【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※最初は白童子視点で、次にマルフォイ視点


第38話 優勝杯の行方

『白童子視点』

 

クィデッチの練習に授業の予習復習、「欲求の部屋」での特訓。

そして、ブラック事件の真相探し。

これを毎日続けて居たら、流石のわしも体調を崩してしまった。

よりによってホグズミート村に行く前日に風邪を引いて入院する羽目になるとは、少し根を詰めすぎたな。

翌日の昼頃に退院を許可されたが、こんな時間からホグズミード村に行っても仕方ないと諦めた。

城の中を軽く散歩していると、隻眼の魔女像の傍でスネイプとポッターを見つけた。

これは面白い事になりそうだと「目くらまし術」で透明になって後を追う。

ポッターに気を取られていたとはいえ、スネイプ程の実力者にもわしの存在を悟られないで居られたことは収穫だな。

 

ポッターは許可証が無いのにホグズミード村に侵入し、マルフォイに悪戯を仕掛けたが証拠不十分で釈放された。

その後のポッターとルーピンの話から、「忍びの地図」と呼ばれる魔法アイテムの存在を知ったが、今は手が出せないな…。

そして、話から推測するとジェームズ・ポッターとルーピンは親しかったようだ

ジェームズの友という事はブラックやペティグリューと親しかった可能性もあるな。

まあ今はさほど重要な事ではないか。

 

ついでに、厨子の報告から隻眼の魔女像を通るときの合言葉を知る事が出来た。

何かの役に立つかもしれないしメモしておくか。

 

その晩はポッターが処罰されなかった事でマルフォイがカンカンだったので、愚痴に付き合わされてしまった。

わしは病み上がりだと言うのにな…。

同室だからか、マルフォイの愚痴を聞く役がわしになっているのは気のせいか?

そこのハニーデュークスのお菓子に夢中になっている豚2匹、愚痴を聞くのを変わってくれ。

 

 

 

 

 

翌日、バックビークの処刑が決まった事を聞いた。

…マルフォイ、申し訳なさそうな顔をしなくても良い。

バックビークに炎蹄を重ねていたのは事実だが、奴は所詮ハグリッドの飼い鳥だ。

そこまで入れ込んではいないさ。

 

魔法生物飼育学の授業の後、マルフォイが聞こえよがしにハグリッドを馬鹿にしてグレンジャーに殴られるという出来事があった。

公衆の面前で顔を殴られ、杖を出されても抵抗しないマルフォイを見てわしは彼の考えを察した。

ポッター達が去っていくのを確認し、彼のあざになった頬をさする。

 

「…けじめ、か?」

 

「君に見透かされるのも慣れたな。分かってるなら言うなよ」

 

マルフォイは彼らから殴られたかったのだ。

そうする事で心の中のモヤモヤや罪悪感から逃れたかったのだろう。

 

「グリフィンドール戦も近い…余計な事は考えたくないんだ。勝つぞ」

 

「…ああ」

 

やはり…気負い過ぎている。

これが良い結果につながるように祈るとするか。

 

 

 

 

対グリフィンドール戦が迫ったある日の事。

数占い学の授業の後で、グレンジャーが大量の教科書と破れた鞄と共に倒れているのを見つけた。

教科書を詰めすぎたので鞄が破け、それに気を取られて壁にでもぶつかって気絶したのだろう。

声をかけても反応が無いので、浮遊呪文で浮かせながら医務室に運んでやった。

マダム・ポンフリーの診断では疲労が大きいが薬を飲んで休めば治るらしい。

今日の彼女の授業の教師に伝えてくると彼女は部屋を出ていき、医務室にはわしとグレンジャーが残された。

 

「…ポンフリーが帰って来るまでわしはここにいた方がいいのか?面倒な事だな」

 

せめて恩でも売っておくかと、彼女の破れた鞄を「レパロ」で治してやった時に銀の鎖がつけられた砂時計を見つけた。

魔法の力を持ったアイテムのようだが、ゾンコの店なんかで売ってるチンケな悪戯アイテムとは訳が違うようだ。

もう少し観察したかったが、マダム・ポンフリーが帰って来たので砂時計を鞄に戻して次の授業に向かった。

授業には遅刻したが事情を説明して減点処分はまのがれた。

 

 

夕食後に大広間でグレンジャーに医務室の件で礼を言われた。

 

「今日は…その、ありがとう。私を医務室に運んでくれたんですって?」

 

