【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第49話 ダンスパーティ

1人きりの時に声をかけたかったが、彼女は女友達が多いのでその機会は中々訪れなかった。

わしは暖炉の前で談笑中の彼女に声をかける必要に迫られた。

 

「ダフネ。パートナーは見つかったのか?」

 

「あら…。ふふ、さぁどうかしら」

 

年相応の可愛さと男を試すような色気が混じった目でこちらを見るダフネに少しドキリとする。

らしくもなく緊張して居る自分を感じながら、ゆっくりと口を開く。

 

「一緒にパーティに行かないか?わしは…ダフネと踊りたい」

 

気づけば、周囲は音を発せられなくする魔法が放たれたように静かになっていた。

さっきまでダフネと話していた女達は興味津々な様子でやり取りを見守っている。

ダフネは頬を赤らめながらも、自分たちが作り出したこの雰囲気を楽しむように目を閉じて十分な間をおいてから答えた。

 

「…分かりましたわ。ハクドウシ。そのお誘い、喜んでお受けします」

 

「あ、ああ。受けてくれて感謝する。当日はよろしくな」

 

「ふふ、その日が待ち遠しいですわね」

 

幸せそうな笑顔を浮かべるダフネに何人かの男子生徒が目を奪われた。

彼女は何人かの女子から嫉妬の視線を送られながらも、それを楽しむように堂々としていた。

 

「ストレートで鮮やかな誘い方だったな。君らしい」

 

「…うるさい」

 

ドラコに冷やかすように脇腹を小突かれ、わしは宿題で忙しいふりをして部屋に戻った。

 

 

 

 

 

「わたーしと、ダンス・パーティに行きまーせんか?素敵な夜を過ごしまーしょう」

 

ダフネを誘ってから数日たったある日。

昼食の時間に、大広間の入り口でデラクールに声をかけられた。

太陽の光がシルバーブロンドの髪を照らし、彼女全体が輝いているような印象を受けた。

傍で食事をしていたハッフルパフの男子が彼女に見とれてオートミールをポロポロ落としている。

 

「ディゴリーに断られたのか?」

 

「…違いまーす。わたーしが、断ったのでーす」

 

「そうか。…先約があるので、すまないな。断らせてもらう」

 

近くを通りかかったウィーズリーが信じられないという顔でわし等の顔を見比べる中、デラクールは人生最大の屈辱を受けたという顔でレイブンクローのテーブルに戻っていった。

席に着くと、羨ましがる男子達に囲まれてしまった。

 

「おい、おい…まさかデラクールを振ったのか?」

 

「もったいない。俺だったら即受けなのによ」

 

「奴と踊るよりもダフネと踊った方が楽しいだろうからな」

 

それは紛れもない本心だった。

デラクールが稀に見る美しさを誇るのは多くの生徒が認めるところではあるだろうが、ダフネは彼女とは違った魅力を持った美少女だ。

3年間の付き合いがあるので話しやすいし、それに…。

それ以上はどう言葉にすれば良いか分からず、思考を一時中断する。

 

わしの言葉を聞き、パーキンソン達とお喋りしていたダフネが嬉しそうにウインクを送って来た。

手を振ってウインクに応え、ポークチョップを皿によそっていると、やけに浮かれた様子のドラコが隣に座った。

 

「やあ。ハクドウシ。今日も良い日だな…ン?そうだろ?」

 

「あ、ああ…そうだな。良い日だ」

 

「午後は呪文学だ。昨日復習するのを忘れたから当てられたら困るな…ハハハ」

 

「そう、か…。何かあったのか?」

 

ドラコはその質問を待っていたとばかりに金髪を撫でつけ、勿体ぶりながら答えた。

 

「知りたいかい、ン~…仕方ない、教えてあげよう。……僕は、アステリア嬢をダンスパーティに申し込んだ」

 

「ほう…やったな」

 

「彼女も相応に僕を思ってくれているようでね。OKしてくれたよ。あの時の彼女の可愛さは言葉では言い表せないなぁ…」

 

「おめでとう。クリスマスが楽しみだな」

 

「ちょ、ちょっとドラコ、それ本当なの!何であの小娘に…」

 

ドラコは今初めてパーキンソンの存在に気づいたようだ。

ヒステリックに喚き散らす彼女にアタフタするドラコの様子は、中々面白いものだった。

 

「た、助けてくれハクドウシ!」

 

