【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※前半はハリー視点、後半は白童子視点


第24話 ドビーの警告

『ハリー視点』

 

 

土曜日の朝、僕は早々と目が覚めて今日の試合の事を考えていた。

金に物を言わせて買った最高級の箒に乗ったスリザリン・チームの事を考えると頭に血が上る。

奴らを負かせてやりたいと、今ほど強く願った事は無い。

正々堂々と試合に勝ち、ウッドやフレッド達と勝利を喜びあいたい。

箒の性能だけで勝てるわけじゃ無い事を見せてやる。

そして、マルフォイとヒトミの悔しがる顔を拝んでやるんだ。

 

早めの朝食に向かうと他の選手も既に来ていた。

僕らは何も話す気になれず、黙々と食事を口に運んだ。

そして、試合開始の11時前、蒸し暑い中を更衣室に向かった。

 

「頑張れよハリー!」

「しっかりね!」

 

ロンとハーマイオニーの激励を受けながら、ふと空を見上げる。

どんよりとした雲が漂い、今にも雨が振り出しそうな天気だった。

選手たちは真紅のユニフォームに着替え、座ってウッドの演説を聞く。

 

「金の力だけでも、箒の性能だけでも勝てないって事を奴らに思い知らせてやる! 行くぞ、皆!」

 

ウッドが拳を突き上げると僕らもそれに応じた。

「スニッチを掴め。然らずんば死あるのみだ」という彼の言葉が胸に響いた。

 

 

 

 

僕らが入場すると大声援が迎えてくれた。

スリザリンのブーイングも微かに聞こえたが、それ以上に他の3寮の声が大きかった。

観客の中にロンとハーマイオニーの顔を見つけ、僕はニッコリした。

フリントとウッドの握手のあと、マダム・フーチが笛を鳴らす。

試合開始だ。

 

 

笛と同時に僕らは空に飛びあがった。

僕は誰よりも高く舞い上がり、スニッチを探して四方に目を凝らした。

マルフォイが挑発するように箒の性能を見せつけてきたが、ブラッジャーが当たりそうになったので答える余裕は無かった。

 

『スリザリンがゴールを決めた! これでスコアは40-0! ウッド、踏ん張れ!』

 

試合が進むにつれて僕は確かな違和感を感じていた。

2つあるブラッジャーの内の片方が執拗に僕を狙ってくるのだ。

より多くの選手を振り落とそうとするのがブラッジャーの役目なのに…。

 

「……くっ!」

 

もう一つのブラッジャーも的確に僕を狙ってくる。

ヒトミはアンジェリーナを初めとするチェイサー達に何度も攻撃してゴールのチャンスを奪っていたが、常に僕をマークしているらしく、隙あらばブラッジャーを打ち込んできた。

顔すれすれを目がけて飛んでくる剛球に恐怖を覚えそうになり、懸命に自分を励ました。

あんな球に当たるもんか。

強い雨が降り始め、メガネを雨粒がビシャビシャと打ち、状況は更に悪化した。

 

ウッドがタイムアウトを取り、グリフィンドール選手が地面に降り立った。

フレッドとジョージがブラッジャーの異変を伝えるとウッドは困ったように唸った。

僕はスリザリン生のヤジを見て、心を決める。

フレッド達には他の選手のところに戻ってもらい、僕だけでブラッジャーに対処する。

2人は反対したがウッドは了承してくれた。

 

 

ホイッスルが鳴り響き、僕らは再び宙を舞う。

ブラッジャーの追撃から逃げるために高く高く上昇し、時には急降下しジグザグ回転した。

幸いなことにハーマイオニーが防水呪文をかけたので視界はマシになっている。

 

視界の端でスリザリンの選手がウッドを抜いて得点するのが見えた。

これで点差は90-20だ。

急がなくては…!

