【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第23話 ホグワーツの歴史

「何だ、何が起こったんだ!?」

 

マルフォイの大声を聞きつけたのか、人混みをかき分けて猫の飼い主のフィルチが現れた。

猫の哀れな姿を見るなり、彼は激しく取り乱してポッターに掴みかかろうとしたが、ダンブルドアが数人の教師を引き連れて現れた事で渋々怒りを収めた。

現場にいた4人の生徒は、近くにあったロックハートの部屋で尋問を受ける事になった。

さめざめと泣くフィルチと、ここぞとばかりに武勇伝を話すロックハートの声はとても耳障りだ。

 

「僕らは絶命日パーティに出ていたんです! ミセス・ノリスを石に出来る筈がありません」

「そうだな。わしもそのパーティに出ていたし、血みどろ男爵や首なしニック、他のゴーストも証言してくれるだろう」

 

ポッター達のアリバイ証明に付き合うのは癪だったが、自分の潔白を証明するために口を開く。

ニックはともかく、男爵がアリバイを証言してくれるかどうかは確証が持てなかったが。

 

「では何故、絶命日パーティが終わった後大広間に来なかったのだね? 諸君は何故あの廊下に行ったのかね?」

 

スネイプの暗い瞳が容疑者を…いや、ポッターを見据える。

苦しい言い訳をするポッターをさらに問い詰めようとするが、ダンブルドアに諫められて悔しそうに追及を諦めた。

わしにも追及の手が伸びて居たら少し言い訳に困ったので、内心安堵する。

結局、疑わしきは罰せずというダンブルドアの言葉が通り、それ以上の追及はされ無かった。

そして、マンドレイクが成長すれば猫は治ると判明し、4人の生徒は話は終わりとばかりに部屋から追い出された。

解放された喜びからか、速足でその場を去ろうとするポッター達の背に、疑問を投げかける。

 

「グレンジャー、生物を石にする呪文を知っているか?」

「え…えっと、ペトリフィカス・トタルスなんかは一時的にその効力を与える事が出来るけど…」

「その呪文ではないだろう。ミセス・ノリスの様子を見る限りな」

「そうね、そうよね……じゃあ」

「ハーマイオニー! こんな奴に教えてやる必要なんかない!」

 

ウィーズリーが叫び、グレンジャーの肩を掴み強引にその場からさらって言った。

その背を見送り、寮に戻ろうと踵を返す。

 

「………」

「うっ…!」

 

驚いてひっくり返りそうになった。。

振り返った瞬間、無表情で佇む神無が目の前に立っていれば、奈落やダンブルドアでも驚きの声の一つはあげるだろう。

 

「どうかしたか?」

「……これ」

 

無言で夕食の残りを差し出される。

そういえば食事の確保を頼んでいたな。

 

「ご苦労、神無。…なぁ、貴様は今回の騒動をどう見る?」

「……まだ、関わるべきじゃない」

 

勿体ぶる様な言葉を残し、さっさとレイブンクロー寮に駆けて行ってしまった。

…そう言えば神無は遠くの物を見通す鏡を持っていたな。

あれを使えば真相はすぐに分かるが…それでは面白くないな。

 

 

 

 

 

寮に戻ると噂話が止んで皆の視線が集まった。

ピクシー退治やクィディッチ選手になった時に感じた視線とは大きく異なるものだ。

彼らはわしに畏怖心を抱いている…。

 

「お、お帰りなさい。……その、大変でしたわね」

 

皆が遠巻きにわしを見ながらヒソヒソ話をする中、ダフネが勇敢にも近づいてきた。

 

「そうでも無い。フィルチの泣き声が少しうるさかった程度だ」

「ミセス・ノリスは気の毒でしたわね…」

 

優等生のダフネはミセス・ノリスやフィルチの世話になる事も無いので、彼らに同情的だ。

猫やフィルチの身に起きた悲劇を、良い気味だと漏らす生徒もそれなりに居た。

 

