【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第25話 マルフォイの決意

 

 

昼頃に退院し、図書室でドビーとやらの種族を調べる事にした。

 

『第3章 屋敷しもべ妖精について

魔法界において大きな権力や財力を持った城や館で雇われ、奉仕活動を行う魔法生物。

彼らは無給無報酬で働く事が名誉と考えており、我々魔法族に非常に従順。

純血の魔法族の間では彼らを雇う事がステータスとなっている。

屋敷しもべ妖精は杖を使わずに独自の魔法を使用する。

その魔力は魔法使いより強力と言われているが、敵対的に使われることはごく稀である。

 

 魔法界における有名な魔法生物一覧より抜粋』

 

 

杖を使わずに独自の魔法を操る…か。

ホグワーツ内で瞬間移動のような術が使えた理由が分かった。

中々便利な生物なので、わしも欲しいくらいだ。

わしの家はそれなりに大きいと思うのだが、屋敷しもべは雇っていないのだろうか?

ついでにスリザリンの怪物についても調べてみたが、今日のところは収穫が無かった。

 

 

 

 

夜の大広間では昨日の試合の勝利の立役者のマルフォイが英雄となっていたが、本人はどこか浮かない顔だ。

わしが席に着くと皆が駆け寄って来て、昨夜の試合の事を興奮気味にまくしたて始めた。

 

「見事な体当たりだったぜ! 流石は継承者様だ」

「ポッターをぶっ飛ばした時は爽快だったわね。ざまあみろだわ!」

 

マルフォイはわしにチラリと視線をやったが、何も言わずにローストビーフを噛み切った。

わしが教えるまでマルフォイはスニッチの在処に気づいていなかった。

それを内心気にしているのだろうと察し、その事は誰にも話さない事にした。

グリフィンドールのテーブルは静まり返っており、昨日の敗北を引きづっている事は明らかだ。

選手陣は皆早々に食事を終えて去っていったが、キャプテンのウッドは放心しながらサラダをいつまでも食べていた。

 

 

 

 

 

その晩、来週の授業の予習をしているとマルフォイが深刻そうに話しかけてきた。

 

「…ヒトミ。話がある」

「なんだ」

 

勉強の手を止めて振り返ると、少しの間黙っていたがやがて意を決したように口を開いた。

 

「昨日の試合…君に言われるまで僕はスニッチに気づかなかった」

「そうだな」

「アイツは気づいていたのに…!僕はまだ…まだポッターには勝てない。君にもだ」

 

わしは目を見開いた。

常にポッターをからかうのは彼への嫉妬が原因だろうと予想していたが、はっきりと勝てないと宣言するとは思わなかった。

マルフォイはひょっとすると、わしが思った以上に見込みがある男かもしれない。

 

「勝てない、か。…ならば、貴様はどうする?」

「僕はポッターも、君も…越える。越えてみせる! 僕はマルフォイ家の男だ!」

「そうか。…そうだな。だが、ポッターはともかく、わしは手ごわいぞ?」

 

わし等は睨み合っていたが、やがてお互いの顔を見ながら笑いあった。

奴とこうして笑うのは初めてだ。

布団に入る時、わしの心は不思議と爽やかだった。

その日からマルフォイとの溝が少し減り、前よりも話す回数が増えた。

また、マルフォイは今まで以上にクィディッチの練習に熱心になり、わしも良い影響を受けた。

 

 

 

 

翌日、城中に生徒が石化したという噂が流れた。

コリン・クリービーとかいう生徒に起こった悲劇は皆を恐怖に陥れ、クィディッチの話題は一瞬で吹き飛んだ。

1年生たちは固まって行動するようになり、わしに媚びを売るスリザリン生も増え始めた。

継承者候補に従っていれば襲われないと思っているのだろうか。

スリザリン生もすべての者が純血ではない。

わしのような半純血や、マグル生まれである事を隠している者もいる。

そういった者にとっては、今回の出来事は恐怖すべき事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

「決闘クラブだって?」

「今夜が一回目だ…誰が教えるんだろうな」

 

掲示板の前で生徒たちが興奮気味に話し合っている。

近くを歩いていたダフネ達を捕まえて事情を聞いてみた。

 

