【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第36話 スネイプの目

 

退院が許可されたのでスリザリン寮に戻ると、談話室はお祭り騒ぎだった。

そこまでグリフィンドールの敗北が嬉しいのだろうかと思いながら中に入ると、急に誰かに手を引かれた。

 

「お、来たな優等生」

 

「いつ『守護霊の呪文』なんて覚えたんだ?凄いじゃねえか」

 

上級生が親し気に声をかけてきた。

そのままあっと言う間に輪の中心に招かれて「守護霊の呪文」を使った時の様子を聞かれた。

どうやら彼らの盛り上がりの一因にはわしが難しい呪文を使用した事もあるようだな。

スネイプに呪文を教わった事を正直に話したが、何の記憶を使ったのかと言う質問には口ごもってしまった。

「マルフォイ達やルーナとの日常を想像した」なんて恥ずかしくて言えるわけがないので、数占い学の宿題があるからと言って部屋に逃げた。

マルフォイは人狼のレポートを書いていたが、同居人の入室に気づき振り返る。

 

「早めに退院出来て良かったな。君は見事に吸魂鬼を退治したし、ポッターの惨めな姿も見られた。最高の気分だよ」

 

「…言葉ほど最高の気分には見えないが」

 

「……分かるか?」

 

表情に影がある事を指摘するとマルフォイは目を逸らした。

 

「ポッターを倒すのはディゴリーじゃ無くて僕でありたかった…。去年一度勝ってるけど、あれは君の助言があったからだ。僕の実力だけで…勝ちたい」

 

「成程な」

 

「フリントからもう包帯を外して良いって言われたよ。次の練習からは僕も出る。グリフィンドールに今年2回目の敗北を味合わせてやるよ」

 

強気な事を言うマルフォイに頼もしさと一抹の不安を感じる。

気負いすぎてなければいいが…。

ベッドに腰かけ、机の上に置いてある厨子達の籠の中に餌を入れてやった。

昨晩は飼い主が入院したので食事抜きだった為に腹ペコだった2匹は、夢中で餌にかぶりついている。

 

「その蛇、今年から飼い始めたのか?初日は居なかったのにな」

 

「ああ。初日は荷物に押し込めたままだったんだ」

 

「そうか。名前はなんて言うんだ?」

 

マルフォイはやけに蛇に興味を示してきた。

そう言えば名前を考えるのをすっかり忘れていたな…。

 

「大蛇…こいつの名はオロチだ」

 

「珍しい名前だな…東洋の名か?」

 

「そうだな」

 

答えられないのも不自然なので、日本で伝説とされていた蛇八岐大蛇の名前を縮めて名付けた。

急場しのぎで考えた名前にしてはまあまあの名だろう。

マルフォイはわしの答えに納得したように頷き、宿題に戻った。

 

夢中で餌を食べるバジリスク…いや、大蛇に目をやる。

八岐大蛇は伝説ではスサノオに討たれ死亡したが、貴様はそうならないように頼むぞ。

 

 

 

 

 

翌週の「闇の魔術に対する防衛術」の授業は通常通りルーピンが出てきた。

彼が人狼のレポートは出さなくても良いと発表した事で、真面目にレポートを仕上げたわしとマルフォイ以外の多くの生徒が喜んだ。

努力が水の泡になったマルフォイは苛立ちながら「おいでおいで妖精」の説明を書き写していた。

 

「チッ、また人気取りか。どうもあの教師は気に入らないよ」

 

授業が終わった後マルフォイの愚痴を聞きながら廊下を歩いているとスネイプと出会い、今夜自分の研究室に来るようにと言われた。

夕食を食べ終わり、皆と別れてスネイプの研究室に向かった。

 

「来たな。ヒトミ…」

 

生徒達のレポートの採点をしていたスネイプは、手を止めてこちらに向き直る。

予想通り話の主題は「守護霊の呪文」の事だった。

 

「貴様の呪文は吾輩との授業の時より格段に良くなっていた。あの時、貴様は何を想像したのだ?」

 

「……マルフォイ達との日常の事を想像していた。そうしたら、他の思い出を使った時より強力な呪文が使えた」

 

「…ほう、貴様がそんな事を考えていたとはな」

 

照れ臭さを感じながら答えるとスネイプは驚いたような顔をした。

笑いたければ笑え、と挑むような気持ちだったが、スネイプがどこか優しい目をしている事に気づいて戸惑ってしまう。

 

「もう一度吾輩の前で『守護霊の呪文』を使ってみたまえ。さあ…」

 

スネイプの言葉に従い、マルフォイ達との思い出を使って守護霊の呪文を放つ。

吸魂鬼が実際に居ないからか、以前より強いエネルギーを放つ守護霊が杖先から現れて部屋の中を駆け回った。

前回は必死だったので気づかなかったが、よく見るとこの守護霊は生前乗り回していた炎蹄に瓜二つだ。

奴は死しても護ろうとしてくれているように感じて、心が温かくなった。

 