「グッドラックだ、ドラコ」

 

「そんな薄情な!」

 

「私とあの小娘、どっちが大事なのよ!」

 

「先輩から離れて下さい!ドラコ先輩は私を誘ってくださったんですわ!私を好いてくださっているのです」

 

遅れてやって来たアステリアも加わり、スリザリンのテーブルは大混乱に陥った。

他の寮の生徒が見物に来る中、羞恥心でパニックになったドラコが顔を真っ赤に染めて叫んだ。

 

「僕はアステリアが好きなんだ!君じゃない!」

 

「そ、そんなっ…ドラコ…」

 

パーキンソンは死刑宣告を受けた囚人のように蒼白になり、泣きながら廊下へ駆けて行った。

 

「ドラコ先輩…そんなに私のことを…」

 

嬉しそうに寄り添うアステリアの肩を抱きながら疲れ切った顔のドラコ。

他寮の生徒達が今の出来事を楽しそうに話しながら去っていくのを横目に、わしはコップにオレンジジュースを注いでドラコに差し出してやった。

 

「よく言ったなドラコ。お疲れ様」

 

「君が高みの見物を決め込んだ事、忘れないからな…」

 

 

翌日、わしとドラコは欲求の部屋の前に居た。

 

「どうしたんだ?こんな所に呼び出して」

 

「ハクドウシ。君はパーティに慣れていない。そうだろ?」

 

「まあな」

 

「僕は父上に幼いころからマナーを教えられたし、実際に多くのパーティに出席している。ダンスの経験も当然ある。代表選手の君は最初に踊ることになるんだろう?恥をかかないように僕がレクチャーしてあげるよ」

 

作ったような笑顔のドラコに少々不穏な気配を感じたが、ダンスに不安があったのは事実なので彼の提案を受け入れることにした。

ドラコが壁の前を数度歩き回ると扉が出現し、部屋の中にはダンスホールが用意されていた。

どこからか美しい曲が流れ出し、ドラコの地獄の特訓が始まった。

 

「違う!この曲はもっと早くターンをしないと、全体のバランスが崩れてしまう…。そこはもっと優雅に動け!」

 

「わ、分かった。こうか?」

 

「それだと早すぎる!もう一度だ」

 

ドラコをダフネに見立ててダンスの特訓を行ったが、何度も足を踏まれてしまった。

ダンス経験豊富な彼がこんなミスをするとは思えないし…昨日わしがドラコ達の修羅場をただ見物していたことへの仕返しのつもりか?

ドラコのハードな特訓に懸命について行き、3日間の特訓の末に何とか合格点を貰った。

クラムといい、魔法使いは教える側になると熱血が入るのだろうか。

 

 

 

 

今年の冬休みは例年より多くの生徒が学校に残る事を決め、名簿は生徒の名で一杯になった。

クリスマスが近づくにつれて男子も女子も浮足立っているように感じた。

双子の「カナリア・クリーム」を口にした者は文字通り足が地上から浮いていたが…。

 

そして、クリスマス当日。

大量のプレゼントを開封するのは骨が折れたが、昼過ぎには全ての作業を終えることができた。

12月の魔法薬学の授業で惚れ薬の見分け方を教わったのは大いに役に立った。

送られた食べ物の中にその類のものが幾つかあったからだ。

午後はマダム・フーチの許可を取った上でスリザリン・チームと共に競技場を飛び回った。

クラムから付きっきりで指導を受けたわしの動きは素早く、銀の箒の性能を最大限に引き出した。

夕方ごろに練習は終わり、わし等は寮に引き上げて着替えを始める。

わしはマダム・マルキンから勧められるままに買った薄いグレーのダンス・ローブを身にまとい、少々照れくさくなりながら自分の姿を鏡で見渡した。

 

「…そろそろ行こうか。その、待たせると悪いからな」

 

「ああ」

 

談話室の入り口で待つこと数分、グリーングラス姉妹がわし等の元に歩いてきた。

ダフネの念入りに梳かされた金髪が照明の灯りを受けてキラキラと輝いていた。

所々に芸術的な装飾が施された高級そうなパーティドレスは、彼女の瞳と同じ青色でとてもよく似合っていた。

 

「見事なドレスだな」

 

「…あなたにまともな誉め言葉を期待した私が愚かでしたわ」

 

