【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第12話 クリスマス休暇

12月に入って本格的に冷え込んできたので、わしは薙刀の練習を中断した。

イギリスの冬は日本よりも寒いようだ。

 

マルフォイはずっと不機嫌そうだった。

彼の苛立ちの原因はクィデッチで見事な活躍をして賞賛を浴びているポッターだ。

妬ましさと苛立ちから、マルフォイは今まで以上に彼の陰口を言うようになった。

 

そのポッターだが、最近よく図書館で見かけるようになった。

わしは飛行訓練と決闘の一件から奴に嫌われているので、顔を合わせる度に嫌な顔をされる。

それは構わんが、何故奴は急に図書館に通うようになったのだろうか。

急に読書や勉学に目覚めたと考えられなくは無いが…。

ポッターの傍には大抵グレンジャーと赤毛が居た。

彼らは多くの本を引っ張り出して端から端まで眺めては、首を振って元に戻す作業をしていた。

あれは読書を楽しむというより、探し物をしているという様子に見える。

…ま、今は放っておくか。

時が来たら厨子にでも探らせれば良い。

 

 

 

クリスマス休暇が近づいてきた。

希望者は学校に残れるらしいが、殆どのスリザリン生は自分の家に帰るらしい。

さて、わしはどうしようか。

奈落の待つ家に帰る事とホグワーツに残る事を頭の中で天秤にかける。

少考の末、出した結論は…。

 

 

「可愛そうに。家から帰って来るなと言われて学校に残る子も居るんだねぇ…。ま、誰とは言わないけど」

「クリスマスにはプレゼントを送らせて頂きますわね。それでは、また新学期に」

 

良く晴れた日。

湖のほとりで、わしはホグワーツ特急に向かうマルフォイやダフネを見送った。

結局、ホグワーツに残る事に決めた。

奈落は大嫌いだが、神楽と神無はそこまで嫌いではないので共に過ごす事も悪くはない。

だが、家に帰るよりも学校に残り学業に励んだ方が、今後の為に役立つ気がしたのだ。

 

城の入り口でグリフィンドールの生徒の列とすれ違った。

別に嫌われる事をした覚えは無いのだが、多くの者に嫌な顔をされた。

女子生徒からチラチラと見られるし、どうも居心地が悪い。

グレンジャーとロングボトムとすれ違ったので、軽く挨拶をして寮に戻った。

 

 

 

その日の夜、わしは学校のフクロウを借りて家に手紙を送った。

 

『神楽と神無とろくでなしへ

 

わしは学校に残る事にした。

貴様らと冬を過ごすよりも、この方が有益だろうからな。

クリスマスプレゼントとやらは送らなくても構わん。

わしも貴様らには送らないからな。

それから、わしの血筋について尋ねておきたいことがある。

魔法族の中には純血かどうかを気にする者もいるようで、わしもそれを聞かれた。

わしらの血筋は魔法界ではどのグループに属するのだ?

マグル生まれか、半純血か純血か。

この手紙への返信にその事を書いておけ。

 

白童子』

 

魔法界のフクロウは、相手の名前を書くだけで手紙を届けてくれるので中々便利だった。

生徒なら誰でも使えるようなので、これからも役立てよう。

 

 

 

 

休暇に入ると、ホグワーツ城はとても静かになった。

殆どの生徒は家に帰って家族との時間を楽しんでいるようだ。

わしは一人図書館にこもり、1年生が習う呪文の復習を行っていた。

これが終わったら上級生が習う呪文を調べるつもりだ。

 

 

運動不足だと感じる日もあった。

そんな日は薙刀の練習をしたり、マダム・フーチに頼んで箒の練習を監督して貰った。

誰も居ない談話室でソファーを隅にやり、仮想奈落に向かい薙刀を振る。

暖炉で部屋が温まっているので寒さを感じないが、むしろ練習後は汗だくになるので服を乾かすのに難儀した。

これなら外で特訓した方がマシかもしれない。

 

曇りの日。

誰も居ない競技場で箒を乗り回していると、ポッター達が入ってくるのが見えた。

先生の許可は貰っているので、余り気にせず箒の操作に集中する事にした。

ポッターは嫌な顔をしたが、わしの事は気にせず自分たちの目的を果たそうとしたらしい。

だが、彼と共にいた長身の赤毛の男たちはそう思わなかったようだ。

奴らは確か、悪戯好きで有名なグリフィンドールの双子だったな。

 

