【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※前半ハリー視点、後半は白童子視点


第26話 継承者と怪物を追え

『ハリー視点』

 

苦労の末、ついにポリジュース薬が完成した。

これで真相を突き止めることが出来る、

僕らはクリスマスの夜に相手の髪の毛を入手し、マートルの女子トイレで薬を飲み干した。

途端に嫌な感覚が体中を走り抜け、変化が終わるまで吐き気を必死に堪えながら悶え続ける。

数分後、僕とロンは完璧にゴイルとクラッブに変化していた。

何故か個室から出てこないハーマイオニーを置いてトイレを出て、迷いそうになったところをマルフォイと出会って無事にスリザリン寮に入る事が出来た。

この時ばかりはマルフォイに感謝したが、談話室で彼がロンの父親を馬鹿にした時、僕の気持ちはすぐに消えた。

怒りで顔が赤く染まったのを指摘され、腹が痛いと言ってごまかして話の続きを促す。

 

「ポッター…奴もまともじゃない。なのに、皆あいつがスリザリンの継承者だと思っている!」

 

僕らはマルフォイが自白する事を期待したが、彼は自分が継承者では無いし、誰が陰で糸を引いているかも知らないと言った。

これじゃあポリジュース薬で変化した意味がない。

僕は焦りながらもう一人の容疑者の名を口にした。

 

「ハクドウシ・ヒトミはどうなんだ?あいつも怪しいと思うけど」

 

僕の言葉は、マルフォイにある程度の衝撃を与えたらしい。

彼は少しの間黙り込み、暖炉前に固まっているスリザリン生達をチラリと見た。

 

「…誰にも言うなよ。僕は、彼がそうであっても可笑しくないと思っている」

 

思わず身を乗り出す僕らに、彼は言葉を選びながらヒソヒソと話しを続ける。

 

「知っての通り僕らは同室だし、クィディッチのチームメイトでもあるから一緒にいる時間は多い。でも、彼は朝になると部屋を抜け出して何処かに行ってしまうし、休み時間の間どうしているかも分からないんだ。本人は軽い運動と授業の予習復習だと言っているけどね。それに、去年のクリスマス休暇にスネイプ先生から個人授業を受けていたという噂もある。スネイプ先生から闇の魔術を習ったのかもしれない」

 

「じゃあ、やっぱり彼が…」

 

「いや、そう決めつけるのはまだ早い。奴は『穢れた血』のグレンジャーの事を気にかけている。イカれたルーニー・ラブグッドなんかともよく話しているみたいだしな。継承者なら、そんな事はしない…と思う。」

 

ハーマイオニーへの侮辱を聞き、頭に血が上りそうになるのを賢明に抑える。

ルーニーというのはヒトミと仲が良いレイブンクローの女子生徒だろう。

 

「加えて、蛇語の問題もある。ヒトミが蛇語を使えるかどうかは分からない。でも…笑うなよ。僕はあいつが鼠と意思の疎通を測るような仕草をしてるのを、見たことがあるんだ。一人暮らしの女がぬいぐるみに話しかけるようなものかと思ったけど…あいつは動物と会話が出来ても可笑しくない」

 

「鼠と会話を…?」

 

「……僕としては、彼が継承者であって欲しくは無い。もしも彼が継承者で、皆にそれがバレて退学にでもなったら困るんだ。彼は…僕にとってライバルだからな」

 

マルフォイがヒトミをライバルだと言った事に驚きを感じたが、それどころでは無かった。

僕らの変化が解け始めたのだ。

「胃薬だ」と叫びながらスリザリン寮を後にし、女子トイレに走りながら今の出来事を話し合う。

 

「マルフォイじゃ無かったなんて…。でも、無駄じゃあ無かったよな? 僕らの行動は」

「うん。それに…ヒトミが継承者の可能性も高くなったね」

「あいつも鼠を飼っていたんだな。きっと飼い主に似て生意気な白鼠だぜ」

 

女子トイレに入るとヒステリックな泣き声とマートルの嬉しそうな声が聞こえた。

ハーマイオニーは猫の毛をポリジュース薬に入れてしまったらしく、顔中が黒い毛でおおわれ髪の間から長い耳が突き出していた。

泣きじゃくるハーマイオニーを説得し、皆で医務室に向かった。

 

 

 

 

新学期が始まった。

僕らは毎日ハーマイオニーの見舞いに顔を出し、宿題を届けてやっていた。

 

「絶対マルフォイだと思ったのになぁ」

「やっぱりヒトミじゃないか?」

 