思わず漏れた照れ隠しにダフネががっくりと肩を落としたので、慌てて誉め言葉を口にする。

シェイクスピアを読み返しておいたので予習は完璧のつもりだが…あんな歯の浮くようなセリフは言えないので素直な言葉を口にした。

 

「…冗談だ。ダフネ、とても綺麗だ」

 

「ありがとう…ハクドウシ。あなたも、素敵ですわ」

 

その言葉にお世辞の色は無く、本心からわしのドレス・ローブ姿を賞賛していることが分かった。

じっと見つめられて気恥ずかしくなったので顔を逸らすと、ドラコ達の様子が目に入って来た。

顔を赤らめながら見つめ合い、ぎこちなく互いを褒め合う姿は初々しかった。

 

「そろそろ行くぞ」

 

「ええ…」

 

差し出された手を握りしめ、大広間に向かう。

示し合わせた訳でも無いのに、わしとダフネの後ろをドラコ・アステリア組を先頭に大量のスリザリン生が二列になってついてきていた。

大広間に近づくまでの間に美しいドレスローブを着た生徒と何度もすれ違ったが、どの女子よりもダフネの方が魅力的に感じた。

 

「代表選手とそのパートナーはこちらへ!」

 

マクゴナガルの手招きに応じ、所定の位置でクラム・グレンジャー組とデラクール・名も知らない上級生組(クィデッチの選手だったか?)と共に待機する。

誘いを断ったことを根に持っているデラクールはわざとらしくそっぽを向いて見せたが、わしは彼女の邪険な態度よりもグレンジャーの変貌ぶりに目を奪われていた。

普段のボサボサな髪は、ツヤツヤと滑らかな光沢をもち頭の後ろで優雅に結い上げられている。

珍しく微笑んでいるその顔を見て、以前より前歯が小さくなっていることに気づいた。

ドラコに歯呪いの呪文をかけられたと記憶しているが、その時に少し長さを弄ったのだろうか。

 

「こんばんは、ハクドウシ!そして、グリーングラスさんだったかしら?」

 

「こ、こんばんは。グレンジャーさん。見違えましたわね」

 

ダフネはグレンジャーの変貌ぶりに調子を崩したようだ。

確かに今のグレンジャーは学年でも上位の美しさだが、ダフネの方が好みだがな。

 

「ヒトミ、ヴぉく1人ならきっと彼女を誘えなかった。ありがとう」

 

「余り役に立てた気はしないが…まぁ、良かったな。今夜はお互い楽しむとしよう」

 

代表選手は生徒達が席に落ち着いてから入場することになっている。

マクゴナガルの合図で大広間に入り、拍手で迎えられながら奥の丸テーブルに向かう。

ダフネは知り合い1人1人に上品に笑いかけ、どこか誇らしげに手を振った。

ダンブルドアを初めとする各校長や審査員が待つテーブルに着くと、金色の皿とメニューが用意されていた。

 

「ポークチョップ」

 

ダンブルドアが金色に輝く皿に料理名を唱えると、上手そうな豚肉料理が出現した。

彼の真似をしてビーフストロガノフを出して味わっていると、クラムとデラクールがそれぞれのパートナーと和やかに会話を楽しんでいるのが目に入った。

デラクールはホグワーツとボーバトンを比べ、自分の母校がどんなに素晴らしいかを語っていた。

…パーティの最中に延々と身内自慢をされても不愉快だろうから、彼女をパートナーにしなくてよかったと心底思う。

クラムは自分の城のことを夢中でグレンジャーに話していたが、カルカロフにそれとなく止められていた。

ダンブルドアがそれとなく止め、「おまる」が大量に用意された部屋の話をしていたが…欲求の部屋のことだろうな。

 

「あの男は秘密主義なようだな」

 

「早くダンスが始まらないかしら。私、妖女シスターズの大ファンですの」

 

「ああ…ドラコにそのバンドの曲を散々聞かされたよ」

 

欲求の部屋での大特訓を思い出し、わしはげっそりとした顔になった。

ダフネはウキウキした様子で妖女シスターズのことを話し始め、わしは相槌をうつだけとなった。

やがて妖女シスターズが入場し、わし等は代表選手として煌々と照らされたダンスフロアに躍り出た。

 

