察知し、ゼベルに避ける様に伝えるとゼベルは急いで翅を仕舞って地面に着地して、炎の球を避けた。
アスナは近くに潜んでいたプレイヤーがアラモードに攻撃を仕掛けようとしていたので、アスナは閃光の如く速さで移動し、アラモードに襲い掛かろうとしていたプレイヤーにレイピアで強烈な突きを連続で喰らわせると、そのプレイヤーはリメインライト化し緑色の火の玉となった。
「アラモードちゃん大丈夫?」
「はい、アスナさんが早く助けてくれたお陰で大丈夫です。すみません、私が不甲斐ないばかり・・・」
「気にしないで。アラモードちゃんは悪くないわ」
アスナはアラモードが無事で有る事を確認した後、アズワルドに問う。
「アズワルド君。今のプレイヤーにさっきの炎の玉って、もしかして集団PKを行うギルドの仕業?」
「その線で間違いないです。初心者専門に集団PKを行うギルドのプレイヤー達の仕業ですね」
「初心者専門に集団PKって、どう考えても弱い相手ばかり狙う卑怯者の集まりにしか思えないわ!」
アスナがアズワルドに今の炎の球を飛ばしてきた相手は集団PKを行うギルドの仕業かと尋ねると、アズワルドは初心者専門に集団PKを行うギルドのプレイヤー達の仕業だと説明し、エリアスは初心者を専門に狙ってPKを行うギルドの存在事態が不快に思った様で少し怒気を感じる表情になっていた。
気付けば、アズワルド達の周りを種族はバラバラだが20人以上のプレイヤーが包囲していた。どうやら、このプレイヤー達が集団PKギルドのメンバーの様だ。
「チッ、まさか昨日俺をPKした奴らじゃねえよな・・・もし、そうだとしたら俺を良いカモとして見ていたからまた襲い掛かってきたのか・・・」
「初心者専門に狙っているって事は私にも目を付けていたから襲い掛かってきたって事なの!?」
フォーカスにアラモードは自分達の事を狙っていたから、このプレイヤー達が奇襲してきたのではないかと思った。
アズワルドはそのプレイヤー達の中に知った顔が有ったので、そのプレイヤーに声を掛けた。
「久しぶりですね。と言っても実際に直接会うのはお互いに初めてですね。まさか、風妖精シルフの領地から追い出された後にならず者紛いに落ちぶれていたとは驚いたよ。さすがは元シルフ領の領主であるサクヤさんの側近だっただけ有りますね、元シルフのシグルドさん!」
「久しぶりだな、小僧。お前とあの忌まわしきスプリガンと無能なトカゲ共のせいで俺の計画は潰された上にシルフ領を追い出され、何処にも属さない
「はあっ・・・シグルド、お前のは逆恨みって言うんだ。それに逆恨みして初心者専門に集団PKを行う様なギルドを作る程に落ちぶれた以上は手加減せず葬るよ。君と君の部下達をね!」
黒っぽい緑の長髪をした青年こそがこの集団PK専門のギルドを束ねる者であり、かつてはシルフの幹部だったが、秘密利に進めていたシルフ領を裏切って転生する計画が失敗し、シルフ領から追い出され
アズワルドはシグルドの逆恨みに呆れながらも、手加減せず葬る為に呪文を唱え始めた。
ゼベル達は詳しい事は知らないが、話を聞く限りではシグルドという男の一方的な逆恨みで間違いないと確信し、シグルド率いるPKギルドのメンバー達との戦闘に望む事にした。
「やれ!初心者専門に狙っていたとは言えど、プレイヤーと戦い勝てばモンスターより熟練値が上がるからな。数多のプレイヤー達をPKして得たステータスの力を見せてやれ!まずは呪文を唱えているあのガキから潰せ!!」
『おおっ!!』
シグルドが指示すると、シグルドの部下達がアズワルドに目掛けて突っ込んでくるが、その前にアズワルドが呪文を唱え終えた。すると、アズワルドとゼベル達を包む黒い電撃の壁が展開され、その黒い電撃が周りに放たれると、シグルドの部下達はその黒い電撃を受けるとシグルドの部下は全員がリメインライト化し、アズワルド達の周りに火の玉の姿となっていた。アズワルドが使った魔法は闇属性の魔法の中でも最上級である[ボルティック・ヘルマゲドン]なので、威力も納得行くモノだ。
シグルドは魔法一発で部下達が全滅するとは思っていなかったのか、焦った表情になっていた。
「ば、バカな!?PKでステータスを上げた自慢の精鋭達だぞ!!なのに何故、最上級の闇魔法を受けたとは言えど一撃で倒されたのだ!!?」
「簡単な話だ。卑怯な策だけでは強くなれないって事だよ。シグルド、どうやらお前はシルフ領を追い出されて
「俺が失ったモノだと?なら、簡単だ!!俺が失ってしまったモノは貴様とあのスプリガンと無能なトカゲ共のせいで失った地位だ!!」
シグルドはアズワルドが言う自分が本当に一番大切なモノを失ってる事に気付かないまま、アズワルドに向けて剣を思い切り振り下ろしたが、怒り任せに振る剣は威力が高くても単純で動きが解りやすく、アズワルドに当たらず簡単に避けられた。
