【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第37話 ペティグリュー生存説

休暇が始まってから図書館でポッター達と鉢合わせする事が増えてきた。

彼らからの敵意はある程度和らいだと思っていたが、また嫌な感情のこもった目で見られるようになってしまった。

バックビークの裁判の事を知り、マルフォイとグルであろうわしを敵視しているのだろう。

奴らのわしへの評価は上がったり下がったりと変動が激しいな。

 

生徒が少ない休暇中にブラックがポッターに仕掛けてくる可能性があるので、彼の後を厨子に付けさせ始めた。

今のところポッターの身に危機は迫っていないが、代わりに厨子の身に危機が迫る事になった。

グレンジャーが飼っているオレンジ色の猫(クルックシャンクスと呼ばれていた)に何度も見つかりそうになったらしく、わしの元に帰るたびに身を震わせている。

少し可愛そうだが、ブラックが仕掛けてくる危険がある以上は見張りを続けてもらうぞ。

休暇の間に大蛇を外で遊ばせてやろうと思っていたが、既に冬眠していたのでわしの気遣いは無駄になった。

 

 

 

クリスマスがやって来た。

マルフォイ達やルーナからのプレゼントを確認し、差し出し人不明のプレゼントの山を見てため息をつく。

ザビニがわしの写真を売りさばいたからか、去年より女子生徒からのプレゼントが増えている。

惚れ薬等の危険な物が入っていないか一つ一つ確かめながら開封した。

 

鮮やかな飾りつけがされた大広間は、いつもと違い中央にテーブルが一つだけ用意されていた。

仏頂面をしているスリザリンの5年生の傍に座り事情を聴く。

人数が少ないので4つもテーブルを用意するのは馬鹿らしい、一緒に食べようとダンブルドアが提案したらしい。

トロレーニーとマクゴナガルが皮肉の言い合いを始めたり、ダンブルドアがスネイプに蝙蝠帽子を被せて不機嫌にさせるという出来事があったが、わしは黙々と食事を食べ続けた。

触らぬ神に祟りなしだ。

 

クリスマスと言えどもわしに休息の時は無い。

昼食の後は銀の矢に跨って軽く競技場を飛び回り、「欲求の部屋」でたっぷり呪文の練習をする。

休暇中に「目くらまし術」を覚えるのが当面の目標だが、一瞬消えられるようになってから段々とコツが掴めてきた。

このペースなら習得もそう遠くないかもしれないな。

 

ある程度の呪文を使えるようになるにつれて、もう一つの欲望が胸に何度か浮かんだ。

それは「結界」を復活させること。

生前使っていた結界がまた使えるようになれば、魔法界でほぼ無敵の存在になれるのでは無いだろうか。

「死の呪文」などの強力な呪文は流石に無理かもしれないが、多くの呪文を無効化し、その威力を相手に返せるようになる。

だが、結界を使おうと全身に力を込めても何も起こらない。

人間の体になった時に結界を張る力は失われてしまったのだろうか。

そもそも結界は奈落の能力だからな…あまり期待しない方が良いかもしれない。

 

 

 

 

クリスマスの翌日からポッター達とグレンジャーの間に露骨に距離が出来始めた。

厨子からの報告を聞いたので理由は知っている。

差出人不明のファイアボルトがポッターの元に届き、グレンジャーがマクゴナガルにそれを話したので検査の為没収された。

ポッターとウィーズリーはその事を恨んで彼女と口をきかない事にした。

ポッターがクィディッチ選手である事をブラックが知ったなら、ファイアボルトに呪いをかけて送りつける事も十分に考えられる。

だからグレンジャーの行為は正しいと思うんだがな…箒の事となると魔法使いは馬鹿になるな。

持ち主でないウィーズリーがやけに怒っているのも滑稽な話だ。

グレンジャーが気の毒になったので、ヒッポグリフの裁判の資料集めを少し手伝ってやった。

 

「私が裁判の資料を調べてるってどうして分かったの?」

 

「わしはマルフォイと親しいからな。裁判の話は聞いている」

 

手を貸しながらも、今している行為の無意味さをわしは分かっていた。

仮にグレンジャー達が集めた資料を使いハグリッドが素晴らしい主張をしたとしても、ルシウス・マルフォイが裁判を牛耳っているなら勝敗は明らかだ。

そもそも何故ハグリッドが答弁をするのか…魔法界に弁護士は居ないのか?