「へー、なかなか上手いじゃないか」

「誰だろうな?この学校のクィディッチの選手は大抵知ってる筈だけど」

「…あいつはスリザリンだ。ジョージ! あんな奴を褒めるなよ」

「スリザリンの生徒が家に帰らず学校に残るのか!? 珍しいな」

 

わしの箒の操縦を見ながらああだこうだと話しているようだ。

うっとおしい。

今日の練習を諦めて競技場の端に降り、その場を後にした。

 

だが、その日から競技場で箒の練習をしていると奴らと鉢合わせする機会が増えた。

そういう場合お互い関わらずにその場をやり過ごしていたが、奴らの方から絡んで来る事もあった。

風が強い日の事だ。

吹き荒れる強風に難儀しながらも箒の操作に集中していると、双子が箒で宙に上って声をかけてきた。

クィデッチ・チームのレギャラーだけあって、強風の中でも平然と箒を動かしている。

 

「よう、ヒトミだっけ?随分熱心に箒の練習をしてるじゃないか」

「クィディッチの選手でも目指してるのか?」

「ああ、そうだ」

 

雑な返事を返して練習に戻ろうとしたが、奴らはそうはさせてくれない。

双子はわしの体をジロジロと値踏みするように見つめる。

 

「体格がちょっと足りないよな。スリザリンは技術よりデカさ重視だし」

「どのポジションを狙ってるんだ?」

「ビーターだ」

 

答える義理はない、と口から出かかった言葉を途中で止める。

この時、ある考えが浮かんでいたからだ。

 

「マジ!?僕達と同じじゃないか」

「貴様らもビーターなのか。ならばわしに箒の乗り方を教えてはくれんか」

「…どうするよ、フレッド」

「スリザリンの奴に教えるのもな…」

 

2人は迷っているようだ。

この様子では無理かと諦めてその場を去ろうとする。

 

「ん~…、分かった!少しアドバイスしてやるよ」

「良いのかよ?」

「なーに、どうせこの体格じゃビーターにはなれないさ。僕達の脅威にはならないだろ」

 

聞こえているぞ。

屈辱を押し殺しながら、奴らに少しの間コーチを頼むことにした。

奴らも長いクリスマス休暇で暇だったのだろう。

熱心に箒の乗り方や試合中での裏技、ビーターの心得を教えてくれた。

その親切の裏には、教えても問題ないという慢心と、わしに対する軽視があるのだろう。

だが、来年この双子はこの親切を後悔する事になるだろう。

練習が終わり、わしは礼を言ってその場を離れる。

いつの間にか、クィディッチの選手を目指すことを本気で考えている自分が不思議だった。

 

 

 

 

クリスマスの前日、満たされた気分で寮に戻った。

1年生の授業の復習が今日で全て終わったからだ。

明日からは上級生が習う呪文を幾つか試そうと、胸を弾ませながら床に就く。

 

翌日、わしの部屋にはプレゼントが幾つか置かれていた。

少し面喰いながらも、ダフネとグレンジャー、ロングボトムからの包みを開封する。

グレンジャーとロングボトムは寮が違うのにプレゼントを送ってくれたので、少し驚いた。

ダフネは和風のかんざしだった。

わざわざ日本から取り寄せてくれたそうだが、女物のかんざしなのは何故だろう。

グレンジャーは参考書で、ロングボトムはお菓子の詰め合わせだった。

他にも、話したこともない女子生徒等からのプレゼントもあった。

ダフネのかんざしを髪につけながら、グレンジャーとロングボトムへのプレゼントを考え始める。

ダフネは魔法薬学が得意なので、その関係の本を送ってやったが…。

彼らには何を送ろうか。

考えた末、グレンジャーには参考書を、ロングボトムには薬草学の本を送ってやった。

以前、薬草学のスプラウト教授がロングボトムを褒めていたのを聞いたからだ。

女子生徒等には、当たり障りのない感謝の言葉を書いたメッセージカードでも送ることにした。

 

 

 

 

 