今日も僕らは継承者は誰かについて話し合ったが、ハーマイオニーはヒトミの話には消極的だ。

内心ではヒトミが継承者では無い事を祈っているのだろうと僕は読んでいた。

 

「面会は5分までです!」

 

急にマダム・ポンフリーの言葉が聞こえた。

カーテンを少しめくって面会者の顔を見ると、話題にしていたヒトミがそこに居た。

彼は新学期が始まってから妙な眼鏡をかけるようになっており、今日もそうしている。

 

「ポッターとウィーズリーか。貴様らも見舞いか?」

「ウン…まぁ、そうだね」

 

何となく気まずくなってしどろもどろに答える。

隣のロンはさっさと何処かに行けと視線を送っていたが、ヒトミは全く動じない。

 

「グレンジャー、カーテン越しですまないな。…調子はどうだ?」

「ええっと…ま、まあまあよ。あと1週間くらいで退院できるわ」

「それは結構な事だな」

 

彼は近くの椅子に座り、顎を組んだ手の上に乗せる。

本題に入ろうとしているのだと僕は感じた。

 

 

「貴様ら、マルフォイと何かあったか?」

「…何のことかしら?」

「自分で気づいていないなら教えてやる。休暇前の貴様らはマルフォイの事を継承者だと疑い、奴の動向を常に観察していた。ところが休暇が明けてみると、相変わらずマルフォイを嫌っているが、前ほど執着していない。何かあったと思って当然だろう?」

 

僕らは「全く見当外れだ」という表情を作ろうとしたが、果たしてヒトミに通じたかどうか…。

ヒトミは淡々と話を続ける。

 

「真実薬でも飲ませたか…。『ポリジュース薬』でも作ってスリザリンの誰かに化け、マルフォイの事を探ったのか…。はたまた奴に『服従の呪文』や『開心術』等をかけて奴の記憶を探ったか。」

 

ヒトミが思いつく限りの言葉を並べる中、ロンが「ポリジュース薬」という単語に反応しそうになったので脇腹を肘で小突いた。

冬なのに背中に冷や汗が流れるのを感じる。

こいつは何処まで僕たちの事を見透かしているのだろうか…。

モルモットの動きを観察するように僕らを見つめる冷たい瞳を見ると、落ち着かない気分になってくる。

 

「…そろそろ面会時間も終わりだな。わしはもう行く」

 

ヒトミは言いたいことを言うと、僕らの答えも聞かずに立ち上がった。

高級そうな魔法生物の本を近くの机に置いて去っていく。

 

「グレンジャー、入院中は暇だろうから、この本を貸してやる。貸すだけだ。読み終わったら返せよ」

 

足音が離れていき、僕らは解放されたような気分になり心からほっとした。

 

「ああ、やっと行ってくれた」

「何処まで気づいてるのかしら…。ロン、貴方の反応のせいでポリジュース薬の事がバレたかもしれないわよ」

「例えバレたとしても証拠がない。カマをかけただけさ」

 

僕はハーマイオニーにではなく、自分を安心させる為にそう言った。

そろそろ夕食なので僕とロンは大広間に向かう事にした。

 

「捨てちまえよ。そんな本」

「でも、これって凄く珍しい本よ。前から読んで見たいと思ってたけどホグワーツの図書館には置いてないの」

 

後ろでロンとハーマイオニーが言い争っていた。

その後、僕はマートルのトイレで奇妙な日記を拾った。

 

 

 

 

 

 

 

バレンタインデーの朝、大広間でロックハートが馬鹿げた発表をした。

不愛想な配達キューピットが皆にバレンタイン・カードを配ると言うのだ。

小人達は一日中教室に乱入し、生徒も先生もうんざりしていた。

ヒトミの元にも何人もの小人がカードを渡しに行き、彼はうざったそうにそれを受け取っていた。

 

「オー、あなたにです。アリー・ポッター!」

 

しかめっ面の小人から逃げようとしたが、小人は僕の鞄をがっちりと抑えている。

強引に引っ張ろうとした時に鞄が裂けて中の物が辺りに散らばってしまうし、恥ずかしい詩が大声で読まれるしで踏んだり蹴ったりだ。

でも、日記を盗み見しようとしていたマルフォイに武装解除呪文を当てて、悔しがらせてやったのは痛快だった。

 

「やったな、ハリー!…おい、何だヒトミの奴。日記をジロジロ見てるぞ」

 

ロンの言葉に振り返り、おかしな事に気づく。

赤インクの中身が漏れた事で他の本はインクで汚れているのに、リドルの日記は綺麗なままだ。

…ヒトミはこれに気づいたのだろうか?