 

 

休暇が終わる直前に「目くらまし術」を習得する事に成功した。

呪文を唱える際の杖の振り方に自分なりのアレンジを加える事で断然やり易くなった。

今は30分くらいしか姿を消せないが、慣れればもっと多くの時間呪文を使えるようになるだろう。

 

 

 

 

 

 

城に生徒達が溢れかえるようになって静かだった休暇が懐かしく思えたが、マルフォイ達の顔をまた毎日見れるのはやぶさかではない。

休暇が明けた翌日の大広間でルーナから大量の「ザ・クィブラー」を受け取り、早速読み始める。

「シリウス・ブラックは歌う恋人?」等の奇天烈な記事も多かったが、極少数真面目な記事もあったので頼んだかいはあった。

談話室で「ザ・クィブラー」を読んでいるとフリントが真剣な顔で選手達に招集をかけた。

 

「試合が決まった。1週間後にレイブンクローと対決だ。シーカーのチャンはあのディゴリーにも勝利した強豪だが、俺たちにはチャン以上のシーカーが居る!期待してるぜドラコ!」

 

「ん…ああ、そうだな」

 

「どうした、覇気が無いぞ!」

 

フリントに背中をバシンと叩かれてマルフォイは苦しそうに咳き込んだ。

マルフォイから気合いが薄れている理由は…恐らくアレだろう。

部屋に入り、わしと目を合わせないマルフォイに、こちらから話題を振ってやった。

 

「バックビークの件は上手くいかなかったようだな。だが、あまり気にするな」

 

「……なあ、ハク…ヒトミ。僕は軽率だったのか?森番は大嫌いだし、ヒッポグリフに引っ掻かれた時はこんな危ない獣は死んじまえって思った。でも、本当にそうなると違うんじゃないかって思えてきたんだ。父上が話を勝手に進めるから……いや、元はと言えば僕のせいか」

 

「確かに軽率だったかもしれんな。だが、もう済んだ事だ。貴様がいつまでも気にしている方がわしには辛い」

 

「…そうか。ありがとう…。…僕は少し自分の行動に注意した方が良いかもしれない。父の…マルフォイ家の子なんだからな」

 

マルフォイは憑き物が落ちたような表情で決意のこもった言葉を吐いた。

こんな優しい言葉をかけてやるとは、わしも甘くなったものだ。

 

 

 

 

 

そして、レイブンクローとの対決の日がやって来た。

ハッフルパフを破った事で勢いに乗るレイブンクローは強敵だったが、わし等スリザリンも負けてはいない。

ニンバス2001の性能を生かした動きと反則スレスレのラフプレー、そしてわしのブラッジャーによる攻撃で試合を優位に進める。

最後はシーカー同士のデットヒートをマルフォイが制してスリザリンが勝利したが、フリントはどこか浮かない顔だ。

 

「…できればもう少し点差を着けて勝ちたかった。この点差だと、次にグリフィンドールがレイブンクローに勝ったら2位に浮上する。そうなったら僅かにグリフィンドールに優勝の可能性が出てくる」

 

うんうんと唸り続けるフリントを見て、こいつは勝利の為に本当に真剣なんだと少し見直した。

ファイア・ボルトがポッターの手に戻れば、フリントの心配も絵空事とは言えなくなるだろうな。

スリザリン生としてはポッターの手に箒が戻らない事を祈るばかりだ。

 

 

 

 

 

2月になると雪が降り始めクィデッチの練習が困難になったが、フリントは練習の日を減らそうとはしなかった。

目くらまし術も大分上達したので、次は「結膜炎の呪い」の練習に取り掛かる事にした。

ドラゴンを代表とする魔法生物には人間の魔法が通じない種類もいるが、この呪いなら目等の弱い部分にダメージを与えられる。

 

 

「食べながら読書なんて、行儀が悪いですわよ」

 

「親みたいな事を言うなよ」

 

ダフネの小言を軽く受け流し、朝食を食べながら「ザ・クィブラー」の記事を読んでいると中々興味深い記事を見つけた。

「ペティグリュー生存説」だ。

死体があれだけしか残っていないのはおかしい、自ら指を切り落として死を装い「姿くらまし」する事でブラックの魔の手を逃れたのではないか、と筆者は主張していた。

だが、「もし生きているならブラックが逮捕された後ペティグリューは出てくるはず」「英雄であるペティグリューへの侮辱だ」とクレームが入ったらしく筆者は翌週前言を撤回し謝罪していた。

ペティグリューが生きている可能性はわしも考えたが、読者が指摘した通り生きているのなら出てくる筈だ。

それとも、出てこられない事情でもあるのか…?

