【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第44話 新たな防衛術の教師

9月1日は天気が悪く、予報によると午後から雷が落ちるそうだ。

昨年も曇り空で1年が始まって厨子が死ぬことになったが、今年も誰かが死ぬのだろうか…。

下らぬ考えを頭から追い出し、厨子の墓に手を合わせてから神無と共に駅に向かう。

9と4分の3番線のホームでは、見送りの家族が例年より弾んだ空気で会話をしていた。

 

適当なコンパートメントを見つけ、荷物を置いて座る。

クラッブの親が逮捕されたことを考えれば、積極的にドラコ達を探す気にはなれなかった。

だが、汽車が発車した後にドラコが誘いに来たので結局移動することになってしまった。

スリザリン生が座るコンパートメントに案内されると、予想通りというべきか去年より暗いムードだった。

クラッブは食事にありついているが、心なしか食べる量が少なく険しい顔をしていた。

その隣でいつものようにガツガツと暴食しているゴイルは中々大物だと思う。

ドラコは腰巾着の不機嫌に少し戸惑っているらしく、助けを求める意味もあってわしを呼びつけたのだろう。

申し訳ないが、わしはクラッブに対して余り興味がないので力に慣れそうにない。

午前中はクラッブをなるべく視界に収めないように努力しながらダフネとチェスを楽しんだ。

 

 

 

 

昼食の後、ドラコがポッター達にちょっかいを出すべく席を立った。

いつもならば彼らの煽り合いには関わらないわしだが、今のクラッブは制御が効かなくなる可能性があるのでドラコ達に着いていくことにした。

グリフィンドール生が集まっているコンパートメントはすぐに見つかり、中からワールドカップの話をしている声が聞こえる。

 

「僕たち、クラムをすぐ傍で見たんだぞ。貴賓席だったんだ」

 

「君の人生最初で最後の幸運だったな、ウィーズリー…。ん、こいつは何だ?君はこれを着て踊るつもりかい?80年代に流行したものだ…」

 

絶妙のタイミングで話に割り込み、相手の弱みに気づく。

ドラコのこういったスキルには素直に感心させられる。

さて、スリザリン御一行様の入室に当然ながらポッター達は良い顔をしなかった。

気にしていたであろうローブの事をからかわれたウィーズリーは怒鳴り声をあげ、ドラコ達は爆笑していた。

さっきまで不機嫌だったクラッブも笑っていたことに勇気を得たのだろう。

ドラコが若干早口になった。

 

「エントリーするのかい?ウィーズリー…勝てば少しはましなローブが買えるだろうよ。君はするだろうねぇポッター。目立つ機会を逃さない君のことだ」

 

ドラコの言葉に疑問を感じたが、それはポッター達も同じのようだった。

何の事だと言い返す彼らに、他人が知らないことを自分は知っているという優越感に笑みを浮かべてドラコは話を続けた。

 

「まさか、君たちは知らないとでも?驚いたね…父も兄も魔法省に努めているのに。ま、僕の父と違って君の家族は下っ端だからねぇ。重要な話は伝わっていないのかもしれない」

 

彼らの悔しそうな顔を見て満足そうに笑うと、ここらが潮時とばかりに部屋を出ていく。

相手に反論の隙を与えずに一方的に屈辱だけを残すという、鮮やかな煽り方だったな。

前を歩くドラコに駆け足で追いつき、ある疑問を口にした。

 

「なぁドラコ、さっき言ってたのは何のことなんだ?」

 

「君も知らなかったのかい?君は姉が魔法省のあちこちに顔が聞くんだろう?」

 

「姉とは最近顔を合わせる機会が減ってしまってな。忙しいのか避けられているのか…」

 

「そうなのか…。じゃあお姉さんの代わりに僕が教えてあげるよ」

 

ドラコはわざとらしい咳払いのあとに3大魔法学校対抗試合のことを教えてくれた。

長い伝統のある刺激的な競技で、危険なので長らく中止されていたが今年から復活するらしい。

優勝すれば大いなる名誉が手に入ると彼は言ったが、わしとしては賞金の方が気になる。

1000ガリオンもあればあの家から出て一人で暮らすこともできるかもしれない。

教員たちが見守る中で行われるそうなので、死の危険も少ないだろう。

 