ブラッジャーが襲い来る中を懸命に目を凝らしてスニッチを探す。

 

「バレエの練習かい?ポッター!」

 

憎きマルフォイの挑発に思わず睨み返した時、彼の傍に金色のスニッチが居るのを見つけた。

マルフォイは気づいていない…。

僕は近づくべきか一瞬葛藤した。

その一瞬をヒトミは見逃さなかった。

 

『ハリー・ポッターの背中をブラッジャーが直撃だァー!!箒から落ちそうになりながらも必死に堪えている!』

 

リー・ジョーダンの実況がやけに遠くに聞こえる。

ブラッジャーを背中に受けたらしく、全身が痛むのを感じた。

もう一つのブラッジャーも僕の右腕に当たり、朦朧とする意識の中僕はただ箒を走らせた。

マルフォイのところへ行け…。

その単語だけが何度も頭の中を渦巻いていた。

 

僕が襲ってくると思ったのか、マルフォイは顔を引きつらせて逃げようとする。

そんな彼を一喝したのは高速で近づいて来たヒトミだった。

 

「マルフォイ、貴様の左耳のあたりにスニッチが居る。奴より早く掴みとれ!」

 

…余計な事を!

ヒトミを睨む余裕もなく、僕は全速力でスニッチに向かい手を伸ばす。

一拍遅れてヒトミの言葉を理解したマルフォイも手を伸ばすが、僕が一瞬早くスニッチに触れた。

…やった!

勝利を確信した次の瞬間、横から強い衝撃を受ける。

左手からスニッチがするりと逃げていき、マルフォイが慌てて手を伸ばすのが見える。

豊かな白い髪と整った顔がアップに迫り、ヒトミから体当たりを受けたことが分かった。

2つの影は絡み合いながら地上に真っ逆さまに落下していった。

 

『両者激突だー!そしてスニッチの行方は…?』

 

僕とヒトミは土砂降りで濡れた地面に叩きつけられた。

競技場の皆の視線が注目する中、僕らの数メートル上でマルフォイが大喜びで飛び回っていた。

その手には金色のスニッチがしっかりと握られている。

やがて、マダム・フーチがメガフォンを取り出して堂々と宣言した。

 

『スニッチを取ったのはマルフォイです!よって勝ったのは250ー20でスリザリン!』

 

3つの寮から落胆の声が上がったが、スリザリン生の狂喜の声がそれをかき消した。

僕は敗北の絶望を感じると共に、意識が闇に落ちていくのを感じた。

 

 

 

ロックハートのデタラメな治療のせいで骨抜きになってしまい、ヒトミから受けたブラッジャーのダメージも大きいので一晩入院する事になった。

見舞いに来てくれたロンやハーマイオニー、そして選手たちは皆敗北のショックから暗い雰囲気で、それが僕を落ち込ませた。

なので、夜遅く訪れたドビーに必要以上に辛く当たってしまった。

彼は怒りの声に恐縮しながらも、秘密の部屋が再度開かれた事を教えてくれた。

まだ聞きたい事はあったが、誰かの足音を聞きつけたドビーは姿を消した。

ドアが開き、ダンブルドア達が生徒が石化した事を深刻そうに話す声が聞こえた。

 

僕は翌日、ロンとハーマイオニーにこの事を伝えるべく医務室を早々に去った。

例の女子トイレに向かう途中、スリザリンの奴らが昨日の勝利を話しているのを見かけ、胸がむかつくのを感じた。

頭を振り払い「秘密の部屋」の事に意識を切り替えようと努力する。

でも、あの敗北は頭の何割かを常に占め、僕を数日間にわたり苦しませた。

 

ヒトミがマルフォイにスニッチの事を教えなければ…!

いや、マルフォイが気づいた後も僕の方が先にスニッチに触れたのに、奴が体当たりをしてきて勝利を逃してしまった。

それだけじゃない、あいつは競技場でロンを投げ飛ばし、1年前は僕も同じ目に会わせた。

彼に対する怒りと苛立ちを僕は押し殺すことが出来なかった。

 

 

…そう言えば、ヒトミも地面に叩きつけられて入院した筈だ。

彼は昨夜意識を取り戻す事が無かったようだ。

早くロンやハーマイオニーと話がしたかったので隣を見る余裕が無かったが、大丈夫だろうか。

…大丈夫じゃない方が良いな、僕たちにとっては。

 

