【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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アズカバンの囚人編開始です。
楽しんでお読み頂ければ幸いです。

秘密の部屋まで毎日更新を続けて居ましたが、これから更新が少し遅れます。
隔日更新、あるいは週1か週2の更新となると思います。
申し訳ありません。



※前半ハリー視点、後半白童子視点


第三章 アズカバンの囚人
第30話 怪物的な怪物の本


『ハリー視点』

 

マージ叔母さんを膨らませてから数日後、僕は漏れ鍋での暮らしを満喫していた。

魔法を使った事で退学になる事を恐れていたが、ファッジ魔法大臣から退学にはならないと言われてとても安心した。

今は大嫌いなダーズリー一家から離れて毎日ダイアゴン横丁で様々な商品を見て、とても良い気分だった。

 

ある日の事。

ホグワーツから教科書や必要な物のリストが届いたのでフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に買い物に行き、思いがけない人物を見つけて自分の目を疑った。

いや、彼がそこに居る事自体はそう不思議では無い。

僕が驚いたのは彼…ハクドウシ・ヒトミが制服を着て店番をしていた事だ。

 

「お釣りは8クヌートだな。また頼む」

 

客に対する口の利き方とは思えないが、教師にすら敬語を使わない彼の性格からすると「らしい」と思う。

お釣りを受け取ったお客さんも平然としているしこれで良いのだろうか。

彼の一挙一動を唖然として見つめていると目が合ってしまい、少し気まずく感じたがヒトミは平然と接客を行った。

 

「いらっしゃいませ。久しいなポッター。買っていくのか?」

 

「う、うん…。じゃあこの『未来の霧を晴らす』を…」

 

しどろもどろに返答すると、彼は軽く頷いて店の奥から黒い背表紙の本を持ってきた。

僕はその間、『死の前兆―最悪の事態が来ると知った時、あなたはどうするか』と書かれた本を見ていた。

 

「ああ、それも欲しいのか?中々良い趣味だな。死の前兆があらゆる所に見え始めて毎日が楽しくなるぞ」

 

からかうような口調に僕は我に返る。

本の表紙に描かれた黒い犬に見覚えがある気がしたが、それを振り切って教科書リストの中から必要な本を彼に要求する。

 

「『怪物的な怪物の本』は要らないのか?」

 

「それはもう持ってるんだ」

 

「それは結構な事だ」

 

彼は何故か楽しそうに笑うと、僕が要求した全ての教科書を手提げ袋に入れて渡してくれたので代金を支払った。

僕はまだ話したい事があったけどヒトミが他のお客さんの方に向かって行ってしまったので諦めた。

 

 

 

 

 

 

買い物の途中、最新の箒「ファイアボルト」に魅せられていたのですっかり遅くなってしまった。

急ぎ足でフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーの前を通ると、アイスクリームを美味そうに舐めているヒトミを見つけた。

 

「あっ…」

 

「おや。また会ったな」

 

「そうだね。元気そうで良かったよ」

 

そのままバイバイする気にもなれずに僕は彼の傍の席に座った。

聞きたい事と、言いたいことがあったから。

 

「アー…何で書店で働いていたの?」

 

「金が必要だからに決まってるだろう」

 

そう言えば僕は彼の事を殆ど知らない。

この年で働くという事はあまり裕福な家では無いのだろうか。

そんな思いが伝わったのか、彼はアイスから口を離して僕の疑問に答えてくれた。

 

「魔法界の平均は知らんが小遣いはそれなりに貰っているつもりだ。だが、少し昨年使いすぎてな。欲しい物もあるので働く事にしたんだ」

 

「そうなんだ…。そう言えば、子供でも働いても良いの?」

 

「余り推奨される行為では無いな。わしは成績優秀なのでスネイプからサイン付きの許可証を貰う事ができた」

 

成績優秀だからじゃ無くてスネイプのお気に入りだからじゃ無いか、と僕は疑った。

彼がスネイプの個人授業を受けたという噂は僕も知っている。

 

「貴様は食べないのか?美味いぞ」

 

「これから夕食だからいい。ところで、その…『部屋』では有難う。あの時は助かった」

 

少し硬い口調で礼を言うと、そんな事かと言う風に彼は笑った。

 

「ああ…そうだな。お互いに無事で何よりだ」

 

「何で君はあの場所に?」

 

「ホグワーツを閉校にさせたく無かったからな。別の魔法学校に通い直すのも面倒だ」

 

