765プロのPになりました   作:ルスト

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アイドル業界

「ただいま! ……おや、ずいぶん楽しんでいるようだね」

「社長! お疲れ様です!」

「って、社長!? も、申し訳ありません! これには事情が……」

「ああ!? しゃ、社長!? 違うんです! これは真美ちゃんの練習に付き合ってただけでして……」

 

 春香の予定を決めた後、俺達は真美が持ってきたゲーム大会用のゲームで遊んでいた。

 ……のはいいんだが、熱中しすぎてパーティのミニゲームはミニゲームと言う名の格闘技となり、俺と真美が繰り広げるルール無用の格闘技に何故か真も参戦し、三つ巴の戦いは収拾がつかなくなってしまった。

 そこに、様子を見に来た小鳥さんを(真美が)巻き込んで四人で遊んでいたのだが……。

 これってどう考えても俺と小鳥さん、ただのサボりだよな……。

 

「全く、何やってるんですか……」

「すまない律子。真美の練習に付き合ってたんだが、熱くなってつい……」

「いやあ、兄ちゃんは強敵だったよ……」

 

 友人なんて居なかったし、パーティゲームは基本一人で遊ぶ方だったのもあるが、真美が腕の近い相手だったのもあって何も考えずにはしゃいでたな……。

 最初こそ下手でもあっという間に上達してくるから、すぐに勝てなくなってくるんだよ。

 

「あ、いえ。真美の練習に付き合ってもらってたわけですし、ゲーム自体は別に責めてるわけではないんです。ただ、その様子じゃ携帯なんて見てませんよね?」

「携帯?」

 

 そう言えば携帯、机の上に置きっぱなしだったな……。

 

「というか、小鳥さんまで何やってるんですか? 事務所に電話したら春香が出たんですよ?」

「ええ!? 電話鳴ってたんですか!?」

 

 俺も全く気付かなかった。

 マジで何やってんだ俺……。

 

「仕方ないよね。ピヨちゃんも兄ちゃんもまこちんも熱くなっちゃったから」

「「「真美(ちゃん)が言うな(わないで)」」」

「……まあ、熱くなるのは分かりますけど、ほどほどにお願いしますね?」

「「はい……気を付けます」」

 

 実質的な勤務初日からなんてヘマを……。

 

「まあ、済んだことは仕方ない。それより、君に業界の事で話がある」

「業界の事?」

「うむ、君はまだこの業界の事を知らないと思う。そこで、少し話をね」

「分かりました」

「ただ、この事務所全体の活動方針とも絡む話なのだよ。なので、律子君にも聞いてもらいたい」

「私にも、ですか?」

 

 ……事務所全体の活動方針と絡む話か。

 なんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、まずはこの業界の現状について君に話すとしようか」

「アイドル業界の現状ですか?」

 

 応接室に移動した俺達はまず、社長からアイドル業界の現状を教えてもらうことになった。

 ……というより、これは俺だけだな。

 律子は別件を聞くだけだろうし、恐らく音無さんは説明の補助をしてくれるんだろう。

 

「うむ。……君は今のアイドル業界が何を重視しているのか、想像できるかね? 無論、君の考えで構わないよ」

「アイドル業界が重視する物……?」

 

 と言われてもな……。

 やっぱり、ファンの数か関連商品の売上なんじゃないのか?

 会社からすると、売れるアイドルはそれだけで利益を出してくれるわけだし。

 

「ふむ。やはり『外』ではまだそういうイメージが強いようだね。安心したよ」

「『外』では? ……アイドル業界では違うという事でしょうか?」

 

 ……けど、他に重要な要素があるのか?

 

「うむ。では話そうか。現状のアイドル業界で最も重要視されている物は――他社アイドルを叩き潰せる『強さ』だ」

「――――は?」

 

 いや、あの……。

 他のアイドルを叩き潰すってもしかしなくても「フェス」の事ですか?