「目の色が変わったね。立候補する気かい?」

 

「そうだ…と言ったら?」

 

「なら僕たちはライバルだ。僕も参加するつもりさ。年齢制限があると聞いたけど破る方法はあるはずだし、ね」

 

わし等は悪戯っ子のような笑みを浮かべあい、自分たちのコンパートメントに戻っていった。

ポッター達をからかった事でクラッブの機嫌が治り、汽車の旅は午前より快適になった。

ドラコからダームストラング校の話を聞いたり、ワールドカップのことを話しているとあっという間にホグワーツ城に着いた。

 

 

 

 

 

 

玄関ホールではピーブズがやけに機嫌が悪く、水風船をそこらに投げ散らしていた。

多くの生徒は雨と水風船で服がビショビショになっていたが、わし等は汽車の中で防水呪文を互いに掛け合っていたし、ピーブズの水風船攻撃も避けたので無事だった。

 

「今日のピーブズは随分だったな」

 

「祝宴に参加したいと言ったのを血みどろ男爵にダメ出しされたらしいぜ。だからあんなに荒れてたんだ」

 

「ほう。情報が早いな」

 

「さっきゴースト達が噂してるのを聞いたんだ。釜や鍋を投げて暴れ散らしてさ。屋敷しもべ共もビビりまくってたらしいぜ」

 

「この学校にも屋敷しもべが居るのか」

 

「そりゃあ居るだろ。居なけりゃ誰が皆の食事を用意したりベッドを直すんだ?」

 

ザビニと他愛ない話をしていると、新入生たちがで大広間に入って来て組分けが始まった。

スリザリンのテーブルに新顔が来るたびにわし等は暖かい拍手を送ってやった。

スリザリンに選ばれた者は、他の寮、特にグリフィンドールから厳しい目で見られているな…。

いくらスリザリンが嫌いでも、入学したばかりの1年生をそんな目で見る事は無いだろうに。

チンケな奴らだ。

 

組分けも無事に終わり、わし等は食事と会話を楽しむことにした。

 

「ダームストラングはとても高度な闇の魔術を教えてくれるらしい。ホグワーツのちゃちな防衛術とは段違いのものをね」

 

「ちゃちかどうかはともかく、闇の魔術の防衛術には余り良い思い出がありませんわね」

 

「1人は賢者の石を盗もうとして、1人は記憶喪失で聖マンゴ行き。で、もう1人は狼人間か」

 

「改めて聞くと酷いな。今年はどんな教師がくるんだろうな」

 

生徒達がデザートを食べ終わる頃合いを見計らって、ダンブルドアが立ち上がり話を始めた。

予想はしていたがクィデッチの試合が取りやめになったのは少し残念だな。

生徒達の動揺を抑えるように手を振って話を続けようとした校長だが、大広間の扉が開いたことでそれは遮られた。

義手の音を響かせて入って来たのは奇妙な姿の男だった。

服はボロボロで、顔には無数の傷跡が残っている。

そして、片方の目には魔法アイテムらしい奇妙な義眼を埋め込んでいる。

生徒達はその姿に圧倒され、新しい闇の魔術の教師だと紹介されても誰も拍手をしなかった。

 

「恐ろしい顔ですわね…」

 

「直接目に埋め込む、か。あんな道具もあるんだな」

 

「感想そこかよ!」

 

ムーディとやらの感想をダフネ達と話していると、ダンブルドアが大きく咳払いをした。

 

「先ほど言いかけたが、これから数カ月に渡って我が校はまことに心躍るイベントを主催する栄誉を賜った。大きな喜びと共に発表しよう。今年、ホグワーツで3大魔法学校対抗試合を行う」

 

グリフィンドールの双子が大声を上げ、生徒達の間に笑い声が広まった。

マグル生まれとみられる生徒は困惑の表情で周囲を見渡しているが、わしも昨日までその事を知らなかったので彼らを笑えないな。

ダンブルドアはボーバトンとダームストロングの生徒が10月の末に来ることと、対抗試合には年齢制限が設けられていることを皆に伝えた。

前半はともかく、後半の発表には多くの生徒が不満を抱いたようだった。

 