「決闘を学ぶんですって…。私はそんな野蛮な遊戯には参加しませんわ」

「ま、君はそうだろうね。でも面白そうじゃないか」

 

馬鹿ばかしいと呟くダフネに対し、マルフォイは今夜が楽しみでうきうきしているようだ。

わしはどうするかな。

ふと、先週の魔法薬学の授業で起こった事件を思い出す。

ゴイルの鍋が爆発し、中の薬が周囲の生徒に降りかかった。

わしは咄嗟に「プロテゴ」で身を守り、一緒に調合していたダフネも守ることができたが、呪文が一瞬遅ければ薬を頭から被っていただろう。

もっと強くなる為にも、決闘の術や作法を知っておいてもいいかもしれない。

 

…大鍋の爆発は誰かの悪戯だとスネイプは言っていたな。

ポッター達がこそこそと動いていた事から察するに、奴らが犯人だろうが、咄嗟のことだったので証拠を掴むことが出来なかった。

奴らの弱みでも握りたかったが、諦めるしかないな。

…そういえば、奴らは最近マルフォイを見張っているような節がある。

マルフォイの事を継承者だと疑っているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

午後8時。

大広間のテーブルは片付けられて大きな空間が設けられ、その場に生徒達が集まっていた。

ポッター御一行様も当然のように来て居て、レイブンクローの生徒の群れの中にはルーナの姿もあった。

神無は来ていないようだ。

 

「みなさん、集まって集まって!私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?結構、結構!」

 

きらびやかなローブを纏ったロックハートが現れると、女子生徒が黄色い声をあげる。

彼は愛想よく満面の笑みを振りまきながら、助手としてスネイプを紹介した。

スネイプは闇の魔術に通じていると聞いたことがある。

わしの知らない実用的な呪文を教えてくれる事を期待したが、模範演技で使われたのは既に知っている魔法で落胆した。

「エクスペリアームズ」なら既に独学で習得済だ。

 

「これから皆さんには2人ずつ組んでもらい、私たちが行ったように武装解除呪文を使ってもらいます!」

 

スネイプとロックハートが生徒の群れに入りペアを作っていく。

マルフォイと組もうと思ったが奴はポッターと組まされ、わしはルーナと組む事になった。

そう言えば退院してから彼女と話していなかったな。

 

「クィデッチの時の体当たりは凄かったよ」

「見ていたのか。ああ、ありがとう」

「でも、あれって厳密に言えば反則なんだってね。故意に箒でぶつかったから」

「そのようだな。ウッドは敗北のショックで抗議する気になれなかったようで、助かった」

「かもね。でも、ブラッジャーのトラブルが無かったらハリー・ポッターが勝ってたのかな。ブラッジャーって本当に痛そう」

 

ルーナはブラッジャーの異変を聞いたことも無い魔法生物の仕業だと主張していたので、適当に相槌を打った。

ロックハートの説明の後、生徒達は作法の通りに決闘を行う事になった。

わしの武装解除呪文は見事にルーナの杖を宙に舞わせたが、少し遅れていれば結果は逆になっていただろう。

彼女は魔法のセンスがかなりあるようだ。

 

「流石だね。聞いたけどあんた、去年は2位の成績だったんだって?」

「ああ。貴様も見事だったぞ」

 

ルーナはお世辞と受け取ったのか肩を竦め、わしから杖を受け取った。

まともに決闘の作法が出来たわし等は少数派だったらしい。

周りを見ると、鼻血を出して倒れる者や相手にヘッドロックをかけている者も居た。

 

「やめろブルストロード。格闘技の時間ではないぞ」

 

頭を小突くと、ブルストロードは渋々グレンジャーの首から腕を離した。

2年生の中でも上位の実力を持ち、継承者の疑いもある相手に刃向かうのは賢明ではないと考えたのだろう。

ヒーヒー唸っていたグレンジャーは、痛そうに首を抑えながら礼を言ってきた。

 

 

ロックハート達は生徒達の未熟な決闘の後始末を終え、模範としてマルフォイとポッターに決闘を行わせた。

マルフォイは武装解除呪文ではなく蛇を呼ぶ呪文を唱え、蛇は周囲の生徒を威嚇する。

スネイプが場を収めようとしたが、ポッターは愚かにも皆の前で蛇語を使い蛇を従わせた。

 

