【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第47話 第一の課題

11月になると寒さが厳しくなり、談話室の暖炉の前のソファーを取り合う光景が見られ始めた。

わしが歩くたびにヒソヒソ話が起きるのも少し落ち着き始めたので居心地が良くなった。

ドラコとポッター達が出会う度に火花を散らし合っているのは相変わらずだ。

奴らはわしに対しては何も言ってこないが、たまにポッターやウィーズリーが嫉妬の籠った目で見てくることを感じていた。

 

第一の課題が翌週に迫った土曜日。

ホグズミード村への外出が許可されたので、ドラコ達と久々の買い物を楽しんだ。

ハニーデュークスでは出来立ての熱いチョコレート菓子をご馳走になり、洋装店では新作のダンス用ローブを見て回る。

案の定ダフネに女装させられそうになったのはもはやお約束だな。

 

「全く冗談じゃない…」

 

「女装くらいしてやっても良いんじゃ無いか?」

 

「ザビニの奴がカメラをもって待ち構えていたのを見ただろ?ダフネと裏取引でも交わしたんだろうな。女装した瞬間、写真を撮られて売りさばかれるのがオチだ」

 

「そしたらまたサインを書くハメになるかもな」

 

ドラコにからかわれたわしは、不貞腐れてバタービールを飲み干した。

以前女子生徒にサインを頼まれたことがあったが、鞄に文字を書くのは初めてだったのでギザギザの可笑しな文字を書いてしまった。

魔法で文字を消してから改めて色紙にサインをしてやったが、それを見ていたドラコ達に何度もネタにされているのだ。

 

三本の箒でお喋りを楽しんでいると、ダームストラング校の生徒の集団が通りかかった。

彼らもホグズミードを満喫しているようで、ハニーデュークスやゾンコの悪戯専門店の袋をぶら下げていた。

 

「そういえば、ダームストラングやボーバトンの生徒も来ているんだったな」

 

「彼らもずっとホグワーツに居るのでは退屈だろうからね」

 

代表選手に選ばれなかったことで本校に帰る者も居たが、多くの生徒はホグワーツに残って試合を見届けるつもりのようだ。

ホグズミート村に向かう生徒が増えたことで、フィルチはチェックに忙しそうだった。

 

クラムは1人で買い物を楽しんでいたが、店員や村人からいちいち握手やサインを求められて大変そうだった。

デラクールはディゴリーに一目ぼれしたようで、彼がガールフレンドのチョウ・チャンと歩いているのも構わず積極的に話しかけていた。

見えない火花を散らし合うデラクールとチャンの前で困ったような顔をしているディゴリーを、多くの男子生徒が羨ましそうに眺めており、ポッターもその1人だった。

奴はデラクールに気があるのだろうか?

 

 

 

 

 

その日の晩は大蛇が妙に騒ぐので起きてしまった。

 

「どうした?こんな夜更けに…」

 

大蛇の話によると、禁じられた森の傍で強い力を持った生物の気配を感じるそうだ。

ドラコを起こさないように部屋を抜け出して、姿を消しながら大蛇のナビに従い歩き出す。

禁じられた森の傍に着くと、複数の魔法使いが巨大な魔法生物を押さえつけようとしている姿が目に入った。

 

近づくにつれてその全容が明らかになり、わしは興奮と微かな畏怖から大きな息を吐いた。

本で読んだことはあるが、実際に目にするのは始めてた。

あれがドラゴンか…。

 

「素晴らしいでーすわ、アグリッド…これがあたくしに今日見せたかったものでーすね?」

 

「ああ、あんたと一緒にこいつらを見たかった」

 

少し離れた場所ではマダム・マクシームとハグリッドが親し気に話をしている。

マクシームが失神したドラゴンを見ている隙に、がっしりとした魔法使いがハグリッドに近づいて声をかけた。

 

「よう、ハグリッド。…あの人を連れて来るなんて聞いてないぞ」

 

「俺はあの人が見たがるだろうと思っただけだ、チャーリー。全部で3頭か。…そんじゃ、1人の代表選手に1頭のドラゴンってわけか。何をするんだ?戦うのか?」

 