夕食を終えて部屋に戻ると、いつものように荷物が運ばれていた。

これも屋敷しもべがやったのだろうか…便利な生物だ。

 

「審査員がどうとか言ってたが、そいつらを誤魔化せればいいわけだろ?」

 

「ああ。父上の息のかかった者なら何とかなるかもしれない」

 

「コネがある者は良いな。わしの姉が審査員なら…だめだ、奴はわしを嬉々として落としそうだ」

 

「ハハハ、随分なお姉さんだな。…そういえば、審査員が人間とは限らないよな」

 

「そうだな、盲点だった。魔法アイテムか、あるいは魔法生物か…」

 

大蛇に餌をやったあとはベッドに腰かけて、審査員の目を誤魔化す方法をドラコと議論した。

気づけば夜遅くになってしまったので、慌ててそれぞれのベッドに戻り眠りについた。

 

 

 

 

翌日の授業は快適とは言い難かった。

魔法生物飼育学のハグリッドが、尻尾爆発スクリュートとやらの育成を今年度のテーマだと宣言したからだ。

生徒達が嫌そうな顔をする中で、ドラコが勇気ある発言をした。

 

「こいつらが何の役に立つのだろう?つまり、何で育てる必要があるんでしょうねぇ?」

 

最もな発言だが、ハグリッドはそれにはハッキリと答えずに授業を開始した。

授業が進む中で、スクリュートが飛ぶときに尻尾を爆発させる習性がある上に、鋭利な針と血を吸う吸盤があることが判明した。

 

「おやおや。なぜ僕らがこいつらを育てるかよくわかったよ。皆欲しがるものな、この野蛮な生き物をさ」

 

ドラコの皮肉たっぷりの言葉にグレンジャーが反撃した。

 

「かわいくないからって役に立たないとは限らないわ。ドラゴンの血は素晴らしい魔力があるけど、ペットにしたがる人はいないでしょう?」

 

「ドラゴンを飼う…僕の記憶ではそんな教師が居たような気がするが。あえて言わないでおこう。では聞くが、こいつらが何の役に立つ?百歩譲って役に立つとして、僕ら生徒が危険を冒してまで育てる価値がある生き物なのか?」

 

「それは…」

 

グレンジャーも本心ではスクリュートの育成など無意味だと感じているのか、ドラコの反論に何も言い返せないようだった。

一応教師の決定ではあるので、わしは怪我に注意しながらスクリュートの面倒を見てやった。

グロテスクな生物は嫌いではないが、これは人工的に作られた生物なので嫌悪感を感じる。

それに、成長したら自分を襲いそうな生物の世話をするなんて馬鹿馬鹿しいったらない。

 

「去年首になっておくべきだったよ」

 

「貴様が正しかったようだな、ドラコ。あの様子ならまた問題を起こしそうだ」

 

「来週までにドラゴン革の手袋を注文しておくことにするよ。素手だと手を噛みちぎられそうだ」

 

授業が終わったあとは愚痴を言い合いながら城へと戻った。

ヒッポグリフをテーマにした時は良いセンスだと感心したが、評価を変えよう。

あの男はダメだ。

 

 

 

 

 

昼食後はドラコと別れて数占い学の授業に向かった。

宿題を出されなかったことに安堵しながら玄関ホールに向かうと、ドラコ達が意地悪な笑みを浮かべて誰かを待ち構えているのを見つけた。

 

「どうした?誰を待ってるんだ」

 

「まぁ慌てるなよハクドウシ…。来た!ウィーズリーだ」

 

目当ての相手が見えたことでドラコは指を鳴らした。

そして、アーサーの失態が書かれた記事を大声で読み上げてウィーズリーの両親をせせら笑った。

皆の注目が集まる中での侮辱に、ウィーズリーは怒りで肩を震わせ、ポッターが反論した。

 

「それじゃあ君の母君はどうなんだ?糞でもぶら下げているような顔じゃないか。それとも君がぶら下がっていたのかい?」

 

