765プロのPになりました   作:ルスト

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オリジナル展開を本格的に始めていきます。


ナムコエンジェル

「さて、今の案だが……どうかね?」

「「「駄目です」」」

 

 社長の提案は俺と律子と音無さん、三人全員が反対し、却下されることになった。

 

「ううむ、やっぱり駄目かね? まあ、私も少々やりすぎたような気はしなくもなかったのだが……」

「社長……。765プロの皆は仲間なんですよね? どうして余所の事務所のように同門潰しをしなければいけないんです?」

「そんなことやったら、アイドル皆から猛反発食らいますよ?」

 

 仲間同士で潰し合う……はっきり言って、馬鹿げてるとしか言えない。

 確かにIA大賞、部門賞を獲得するためには必要なのかもしれないが、アイドルとして間違っている。

 

「社長……アイドル全員移籍しちゃってもいいんですか?」

「ま、待ちたまえ音無君! 確かに厳しいことかもしれなかったが、私が今言ったのはそこまで深刻な事なのかね!?」

 

 ……社長、どう考えてもその案は滅茶苦茶だろう。

 765の仲間を潰してもらいます、って言われてあの子達が首を縦に振るのか?

 

「そうは思わないが、しかしだね……。トップアイドルになれるのは常にたった一組なのだ。事務所の仲間であろうと倒すだけの覚悟が無ければ、トップアイドルにはなれないと思ったんだが……」

 

 一理あるかもしれないが、この事務所にはあまりにそぐわないだろう。

 もっと殺伐とした事務所ならその案を押し通すことも可能かもしれない。

 

「社長、理由がどうであれ、その案は駄目です。で、次の案はどんなのですか?」

 

 律子が強引に話を止め、社長に次の案を促す。

 

「……うむ、では次の案だが……この案では、我が765プロのアイドル12人を全員『ナムコエンジェル』のメンバーとしてプロデュースしようと思う。つまり、一つの巨大ユニットにするのだ」

「何故最初にそちらを提示しなかったんですか……」

 

 律子のため息交じりの言葉は俺と音無さんの代弁でもあった。

 

「まあ、話は最後まで聞いてくれたまえ。仮にこの案を実行すると、竜宮小町はナムコエンジェルの中に吸収されて消える事になるのだよ」

「竜宮小町が? ……まあ、ナムコエンジェルとして全員をプロデュースするなら当然ですよね。竜宮小町だけ仲間外れ、ってのは明らかにおかしいですし」

「その通り。しかし、これはそのまま『アイドル潰し』に弱くなることも意味する。何処か一つが潰れても他の部分が大丈夫、ではない。常に『ナムコエンジェルと言う巨大ユニットのメンバー』としてアイドル達が扱われることとなるのだ」

「だから、アイドル潰しの悪評もそのままユニット全員に向けられる、と?」

「そういう事だよ。アイドル潰しに潰されるリスクが飛躍的に増すから、私としては避けたかったのだ」

 

 ……まあ、社長のいう事にも一理ある。

 けど、12人ユニット『ナムコエンジェル』か。

 この構想はアリだ。

 というか、ぜひやってほしいと思う。

 問題は、アイドル潰しがどれだけ脅威になるかだよな……。

 

「しかし、問題はそれだけではない。竜宮小町のメンバーとそれ以外で、かなりの実力差がついてしまっている。これをどうするかも問題なのだ」

「確かに……そうですね。竜宮小町だけが突出した強さですし、他のアイドルを加えたり、入れ替えたとしても……」

 

 ……三ヶ月の差はそんなに大きいのか?

 

「当然です、プロデューサーさん。竜宮小町の皆はフェス経験もかなり積んでいますし、オーディションやライブでのパフォーマンスもかなりのレベルですよ」

「なるほど……。律子、一緒のステージで踊らせることは難しいか?」

「ええ。レベル差がありますし、どうやっても息が合わないと思います」

 

 となると、その案も駄目なのか?

 

「……この二つしか浮かばなかったんだよ、私には」

「ええ!? よりによってその二つだけなんですか?」

「片方は修羅の世界、もう片方はすぐには実現困難な世界ですね……」

 

 律子も音無さんも難しい表情をしている。

 社長の案は両極端すぎるな……。

 765の仲間である、と言う点を強調できるやり方と、反対に全て切り捨てるやり方。

 ……この二つしか出ないって両極端だろ。

 

「私が思いついたのはこの二つだ。他に案があるなら聞かせてくれたまえ」

「と言われても、そんなすぐには……」

 

 正直、話が急すぎてついていけない。

 社長の決断や提案の速さは確かにすごいが、こっちが追いつかない状態だ。

 

「律子、何か案は……」

「急に言われてこれが良いです、って言えるわけがないじゃないですか……」

「まあ、当然だよな……」

 

 俺も正直、新しい手段……社長の提案した二つ以外の方法なんか思いつかない。

 ……簡単には合流できないんだよな?