「ああ。大したことはない。…貴様の鞄から見えた砂時計。あれは何だ?」

 

「…見たの!?」

 

「ああ見た。あれはただの悪戯アイテムと言うわけではないだろう?相当レア物と見たが…」

 

砂時計の事を問われた彼女は口元をぎゅっと結んで絶対に言うもんかという表情になったので、わしは追及を諦めるしかなかった。

 

だが、気になる事はすぐに調べるのがわしだ。

図書館でマダム・ピンスに魔法道具の本の事を聞き、紹介された本の一冊目であっさり真実にたどり着いた。

あれは「逆転時計」という物で、時間を一定時間戻す事が出来る。

とても扱いが難しい貴重な物なので一般の者が使う事は出来ず、魔法省に保管されている。

 

グレンジャーがやけに疲れて居たのは、この時計を使って過去を行き来していたからか?

時計の使用目的は授業を複数受ける為という事か。

時間を戻す…興味深い品だが、魔法省ご推薦の品なら迂闊に手は出せないな。

 

 

 

 

 

 

 

『マルフォイ視点』

 

試合が近づくにつれてスリザリンとグリフィンドール間の対立は激しくなっていった。

ウッドは僕らがポッターに手を出すのではないかと考えたようで、ポッターの周囲は必ず誰かが居るようになった。

 

そして、ついに試合の日がやって来た。

気が重くなりそうなくらいの晴天の中、マダム・フーチのホイッスルを合図に宙に飛び上がる。

選手陣が整列する中、僕はポッターと一度も目を合わせなかった。

 

試合開始早々にフリントは徹底したラフプレーを仕掛け、フーチから笛を鳴らされた。

両チームはペナルティーのチャンスを得たが、ウッドの好プレーによりグリフィンドールが有利に立った。

グリフィンドール贔屓の実況に舌打ちをしながらもポッターをマークし続ける。

 

 

ポッターがファイアボルトのスピードを生かしてこちらのビーターを同士討ちさせようとした。

ハクドウシが気づいたのでポッターの目論見は外れ、僕は彼にザマミロの笑みを送ってやった。

やはりファイアボルトのスピードは脅威だ…一瞬たりとも奴から目を放すわけにはいかない。

そう思っていたのに、ハクドウシがブラッジャーを相手のチェイサーに討ち当てるのに気を取られてポッターから目を放してしまった。

気づけばポッターはスニッチを見つけ、加速をかけようとしていた。

一度加速をかけられたらファイアボルトの方がニンバス2001より早い。

ならば、加速をかけさせなければ良い。

僕は必死で手を伸ばし、ファイアボルトの尾を握りしめてスピードを強引に落とさせた。

その間にスニッチはどこぞへと消え、ポッターが悪態をついた。

 

実況が怒りの声をあげ、マクゴナガルやグリフィンドール生徒が僕にブーイングを飛ばす。

彼らに苛立ちを感じたが、選手たちが僕の周りに集まって褒め称えてくれたので、自分のした事が間違いでないと自信を持つことが出来た。

ハクドウシは僕によくやったという顔でサムズアップをしてくれたし、フリントはキスしかねないばかりの勢いで突っ込んできてガシガシと僕の頭を乱暴に撫でた。

 

僕が吸魂鬼の恰好でポッターを揺さぶろうとして失敗した時、ヒトミはこう言った。

『貴様は間違っていない。勝つためだろう?何だってやるべきだ』と。

その通りだ…僕らは絶対に勝つ。

 

 

試合が再開される今度はポッターが僕をマークするようになった。

互いの膝が触れる程にくっつかれるのはうっとおしいが、奴がスニッチを見つけたらすぐに僕も動く事が出来るのは好都合だ。

僕は急上昇してポッターに揺さぶりをかけながら、冷静にスニッチを探し続けた。

少し離れた場所でハクドウシがウィーズリーの双子とブラッジャーの取り合いをしている。

ハクドウシは2人相手でも互角に立ち回り、時々彼らを出し抜いてグリフィンドールのチェイサーを的確に妨害していた。

 

試合が始まってから1時間以上たった時、ポッターが動いた。

仲間がスリザリンの選手に囲まれて動けないのを見て援護に向かったのだ。

この機を逃さず周囲を見渡し…スニッチが地面の傍をフワフワと飛んでいるのを見つけた。

 

