【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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※前半ハリー視点、後半白童子視点


第51話 シリウスの懸念

『ハリー視点』

 

「このチョコ菓子は中々イケるぞ、食べてみろ」

 

「あら、本当。美味しいですわね」

 

「これは買いだな…。次は変わった味のコーナーに行ってみないか?あそこでも新作の菓子の試食をやっているそうだ」

 

「貴方って意外と甘いものが好きなのですわね。あまり急かさないでくださいな」

 

ハニーデュークスでお菓子を物色していると聞きなれた話し声が聞こえた。

スリザリンのハクドウシ・ヒトミと…確か、グリーングラスという姓の女子だ。

美男美女の2人は混雑した店内でもとても目立っている。

ダンスパーティでペアを組んでいたので恋人説も流れているが、彼らは否定も肯定もしていない。

 

「あの2人ってやっぱり付き合ってるのかしら?ハクドウシって普段はマルフォイ達と一緒なのに、今日は2人きりだし」

 

「チッ、フラーにキスされて今度は別の子か。良い気なもんだよ」

 

ハーマイオニーの呟きにロンが毒づいた。

フラーに憧れているロンはいまだに第二の課題直後の出来事を許せていないようだ。

 

「そろそろ約束の時間だよ。行こう」

 

ホグズミードを楽しんでいると、あっという間にシリウスとの約束の時間になった。

ハニーデュークスを抜け出し、スルリと現れた黒い犬の先導に従って険しい岩道を歩くこと30分、やっと人気のない場所に辿り付いた。

人の姿に戻ったシリウスは逃亡生活のせいでやつれて髭も伸び放題だった。

 

「鼠ばかり食べて生きていたよ。ホグズミードから盗んでばかりだと騒ぎになるからね」

 

僕らが持ってきた食べ物に被りつきながらニッコリと笑うシリウスを見て悲しい気分になった。

ダーズリー一家に閉じ込められていたので、空腹の辛さは痛いほど分かる。

暫くの間シリウスは無言で食べ物にかぶり付いていたけど、思い出したように顔をあげた。

 

「鼠といえば…。ワームテールが逃げたあの夜、俺は1匹の怪しい動きをする鼠を仕留めたんだ。ワームテールだと思ってね。…でも、違った」

 

「鼠…?」

 

「ああ。後から思い返せば、あの鼠は明らかに俺たちの事を尾行していた。…鼠を使って誰かを嗅ぎまわろうとする奴に心当たりはあるか?」

 

僕らの中で一番に答えを出したのはハーマイオニーだった。

 

「…ハクドウシよ!ほら、秘密の部屋の継承者を探して、スリザリンに潜り込んだ時!」

 

ハーマイオニーの言葉で僕とロンも正解に辿り付いた。

2年生の時、僕らはマルフォイやヒトミが継承者である証拠を探す為にポリジュース薬を使ってスリザリン寮に忍び込んだ。

その時、マルフォイがヒトミが鼠を飼っていることを言っていたような気がする。

そんなことを覚えていたハーマイオニーの記憶力に改めて感心する。

 

「そのハクドウシって奴はホグワーツの代表選手だな?新聞に書いてあった。…どんな奴だ?」

 

「どんな…って言われても…」

 

「よく分かんない奴ってのが本音かな…」

 

1年生の時は飛行訓練の魔法での妨害や夜中の決闘など、僕を不愉快にさせることばかりしてきたのでマルフォイと同じくらい嫌な奴だと思っていた。

今は2年生の時に秘密の部屋で共闘したこともあってそこまで嫌いではない。

クィデッチでは敵チームだけど、ポジションも違うしスリザリンとは2勝1敗なので遺恨もない。

 

知る限りのヒトミに関する情報を話すと、シリウスは興味深そうに何度も頷いていた。

 

「あいつさ、フラーの誘いを断ったくせにキスされてたんだぜ。それにルールを破って代表選手になっていい気になってるし…ムカツク奴だよ!」

 