下品な煽りだな…お里が知れるぞ。

ポッターの言葉を聞いたドラコは怒りに任せて彼に呪いを放った。

奴は呪文を受けて吹き飛ばされながらも、立ち上がって杖を抜こうとしている。

誰もが二人の攻防に注目する中、わしは階段の方で何者かが杖を振り上げたのを目にした。

その視線がドラコに向けられていることに気いた時、足が咄嗟に動いていた。

 

「若造、そんなことをするな!」

 

「プロテゴ(護れ)」

 

ドラコの前に立ち塞がり、左手で杖を下ろさせ右手で防御呪文を張った。

わしは全力で呪文を放ったが、往年の闇払いが放つ呪文の方が威力があるようだ。

防御呪文は程なくして破られ、2人とも弾き飛ばされてしまった。

防衛術の教師のムーディは、義足の音を響かせながら階段を降りてきた。

 

「よく気づいたな。だが、まだ盾の呪文の使い方は甘いようだ」

 

「…ご教授ありがとう。だが、いきなり生徒に変身術をかけるとは穏やかじゃないな」

 

「敵が後ろを見せた時に襲う奴は気に食わん。鼻もちならない、臆病で卑怯な、下劣な行為だ」

 

「わしは敵が後ろを見せた時こそ襲うべきだと思うがな。それに、突然攻撃をしかけた貴様が誰かを卑怯と嘲るとは片腹痛い」

 

フロア中の目という目が向けられる中でムーディと軽い舌戦を交わし、ドラコを助け起こして2人でその場を去った。

後ろの方でマクゴナガルがムーディに困り果てた様子で忠告をしているのが聞こえた。

 

「我が校では生徒に対し授業以外で変身術を使用しません!彼が罰則に値する行為をしたのであっても、フィルチか寮監の先生に処罰を任せることになっています!」

 

「そうならば従うとしよう」

 

ムーディの魔法の目がわし等の姿を追うのを背中越しに感じた。

大広間に入ると、わし等はテーブルに着くまで生徒達の好奇の視線に耐えねばならなかった。

アステリアはまだ来ていないようだが、彼女に先ほどの事件を見られずに済んだのはドラコにとって不幸中の幸いだな。

 

「君が突き飛ばしてくれなかったら、アイツは僕に何をしていたんだ?何に変えられていた?」

 

恐怖がこもったドラコの問いに静かに首を傾げる。

 

「そこまでは分からん。だが、愉快な生物に変化させられて笑いものになっていたのは確かだろう。物騒な教師だ」

 

「あんな乱暴なやり方…ふざけてるよ。ダンブルドアの教師の選び方は完全に間違ってるね」

 

不愉快な気持ちを隠そうともせずに唸り、乱暴な仕草でコンソメスープを飲み干した。

隣に座っていたダフネが慰めるように彼の肩に手を置く。

 

「災難でしたわね。お父様にフクロウ便で今のことを報告なされたらどうですの?」

 

「それは…できない。僕の問題だ。父上に何とかして貰うのは、こう、ダメだ。誇りが許さない」

 

「ご立派だなマルフォイ。でも、仮に言いつけてもどうにもならないかもしれないよ」

 

今度はノットのご登場だ。

 

「どういうことだ?」

 

「アイツは闇払いだ。相当な数の死喰い人をアズカバンに入れている。藪を突っつく危険を君の父は犯さないんじゃないか?」

 

ノットの言葉の意味を理解したのか、ドラコが悔しそうにテーブルを叩いた。

一方。わしはノットの父も元死喰い人だったことを思い出し、彼を静かに見つめた。

こいつ自身もムーディには思うところがあるかもしれんな。

 

 

 

 

その晩、部屋を抜け出して欲求の部屋に向かい、久々に魔法を思う存分使用した。

今日のムーディとの一戦で「盾の呪文」が完璧でない事が分かったので、これも改善しておこう。

…だが、今のままでは多くのライバルを押しのけて代表選手に選ばれることは難しい。

ホグワーツの代表はセドリック・ディゴリーになるだろうと噂する者もいるが、わしとディゴリーの力量を比べると現時点では彼の方が上だろう。

対抗試合の選抜は10月の末なので、去年よりペースを上げる必要があるな。




・10/15 文章を一部修正しました。

・10/18 ご指摘ありがとうございます。修正しました。
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