「馬鹿が…」

 

わしは誰にも聞こえないように呻いた。

蛇はポッターの言葉を聞きハッフルパフの生徒を襲うのをやめたが、それが分かった者がこの中に何人居る事だろうか。

襲われそうになった生徒はポッターが蛇をけしかけたと誤解し、他の生徒達もそう思っているようだ。

 

「ポッターはやめさせようとしたんだよ。蛇はポッターが何か言う前から、フレッチリーを襲おうとしてたもン」

 

一瞬の沈黙の後、誰かが「またルーニーがデタラメを言ってるぜ」と言ったのを最初に皆は笑い出した。

真実に気づいたルーナに感心する一方、愚かに笑う者達をわしは冷めた目で見つめた。

 

 

 

 

 

決闘クラブの翌日、ハッフルパフの生徒とグリフィンドールのゴーストが石化する事件が起きた。

何故かポッターが現場に居た為、皆が彼の犯行だと考えて恐れるようになった。

わしが継承者だと考えて居た者の大半は態度を翻したので、使い走りが減ってしまった。

それでも、少数の生徒はヒトミ継承者説をまだ信じているようだった。

 

寒くなって来たので、日課のジョギングやクィディッチの練習がキツくなってきた。

多くの生徒がそうであるように、わしもクリスマス休暇に家に帰る事にした。

休暇前に図書室でスリザリンの怪物探しを行ったが成果は無く、少しじれったい思いを味わった。

続きは休暇明けにしておくか。

 

「貴様は残るのか?」

「まあね。今年はそうしろと、父上が仰ったからな」

 

マルフォイに別れの言葉を告げ、神無やダフネと共にホグワーツを後にした。

汽車の中ではダフネとチェスや雑談をして楽しんだ。

彼女はかなり強く、わしは何度か負かされた。

常に無表情で何を話しかけても返事をしない神無にダフネは少し対応に困っていたようだった。

 

 

 

 

 

「げ、お前クリスマスこっちで過ごすのかよ」

 

家に帰るなり神楽が失礼な反応を見せる。

 

「手紙で帰る事を知らせておいただろう」

「まぁそうだけどな…。はぁ、とにかく上がりな」

 

派手に飾り立てられていたホグワーツとは違い、わしの家はクリスマスなど関係ないといった風体だった。

申し訳程度に小さなツリーは飾ってあったが。

家に帰って数日たつと、厨子は元気になり籠の中を走り回っていた。

やはりスリザリンの怪物が居るホグワーツから離したのは正解だった。

休暇明けも学校には連れて行かず家で放し飼いしておこう。

 

 

 

 

 

 

クリスマスの朝、わしの枕元にはプレゼントが幾つか届いていた。

マルフォイからは高価な魔法生物の本だ。

スリザリンの怪物を調べるためにその手の本を沢山借りたのを見て、動物好きだと思われたのだろうか。

ダフネからは高級な箒の手入れセットが、ルーナからは「ザ・クィブラー」創刊号が送られてきた。

グレンジャーからは鷲羽の羽ペンだ。

どれも有り難く使わせて貰うとしよう。

他にも、わしが継承者だと信じる者達から貢物が送られていた。

 

クリスマス前にダイアゴン横丁で相応の品をマルフォイ達に送っておいたので、貢物をくれた生徒にだけ後でプレゼントを送ればいい。

その日はマグルの洋品店や玩具屋を冷やかした後、近所の教会のミサに興味半分で参加してみた。

家に帰ると神楽がそれなりのご馳走を用意しており、存分に味わった。

こいつ、料理はできるようだな。

…奈落と言う余計な奴が、当然のような顔をして隣に座っていなければ楽しいクリスマスだったと言えるだろう。

 

「白童子よ。ホグワーツに怪物が出たらしいな」

 

食事を終えて部屋に戻ろうとすると、ねっとりとした声が絡みついた。

わしは体に悪寒が走るのを感じながらも、返事せざるを得なかった。

 

「…知っていたのか」

「わしはホグワーツの理事も務めているからな。自然と情報は入ってくる」

 

こんな奴が理事か…ホグワーツも底が知れたな。

 

「ダンブルドアはマスコミを黙らせているが…いつまで続くかな」

 