「うまく出し抜くだけだ、多分…。酷いことになりかけたら、僕らが傍で控えていて呪文をかけるようになってる。あと、あれも関係がありそうだな」

 

チャーリーとやらは人の頭くらいの大きさの卵を指さした。

出し抜くということは、ドラゴンと戦うわけではないのかもしれない。

 

物音がしたので振り返ると、カルカロフが木陰に隠れてドラゴンを見上げているのが目に入った。

恐らくハグリッドとマクシームの巨体を目撃して後を付けたのだろう。

奴はクラムにドラゴンの事を教えるだろうし、マクシームも自分の生徒に同じことをする筈だ。

これで全ての代表選手が第一の課題の内容を事前に知ることになる。

「未知なるものに直面した時の勇気と対応力を試す」課題だった筈だが、身内贔屓の大人たちのせいで台無しだな。

 

 

「素晴らしい情報だ。感謝するぞ大蛇」

 

大蛇の頭を撫でてやったが、奴はわしに目もくれずに倒れているドラゴンを睨んでいた。

強力な魔法生物と出会ったことで野生の本能を思い出したのだろうか。

わしは急いでその場から離れ、大蛇を禁じられた森に離して狩りをさせ落ち着かせることにした。

嬉しそうに鼠や蛙を捕まえてなぶり殺しにする大蛇を見て、たまにはストレス解消の為に外に出すことを決めた。

籠に閉じ込めたままにしていたらわしが殺されそうだ。

 

ドラゴンは確かに強力な生物だろう。

だが、わしはそれ以上に凶悪な力を持つバジリスクと戦って従えたのだ。

恐れることは無い。

そう自分に言い聞かせながら、寒空の中を城へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「ドラゴンだって!?」

 

「ああ。倒せってわけではないと思うがな」

 

「…信じられないな。魔法省も随分と思い切ったものだ」

 

翌日、わしは欲求の部屋の前の廊下にドラコを呼び出した。

大蛇と会話ができることは上手く隠しながら昨晩の事を伝えると、ドラコはぽかんと口を開けた。

この反応を見る限り、多くの魔法使いにとってドラゴンと対峙するなど考えたくもないことなのだろう。

 

「試合は火曜日に行われる。時間がない…。練習に協力してくれるか?」

 

「…ああ。勿論だ」

 

ドラコがショックから立ち直ったのを確認してから、「ドラゴンと戦う、または出し抜く為の練習が必要だ」と念じながら3回ほど壁の前を往復する。

部屋に入って「ドラゴンと戦った男たち」「ドラゴンを愛しすぎる男たち」などといったドラゴン関連の本を読み始める。

 

「…やはり、結膜炎の呪いが有効かもしれないな」

 

「ああ。だが、余りダメージを与えすぎると逆上して暴れ出す可能性もある」

 

「動き回るドラゴンの目に呪文を当てるのは相当のコントロールが必要になるしな。…じゃあ、何かで注意を惹くというのはどうだ?」

 

「それ、良いな。採用だ。…それに、ドラゴンを相手にチンタラ走っていたらあっという間に餌食だ。なら…」

 

「でも、競技場には杖しか持ち込んじゃいけないんだろ?…そうか、あの呪文を使えば!」

 

本を読みながらドラゴンの対策を話し合ったあとは、ドラコを仮想ドラゴンとして戦ってみた。

高い技量を持つドラコとの練習は有意義なもので、中々の満足感を得た。

次は城の外に出て銀の矢で宙を飛び回り、ドラコとボールをパスし合いながら空を飛ぶ感覚を取り戻した。

 

 

 

 

11月24日は見事な晴天で、絶好の対抗試合日和だった。

生徒達は午後に行われる試合のことで頭が一杯で授業中も上の空だった。

午前の授業がが終わるとスネイプが迎えに来たので、ドラコ達の激励の言葉に応えて歩き出す。

 

「今日行われる課題は非常に危険な内容だ。…貴様がどこまでやれるのか、見せて貰おうか」

 

