【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※前半は白童子視点で、後半はハリー視点


第35話 グリフィンドール対ハッフルパフ

『白童子視点』

 

 

 

大広間に集められて当惑した表情を浮かべる生徒達の前でダンブルドアが状況を説明した。

シリウス・ブラックが城の中に潜入し、グリフィンドールに押し入ろうとして「太った婦人」の肖像画を切り裂いた事。

まだ城の中に潜んでいる可能性があるので全ての生徒は今夜寮に戻っていけないという事。

 

「ぐっすりお休み」

 

ダンブルドアは魔法で全員分の寝袋を出して、キビキビと去っていった。

素直にぐっすりお休みする者は1人もおらず、生徒達は興奮気味にシリウス・ブラックの事を話しあっていた。

 

「お姉さま、ここは大丈夫ですわよね…?」

 

「ええ、私がついてますわ。しかし去年といい、この学校は騒動が絶えませんわね…」

 

「あのブラックが入り込むなんて…怖いわ、ドラコ」

 

「だ、大丈夫だ。スネイプ先生も居るからな」

 

私が居るから大丈夫と答えるダフネと、スネイプが居るから大丈夫と答えるマルフォイ。

両者を見比べると相手への愛情の差が分かってしまうな。

ダフネはアステリアを愛しているのでその時が来れば懸命に守ろうとするだろうが、マルフォイはパーキンソンを愛していないので自分が守る気は無い。

すり寄ってくるパーキンソンを青い顔であしらった後、マルフォイは真剣な表情で話し始めた。

 

「シリウス・ブラックが何故グリフィンドールに押し入ろうとしたか僕には分かっている。狙いはポッターだ」

 

「どうゆう事だ?何故ブラックがポッターを狙う?」

 

マルフォイは神経質に周囲を見渡す。

周りの連中は自分が立てた推論を発表するのに夢中なので、わし等の話を盗み聞きしている者は居ない。

 

「父上から聞いたんだ。…シリウス・ブラックはポッター親子と因縁があるって事をね」

 

マルフォイが話した内容はこうだ。

ポッターの父ジェームズとブラックは在学中とても仲の良い親友同士だった。

だが、ブラックはホグワーツを卒業後ヴォルデモート卿の思想に傾倒し「死喰い人」となった。

そうとは知らずジェームズはシリウスを「秘密の守人」にしてしまう。

ブラックは早速ジェームズの居所を主に話したが、その結果ヴォルデモート卿は当時赤子だったポッターに返り討ちにされ深いダメージを受けてしまう。

ジェームズの友人だったピーター・ペティグリューが敵討ちに向かったが、ブラックはペティグリューと近くに居た数十名のマグルを殺害する。

駆けつけた特殊部隊が目撃したのは、道の真ん中に深くえぐれたクレーターと死体の山を前に高笑いするブラックの姿だった。

ブラックの前には血だらけのローブとわずかな肉片があり、ペティグリューの親に届けられたのは指一本だった。

それがペティグリューの体の残骸の中で最も大きな部分だったのだ。

ブラックはアズカバンに入れられたが、今でもヴォルデモート卿失墜の原因を作ったポッターを強く憎んでいる。

 

「アズカバンの看守が何度もシリウスの寝言を聞いてるんだ。『あいつはホグワーツに居る』って寝言をね…。シリウスは自分の主を失墜させたポッターに復讐しようとしているんだ。そうすれば『あの人』の時代が再び来ると考えているのさ」

 

マルフォイの話が終わった後は皆無言になった

残酷な話を聞いたアステリアの顔色が悪くなったので、マルフォイが慌てたように「まぁ僕らスリザリン生には手出ししないだろう」とフォローした。

その後スネイプとマクゴナガルが大広間に現れ、早く寝るよう叱りつけたので皆は渋々噂話をやめた。

 

ブラックがグリフィンドールに押し入ろうとした理由は分かった。

だが奴は吸魂鬼に見張られ、「姿現し」が使えないこの城にどうやって入ったのだろう?