彼らしいと内心で思う。

やはり彼はジニーを助けるために部屋に行ったわけでは無かった。

彼とジニーは僕が知る限り面識が無い筈だし、事実秘密の部屋を出てからもジニーに対しては全く興味を示して居なかった。

それでも僕らにとって助けになったのは事実なので、一度お礼を言っておきたかった。

 

彼とは共にリドルや怪物と戦った仲だが、憎きスリザリンの生徒でクィデッチのライバル選手でもあり、マルフォイの友達だ。

昨年抱いていた敵意は薄れてはいるが積極的に仲良くしたいわけでも無い。

お礼も言えた事だし、ヒトミに手を振って僕は漏れ鍋への帰路を急いだ。

 

 

 

 

 

 

あっという間に夏休み最後の日になった。

親友のロンとハーマイオニーにダイアゴン横丁で出会えたので、僕は今日が最高の1日になると確信した。

 

僕らは歩きながらそれぞれが夏休みに体験した出来事を話し合った。

ロンのエジプト旅行もハーマイオニーのフランス旅行もとても楽しそうで、僕は2人が良い夏休みを過ごしたことを我が事のように嬉しく思った。

僕がマージ叔母さんを膨らませた話になるとロンは笑ったがハーマイオニーは少しカンカンだった。

何故僕が退学にならなかったのかという疑問を口にすると、ロンが訳知り顔で「そりゃ、君だからさ」と答えた。

 

僕は2人の買い物に付き合う事にした。

フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に着き、働いている白童子を見て2人が唖然としたのを見て僕は笑い出した。

 

「まさか!ハリーは知ってたのか?…オイ、そんなに笑うなよ」

 

「だって……2人ともこんなに口を開けて驚くもんだからさ」

 

まだ笑い転げている僕を不満げに睨んだ後、ハーマイオニーが緊張気味に話しかけた。

 

「えっと、久しぶりねハクドウシ。に、似合ってるわよ、制服。ウン」

 

「ああ。この制服もそれなりに気に入ったが今日で着るのは最後だ」

 

「何でバイトしてんだ?そこまで金に困ってたのか?」

 

「さあな。貴様の家は今年は景気が良いようだな。結構な事だ」

 

ロンの言葉を軽くあしらうと、ヒトミは接客モードになった。

 

「で、何が欲しい?」

 

ロンとハーマイオニーが欲しい物を告げると、ヒトミは店の奥に行き数分後に大量の本を抱えて戻って来た。

ヒトミは僕より背が少し低いのに、こんな重そうな本を平然と持っている事に驚く。

ハーマイオニーは周囲を見渡して納得したように頷いていた。

 

「貴方って本好きだもんね…。ここって読書家には最高の仕事環境じゃない?」

 

「あいつ学校辞めてここに就職すれば良いんだよ。そうすれば僕らのホグワーツでのストレスが一つ減る」

 

ロンが口を挟むが、言葉とは裏腹に言い方にはそこまで棘は無い。

彼もジニーを助けられた恩を少し感じているのだろう。

 

「後は『怪物的な怪物の本』だな」

 

彼は店の奥に向かっていった。

僕はハグリッドから貰ったあの本の事だと気づき、ヒトミの身を案じたがそれは杞憂に終わった。

彼は檻の中から革製のベルトで縛られた怪物の本を2冊抱えてやって来て、2人に手渡した。

 

「この本は持ち主に噛みつこうとする。その時は背表紙を強く撫でれば大人しくなる。貴様らがこいつより強ければ、だがな」

 

「まさか、人に噛みつく本だなんて」

 

「本当なんだよハーマイオニー。でも、そんな方法で大人しくさせられるなんて知らなかった」

 

2人が料金を払い品物を受け取った後、僕らは店を後にした。

その日の夜、僕は漏れ鍋でウィーズリー氏からシリウス・ブラックについての衝撃的な話を聞くことになる。

 

 

 

 

 

 

『白童子視点』

 

「今日までご苦労様。これ、少し増やしておいたから」

 

「ああ。世話になったな」

 

「世話になったのはこちらの方だよ。あの忌々しい『怪物の本』の対処方法を君が知っていなかったら俺はまた怪我が増えていた」

 

夏休み最終日の夕方。

わしは給料を受け取り、店主と握手を交わしてその場を離れる。

名残惜しいがバイトも今日で終わりだ。

 