テントまでたどり着くと、スネイプは激励とも挑発ともとれる言葉を残して去っていった。

テントの中に入ると、少し青ざめた表情を浮かべたデラクールと、ムッツリした顔で壁に寄りかかるクラムの姿があった。

椅子に座って待つこと数分、バグマンが場違いなほど陽気な態度で現れてルールの説明を始めた。

 

「さあ!まもなく試合開始だ!諸君、楽にしたまえ!諸君らは小さな模型を選び取り、その相手と…アー、競技を行う!諸君の課題は、ドラゴンから金の卵を奪い取る事だ!」

 

バグマンの雑な解説の後はデラクール、わし、クラムの順で袋からドラゴンの模型を選び取る。

わしは1番のスウェーデン・ショート・スナウト種を引き当てた。

 

バグマンの案内に従い、杖を手で弄びながら競技場に入る。

魔法で作り出された観客席から何百何千という目がわしを見ている。

興奮と期待の混じった表情1つ1つがハッキリと見え、ダフネやルーナの顔も容易に見つけることができた。

不思議と心は落ち着いていた。

 

『さあご来場の皆さま、お待たせしました!これより対抗試合第一の課題、ドラゴンとの対決が行われます!競技者はドラゴンを出し抜いて卵を奪い取ればクリアとなります!』

 

わしの眼前には青みがかったドラゴンが興奮した表情で構えていた。

今は獲物を前に昂っているので凶悪な印象を受けるが、落ち着いている時は美しい姿なのだろうと想像できた。

 

『それでは、試合開始ィィ!』

 

バグマンの合図よりも一瞬早くドラゴンは突進してきた。

巨大な前足で踏みつぶそうとするのをバックステップで回避し、卵の位置を確認する。

単純な距離は15メートル程だが、ドラゴンが卵を護ろうとするのを考慮すると倍以上の距離はあると想定した方が良いだろう。

鋭い鉤爪がわしの傍の岩を粉々に破壊し、観客が悲鳴を上げる。

このまま暴れられては厄介なので少し惑わせてやろう。

 

「エイビス(鳥よ)」

 

わしが呪文を唱えると杖先からカラフルな鳥達が現れ、ドラゴンはわしから数秒の間目を放した。

それは2つの呪文を唱えるのに十分な時間だった。

 

「サーペンソーティア!(ヘビよ出よ) エンゴージオ!(肥大せよ)…少し時間を稼いでくれ」

 

蛇を出す呪文が得意なドラコにアドバイスをもらい、毒蛇を出すことに成功した。

強固な防御力を誇るドラゴンに蛇の毒が通じるかは分からないが、痺れでもしてくれれば有利に戦うことができる。

わしの呪文を受け、20センチ程度だった蛇は3メートルほどの大きさになり、小声で発せられた蛇語に頷いてドラゴンを睨みつけた。

突如現れた巨大な蛇を脅威とみたのか、ドラゴンはわしから視線を逸らし地響きを立てて蛇に向かって駆け出した。

その隙にドラゴンの背後に回り、「アクシオ」で銀の矢を呼び寄せる。

競技場の隅にドラコが箒を持ってスタンバイしているので、5秒もせずに手元に目的の物がわしの手に収まった。

 

『上手い作戦です!ドラゴンはミスター・ヒトミから蛇へと標的を変えました!…あーっと!彼が呼び寄せたのは箒か!?』

 

ドラゴンの動きに注意しながら箒に跨り、地面を蹴って卵に向かう。

母の本能か、ドラゴンは卵に迫る危機に気づいてわしに向き直る。

ドラゴンは蛇の抵抗で少しダメージを負っているのか、足に噛みつかれた跡があり、動きが鈍くなっている。

だがその代償は大きかったようで、蛇はドラゴンの攻撃を受けて傷だらけになっており、息も絶え絶えだった。

わしは蛇に内心で感謝の言葉を送った。

 