ホグズミード村に「姿現し」し、生徒に「服従の呪文」をかけて手引きさせたのだろうか…。

それとも奴はフィルチに知られていない秘密の入り口を知っているのか…。

ペティグリューとマグルを殺した時の話にも違和感がある。

生前自ら手を下した時も含め多くの死を見てきたからわかるが、死体を消そうという特殊な意図が無い限り死体はある程度残るものだ。

指一本しか残らなかったというが、そんな事がありえるのだろうか。

そもそも、マルフォイの話した事が全て脚色された内容という可能性もある。

誰かさんにとっての「都合の良いストーリー」が練り上げられ、それが真実として伝わっているのかもしれない。

もしもルシウス・マルフォイが隠された真実を知っていたとしても、息子に全てを話すとは限らないからな。

わしは寝袋に潜り込みながら、シリウス・ブラックについてもっと情報が欲しいと考え始めた。

 

 

 

 

 

ハロウィーンから数日後、フリントがマルフォイの怪我を理由にグリフィンドールとの対戦を引き延ばした。

ウッドやグリフィンドール選手はこの事態にカンカンで、ポッターはわしやマルフォイに恨みがましい視線を向けるようになった。

 

「ああ、怪我さえなけりゃ試合が出来たのになぁ!」

 

マルフォイはこれ見よがしに包帯を巻いた腕を叩き、わざとらしく嘆いてみせた。

最初はフリントの策に乗るのを嫌がっていたマルフォイだが、今はノリノリじゃないか。

 

「グリフィンドールの初戦の相手はハッフルパフに決まったそうだ」

 

「2年前はポッターがすぐにスニッチを取って終わったが…今年はどうなるものかな」

 

「ハッフルパフはチームの大改革を行ったそうだ。以前とはレベルが違うらしい」

 

「ほぅ。…ならばハッフルパフの勝利に期待するとしようか」

 

「…僕はグリフィンドールに勝ってほしいな。奴らに黒星を付けるのは僕達でなければならない」

 

 

試合は明後日に迫り、誰もが興奮気味に勝敗の行方を予想し合っていた。

わしはマルフォイと両チームの戦力比較をしながら「闇の魔術に対する防衛術」の教室に向かう。

意外な事に、教壇に立っていたのはルーピンでは無く我らが寮監スネイプだった。

 

「スネイプ先生!何故、先生がこの授業を?」

 

「ルーピン先生は今日は具合が悪く、教えられないとの事だ」

 

スネイプはルーピンの授業をこけ下ろした後、予定とは違う「人狼」の授業を始めた。

生徒達はスネイプの説明を必死でノートに書き取り、ベルが鳴った時「人狼」の見分け方のレポートを書くよう言い渡された。

ルーピンの授業を気に入っていたダフネやノットは、スネイプの授業批判が気に入らないようで少しむくれていた。

 

「でも、どうして急に人狼の講義など始めたのでしょう?予定より随分早いですわね」

 

「授業の進みが普通より遅れてるからじゃないか?やっぱりルーピンは人気取りが上手いだけのダメ教師なんだよ」

 

ダフネの疑問にマルフォイが気軽に答えたが、わしはそれだけではないような気がしていた。

そう言えば初めての授業で、ボガートはルーピンの前で水晶玉に変化していたな。

…水晶玉…球体……満月…朔の日に人間の姿になる半妖…人狼……。

成程、そういう事か。

 

 

 

 

 

 

 

試合当日は大雨だった。

マグルのスポーツなら満場一致で延期となるだろう。

だが。この学校は一度決めた日程は意地でも守るらしく、試合は決行された。

ダンブルドアがお得意の魔法で天気を変えるなりドーム状の膜を作れば良いのにな。

 

こんな酷い雨の日は寮で休んでいたかったが、フリントが選手は必ず試合を観戦するようにお触れを出したので、逃げられなかった。

今朝の空模様を見て早々に観戦を諦め、今は部屋でのんびりしているダフネが羨ましい

わしは大きな布に防水呪文を施し、それにくるまって雨風をしのいだ。

やがて選手が入場し、両チームのキャプテンの握手と笛の音を合図に試合が始まった。

守護神ウッドの懸命のディフェンスとチェイサー達の猛攻でグリフィンドールが優位に立っているが、ハッフルパフも良く粘っている。

 

「今、どうなってるの?」

 

「グリフィンドールが50点リードだ。でも、スニッチが見つからないと夜まで長引くかもな」

 

雨でびしょびしょになったパーキンソンの問いにマルフォイが答えた時、スニッチを見つけたのかポッターとディゴリーが猛スピードで箒を走らせる。

この雨風の中では体重が重い方が有利というのもあるが、それを無視しても、ディゴリーはポッターよりも良い動きをしているように見えた。

 

「マルフォイの言う通り良いシーカーだな」

 

高揚する客席で一人呟いていると、突如全ての音が消えたような感覚がした。

周囲を見渡すと誰もが顔色を悪くして一か所を見ている。

見てはいけない、と頭の中でもう一人の自分が言うのを無視して、彼らの視線の先に顔を向ける。

 

黒いフードに包まれた長身と、フードから伸びる枯れ木のようなやせ細った醜い腕。

忌まわしい吸魂鬼達が競技場の入り口で蠢いている。

頭の中に法師の風穴や奈落のせせら笑う声が響き渡り、わしの心は不快感で満たされる。

 

…この寄生虫共が!