 

「ユニット統合を口で言うのは簡単だが、やるのは非常に難しいよ。レッスンの量も質も、それまでの経験も全く違う状態から同じ舞台で歌って踊れるようにすり合わせなければいけない」

 

 ……厄介だな。

 皆の経験の差を埋めつつ、統合できる方法を考えないといけないのか。

 

「ユニットの解散と統合は他の事務所でも行われていますけど、IA大賞や部門賞を獲得するときに有利になるかと言うとそうでもないんですよね。それまでの固定ファンが離れる可能性もありますから」

「固定ファンが離れる、ですか?」

 

 それはまたどうして……。

 

「だって『竜宮小町』が見たいと思って来ていた人が別の子の混ざったユニットを見ることになるんですよ? どちらのファンでもあるなら問題ないと思いますけど、どうしてもファン層の違いはありますから」

「なるほど……」

 

 確かに、それまでの3人トリオが見られなくなる、見る機会が減ることになるわけだからな……。

 

「それに、IAの選考が本格的に始まる前に準備して統合しておかないと、選考の候補に入れませんよ」

「そうか、選考が始まってから統合してもノミネートされないから……」

「そういう事です。やるからにはなるべく早くユニットを統合しないといけません」

 

 IA選考前に竜宮小町とそれ以外を完全に統合。

 その上で、アイドル潰しに潰されない。

 最低限この条件を満たさないと駄目なのか。

 

「ユニット統合の実現難易度は高い。それに律子君も君も新米だ。だから、無茶に手を出して失敗するのは避けてほしいのが本音なのだよ」

「しかし、実現すれば……」

「うむ。我が765プロ全員が力を合わせて挑むことが出来る。それに、君と律子君の二人がプロデューサーとして支えることも可能だ。そう考えると、実現さえすれば非常に頼もしいユニットになるだろう」

 

 この事務所の総力を挙げて挑めるんだからな。

 潰し合いの中で戦うより、よっぽど力が出せるはずだ。

 

「しかし、そうなると統合までに実力を揃えなければいけませんよ?」

「ええ、問題はそこです。仮にプロデューサー殿が明日からユニットを担当していただいたとしても、三ヶ月の差は大きいです」

「そこをどう埋めるか、か……」

 

 そもそも、俺みたいな素人が9人も同時にプロデュースできるんだろうか?

 いや、無理ではないはずだけど……。

 

「それも問題だね。少なく見積もっても君に3人担当してもらわなければいけないのだが、それでも手が足りない」

「俺が3人プロデュースしても、まだ6人……」

 

 どうすればいいんだ。

 ……アイデアなんか、出てこないぞ。

 

「プロデューサー殿が3人担当していただくのは確定です。残りの6人をどうするか……」

「他にスタッフは居ないんですよね?」

「うむ……。スタッフと呼べるのは君、律子君、音無君だけだ」

 

 ……人間足りてないでしょう、明らかに。

 俺と律子しかプロデューサーが居ないってどう考えてもバランスがおかしい。

 

「……その通りだよ。我が765プロは常に人材不足に悩まされている」

「アイドルだけ集めて動かせる人を用意しなくてどうするんですか……」

 

 高級車を用意するだけ用意したのに肝心のドライバーが居ないようなものだぞ、これ……。

 アイドルは高級車じゃないから自分で動けるとはいえ、それでも明らかに勝手に動かしたら不味い。

 未成年の女の子グループを見知らぬ土地に大人の付き添い無しで行かせる、ってどう考えてもアウトだ。

 

「うむ……そこは私のミスだよ。人材が見つからなかったのだ。……それはそうと、先ほどの提案なのだが……ひとまず、我々で四つのユニットをフォローする形でどうだろうか?」

「どういう事です?」

 

 四つのユニットをフォロー?

 

「そう。まず、律子君が竜宮小町をプロデュースする傍らでもう一つユニットを受け持つ。律子君が手を離せない時はそのユニットを音無君が担当し、現場まで連れて行くのだ」

「ええ!? 社長、それじゃ765プロの事務所はどうするんですか!?」

「うむ。どうしても空になることはあるだろうが、その時はその時だよ」

 

 そんな無責任な……。

 しかし、本当にそれしかないんだろうな。

 

「で、君の方も律子君と同じ状態だ。トリオユニット二つを同時にプロデュースしてもらう事になる。もちろん、君が手を離せない時は私がもう一つのユニットを指揮しよう」

「トリオユニット二つを同時に……」

 

 正直そんな無茶な! と叫びたいけど、方法は無いだろうな。

 それに、ナムコエンジェルとしてユニット統合するならそれくらいはやらないと……。

 

「ここからが重要なのだが……しばらくはそれぞれ独立したユニットとして動かしていく事にしようと思う。頻繁にメンバーを変えるより、まずは近くの二人と完全に息を合わせられるようにしてもらいたいのだ」

「最初はトリオユニットでの活動に集中する、と言う事ですね。それが現実的だと思います」

 

 確かに社長が言うとおり、頻繁にメンバーが入れ替わっていたら息を合わせるのも大変だろう。

 そう考えると、彼女達に実力が付くまではこの方法が良いのかもしれない。

 

「しかし、レッスンは皆、つまり4ユニット合同で行う。後々統合することも伝えておくし、事務所内での同門潰しを行わせるつもりはない。これはあくまで、彼女達――竜宮小町以外の9人が実力をつけるまでの措置だからね」

「その時が来たら統合して『ナムコエンジェル』として出発させるんですね」

「その通りだよ。ナムコエンジェルとして、本格的にIAの制覇を目指すわけだ。これで、どうかね?」

 

 社長の言葉に異を唱える者は居ない。

 事務所内で潰し合いをしなくて済むのもあるが、それ以上に「ナムコエンジェル」の実現という非常に困難ではあるが、しかし、非常にやりがいのある仕事が出来るのなら……。

 

「……異論はないね? では、善は急げだ。明日、アイドル達に伝えて『ナムコエンジェル』本格始動と行こう! 忙しくなるが、よろしく頼むよ!」




765アイドル同士で潰し合う? お断りです。

この話の初期構想ではPは心を捨てた修羅にするつもりでした。
ただ、正直そんな話書いてても疲れそうですし、心がすり減りそうなので却下。
そもそもアイドル潰しを敵事務所のアイドルに実行しまくるPにアイドルが反発しない展開の方がおかしいですし……。
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