怒りの声を上げながら吐き出された炎を急上昇をかけて回避し、炎が直撃すると思われる位置に「プロテゴ・トタラム」の呪文を放つ。

プリンスの教科書を読んだ事で格段に強化された守りの呪文は、ドラゴンの攻撃を受けても消えることはなかった。

ドラゴンを前にプロテゴの防御力が通じるかを確かめるほど、わしには余裕があった。

次の攻撃が繰り出される前に再び銀の矢を加速させて卵に近づき、右手で箒を掴みながら左手で卵を拾い、ついでに蛇を縮小呪文で縮めて「アクシオ」で手元に引き寄せる。

鋭い爪が迫るのを避けながら宙に舞い上がりその場を離れた。

背後を振り向くと、ドラゴン使い達が怒り狂うドラゴンを懸命に静めているのが見えた。

 

「ご苦労だったな…。感謝する。ヴィペラ・イヴァネスカ(蛇よ、消えよ)」

 

蛇語で感謝の意を伝えると、蛇は血で塗れた瞳でわしを見上げながら頷いた。

蛇は呪文で消滅したが、その体温や流れ出た血はわしの手にしっかりと残っていた。

七色の鳥たちも消滅させようと思ったが、奴らは競技場の外に羽ばたいて行ってしまったようだ。

 

大歓声を浴びながらゆっくりと地上に降りる。

わしは怪我などしていなかったが、マダム・ポンフリーに強引に第2テントまで引っ張られて診察を受けた。

 

「無傷だったのは奇跡です!ドラゴンの攻撃は一撃当たっただけで致命傷になるケースも多いのに…あんな危険な生物を持ち込んで!」

 

魔法省や競技開催者への不満を口にしながらの診察も終わり、異常なしと判断を下されてテントの外に出ることが許された。

歓声を心地よく聞きながら手ごろな椅子に座って審査員が魔法で点数を浮かべるのを待つ。

多くの審査員は9点か10点をくれたが、カルカロフは5点しかくれなかったので、わしの点数の合計は44点となった。

少々不吉な数字だが、わしには似合っているかもな。

 

 

 

他の選手の戦いを見ても良いようなので、敵情視察としゃれこむことにした。

デラクールは見事な魅了呪文を使いドラゴンを翻弄したが、卵を取った後に炎をスカートの一部に食らってしまい、中身が見えてしまった。

見てはいけない物を見た気分になり、退場する彼女を顔を赤らめながら見送った。

最後はクラムだ。

今大会の大本命の彼は、ドラゴンの目元に結膜炎の呪いを見事に直撃させる大活躍を見せた。

だが、強烈な痛みからドラゴンが暴れ出して卵が半分壊されてしまっていたので減点されていた。

3人の選手の点数が発表され、現在わしが1位でクラムが2位、デラクールが3位だった。

 

テントに向かう途中で2人のライバルと出会い、わしが高得点を取ったことを賞賛された。

 

「君ヴぁ一番になったな。…だが、次は負けない」

 

「信じらーれませーん。貴方はどんなやり方で卵を取ったのでーすか?」

 

「それを素直に喋るほどわしは甘くはない。貴様も見事な魅了呪文だったな。ドラゴンに呪文は効きづらいと思っていたが…」

 

フラーは自信に満ちた笑顔を見せた。

 

「誰かを魅了するのは得意なのでーす。ミスター・クラムも良く動き回るドラゴンの目に呪文を当てられまーしたね」

 

「スニッチを取るのに比べれヴぁ楽なものだ」

 

同じ敵に立ち向かった連帯感からか、わしら3人は互いを称え合った。

テントに入るとバグマンがウキウキとした表情でわし等の活躍を褒め、次の課題の事を話した。

第2の課題は2月24日に行われることと、今日手に入れた卵にヒントが隠されていることが発表された。

バグマンから解散が言い渡され、クラムやデラクールと別れて観客席の傍でドラコと合流する。

 

「やったな、ハクドウシ!素晴らしいプレーだったぞ」

 

「ああ。貴様のお陰だ」

 

ドラコとハイタッチを交わし、ドラゴンとの闘いの事を話しながら寮へと向かった。

わしの心は達成感と充実感で満たされていた。




・10/23 文章を一部修正しました。

・10/23 誤字報告ありがとうございます。修正しました。

・10/25 ダフネかルーナのどちらをヒロインにするか、活動報告にてアンケートを取ることに決めました。期限は10/27(木)の24:00とします。

・時間になったのでアンケートを締め切ります。ご協力ありがとうございました。
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