それからはドラコとの特訓の通りに踊るのみ。

スローな物悲しい曲から始まり、速いテンポの曲や行進曲などの様々な音楽が奏でられ、わしとダフネは見事にそれをこなしていった。

体を動かすのは嫌いではないし、彼女と踊っていると思ったよりも発育の良い体が当たるので中々いい気分だった。

数十分の間踊り続け、ダフネが疲れ始めたことに気づき中央のテーブルで休むことにした。

バタービールの栓を抜いて喉を潤すと、ダンスで火照った体がさらに温まるのを感じた。

 

「楽しんでいるか、ダフネ」

 

「ええ、とっても。ハクドウシはダンスがお上手ですのね。私驚きましたわ」

 

「…そうか。それは何よりだ」

 

ドラコとの特訓は無駄ではなかったと言うことか。

食事を楽しみながら、妖女シスターズが奏でる音楽や踊り続ける生徒達の姿を楽しむ。

その心地良い時間は無粋な輩の喧嘩で崩れ去った。

 

「そもそも、この試合は外国の魔法使いと知り合いになって、仲良くなるのが目的のはずよ!」

 

「違うね!勝つことが目的さ!」

 

「何が勝つことが目的よ!あなた、ハクドウシの事を応援してるわけじゃ無いくせに!私がビクトールと踊るのが気に入らないんでしょう!」

 

顔を真っ赤にして罵り合うウィーズリーとグレンジャーの姿は、パーティの参加者達の注目を集めていた。

ダフネが眉を寄せる。

 

「いやですわね、こんな華やかな場で言い争いなんて…。あれはウィーズリー家の子ね。パーティでのマナーをご両親から学ばなかったのかしら」

 

「どうでも良いが…わしの名を出すのはやめてほしいものだ」

 

醜い言い争いを続け、グレンジャーがカンカンになってウィーズリーのテーブルを離れた。

生徒達の関心は妖女シスターズの演奏に移り、何事もなかったかのようにダンスが再開された。

 

「やあ。楽しんでいるか?」

 

「ああ。貴様のお陰でな」

 

ドラコが傍の席に座り、皿に向かってハギスと唱えた。

これは羊の内臓のひき肉にカラスムギ、玉ねぎ、各種スパイスを混ぜ、それを羊の胃袋に詰めたものだ。

わしは少し苦手な料理だが、ドラコはうまそうに食べ始めた。

 

「まったくグリフィンドールは駄目だね。こんなめでたい日に喧嘩など論外だ」

 

「同感ですわ。グレンジャーさんったら、せっかく綺麗にめかし込んだのにあんな短気では台無しですわね。…でも、何を怒ってらしたんでしょう」

 

「ウィーズリーって人が、クラムさんに嫉妬していたんですわ」

 

飲み物を取りに行っていたアステリアが戻って来て、会話に加わった。

 

「ありがとう、アステリア。嫉妬ってどういうことだ?」

 

「私、丁度あの人たちのそばを通りかかって、話を聞いてしまったんです。ウィーズリーさんはきっとグレンジャーさんが好きで、彼女がクラムさんと踊ったのが面白くないんだと思います」

 

ウィーズリーがグレンジャーを好いているとは、意外な展開だな。

 

「本当ですの?アステリア」

 

「間違いありませんお姉さま!女の勘ですわ」

 

「貴方まだ12才じゃありませんこと?当てになるのかしら…」

 

「…いや、僕は信じるよ。アステリアの言うことだからね」

 

「ドラコさん…」

 

格好つけるドラコを嬉しそうに見つめるアステリア。

お熱い事だとパタパタと手で仰ぐ真似をしてみせたが、気づきもしない。

2人だけの世界を構築しているな。

 

「私はダシにされたのでしょうか…」

 

「まぁ気にするなダフネ。もしアステリアの言うことが本当なら、ドラコは奴らをからかうネタを1つ手に入れたことになるな」

 

「うーん…。恋愛沙汰で誰かをからかうのを見るのは、余り良い気分ではありませんわね」

 

 

 

 

メニューを読んでいると、世界各国のあらゆる料理が注文できることに気づく。

屋敷しもべ共には苦労をかけるが、せっかくなので日本の味を楽しむことにした。

 

「寿司」

 

金色の皿に米の上に魚の切り身を置いた奇妙な料理が現れた。

マグルのテレビで東洋の料理特集をしているのを見て以来、気になっていた食べ物だ。

寿司は江戸時代に生み出された料理なので、わしが日本で暴れていた頃は食べたことが無かった。

さてさて、お味を拝見…。

 

「ほう…これは良いな」

 

魚を生で食べるといえばカルパッチョが思い浮かぶが、それとは似て非なる感触だ。

鮮度のいい魚を使っているようで、大トロは口の中でとろけるような味だった。

シャリも程よく艶と噛み応えがあってとても美味…!