スネイプからの許可証があるとはいえ、若すぎる者を雇いたがる者はそう居ない。

ダイアゴン横丁を回りバイトの交渉をしたがどの店でも断られ途方に暮れていた。

そんな時、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店を尋ねてみると店主が『怪物の本』を相手に格闘しているのが見えた。

わしは『怪物の本』を大人しくさせる方法を知っていたので、それを実行すると店主に大層喜ばれた。

相手に恩を感じている人間ほど御しやすい物は無い。

夏休み中の働き口を探している事を伝えると、彼は2つ返事でわしを雇う事を決めてくれた。

そうしたわけで、夏休みの間週3日ほどアルバイトを行っていたわけだ。

 

 

わしが『怪物的な怪物の本』の対処方法を知っていたのは、家に同じ本があったからだ。

ある日、奈落の留守中に彼の書斎を覗いて見た時に一冊の本がいきなり襲い掛かって来た。

咄嗟に薙刀を取り出し、柄の部分で本をしこたま殴りつけて壁に蹴り飛ばしてやった。

 

「大したものじゃないか。でも、そんな事しなくてもこいつを大人しくさせる方法はあるよ」

 

いつの間にか背後に立っていた神楽が、まだ襲い掛かろうとする本を捕まえて背表紙を撫でる。

それだけで本はブルブルと震えて大人しくなった。

 

「こいつは自分以上の実力を持った相手から背表紙を撫ぜられると大人しくなるんだ。奈落も変な本を持ってるものだよ」

 

「良く知ってるな。貴様もわしと同じようにこいつに噛まれそうになったのか?」

 

「…フン。つまらない所で勘が効きやがるな」

 

図星のようだな。

神楽は教えてやるんじゃ無かったと言いたげな顔をして去っていった。

 

 

偶然知った『怪物の本』の対処法がまさかバイト探しに役立つとはな。

仕事内容はすぐに覚えられたし、客が居ない時間は本を読めるし中々楽しいアルバイトだった。

グレンジャーも言っていたが書店への就職も悪くないかもしれん。

だが、客としてやって来たホグワーツ生達が働いているわしを見て一々怪訝な顔をしていたのは気に食わん。

 

そう言えばマルフォイやダフネ、ルーナもここに来ていたな。

マルフォイは親と一緒だったのでわしと殆ど会話をせず淡々と教科書を買って帰った。

わしとマルフォイの間には、学校では親しく話してもマルフォイの親が居る時には他人のような顔をすると言う暗黙のルールが出来ていた。

ダフネはわしがこの年で働いている事を少し哀れに思ったらしく、施しを与えようとしてきたので流石にそれは断った。

ルーナは父親と来ていた。わしを紹介されたが、ルーナの父はヒトミの子と知ってあまり良く思っていないようだった。

『死者を生き返らせる刀』について尋ねたかったが、その様子を見てやめておいた。

その他のスリザリン生にも声をかけられたが特に興味も無いのでおざなりな挨拶をした。

 

 

 

 

軍資金も手に入ったので魔法動物ペットショップに向かった。

以前から目を付けていた商品『魔法生物を小型化する首飾り』と『魔法生物の能力を封じる鎖』を買うためだ。

これはかなり高価なもので、小遣いではとても手が出ないので働いて稼ぐしか無かった。

奈落に高額な買い物をねだるのはプライドに反するし、何故こんな物が必要なのかと問われれば上手く誤魔化せそうにない。

…憎き奈落から小遣いを貰っている時点で、プライドに反するどころじゃないがな。

 

わしがこの商品を欲しがるのはバジリスクの制御の為だ。

バジリスクは強力な力を持った生き物だが、余りに大きすぎる事と必殺の魔眼が欠点だ。

なので、この首飾りで小型化して鎖で魔眼を封じる事にした。

…この魔法道具が伝説の蛇王バジリスクに通じるかどうかは賭けだが、今はこれしか手が無い。

『縮小呪文』はまだ使いこなせないし、使えたとしても24時間効力が持つかどうか分からないからな。

ついでに、バジリスクを入れる籠と蛇の飼い方を書いた本も買っておく。

 

 

 

既に教科書を買い揃えてローブも新調しておいたので今日は特に買う物はない。

バイト代も首飾りと鎖を購入したので大分減ってしまった。

残りはホグズミート村での買い物に備えて取っておこう。

使い慣れた煙突飛行粉で家に帰り、明日に備えて今日は早めに休むことにした。

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