奈落は見る者に嫌悪感を与える笑みを浮かべながら話を続ける。

 

「ルシウス・マルフォイはダンブルドアをホグワーツから追い出すつもりだ」

「何…?」

「わしを含む多くの理事に秘かに話が回ってきている。反対する者も多いが、あのマルフォイだ。金や権力、時には脅しも使って要求を通そうとするだろう」

 

奈落はマルフォイが非合法な手段に訴えた場合、それを脅して金をせしめようとする気なのだろう。

そんな事をされては、またドラコとの仲が悪くなってしまう。

わしは控えめに奈落に忠告する事にした。

 

「…マルフォイをまた脅すつもりか? 貴様がどうしようと勝手だが、少しは控えろ。奴の息子とは知らない仲でも無いのでな」

「白童子よ。随分と甘くなったものだな。…まぁ良い、貴様がそう言うのなら手心くらいは加えてやろう」

 

その場を去りながら、ドラコ・マルフォイとの仲を話したのは不味かったかと後悔する。

殺伐とした戦国時代を離れ、学生としての生活を過ごすようになったことで甘くなったか…?

 

「お前ら、クリスマスくらいもっと爽やかな話しろよな…」

 

後ろで神楽が呆れたようにぼやくのが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

部屋で銀の矢を手入れしながら、奈落の言葉を思い返す。

ダンブルドアは近いうちに学園を追い出される。

去年クィレルが動いたのもダンブルドアが居なくなった日だった。

ならば、秘密の部屋の怪物が本格的に動き出すのも、ダンブルドアの不在の時だろう。

怪物が猛威を振るったその時、わしはどう動くべきだろうか。

 

 

翌日、わしはダイアゴン横丁に行って測量を行い、スリザリンのクィディッチ用のユニフォームを購入した。

ついでに、魔法動物ペットショップで厨子に去勢の魔法をかけて貰えないか相談してみる。

今まで忘れていたが、こいつにそこらで繁殖されると困るからな。

鼠は一匹居れば十分だ。

 

「坊ちゃん、この鼠は魔法界の鼠だから、マグルの鼠みたいに何十匹も生まないんだ。生んだとしても1匹や2匹さ。去勢の必要はないよ」

 

その程度なら生まれても困らないな。

わしは店主に礼を言って、鼠用の栄養薬を幾つか買っておいた。

そのまま街を歩き、銀の矢を買った店に顔を出したり、本屋で立ち読みをしたりと楽しい時を過ごした。

 

 

 

 

 

休暇も明日で終わりだ。

わしは新たにマグルの本を大量に購入し、それらを荷物に詰め終えていた。

夕暮れ時、マルフォイがくれた本をめくろうとして、手が滑り本を落としてしまう。

拾い上げようとした目の前で厨子が本の上に飛び乗り、勝手にページをめくってしまう。

厨子を叱り、本に手を伸ばそうとして、開かれたページの見出しに注目した。

見る者をゾッとさせるようなフォントで書かれた文章は、この生物が他の生き物とは違うと示しているかのようだ。

 

「バジリスクだと…?」

 

「毒蛇の王」という別名を持つ緑色の大蛇で、体長は最長で15メートルにもなる。

バジリスクの最大の特徴は黄色の眼であり、この眼を直視した者は即死、間接的に目を見た者は石化してしまう。

400年近く個体が目撃されておらず、絶滅したと考えられている。

 

わしは心臓が大きく高鳴るのを感じた。

これだ。

間接的に目を見た者は石化…クリービーはカメラを通して蛇を見て、ハッフルパフの生徒はゴーストを通して見た。

休暇が終わる直前に素晴らしい情報を手に入れた。

わしは厨子を撫でてやり、最高の働きをしてくれたこいつに感謝した。

 

 

夕焼けに染まる街を見て、まだギリギリで間に合うと思い、腰を上げる。

煙突飛行粉を勝手に使ってダイアゴン横丁に行き、対バジリスクに役立ちそうな物を幾つか購入した。

ヤツと戦うと決まったわけではないが、念のためだ。

次の日に汽車に乗りこみ、わしと神無は再びホグワーツへと旅立った。

 

 

 つづく




※魔法界の鼠は生む数が少ないってのはオリジナル設定です。

・8/24 文章をすこし修正しました。

・8/24 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
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