 

 

 

 

『白童子視点』

 

…少しエキサイトしすぎたな。

夜遅く目を覚まし、わしが最初に思ったことがそれだった。

クィデッチというゲームには、選手に多少の怪我よりも勝利を優先させる何かがあるらしい。

体当たりをした時点では無事着地する自信があった。

だが、ポッターが思ったよりも抵抗した事と、雨で手が滑り箒のコントロールを失ったのは計算外だった。

背中にブラッジャーを打ち込んでやったのにあんな動きが出来るとはな。

ブラッジャーの異変が無ければ奴はもっと縦横無尽に動き回り、スニッチを早々に掴んでいたかもしれない。

奴の実力は今のわしやマルフォイを上回っているようだ。

 

 

…ここはわしの部屋では無いな。

看護用のベッドや消毒液の匂いから察するに、あの後医務室に運ばれ寝かされたのだろう。

気絶している間に患部の治療は終わったようで、殆ど痛みを感じない。

この分ならば明日には退院できるだろう。

泥まみれだった服が着替えさせられているが、その際に蜘蛛の火傷痕を見られなかっただろうかと不安に思った。

 

 

 

 

「ブラッジャーに細工をしたのは、君だったのか!」

 

怒りを込めた声に目を見開く。

これまで気づかなかったが隣のベッドにも誰かが眠っていたらしい。

数十センチの生き物と何か会話をしている。

興味を惹かれ、会話を盗み聞きする事にした。

 

「ドビーめは、ハリー・ポッターが家に送り返される程度の大怪我をさせたかったのです!」

「その程度の怪我って言いたいわけ?一体何故こんな事を!?」

「貴方様が『名前を言ってはいけないあの人』に打ち勝ってから、私共『屋敷しもべ妖精』の生活は全体的に良くなりました。でも、また歴史が繰り返されようとしています! 『秘密の部屋』がまたしても開かれて…」

「部屋は以前にも開かれた!? どういう事? その時には何があったの?」

 

ドビーと言われた生き物は突如頭を何かにぶつけ始めたがポッターがそれを止め、話を促す。

 

「僕の友達はマグル生まれだ!部屋の怪物が現れたら彼女が真っ先にやられる…!」

「なんと気高い! なんと勇敢な! でもハリー・ポッターは一番に自分の身の安全を考えなければいけない…ドビーは行かなくては!」

 

突如ドビーが話を切り上げ、高い音と共に姿を消した。

…なんだ今のは?

以前読んだ「ホグワーツの歴史」では、この城で姿くらましは使えないと書いてあった筈…。

 

再び話し声が聞こえ、わしは意識をそちらに傾ける。

 

「また襲われたのじゃ。ミネルバがこの子を階段のところで見つけてのう」

「石になったのですか?」

 

事態を把握し、わしはベッドから立ち上がり物陰に隠れながら様子を見る。

小柄な男子生徒の石像を前に深刻そうに3人の先生が話し合っている。

ダンブルドアが石像が握っていた小さな機械を取り上げる。

会話からそれがカメラだと察したが、全てを溶かされて壊されたらしくカメラからは蒸気が噴き出していた。

 

「『秘密の部屋』が再び開かれたということじゃ」

「でもアルバス…いったい、誰が?」

「誰がと言う問題ではないのじゃ。問題は、どうやってじゃよ…」

 

ダンブルドアが発した意味深な言葉にマクゴナガルは首を傾げた。

奴らが去った後、わしは今入手した情報を頭の中で整理していた。

ドビーと言う名の「屋敷しもべ妖精」を自称していた生き物がブラッジャーに細工し、ポッターを守ろうとした事。

生徒が襲われ石化し、ダンブルドアは誰が開いたかよりもどうやって開いたかに注目している事。

謎の生物による攻撃は、カメラの内部を溶かす力がある事。

この情報は恐らく、真相を解く鍵となりうるだろう。

わしは今夜医務室に入院したことを幸運と捉えた。




・8/23 文章をすこし修正しました。
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