その日の大広間はあちこちに装飾がされており、夕食もいつもより豪勢だった。

わしは一人でスリザリンのテーブルに着き、クリスマスの馬鹿騒ぎを静かに眺める。

クラッカーから生きた二十日鼠や帽子、チェスセットが出てくるのには中々驚かされた。

一方で、何故魔法使いがキリストとやらの誕生日をここまで祝うのか理解できず、釈然としない思いを感じていた。

 

「楽しんでいるかね?ヒトミ」

 

七面鳥を皿に取っているわしの背にねっとりとした声が降りかかった。

わしは振り返らずに答える。

 

「まぁ、それなりにな」

「貴様は最近箒の練習をしているそうだな。結構な事だ」

 

知っていたのか。

スネイプがその場を去ろうとしたので、今思いついた言葉を彼の背に投げかけた。

 

「スネイプ先生。休暇中、時間があったらわしに魔法を教えてはくれないか?」

「…何?」

 

スネイプが立ち止まり、疑うような目でわしを見つめる。

 

「…貴様の成績は知っている。今のままなら吾輩が教える必要もなく試験を突破できるだろう」

「試験勉強の為に教えを請おうとしているのではない。わしが欲しいのは今よりも上の実戦的な魔法だ」

「……貴様は中々優秀だ。吾輩はより知識を求める者にそれを教える義務がある。良いだろう」

 

機嫌を損ねて減点される事も予想していたが、案外快い返事が返って来た。

スネイプはあくまで気が向いた時にだけ個人授業をしてくれるつもりのようだ。

わしにとっては中々のプレゼントだな。

クラッカーから出てきた新品の枕やチェスセットとやらを持ちながら、上機嫌で寮へ戻った。

 

その翌日、早速スネイプから呼び出しがかかった。

昼過ぎにスネイプの部屋をノックすると、奴は無言でドアを開けた。

彼の部屋は魔法薬学の教室よりもはるかに多くの魔法生物の標本や液体漬け、解剖図が置いてあり、おどろおどろしい雰囲気だった。

わしは奈落の城で慣れているから気にしないが、ダフネ辺りはダッシュで逃げるだろうな。

 

「さて、貴様が学びたい呪文とは具体的になんだ?」

「防御呪文を教えてほしい」

「ほう…何故攻撃呪文では無く防御呪文なのだ?」

「わしにはその方が向いているかもしれない、と思い始めてな」

 

わしは薙刀で接近戦を挑む事も多かったが、それと同じくらいに結界の防御も重視していた。

当時は犬夜叉の風の傷を結界で軽々と防ぎ、時にはその威力をそのまま相手に返す事もできた。

だが、今のわしには結界を張る力も、当時の不死身の肉体も無い。

ならば魔法で防御を行うのが道理というものだろう。

 

スネイプは顎に手をあて、静かにわしの目を見つめる。

その時、何かが心の中に入ろうとする感覚を覚えた。

わしの背中の蜘蛛の火傷痕が疼きだし、痛みに思わず顔をしかめる。

沈黙の後、スネイプはわしから目を背けた。

 

「…吾輩の開心術を防ぐか。だが、貴様自身の力ではないようだな」

 

以前本で読んだことがある。

開心術とは相手の記憶を読み取る呪文だった筈だ。

奈落に施された術が役に立ったようだが、奴のおかげと言うのも癪だな。

わしらは暫しの間無言で睨み合って居たが、やがてスネイプが折れたようにため息をついた。

 

「…いいだろう。防御呪文ならばこれを覚えておけ。…プロテゴ(護れ)。盾の呪文だ」

 

夕暮れまで、スネイプの部屋で防御呪文の練習を行った。

スネイプが実際に攻撃呪文を放ち、わしがそれを防ぐといったやり方だ。

彼の部屋から出たわしの体は激痛に悲鳴をあげて居たが、満足感があった。

最後の方はスネイプの攻撃を防ぐことが出来るようになっていたからだ。

ま、奴は半分の力も出していないだろうがな…。

 

クリスマス休暇が終わるまで、防御呪文の習得に力を注いだ。

上級生が習う授業の学習や箒の練習も継続して続けていた。

わしは確かな手ごたえを掴みつつあった。




・8/21 誤字報告ありがとうございます。修正しました。

・8/22 一部修正しました。ご指摘ありがとうございます。

・2017/05/25 少し内容を修正しました。
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