「…ふむ、中々の出来だ。これなら1匹や2匹の吸魂鬼なら十分に退治できるだろう。…数十匹が一度に出てきたら押されてしまうだろうがな」

 

もういいと手で合図され、名残惜しいが守護霊の呪文を中止する。

途端に体中に疲労が現れたので近くの椅子に腰かけて呼吸を整える。

 

「呪文を使う際の疲労が大きいのは貴様がまだ未熟だからだ。慣れれば良くなる。毎週土曜日の昼過ぎに研究室に来い。吾輩が直々に鍛えてやろう」

 

「それは有り難い」

 

「フン…ホグズミード村に行くたびに付き添いをさせられたのではたまらん。貴様には自力で吸魂鬼を追い払えるようになって貰わなければ困るのだ」

 

次の土曜日から、約束の時間にスネイプの研究室個人授業を受けるようになった。

ある時は呪文の唱え方が早すぎると指摘され、またある時は呪文を放つときの姿勢を治された。

日がたつほどにわしの「守護霊の呪文」の精度と威力は上がってき、12月に入り寒さが厳しさを増した頃にスネイプは呪文の訓練の終了を言い渡した。

 

「今の貴様ならば吸魂鬼を確実に追い払えるはずだ」

 

スネイプのお墨付きを得て部屋を出る時、わしで無ければ聞き逃すであろう小さな声が耳に入った。

 

「…良い方に向かっているようだが、果たして……」

 

その言葉はわしの呪文の事なのか、それとも…。

 

 

 

 

 

「守護霊の呪文」を習うのと並行して「欲求の部屋」での呪文の練習も続けていた。

回数を重ねるほどに自分にとってやり易い呪文の使い方が分かってくるので、めきめき上達していった。

だが「目くらまし術」は相変わらず苦戦中だった。

 

「…ふぅ。一瞬だけ消えたが、これでは実戦では使えないな」

 

鏡を見ながら自分に呪文をかけて消えたかどうかを確認してため息をつく。

一瞬消えただけでも進歩としておくか…。

練習を切り上げて大広間に着くと、丁度マルフォイとザビニが先日行われたクィディッチの試合について話をしている所だった。

ハッフルパフとレイブンクローの戦いは後者が大差で勝利したのだったな。

 

「大穴狙いでハッフルパフにかけてたんだけどな…残念だ。ディゴリーはチョウを相手に本気を出せなかったのか?」

 

「いや、あれはチョウの反応が良かったんだ。良くあんな位置にあるスニッチを見つけられたものだよ」

 

「ディゴリーくんはチョウ・チャンさんが好きなのかしら。確かに美しい方ですが…ちょっと焼けてしまいますわね」

 

ダフネだけ少しズレた事を言っている。

彼らの会話をのんびりと聞きながら夕食を済ませて談話室に戻ると、先に帰っていた生徒が掲示を見て歓声をあげていた。

どうやらクリスマス休暇前のホグズミード行きが許可されたらしく、後から入って来たマルフォイ達も大喜びしていた。

 

「そう言えば君は大丈夫なのか?スネイプ先生が同行しないといけないんじゃ…」

 

「許可は得ている。わしはもう大丈夫と判断されたらしい」

 

「あの見事な『守護霊』なら納得ですわ。楽しみですわね」

 

明日に備えて早く寝ようとそれぞれの部屋に戻る。

厨子と大蛇に餌をあげて居ると、マルフォイの元に毛並みの良いフクロウが現れて手紙を渡した。

 

「何だ…?こんな時間に」

 

眠そうな顔をしていたマルフォイの顔が手紙を読み進める度に変わっていく。

興味が沸いたので少し茶化しながら事情を探ると、彼は暗い顔でこちらに向き直った。

 

「どうした?誰か死んだのか?」

 

「これから死ぬ、と言うべきかな。……君のお気に入りのバックビークな、始末される事になりそうだ」

 

「…そうか」

 

こういった展開も覚悟していたので落ち着いて話を促す。

ダンブルドアが裏で手を回したのか、森番を首にする事は不可能となった。

マルフォイとしてはこの時点で訴えを取り下げても良かったが父ルシウスがそれを許さなかった。

ルシウスはホグワーツの理事を解任させられた事を恨み、少しでもホグワーツに準ずる者に打撃を与えたかったのだ。

 

「裁判は行われるだろうが…父の権力を考えれば勝敗は明らかだ」

 

「無駄かもしれないが訴えを取り下げるよう頼んでみてくれ。愛する一人息子から直々に請われれば考えを変えるかもしれない。…それでも駄目なら諦めるさ」

 