…無いとは思うが、ブラックだけでなくペティグリューもポッターに何かを仕掛ける可能性も出てきた。

厨子のポッターへの監視を再開させるとするか。

 

考え込んで居ると大広間の隅から大きなどよめきが聞こえた。

騒ぎの方向を見ると、周囲を護衛されて王様気取りのポッターが美しい箒を手に得意げにテーブルにつくところだった。

…マクゴナガルの検査では呪いは検出されなかったのか。

 

「まさか…ファイアボルトだ」

 

箒が本物かどうか確認しに行ったマルフォイが、肩を怒らせながら帰って来た。

 

「…本物だ。間違いない」

 

「……くそっ、ポッターめ。あんなの反則だろ」

 

スリザリンのテーブルから怒りの声やスリザリンの優勝を悲観する声が上がりはじめる。

マルフォイとフリントは特にショックを受けているようだ。

 

「次の戦いでレイブンクローが勝つことを祈るばかりだな」

 

ファイアボルトを入手したグリフィンドールがそう簡単に負けるとは思えないが、気休め程度になればと呟いてみる。

わしの言葉を聞いたフリントやマルフォイの目に怪しい光が灯ったが…どうしたのだろうか。

 

 

わしの疑問はすぐに解けた。

グリフィンドールとレイブンクローの試合中に、吸魂鬼の恰好をしたフリントとマルフォイ以下2名が現れたのだ。

ポッターに揺さぶりをかけるつもりだったのだろうが、彼らの目論見は失敗に終わった。

「守護霊の呪文」によって公衆の面前で正体を暴かれて減点を喰らってしまったのだ。

グリフィンドールは前回の敗北から猛特訓を重ねたらしく、レイブンクローに圧勝していた。

これで次の試合、もしもスリザリンが200点差で負けた場合は優勝杯はグリフィンドールの物になってしまう。

だが、今はマルフォイだ。

 

 

談話室では50点もの減点を喰らったマルフォイが皆から白けた目で見られていた。

グリーングラス姉妹やパーキンソンは彼の味方だったが、彼女らの慰めの言葉すらも今のマルフォイにはダメージとなるようで、フラフラと部屋に戻ってしまった。

…今は話しかけない方が良いな。

 

夜遅くまで談話室で宿題をやって時間を潰してから部屋に入る。

起こさないように静かにペット達に餌をやっていると、マルフォイの方から話しかけてきた。

わしはマルフォイが眠っていると思っていたので驚いて餌を落としそうになった。

 

「今日の僕はさぞ情けなかっただろ?良い赤っ恥だ、クソ……。減点までされて…」

 

「わしはそうは思わない。勝つためだろう?何だってやるべきだ。今日は失敗したが次に生かせばいいさ」

 

「……」

 

マルフォイからの返事は無かった。

翌日のマルフォイは昨日のことなど無かったかのように接してきたが、奴の心情が気になる所だな。

 

 

 

 

 

グリフィンドールとレイブンクローの戦いの数日後、グリフィンドール寮にシリウス・ブラックが侵入すると言う出来事があった。

マクゴナガルは合言葉を書いたメモを放置していた生徒に激怒し、ホグズミード村への外出も禁止したそうだ。

惨めな顔をしているロングボトムが少し哀れになったので蛙チョコレートを分けてやると、探し求めていたカードが出たらしく丸顔をほころばせていた。

 

厨子にポッターを探らせていたので、ブラック侵入の一連の流れをわしは知っている。

多くの者はブラックがポッターを殺そうとしたのだと思っているが、ブラックはウィーズリーの鼠を狙っていたのだ。

鼠はそれを察知して数日前に僅かな血痕を残し、死んだと見せかけてどこぞへと去っていった。

…ただの鼠にそれだけの事が出来るだろうか?

 

「ペティグリュー生存説」の記事では、ペティグリューが自分が死んだと見せかける為に自ら指を切り落としたのだと書かれていた。

今回の鼠の行動はそれと一致する。

信じがたいが、ウィーズリーの鼠の正体はペティグリューだったという事なのだろう。

これならば寿命が長い理由にも説明がつく。

動物に変身する術は魔法界の中でも難易度が高く、それが出来る者は「動物もどき」と言われ、魔法省に登録しなければならない。

図書室で調べたが、ペティグリューの名は「動物もどき」のリストに無かった。

奴は無登録の「動物もどき」だということか…?

ジェームズ・ポッターとペティグリュー、そしてシリウス・ブラックは在学中親しかったとマルフォイの話にあった。

ならば、ペティグリューが無許可の「動物もどき」だったなら、彼らもそうである可能性があるな。

 

 

ここまで推理を重ねたが、ペティグリューが自分の生存を公表せずにウィーズリーの元で鼠として暮らしている理由は、まだ断定できなかった。

後ろめたい事があるからだろうと想像は付くが、10年以上も隠れ続けるなど尋常ではない。

一体何を恐れているんだ…?

 




・9/19 文章を一部訂正しました。

・9/21 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
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