【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※ハーマイオニー視点


第9話 真夜中の決闘

全く、男の子って何でこう子供なの!

思い出し玉を拾っただけのハクドウシに因縁をつけたハリーも、ロンも。

ハリーを投げ飛ばし、魔法で吹き飛ばしたハクドウシも。

ハリーを挑発したマルフォイも。

挑発に乗ったハリーも。

皆どうしようもなく愚かで、幼稚だわ。

 

ハクドウシは余興だ、なんて言っていたがとんでもない。

箒で降下中の相手に魔法を放つなんて、下手をしたら怪我じゃすまない。

ハリーが軽傷で済んだのは奇跡と言うべきだろう。

何よりも、彼が規則を破った事が私にとって許せなかった。

 

もっとも、規則を軽視しているのはハリーも同じ。

あの後どうなったのか少し心配だわ。

退学なんて事にならなければ良いけれど。

 

飛行訓練が終わった後の私の心は、苛立ちと不安の二つの感情が渦巻いていた。

 

 

 

夕食の時の事だ。

最近の私はいつも一人なので、食事を食べ終わるのは他の生徒より早い。

早く食べるのは良いことだわ。

時間が有効に使えるし、他の生徒のようにお喋りなんて無駄なことをせずにすむから。

 

今日の私も早めに食事を済ませた。

寮に戻ろうと立ち上がると、ハリーとロンが何かを話しているのが見えた。

マクゴナガル先生と何を話したのかを聞こうと近寄るが、その足は途中で止まった。

マルフォイの姿を見かけたからだ。

 

「ポッター、最後の食事かい?マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」

「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」

 

またあの2人は懲りずに言い合いをしてるみたい。

割って入ろうと思ったが、タイミングを見計らっているうちに話が進んでしまった。

ハリーとマルフォイはトロフィー室で決闘をする約束をしたみたい。

信じられない!

決闘ってだけでも馬鹿げてるのに、真夜中ですって!?

真夜中の無断外出は規則違反だから、見つかったら減点されてしまう。

何を考えているのかしら。

 

「ちょっと、失礼」

 

決闘の仕方をレクチャーしているロンに腹を立てながらも、2人に声をかける。

それだけで嫌な顔をされた。

冷たい反応にめげず決闘を止めようと説得したが、2人から帰って来た反応は散々なものだった。

大きなお世話だと一蹴され、大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

十一時半。

談話室で出口に一番近い椅子に腰かけ、その時を待っていた。

出来れば来ないでほしいと願いながら。

だが、彼らは来てしまった。

深い失望を感じながら、ランプに明かりを灯して自分の存在を彼らに気づかせる。

 

「ハリー、まさかあなたがこんな事するとは思わなかったわ」

 

2人を止めようとしたが、ロンは私を怒鳴りつけ、ハリーは私を放って寮を出て行こうとする。

なおも説得しようとしたが、彼らは何としても決闘にいくつもりのようだ。

…本当に、馬鹿みたい。

 

「いいわ、ちゃんと忠告しましたからね。貴方たちは本当に…」

 

彼らに背を向けた時、太った婦人が出かけているので寮に戻れないと知る。

私にはここで太った婦人を待つか、彼らに着いていくかの選択ししか無かった。

結局、私はトロフィー室に向かうことにした。

話の成り行きから、廊下の隅で眠っていたネビルも一緒に行くことになった。

フィルチかミセス・ノリスに会わないかと、廊下の角を曲がる度に内心恐怖していた。

ハリー達の前では潔白を証明すれば大丈夫だと振る舞っていたが、そんな保証はない。

あのフィルチの事だから、言い訳なんて無視して処罰を与えかねない。

そう思っていたから、トロフィー室に着いた時は心底ほっとした。

 

 

トロフィー室には予想外の人物が待っていた。

ハクドウシだ。

初めて会った時に着ていた紋付の和服を着ている。

 

「なんでお前が居るんだよ!」

 

ロンが小声で叫ぶ。

今日の出来事を根に持っているのか、ハリーも険しい目で彼を見ている。

そんな彼らを前にしても、ハクドウシは人を食ったような笑みを浮かべている。

 

「マルフォイは来ないぞ」

「どうゆう事だ?まさか君が…」

「マルフォイは貴様らがトロフィー室に来る事をフィルチに告げ口した。奴は初めから決闘などするつもりは無かったのさ」

 

私たちが半信半疑で彼を見ていると

 

「来い」

 

とだけ告げて彼は背を向けた。

有無を言わせない彼の口調に、私たちは渋々着いていくことにした。

 

 

 

ハクドウシは、グリフィンドール生徒からの評判は余り良く無い。

マルフォイのように絡んで来る事は無いが、彼の眼差しはとても冷たく、人を値踏みするような色が込められているので、それを嫌がる者が多いのだ。

「わし」という一人称を陰でからかう人も居る。

一方で女子生徒からの人気はそこそこあるらしく、食堂でパーバディやラベンダーが黄色い声をあげて彼の事を話しているのを見たこともある。

サラサラの白い髪と整った顔は確かに魅力的で、何処か浮世離れした雰囲気を醸し出している。

 

でも、汽車でネビルのヒキガエルを探してくれなかったように、他人に余り関心が無いみたい。

そのせいか一人で行動する事が多いようだけど、たまにスリザリンの金髪の可愛い女の子と居るのも見かける。

そんな彼が私たちを助けようとする事が少し意外だった。

…もっとも、やはり助ける気など無いとすぐに分かることになったけど。

 

 

 