 

「フェスが重要な要素になっていることは話したね?」

「え、ええ。覚えています」

 

 確かフェスは、互いのファンを賭けて戦う舞台だったな。

 

「その通りだよ。だが、業界にとってはそれだけではない。IA部門賞を獲得できる条件が『特別なフェスで勝利を収め、そのままその地域では他のアイドルに一切負けないこと』なのだよ」

「特別なフェスで勝利……?」

 

 ……つまり、そのフェスに一度勝利しても、その次の日に負けたら次の機会を狙うしかないって事ですか?

 

「いや、そこまで甘くないよ。挑戦者として参加できるのは一年につき一回限り、そのフェスの勝者は余所のアイドルの挑戦があれば必ず受けなければならない、という条件付きだ。代わりに、条件自体が非常に厳しくなっているからそうそう挑戦者は来ないがね」

「……つまり、ボクシングの大会みたいなものですか……?」

 

 王者であれば、そこで負けてはいけない。

 ……こういう事なんだろうか?

 

「まあ、おおよそそんな感じだね」

「プロデューサーさん、アイドル界は弱者が立つことを決して許さない修羅の世界なんですよ」

「そ、そうなんですね……。なんだか、俺のイメージとずいぶん違うみたいですけど……」

 

 アイドルってなんだっけ……。

 

「ちなみにそのフェスの名は『歌姫・歌王子フェス』です。相当な実力者のアイドルにしか参加資格は与えられませんけど、代わりに集まるアイドルは一筋縄では勝てない凄腕ばかりですよ」

「歌姫・歌王子フェス……」

 

 IA部門賞を狙うなら避けては通れないって事なのか。

 

「うむ、トップアイドルを目指すなら避けて通ることは不可能だ。このフェスに勝つことが、何より重要になるだろう」

「なるほど……」

 

 ……って、ちょっと待て。

 じゃあ、そのフェスに勝って最後まで逃げ切りさえすれば、例えファンが0でも部門賞は貰えるのか?

 

「いいところに気が付いたね。その通りだよ。そのフェスに勝ち、逃げ切ることが部門賞の条件なのだ。だから、歌姫・歌王子フェスの参加の時に必要なファン人数さえ満たしておけば、その後はその地域は放っておいても構わない」

「悲しい話ですけどね……部門賞を獲得するためには、制覇した地域なんて相手にしていられないんですよ。他の地域を制覇しないといけませんから」

「……アイドルとしてそれでいいんでしょうか?」

 

 アイドルって、アイドル業界以外の人から見ればまさに憧れと言うか夢と言うかそんな感じのはずなのに……。

 

「現実は厳しいんですよ、プロデューサー殿。それで社長、私をここに呼んだ理由ですけど……765プロとしてはどう動くのかですよね?」

「うむ、その通りだ。今年のIA大賞、部門賞から本格的に狙っていくわけだが、私の頭にいくつか構想があってね。どの作戦で行くのか決めたかったのだ」

「作戦ですか?」

 

 ……しかし、嫌な予感がするな。

 アイドル同士の潰し合いって事は……。

 

「まず一つ目だが、我が765プロのアイドルを4つのユニット――竜宮小町と3つのグループに分け、それぞれ個別に競わせる方針だ。これは他の事務所も行っている方針で『鬼神P』の模倣の『アイドル潰し』対策も兼ねて行おうと思う」

「……すみません。話を止めて申し訳ないですが『アイドル潰し』とはどういう事でしょうか?」

 

 聞き捨てならない言葉が聞こえた以上、話を止めてでも教えてもらわなければいけない。

 この言葉、すごく嫌な予感がする。

 

「アイドル潰し……これは文字通り、フェスで敗北したアイドルに悪徳記者を押し付け、弱った心をさらに痛めつける作戦の事です」

「……どういう事ですか?」

「えっと、そうですね……。例えばですけど、どう考えても負けるはずのない相手に自分から戦いを挑んで負けてしまったときって、すごくショックを受けますよね?」

「……ええ、まあ。確かに……」

 

 相手の力量を見誤って負けた、とかならともかく。

 

「それをかなり極端な形で実行するのが『アイドル潰し』なんです。お前絶対アイドルじゃないだろ! と言いたくなるような外見のアイドルをフェスに出し、こんな奴に負けるわけがない、と相手を調子に乗らせたうえで叩き潰し、そこに悪徳記者のゴシップ記事を付けるわけですね」