僕が何かを言う前に彼はさっと人ごみに紛れて去って行った。

 

 

 

 

 

 

イースター休暇の後にスリザリンとレイブンクローの試合が行われた。

僕を含む多くの生徒の期待とは裏腹に、スリザリンが箒の性能差で圧勝してしまった。

マルフォイの動きが僕らとやった時よりも良くなっている事に気づき、焦りと対抗心が芽生えた。

その一方で、レイブンクローのシーカーがとても可愛い事を僕は知った。

落胆しながら引き上げていくレイブンクローの選手達を僕はロンに声をかけられるまで見ていた。

 

 

 

 

 

 

『白童子視点』

 

 

レイブンクロー戦の祝勝会がスリザリンの談話室で行われた。

グリフィンドールとレイブンクローに勝利したことで優勝の可能性はさらに高まり、スネイプもいつもより機嫌が良さそうにワインを飲んでいる。

輪の中心でマルフォイが今日の武勇伝を得意げに話している。

 

「レイブンクローのシーカーも大したものだった。僕を常にマークし、スニッチを見つけたのは恐らく僕よりも早かっただろう。でも、僕の方も常に彼女を視界に入れていたからすぐに反応出来た。彼女より一歩先に出て、この手でスニッチを…」

 

練習に熱心に励むようになったからか、今回は見事にスニッチを掴みとることが出来ていた。

マルフォイがスニッチを取った時の仕草をすると観衆は大いに沸き、パーキンソンが恋人面ですり寄っていた。

わしも何度か祝福の言葉をかけられ、隅の方でかぼちゃジュースを飲みながら適当に返事をした。

 

 

 

 

「まだ起きているのか、ヒトミ」

「…すまない。起こしたか」

 

その日の夜、3年生で選択する科目を決めているとマルフォイに声をかけられた。

奴は眠そうに目をこすりながら近づいてくる。

 

「選択科目…?まだ出していなかったのか」

「スネイプに頼んで提出を伸ばしてもらった。どうも決まらなくてな」

 

この課題は本来はイースター休暇中に出さなくてはいけないものだ。

しかし、フリント達から様々な科目の情報を聞き、アドバイスを貰ってもピンと来なかったので未だに出せていない。

選んだ科目は自分の将来に繋がるらしいが、将来というのが想像できない。

このままずっとあの家で暮らし続けるのか?

神楽達と仮初の家族関係を続け、悪くないと思い始めている自分に違和感を覚えた。

…止めだ、今は考えても仕方がない。

心の迷いを打ち消すように強引に選択科目を決め、翌日にスネイプに用紙を提出した。

 

 

 

 

 

週末はクィディッチの練習をする筈だったが、競技場の使用権をハッフルパフに取られてしまい、フリントやマルフォイはカンカンに怒っていた。

わしとしては少し考える時間が欲しかったので有難い。

 

中庭のベンチに腰掛けて楽し気にはしゃいでいる者達を見つめる。

フレッチリーとニックが石化して以来、次の犠牲者は出ていない。

4カ月近くも平和が続いたことで、継承者は怖気づいたのだろう、もう誰かが襲われることはないと楽観する者が増えていた。

 

怪物の正体がバジリスクだと分かってからは魔力から身を護る眼鏡を付けている。

こんな物が伝説の蛇王様に通じるかは分からんが、クリービーやフレッチリーがそうだったように直接見なければ大丈夫だろうと思いたい。

わしにこの眼鏡は似合わないのか、マルフォイやダフネから笑われてしまった。

…本当に怪物が出なくなったなら笑われ損だな。

 

継承者に関しては未だに謎のままだ。

数百人の生徒の中から1人(共犯者が居るかもしれないが)を見つけるのは不可能だと考え、継承者探しは最初から諦めている。

分からない事があると言うのは不愉快だが、仕方ないな。

ポッター達が継承者を探してくれることに期待して魔法生物の本を貸してやったが、奴らが動かない所を見ると真相にはたどり着けていないようだ。

 

本当にこのまま何も起こらずに終わるのか?

生徒達が言う様に、継承者は学校中が少し警戒しているだけで怖気づいてしまったのか?

そして、バレンタインの日にポッターが持っていた奇妙な日記は何だったのだろう。

答えの出ない疑問を抱えたまま、中庭で暖かな光を浴び続けていた。




・8/25 誤字報告ありがとうございます。修正しました。

・9/4 文章をすこし修正しました。ご指摘ありがとうございます。
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