ダフネはパーティでの出来事や骸骨舞踏団とやらの演奏について話してくれた。

本当は猫の身に起こった事やダンブルドアの詰問の内容を詳しく聞きたいのだが、本題を切り出す勇気が出ないようだと察した。

仕方がない。

神無から受け取った食事も丁度食べ終えた事だし、そろそろ本題に入ってやろう。

 

「骸骨舞踏団はとても素敵でしたわ。最後のパフォーマンスなんて城内総立ちで…」

「猫をやったのはわしではない」

 

彼女に悪いと思いながらも、強引に口を挟んで話題を変える。

そして、ロックハートの部屋での会話をそのまま話した。

会話を聞いていた者達は一様に表情を変えたが、わしの潔白を信じている者は殆ど居ないようだ。

眼前のダフネも半信半疑らしい。

無駄かもしれないと内心諦めながら言葉を繋ぐ。

 

「猫はダンブルドアでさえ、すぐには治せない術を掛けられていた。悔しいが、わしはまだそんな魔法を使う力量が無い」

「…どうだかな。君は何処か謎めいているからね」

 

上級生の一人が呟くと、周りの者が大きく頷いた。

「絶命日パーティ」の事も話したが、男爵は物思いに耽ってたので証人になってくれなかった。

レイブンクローのゴーストの事を考えているのだろうが、今だけ味方してくれても良いだろうに。

 

「ピクシーをやっつけたように、ミセス・ノリスもやっちまおうと思ったんじゃないか?」

「規則違反を見つかりついカッとなって…とか。ありそうよね」

「それにアイツはヒトミの息子だ。ヒトミの父は東洋の妙な術を使うと聞いた。息子がそれを使えても不思議じゃないぜ」

 

ピクシー退治の件と、奈落の子という立場が、ここに来て足を引っ張るとはな。

…何を言っても無駄なようだ。

ため息をつき、困ったような顔をしたダフネの頭を軽く撫でて立ち上がった。

周りを取り囲んでいた生徒達は自然とおののき道を開ける。

 

「何度でも言おう。わしではない。」

 

堂々とした言葉を残して部屋に戻ると、マルフォイと目があった。

しかし、奴は無言でベッドに潜り込んでしまった。

皆の前で大声を上げた時の元気は何処にいったのやら。

 

ため息をつき、厨子に餌をやろうと籠をのぞき込む。

奴は籠の中の運動道具を荒らしまわった末に隅の方で丸くなり震えていた。

 

「…またか。一体何に怯えている?」

 

考えを読もうとしても、厨子の頭の中はぐちゃぐちゃで要領を得ない。

ヴォルデモート卿が城内に居ても平気だった厨子が、ここまで怯える相手とは何者なのだ…?

しばらく考えて、一つの仮説に思い至った。

 

「もしや、貴様が怯えている相手は人間ではないのか?」

 

獣が怯えるのは同じ獣という事か?

だとすると、あの時聞こえた妙な声もその生物が発したものだろうか。

…まだ仮説の段階だが、この考えはそう外れては居ない気がする。

 

 

 

 

 

ハロウィーンの翌日。

朝早くに図書室に行き「ホグワーツの歴史」を初めとする歴史書を何冊か借りた。

この本の貸し出しはすぐに予約で一杯になったらしいので、早めに本を借りて正解だった。

パラパラと流し読みをして、知りたい情報を手に入れた。

 

ホグワーツには4人の創設者が居る。

その一人のサラザール・スリザリンはマグル生まれの者を入学させない事を提案したが、他の3人から猛反対される。

スリザリンは秘密の部屋を造りその中に怪物を封印し、学校を去った。

いつか自分の継承者がマグル生まれを取り除いてくれる事を願って…。

 

この文章の後半は「ホグワーツの歴史」ではなく、何処かオカルトめいた本に書いてあった事だ。

信憑性は危ういと思うが、まぁ他に情報が無いので今は信じておくか。

 

 

「…で、わしがその継承者だと思われているわけか」

 