「…分かった。一応言ってみるけど、余り期待はするなよ」

 

マルフォイは力ない笑みを返してベッドに寝転んだ。

…マルフォイに頼んではみたが、バックビークの命は絶望的だろうな。

その日は悲しみからか良く眠れなかった。

 

 

 

 

その日は休暇への期待とホグズミード村に行ける嬉しさから、生徒達は上機嫌だった。

スリザリンの三年生御一行は朝早くに城を出てホグズミード村へ向かった。

吸魂鬼に襲われる事を懸念して杖を持ってきたが、競技場の一件で警戒されているのか何もしてこなかった。

 

ホグズミート村はクリスマス・カラーで彩られており、家族連れやカップルでにぎわっていた。

女性陣の主張に従い、最初に行く場所はグラドラグス魔法ファッション店に決まった。

ここは魔法の洋服が売っており、金と銀の星が点滅するマントや臭くなると叫ぶ靴下などが売られている。

…あまり魅力的な品物とは思えないな。

叫ばれたりしたら五月蠅いし、自分の足が臭いと周囲にバレてしまうではないか。

だが、クリスマスカラーのマントや三角帽子は結構かわいいな。

 

わしはダフネに捕まって着せ替え人形のようにされてしまった。

男物の服を着せられている内はまだ耐えられたが、金髪のカツラを着けられたりスカートを履かせられそうになったのには参った。

 

「逃げないでくださいまし!絶対似合いますから!」

 

「わしは男だ!こんな物着られるか!」

 

マルフォイもパーキンソンの着せ替え攻撃に参っているようだった。

わしはダフネの魔の手を何とか逃れ、店内を歩き回り品物を物色する。

良い機会だし知り合いへのクリスマスプレゼントは此処で買っておこうと考え、適当な品を幾つか選んで包んで貰った。

魔法ファッション店を出た後はハニーデュークスで商品の試作品を貰い、お菓子を買い足してから三本の箒で軽くバタービールを引っかける。

ちょっと贅沢な休日だ。

 

「体が温まりますわね…」

 

「そうだな…良い気分だ」

 

冷えた体を温めながら他愛ない話をしていると、マルフォイがあんぐりと口を開けて何かを見ている事に気づく。

 

「どうした」

 

「…驚いたな、魔法省大臣じゃないか」

 

視線の先を追うと、ファッジ大臣とマクゴナガル達教師陣の姿があった。

新聞で顔は知っていたが生で見るのは初めてだな。

パプの一角でマダム・ロスメルタも交えて話が始まったが、ハグリッドが怒鳴りだしたのをきっかけに深刻そうなムードになっていく。

何を話しているか気になるが、今日は厨子も連れてきていないので盗み聞きは諦めよう。

…カウンターの傍でコソコソと盗み聞きをしているポッター達を見てその気が失せたのもある。

三本の箒の客はファッジ達に注目して噂話を始め、それを察知したダフネがつまらなそうに退出を主張した。

 

「嫌なムードですわね…。そろそろお暇しましょうか」

 

「そうだな」

 

もう一度ハニーデュークスに行くというマルフォイ達と別れ、1人で魔法用具店「ダービッシュ・アンド・バングズ」に向かった。

前回は時間の都合で行けなかったので、今回こそはと楽しみにしていたのだ。

店内に入ると「万眼鏡」や「かくれん防止器」と書かれた道具が目につく。

クリスマス特価でいつもより安いようだ。

 

「万眼鏡か…これは使えるかもな」

 

大安売りでも10ガリオンと値が張る商品だが、バイト代があったので思い切って買う事にした。

「かくれん防止器」は便利な道具に思えるが、肝心の怪しい物の正体を教えてくれないなら不便だと感じ購入は見送った。

店内を軽く見回り、上記の品以外にも便利そうな物を幾つか見繕って購入した。

 

叫びの屋敷の辺りを軽く散歩してから城に戻る。

今日は有意義な買い物ができたが、お陰で財布の中身が少し寂しくなってしまったな。

 

 

 

 

 

翌日は家に帰るマルフォイ達を城の入り口で見送った。

休暇中に「欲求の部屋」で呪文の猛練習をすると決めていたので、今年は帰らない事にしたのだ。

ちなみに、神無は家に帰る事にしたらしい。

家に帰る生徒の列にルーナを見かけたので、シリウス・ブラックの事が載っている「ザ・クィブラー」を休暇明けに幾つか見せて貰えないか頼んでみた。

 

「良いよ。沢山持ってきてあげる」

 

「ザ・クィブラー」が少しでも人に読まれる事が嬉しいのかルーナは神無の手を引いて上機嫌で去っていった。

生徒達が汽車に向かう姿を見送った後、つかの間の休暇を楽しむべく寮へ戻った。

 

 

  つづく

 




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