私たちは誰も居ない空き教室へと辿り着いた。

 

「ちょっと、寮に戻るんじゃないの?」

 

私の言葉には答えずにハクドウシは杖を構える。

 

「構えろ、ポッター。決闘は代わりにわしがやってやる」

「どうゆうつもりだ!?」

「余興の続きだ。貴様もわしにやられっ放しでは悔しかろう?」

 

挑発的な笑みを浮かべるハクドウシに、ハリーもその気になったのか杖を抜く。

私とネビルが止めようとする。

 

「止めなさいよ!フィルチが見回ってるのが本当なら、すぐに寮に戻るべきよ!」

「そ、そうだよ。ハリーもハクドウシも、こんな事馬鹿げてる!」

「黙れよ2人とも。ネビル!あいつはハリーを魔法で攻撃したんだぞ!」

 

ロンが私たちを睨みつける。

ネビルは戸惑った顔をしたが、ハクドウシが否定しないので本当だと悟ったようだ。

射殺さんばかりに睨むハリーに対し、ハクドウシは楽しそうに笑みを浮かべている。

戦いが止められないと悟った私は、せめて2人が怪我する事無く終わることを祈るしかなかった。

 

そして戦いは始まった。

先に仕掛けたのはハリーだ。

攻撃呪文を唱えたようだが、上手くいかなかったのか杖の先から小さな青い光が飛び出る。

ハクドウシは杖を振ってハリーの呪文をかき消すと、飛行訓練の時に使った魔法を放つ。

 

「インペディメンタ(妨害せよ)」

 

これは図書室の本で読んだことがある。

相手の動きを遅らせ、一時停止させる事もできる妨害呪文だった。

上の学年で習う呪文を操る彼に、状況も忘れて少し感心してしまう。

ハリーは避け切れずに呪文を喰らい、その動きが鈍くなる。

ろくな攻撃呪文が使えないハリーに対し、既にあの呪文をある程度使えるハクドウシ。

圧倒的にハリーが不利だ。

それを悟ったのか、彼の顔には痛みと焦りの色が浮かんでいる。

 

「どうしたポッター。もう終わりか?」

 

嘲笑うハクドウシに悔しそうな顔をするハリー。

更に攻撃を加えようとするハクドウシだが、足元に鼠が居ることに気づいて手が止まる。

 

「今だ!」

 

ハリーの杖先から青い光が放たれる。

ハクドウシはそれをまともに喰らったが、大した痛みを感じていないのか平然している。

そして、鼠の額と自分の額を重ねている。

一体、何をしているの?

 

「フィルチが近づいている。今日はここまでだな」

 

それだけを口にすると、決闘の途中なのに平然と教室を出て行こうとする。

 

「逃げるのか!」

「早くと逃げないとフィルチに見つかるぞ」

 

ハリーの言葉に振り返りもせずさっさと出て行ってしまった。

 

「へっ!あいつハリーが予想外に出来るからビビったんだよ。とんだ臆病者だ」

 

せせら笑うロンだったが、近くの廊下から物音がした事でその表情が凍り付く。

フィルチが近くを嗅ぎまわっているのだ。

私たちも教室を離れようとしたが、ネビルが転んで教卓を倒し、大きな音を立ててしまう。

 

「逃げろ!」

 

私たちはハリーの言葉を聞く前から駆け出していた。

廊下を駆け抜け、階段を上り、下り…

ハリーはハクドウシの呪文のダメージがあるのか、脇腹の辺りを苦しそうに抑えていた。

気づけば私たちは妖精の魔法の教室の近くにいた。

何とかフィルチを撒いたと思ったのもつかの間、ピーブズが教室から飛び出してきた。

ロンが怒鳴ってピーブズを払いのけようとした次の瞬間、ピーブズが大声で叫んだ。

 

「生徒がベッドから抜け出した!妖精の魔法教室の廊下にいるぞ!」

 

私たちは再び逃げることになった。

廊下の突き当りにあるドアを開けようとするが、鍵がかかっているのか開かない。

 

「もうダメだ、追い付かれる!」

「どいて、ロン!」

 

私がアロホモラで鍵を開けると、皆が折り重なるように部屋になだれ込んだ。

扉の外ではピーブズがフィルチをからかい、私たちの居場所を教えずに消えてしまった。

残されたフィルチは悪態をつきながらその場を去っていった。

もう安心だと息をついて前向くと…そこには怪獣が居た。

以前読んだ本に乗っていた三頭犬を思い出したが、実物は本よりもずっと大きく恐ろしかった。

だが、犬に恐怖しながらも、犬が何の上に立っているかが気になった。

 

あれは…仕掛け扉?

あの犬は何かを守っているの?

 

そこまで考えたところでハリーが扉を開けたので、私たちは三頭犬の居る廊下から抜け出した。

必死で走り続け、何とかグリフィンドールの寮までたどり着いて、やっと一息ついた。

皆は疲労と恐怖で床に倒れ伏していた。

 

「では、みなさん、お差し支えなければ、休ませていただくわ」

 

私はハリー達に犬が何かを守っていることを伝えた後、部屋に戻っていった。

ベッドで丸くなりながら私の頭の中は怒りと失望でいっぱいだった。

決闘を持ち掛けたマルフォイも、それに乗ったハリーも、便乗したハクドウシも最低だと思った。

 

一方で、私はハクドウシが何故フィルチの接近に気づいたのか疑問に感じた。

だが、その答えに辿りつく前に私の瞼は閉じていた。




・8/4 呪文をすこし修正しました。

・2017/05/25 文章を修正しました。
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