触れてほしく無い場所に土足で入り込む下衆への強い怒りが、心の中に湧き上がる。

奴らは競技場の中心に意識を向けているので、わしへの影響は以前より少ないようだ。

ならば、と、強い怒りに任せるままに杖を取り出す。

 

「エクスペクトパトローナム!」

 

ヒッポグリフに乗って空を駆けた時の高揚感を思い浮かべながら呪文を唱えたが、白いもやが一瞬出た後にすぐに消えてしまった。

吸魂鬼達は先ほどより数を増やし、傍に居るマルフォイが恐怖で泣きそうな顔をしながら後ずさる。

 

マルフォイを庇うように前に立ち、杖をしっかりと握りしめて再度呪文を放つ。

その時強く念じたのは、日常でのマルフォイやダフネとの他愛ない会話、ルーナとのよく分からないやり取り、ホグズミード村で過ごした時間だった。

 

「エクスペクト・パトローナム!!」

 

杖の先端から白い雲のような気体が、今までとは比較にならない程の勢いで放たれる。

気体は馬の形となって吸魂鬼の群れに向かっていく。

吸魂鬼達は馬を嫌がり、怯んだ様子を見せた。

その時、別方向から強力な守護霊が現れたのが決定打となり、彼らは怯えながら去っていった。

あれを出したのは…ダンブルドアか。

自分一人では吸魂鬼を追い払えなかった事に悔しさを感じながらも、頭の中で声がしなくなった事に安堵する。

強力な呪文を放ったので全身から力が抜け倒れそうになったが、誰かの腕に支えられた。

鉤鼻の男の顔が視界一杯に迫り、スネイプだと確信する。

 

「…3年生としては良い守護霊だった。良くやったなヒトミ」

 

彼の言葉に不思議な安心感を覚えた後、わしは今度こそ気を失った。

 

 

 

 

 

『ハリー視点』

 

皆の話し声で意識を取り戻す。

体中が痛む中目を開けると、グリフィンドールの選手達やロンとハーマイオニーが僕の周りを取り囲んでいた。

どうやらここは医務室らしい。

 

「僕はどうなったの…?イタッ!」

 

「ハリー、まだ起きちゃダメ!」

 

「君…落ちたんだよ。20メートルくらいの高さから真っ逆さまに」

 

起き上がろうとした僕をハーマイオニーが抑え、ロンが事情を説明してくれた。

吸魂鬼を見た僕が箒から落ち、スニッチをディゴリーが掴んだ事で試合はハッフルパフの勝ちに終わった、と。

ディゴリーはやり直しを望んだが、ウッドでさえ納得したので判定は覆らなかったらしい。

 

そうか…負けたのか…。

気づけば僕は目線を落とし、敗北のショックに肩を震わせていた。

フレッド達が慰めや励ましの言葉を言ってくれるが、今はそれすら辛かったので無理やり話題を変える。

 

「銀色のふわふわした物が見えたけど…あれは何だったの?」

 

皆が顔を見合わせて奥のベッドをちらりと見た。

今まで気づかなかったが、もう一つのベッドには誰かが寝かせられているようだ。

スリザリン生が何事かを話している。

 

マルフォイの姿もあり、彼らは心配と尊敬が入り交じったような表情をしている。

 

「彼らは…どうしてここに」

 

「スリザリンの、ハクドウシ・ヒトミだ。あいつが吸魂鬼を追い払ったらしい」

 

「あれは『守護霊の呪文』よ。本で読んだ事があるわ。吸魂鬼に有効だけどとっても高度な呪文で、3年生じゃまず扱えないはずなのに…」

 

「まぁ、とにかくだ」

 

ハーマイオニーの説明は長くなりそうだったのでロンが遮った。

ヒトミへの称賛を、あまり長く聴きたく無かったのかもしれない。

 

「あいつが…まぁ、結果として君を守った。その後ダンブルドアも、その…『守護霊』ってヤツを出してあいつらを完全に追っ払った」

 