先ほど、わしを見て廊下の隅に隠れたハッフルパフ生を思い出して頭を抱える。

面倒な事だ。

歩くたびにヒソヒソ声が付き纏うのに少しは慣れたが良い気はしない。

スリザリンの中には、わしが継承者だとすっかり信じ込んで恐れる者が多い。

継承者様に何かと世話を焼きたがる者も少数だが存在したので、彼らを使い走りとして使った。

彼らがそう望むなら叶えてやるべきだろう。

 

ポッター継承者説も流れていた。

スリザリンの生徒は、宿敵であるポッターが自分たちの継承者だなんて考えるのも嫌なようだが、他の3寮はそうでは無いようだ。

ポッターは元々有名人だったが、これまで以上に噂のネタにされていた。

昨年の大量失点の時といい、奴も大変だな。

 

 

 

 

 

「あたしはハリー・ポッターじゃないと思うな。する理由が無いよ」

 

妖精学の授業に向かう途中、廊下で出会ったルーナが話しかけてきた。

 

「そうだな…同感だ。ならばわしが継承者だと思うか?」

「あたしはあんたが継承者でも驚かないよ。話してて楽しいけど良い人かどうか分からないもン」

「賢明だな」

 

わしは低い声で笑うと、彼女と別れた。

 

 

 

 

 

 

数日後、城内は秘密の部屋と継承者の話題で持ちきりだった。

グリフィンドールの生徒が魔法史の時間に秘密の部屋について尋ねたらしく、その時のビンズ先生の答えが皆に広まったのだ。

誰もが秘密の部屋の怪物を恐れ、その正体を知りたがった。

 

「きっとしわしわ角スノーカックスだよ」

 

何だそれは。

ルーナから「ザ・クィブラー」のページを見せつけられたが、この生物では無いなと直感した。

 

しかし、怪物か…。

わしが呼んだ本にはそこまで書いていなかった。

ビンズに質問をした勇気あるグリフィンドール生に感謝だな。

 

ハロウィーンの夜に、厨子の怯えようから敵は人間では無いと推測したが、当たっていたようだ。

一体どんな生物なのだろうか。

「ホグワーツの歴史」を返すついでに、魔法生物の本を何冊か借りて調べてみた。

 

「禁書の本を読めればいいのだがな…」

 

許可が無いと立ち入る事すら許されない棚を、恋焦がれるように見つめる。

スネイプにでも頼んでみるべきか?

いや、「そんな事よりクィデッチの練習に集中しろ」と言われそうだな。

最近はフリント達からも異物を見る目で見られるし、練習も憂鬱になってきた。

 

 

 

 

部屋に戻り、魔法生物の本を読み漁っていると興味深い生物のページが目についた。

 

「メデューサ」

宝石のように輝く目を持ち、見たものを石に変える能力を持つ。

頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯、青銅の手、黄金の翼を持っている。

 

頭髪は無数の毒蛇で……『蛇』だと?

 

ポッターと初めて出会ったのはいつだっただろうか。

マダム・マルキンの洋装店か?

…違う、神楽に連れられて動物園に行った時、わしは奴と会話をした。

 

『おい、貴様』

『え…僕の事?』

『そうだ。今蛇と話していたな。そしてガラスが消えた…お前がやったのか?』

 

蛇だ。

ポッターは動物園で蛇と話していた。

奴は蛇の言語を理解できる。

そしてわしも…。

 

あの時、奇妙な声に引き寄せられて3階の廊下に向かった…。

ポッターもそうだとしたら?

あの声を出していたのは蛇なのか?

 

だが、あの廊下に蛇など居なかった。

それに誰かを石化させる蛇など聞いたことが無い。

…しかし、「石化」と「蛇」について調べてみる価値はありそうだな。

蛇はスリザリンのシンボルとされている。

サラザール・スリザリンと蛇の間に何か関係があるかもしれない。

 

少し真相に近づいた気がする。

会心の笑みを浮かべ、大きく伸びをする。

気分転換に城内を歩いていると、競技場でグリフィンドールのチームが練習をしているのが見えた。

奴らとの試合も近い。

秘密の部屋の謎解きも良いが、意識を切り替えた方が良いかもな。




・メデューサの説明はwikipediaから抜粋しました。

・2017/06/07 文章を少し修正しました。
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