急降下をかけてスニッチに手を伸ばす。

ポッターは遠くに居るので勝利を確信し、勝ち誇った笑みを浮かべた。

この時、僕はポッターとファイアボルトを侮っていた。

 

その時のファイアボルトの加速はこの試合で一番のものだった。

僕が伸ばした手をポッターが払いのけ、そのままスニッチを掴んでいった。

後1センチ…いや、1ミリ程度の差だった。

観客席から叫ぶような声が聞こえ、グリフィンドール生達が狂喜するのを、僕は夢の中の光景を見るように呆然としながら見ていた。

今の光景が信じられなかった。

 

 

 

 

 

やがて誰かに手を引かれて競技場の外に連れ出された。

 

「これ以上あそこに居ても仕方ないだろう。行くぞ」

 

ハクドウシだった。

僕は彼の不機嫌そうな顔を見つめ、競技場の中心でポッター達が喜び合っている姿を目撃する。

そして、ああ、負けたんだと実感して涙があふれてきた。

誰かの前で泣くなど恥ずべき事だと思ったが、一度流れ出した涙を止める術を僕は知らなかった。

ハクドウシは泣きじゃくる僕を困ったように見つめていたが、やがて僕の体を軽く抱いて頭を撫で始めた。

ライバルであるハクドウシに慰められるのは屈辱の筈だが、今の僕は自然にそれを受け入れる事が出来た。

 

気づけば僕達の周りにはスリザリンの選手達が集まっていた。

僕のように悔し涙を流す者も多く、フリントもその一人だった。

 

「…皆本当によくやった。負けたのは俺の責任だ。ファールを取られすぎてペナルティーを入れられちまった。すまねぇ…」

 

フリントは涙で顔をくしゃくしゃにして、しゃくりあげながら自分を責め続ける。

上級生がフリントの巨体を支えて慰めながら退場していく。

やがて1人また1人とその場を去っていき、僕とヒトミの2人だけが残された。

 

「わし等も寮に戻るか。残念パーティのご馳走に遅れてしまう」

 

「…待ってくれ。…少し、話を聞いてくれ」

 

「…ああ」

 

「僕が…最期油断したんだ。勝ったと思って、ポッターに勝ち誇った…。あそこで集中していれば、気を抜かなければ良かったんだ。一瞬の差だった…」

 

涙を拭きながらの僕の言葉にハクドウシが少し笑ったので、何が可笑しい、とムッとする。

 

「いや、わしも油断や慢心で痛い目を見る事があるからな。貴様もそうだと知って少しおかしくなったんだ」

 

「君もそういう事があるのか?」

 

「そりゃあるさ。こういった感情は足手まといだし無くしたいものだがな」

 

「………」

 

「馬鹿な観客は騒いでいたが、貴様がポッターの箒を掴んだのは素晴らしいプレーだったな。あれが無ければ、わし等は早い段階で負けていた。…ポッターがわし等ビーターを同士討ちさせようとした事も褒められたことでは無い。だが奴らはその時は何も言わなかった。ポッターのした事の方が相手を傷つける意図がある分、タチが悪いのにな。いい加減な奴らだ。…悪役は慣れっこだが、次はあいつらを絶望の表情に変えてやりたいものだ。そう考えると、良かったかもな」

 

彼の言葉には観客への苛立ちもあったが、僕への純粋な賛美もあったので落ち込んでいた心が少し浮き上がった。

 

「今日は負けた。だが油断が弱点になる事を知ったんだ。ならば今日の教訓を生かして次は勝つ」

 

そうだろう? と彼はいつもの不敵な笑みを浮かべた。

…全く、かなわないな。

 

「ハクドウシ」

 

前から心の中で名前を呼び捨てにしていたが、何となくタイミングが掴めずに名前で呼んでいた。

だが、今日僕は口に出して彼を名前で呼んだ…これが僕の決意表明だ。

驚いた顔をするヒトミの両手を握りしめ、僕は自分自身とハクドウシに対して宣言した。

 

「僕は…そうだ、君の言う通り、今日の負けを絶対に生かして見せる。変わってやるさ。必ずな」

 

「…頼もしい事だな、ドラコ…」

 

彼も僕の下の名前を呼び、2人で少しの間笑い合った。

油断と慢心か…僕はそれを越えてみせる。

そして、次こそポッターに勝つ。

スリザリン寮に向かう僕の顔からは、既に涙の痕は消えていた。




・9/24 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
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