 

「…っ!か、辛い…、口の中が熱いっ…!」

 

わしは口元を抑え、ヒィヒィ言いながら飲み物を口に運んだ。

少しはマシになったが、何だあの未知の感覚は…。

気づけばドラコ達が驚いた様子でわしを見ていたので、醜態を晒したことを恥じて俯く。

 

「これは何だ?見慣れない料理だな…。ウン、中々旨…うぅぅっ…」

 

わしの皿から寿司を摘まんだドラコは、同じように悶絶することになった。

ダフネとアステリアが警戒心の混じった視線で未知の食べ物を見つめている。

 

「だ、大丈夫ですの?」

 

「ああ…。は、初めはうまかったんだが、急に辛くなって…」

 

「ははは。これはワサビという香辛料だよ」

 

傍を通りかかったディゴリーが得意げに教えてくれた。

…ダフネよ、ディゴリーのドレス・ローブ姿がモデルの様に凛々しいのは認めるが、わしが傍に居るのに見とれるのは失礼じゃないか?

彼はフォークで器用に魚の切り身を米から離し、米の上に緑色のクリーム状の物体が載っているのを見せた。

 

「僕の父はアーサー・ウィーズリー氏と知り合いでね。マグル贔屓の彼の勧めで、日本食レストランで食事をしたことがあるんだ。僕はこれが結構気に入ったんだけど、苦手な人も多いみたいだな」

 

「ワサビを取って食べるのをオススメするわ。とっても美味しいわよ」

 

ディゴリーとチャンは仲良く腕を組んでとても幸せそうに笑い合い、良い夜を、と手を振って去っていった。

彼らの勧めに従ってワサビとやらをはがして食べ始めると、苦みが消えてわし好みの味となっていた。

 

「これはイケるな」

 

「ええ、カルパッチョとはまた違うんですのね。東洋の人は面白い発想をなさるのですわね」

 

わし等はテーブルを囲みながら寿司に舌鼓を打った。

皿の隅に盛られたワサビの山を見て、悪知恵が頭をよぎった。

 

「ハクドウシ?それをどうするんですの?」

 

「まぁ見て居ろ」

 

わしは浮遊呪文でワサビの塊を浮かせ、遠くでグリフィンドール・チームのチェイサーと踊っていた双子の片割れに狙いを定める。

 

「この間のクリームの仕返しだ」

 

見事命中。

ワサビは丁度何かを話しかけていた双子の口の中に入り、七転八倒させることに成功した。

わしはドラコ達と顔を見合わせて大いに笑ってやった。

この数日後、双子が「ワサビ・クリーム」を売り出してホグワーツの生徒を悶絶させるのはまた別の話だ。

わしもワサビ・クリームを使った食べ物を食べて再びあの苦みを味わう羽目になった…くそ。

 

 

妖女シスターズがアップテンポの激しい曲を演奏し始めると、ダフネが目を輝かせた。

 

「あら…。私、この曲好きなんですの」

 

「踊るか。この曲はまだ練習していないんだ。教えてくれるか?」

 

「ええ、喜んで!さぁ行きましょう!」

 

わしの腕を引いて元気にダンスホールに向かうダフネ。

楽しいダンスの時間は真夜中まで続いた。

女子寮に向かうダフネが急に振り向き、駆け寄って来た。

 

「してくれないんですの?」

 

「何をだ?」

 

「…もう良いですわ」

 

不服そうな彼女を見てある考えが浮かび、肩を優しく掴んで頬に口づけを落とした。

ダフネは幸せそうにニッコリと微笑んで、ウキウキした足取りで階段を上っていった。

わしは自分のした行動に驚き、ただ立ち尽くしていた。

 

部屋に戻ってから、わしとドラコは無言で寝間着に着替え、お休みを言って布団に入った。

ダンスホールでのダフネの表情一つ一つが頭に浮かんで、どうも落ち着かない気分だった。

それでも、沢山踊ったことで疲れて居た体は睡眠欲に負けてゆっくりと夢の中に落ちていった。




・10/31 文章を一部修正しました。

・11/01 誤字報告ありがとうございます。修正しました。

・11/02 誤字報告ありがとうございます。修正しました。
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