「ゴシップ記事……中身はまさか……」

「ええ、想像の通りですよ。『○○というユニットはこんな醜い相手に負けてしまいました! 油断でもしたんでしょうか!?』 みたいな物から、対戦相手のアイドルに吐いてしまった言葉まで、さまざまな物が。しかも、デマや嘘では無くて『本当の事』なので、アイドル達も否定できないんです」

「それで完全に心をへし折る作戦です。アイドルの子達って大体中高生くらいが多いじゃないですか。だから、非常に効果が高いようですよ……。実際、もし私がアイドルと仮定して、それをやられたと考えてみると、私も精神的に参ると思います」

「惨い事をするんですね……」

 

 確かに、すごく不細工な相手に自分の魅力が負けたと思えば精神的に凄まじいダメージを受けるだろう。

 ……でも、そんなことやれば問題になりますよね?

 

「ええ。なので、今は何処の事務所もやってないはずです。事務所によっては、アイドル本人からの抗議もあったようですし、IAの委員会も、そのやり方を『フェスの本来の目的と乖離した行為である』と言っています」

「しかし、人という生き物は抜け道があれば使いたがる生き物だ。どうも無所属扱いにしたアイドルを使ってアイドル潰しを行っている事務所があるらしく、なかなかアイドル潰しは一掃されないようだよ」

「そんなことが……」

 

 どうやら、俺の想像以上に真っ黒な世界らしいな……。

 というか、アイドル潰しって……。

 

「まあ、華やかな世界の裏は真っ黒になるものだよ。光があれば影があるようにね」

「確かにそうかもしれませんが……」

 

 それでも限度って物があるだろう……。

 

「話を戻そう。アイドル潰し対策として、4つのユニットを編成して挑むのが私の一つ目の案だ。これなら、どこか一つが仮に潰されても事務所全体としては致命傷にはならないだろう」

「確かにそうですが……そのユニットどうしはどうするんです?先ほどの話を聞く限りだと、IA部門賞は熾烈なアイドルの潰し合いが必須になりそうですけど」

「そこなのだよ、問題は。部門賞を獲得するためにはフェスの勝利が必要だ。しかし、獲得できるのは常に一組のみ。それは同じ事務所であっても例外ではない」

「では、まさか……」

 

 もう察しはついている。

 社長が提示する一つ目の案、それは……。

 

「この案では、765の仲間であっても互いに協力は出来ない。IA大賞、部門賞を獲得するため、互いに全力で戦う必要があるだろう」

 

 同門のはずの765アイドルすら倒す選択肢だった。




この話は2のシステムをベースにしてますが、こうやって実際に書くとなかなか滅茶苦茶な設定ですね。
部門賞は「歌姫・歌王子フェス」に勝てばファン人数が減りまくっても無問題なので、その地方は完全に見捨てることになります。
一応IA大賞のためには全国合計でファンが30万(ノーマル)必要ですが、首都エリア25万、残り全エリア合計5万でもOK。
実際には首都はお守り買えるだけなので一回クリアしたら無視安定なんですけどね。

最後のアレはあくまで一つの選択肢ですが、2本編だと本当に「ユニットの仲間以外は敵」です。
クィンテットの置物として添えるだけ。

……なんかいずれ「アンチ・ヘイト」付けた方が良いような気がしてきました。
叩く気は一切無く、ゲームの設定をそのまま、もしくは少しアレンジして使ってるだけなのに、思いっきりアイマスに喧嘩売ってるような世界なんですよね……。
2はそれだけ殺伐とした世界なんでしょう。

前の話でも出たアイドル潰しと歌姫・歌王子に勝ったアイドルが新しいアイドルに挑戦されるのは独自設定です。
フェスで冬馬一人に負けただけで竜宮小町が駄目になる世界ですし(ノーマルのみ)、プライドの高いアイドルが豚男に負けて悪徳さんに記事書かれたら立ち直れないでしょう、と。
歌姫・歌王子はゲームではクリアしたらもうおしまいですが、他のアイドルが挑戦権を得ることもあると思ったのでこういう設定にしました。
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