「ヒトミは呪文を放った後に気を失ったんだって。今も目を覚まさなくて…スリザリン生が居るのはそのせいよ」

 

「ダンブルドアはとても怒ってらっしゃったって聞いたわ」

 

アンジェリーナとケイティがロンの言葉に付け足すように言った。

またヒトミに助けられた。

その事が僕のプライドを少し傷つけたので、それを振り切るようにもう一つの疑問を口にした。

 

「誰か僕のニンバス捕まえてくれた?」

 

ロンとハーマイオニーが辛そうな顔をしながら、ニンバスは吹き飛んで暴れ柳にぶつかったと説明した。

フリットウィック先生が持ってきてくれたニンバスの残骸を見て、ニンバスは二度と治らないと直感し、僕の心は深い悲しみに包まれた。

 

 

 

 

 

マダム・ポンフリーは僕が週末の間は病室で安静にするよう主張した。

翌日の朝に目覚めたヒトミも、彼女から同じ事を言われていた。

 

「わしはもう大丈夫だ…」

 

「なりません。まだ吸魂鬼の影響が残っている可能性もありますし、『守護霊の呪文』を使用した事での体への負担も心配です。貴方も絶対安静です」

 

「…分かった。大人しくしているよ」

 

いつも偉そうなヒトミも、マダム・ポンフリーには適わないのかと思うと少しおかしかった。

普段より元気が無い所を見ると、彼女の言うように体に負担が残っているのだろうか。

マダム・ポンフリーが朝の処置を追えてキビキビと去っていき、僕らの間に沈黙が流れた。

 

「その…吸魂鬼を追い払ってくれて、ありがとう」

 

2度目となるお礼を言うとヒトミは面倒くさそうに返事をした。

 

「…貴様の為にしたわけじゃ無い。わしにとっても奴らは不快な存在だ。それに、マルフォイ達も奴らを恐れていたので追い払っただけだ……必死だった。わしだけでは力不足だった。奴らが逃げ出したのは、ダンブルドアの守護霊を見たからだ。わしは足止めしか出来なかった…」

 

「そっか…。僕の為じゃ無い、か。『秘密の部屋』の時も君はそう言ったね」

 

「そうだな…。そうだったな」

 

彼はぼんやりと呟く。

空を見ると昨日とは打って変わって見事な晴天だった。

吸魂鬼を追い払う呪文を聞こうか迷っていると、僕の心を読んだようにヒトミが言った。

 

「吸魂鬼を追い払ったアレな、知りたければスネイプにでも聞け。丁寧に教えてくれるだろうよ」

 

「…それはとても楽しい講義になるだろうね。楽しすぎて次に吸魂鬼に会ったらスネイプの講義が頭の中に浮かびそうだよ」

 

「ははは、上手い事を言うじゃないか。……わしも人に教えられる程上手では無い。だが、やり方さえ分かれば貴様はわしよりも早く習得するかもしれんな」

 

彼は僕の皮肉に可笑しそうに笑い、真面目な顔でそう言った。

僕の方が早く習得できるという言葉に、認められていると感じて嬉しくなった。

昨日の出来事は僕の心に暗い影を落としていたが、彼と話して少し気が楽になった。

 

 

その後、ヒトミの見舞いにやって来たマルフォイと一騒動あった。

マルフォイはヒトミに見舞いの言葉と蛙チョコレートを渡した後、僕のベッドに来て箒から落ちる真似をやって見せた。

馬鹿馬鹿しい挑発だが、それを受け流せるほどに今の僕は大人になれなかった。

 

「いい加減にしろよ!どうせ君だってあいつらを見て観客席で震えてたんだろ?」

 

「ポッター!お前よりはマシだ!これでグリフィンドールの優勝は難しくなったな!…ウッドが卒業する年に優勝を飾りたかったのだろ?お気の毒様だね」

 

「黙れマルフォイ!君だって、試合中に吸魂鬼が入ってくれば落ちるだろうさ」

 

「僕は落ちやしないさ。ディゴリーだって落ちなかったんだ」

 

痛い所を突かれて黙り込んだ時、騒ぎに気づいたマダム・ポンフリーが怒りの表情で割って入りマルフォイを追い出した

ニヤニヤと笑いながら退室するマルフォイを睨みながら、あんな奴と仲の良いヒトミはやっぱり嫌な奴かもしれないと思った。




・9/15 誤字を修正致しました。ご指摘ありがとうございます。
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