アズワルドはシグルドの剣を避け、シグルドの後方に回るとシグルドの背中をアズワルドの剣が貫くと、シグルドのHPは削れていき、シグルドは己の敗けを覚ったのか落胆した様子で呟いた。
「何故だ何故・・・俺は敗れたんだ!!俺はまた敗けて地位の次はこの作り上げたギルドまで失うというのか・・・」
「シグルド、お前が失ってしまったのは地位なんかじゃない。お前が失ったモノ、それは・・・純粋にこのゲームを楽しむというゲームをやるプレイヤーとして当たり前の事だ!!」
「このゲームを楽しむ事だと・・・何故、それが負けた原因になるのだ!!」
「簡単な話だよ。僕はこのゲームが楽しいからプレイしているんだ。僕だけじゃなくて他のプレイヤー達も同じ筈だよ。このゲームが楽しいからALOをプレイしている。シグルド、お前だって最初はこのゲームを純粋に楽しんでいた筈だ。自分の磨いた技でモンスターを倒し、覚えた呪文を唱えて魔法を使えた時の喜び。翅を使って自分の力で空を飛べた時の爽快感をお前だって知っていた筈だ。だけど、シグルド。お前はシルフ領で高い地位を得た時から、このゲームを純粋楽しむ事を忘れてしまい、このゲームでの地位や名声だけを求める様になってしまった。だから、お前は負けたんだ。このゲームを純粋に楽しむ事を忘れてしまい、地位や名声だけを求めて暗躍したお前が純粋にこのゲームを楽しむプレイヤーに勝てる筈がなかったんだ」
シグルドはアズワルドの言葉を聞き、いつの間にか自分はこのゲームを純粋に楽しむ事を忘れていた事に気付いた様で先程まで見せた負の感情を思わせる表情は消え、代わりに朗らかな笑みを浮かべた。
「成る程な・・・お前の言う通りだな。俺はいつからか、地位や名声だけを求めてしまい、このゲームを純粋に楽しむ事を忘れていた。サクヤは領主になっても、その地位や名声で見栄を張らなかった理由はそういう事か。サクヤもこのゲームを楽しんでいたんだな。だから、地位や名声だけを求め、このゲームを楽しむ事を忘れた俺とサクヤが反りに合わずにいた訳か。なら、シルフ領を追い出されても文句は言えないな。もうすぐで俺はリメインライト化するが、間違っても俺を蘇生するな。俺は一回、デスペナルティを受けた後にギルドを解散し、初めてALOをやった時の様にこのゲームを楽しめる様になりたいからな。だから、俺を放っておいて、お前達はこのゲームを楽しんでいてくれ」
「解ったよ、シグルド。じゃあ、また会った時は本当にこのゲームを純粋に楽しめる様になってる事を祈っているよ」
話が終わると同時にシグルドはリメインライト化し、緑色の火の玉に姿を変えた。その後、アズワルド達はその場から去り、ウンディーネ領の入口近くにまで移動した。
「アズワルド、シグルドって人を放っておいて大丈夫なの?」
「アラモードの言う通りだぜ。集団PKギルドを解散したとは言っても、また奇襲とかしてきたらどうするんだよ」
「フォーカスの言う事も一理有るわね。アズワルド、本当にシグルドを放っておいても大丈夫?また初心者狩りとか仕出かすんじゃない?」
「大丈夫だと思うよ、エリアス。今のシグルドはこのゲームを楽しむ事を思い出してるし、二度と初心者狩りはしないよ。彼は自らデスペナルティを受け入れたし、今の彼なら間違った道には行かない筈だ」
「アズワルド君が言ってるんだし、きっと大丈夫よ。もし、仮にも懲りずに奇襲してきたら、アズワルド君がやった様に返り討ちにすればいいしね!」
「そうだな、アスナさんの言う通りだな。シグルドがまた奇襲してきたら、返り討ちにしてやろうぜ!まあ、今回の様に集団で来られたら、アズワルドの様な広範囲を攻撃する強力な魔法が使えないと厳しいかもだけどな」
「ははっ。魔法は無理して使わないのも一つの手だし、キリトさんにクラインとかがそうだしね。とりあえず、今日はここで解散しようか」
シグルドがまた奇襲してきたらという話も有ったが、シグルドはもう二度と一方的な集団PKは行わないだろうということで解決した。シグルドの話を終えた後、アズワルドの合図で解散し、各自自分の泊まる宿が有る領や街に移動した後にログアウトし、現実に戻ったのであった。
今回はALOでのアスナが登場し、後ALO編以降の消息が不明なシグルドも登場させました。シグルドって、ALOを楽しんでいるのか疑問に思ったので純粋にALOを楽しむ事を忘れていたって設定にしました。シグルドがまたこの作品で登場するかどうかは解らないけど・・・
次回はやっとあの赤い悪魔の様な少年が登場します。
後、E組生徒のアバター名は引き続き活動報告にて募集していますので、意見が有れば活動報告にて。