「貴方、ジニーを助けてもらっておいてよくそんなことが言えるわね…」

 

「それとこれとは話が別さ!」

 

ヒトミの悪口を吹き込もうとするロンを尻目に気になったことを尋ねる。

 

「シリウスは…あの夜の鼠が、ヒトミのペットだと思っているの?あいつが差し向けたと」

 

「…かもしれない。その子は賢者の石や秘密の部屋の騒動にも関わっていたんだろう?かなりの推理力と行動力があるのは間違いない。ドラコ・マルフォイは、ハクドウシが動物と意思の疎通ができると考えた…。その推測が正しければ、ペットを偵察に出す、というのは十分に考えられる」

 

「あいつが鼠でスパイしてたなら、1年の時や2年の時に都合よく現れたのも説明がつくよ!僕らの行動を嗅ぎまわってたんだ!」

 

やっぱり嫌な奴、という風にロンが大きく頷いた。

 

「ハクドウシが鼠で僕たちをスパイしていたとして、今もそうなのかな?」

 

「いや、今俺たちの周りに鼠らしき気配は感じない。…俺が殺したのがハクドウシの鼠なら、奴は手駒を失ったことになるな」

 

「…シリウスはハクドウシを疑っているの?」

 

僕らの中では比較的ヒトミと親しいハーマイオニーが辛そうな顔で尋ねる。

シリウスは迷うように腕を組んだ後、神経質に周囲を見渡した。

 

「……彼に姉が居ることを知っているか?」

 

「ワールドカップの時に死喰い人からマグルの一家を助けた人よね?」

 

「ああ。そしてクラウチjrの生存を明らかにした…。彼女が何故クラウチの息子が生きていることを知ったのか、俺はずっとそれが気になっていた」

 

「確か、カグラ・ヒトミさんだったかしら?」

 

「確かそんな名前だったっけ。ハーマイオニー、よく覚えてたな」

 

「ウィンキーへの態度で頭に来たからクラウチの記事を読んでおいたの。でもあの新聞ったら、クラウチの息子の生存ばっかりで、ウィンキーへの酷い扱いには一切触れてなかったのよ!」

 

「ハーマイオニー、今はその話は良いよ!」

 

今年に入ってからハーマイオニーは屋敷しもべ妖精に取りつかれている。

ちなみに、ハーマイオニーはヒトミをSPEWに勧誘していないようだ。

理由を聞いてみると、「あの人って屋敷しもべ妖精の現状を肯定しそうだからよ。『無給で人間の為に働いてくれるなら結構じゃないか』とか言いそうじゃない?」と答えていた。

 

「…そのカグラ・ヒトミだが、以前は魔法省であちこちの部署で働いていたそうなのに、今年になって長期の休暇を取ったらしいんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「ああ。ホグズミードでゴミ箱を漁ってるとき、飲みに来ていた魔法省の職員が話していた。クラウチの件で金一封を貰ったからバカンスにでも行ったんじゃないかってな。そして、9月の頭くらいからカゲワキ・ヒトミも行方不明になっているんだ」

 

シリウスの話によると、カゲワキというヒトミの父親は相当なワルらしい。

汚職をしている人や元死喰い人を脅迫して金銭をかすめ取り、相当怨みをかっているようだ。

僕らはヒトミの父親がそんな奴だなんて知らなかったので驚いて顔を見合わせた。

 

「最近死喰い人の動きが活発になっていることも気になる…。こじつけかもしれないが、私はヒトミ一家が絡んでいると考えているんだ。確証はまだないけどな。とにかく、あの一家には気を付けろ」

 

勿論マルフォイ一家や死喰い人にもな、とシリウスは締めくくった。

 

 

 

「さっきのシリウスの話、どう思う?」

 

フレッドとジョージが新しい悪戯道具を開発したらしく、談話室の中央で皆が騒いでいる。

これなら僕らの会話を盗み聞きされる心配はない。

呪文学の宿題をしている振りをしながら、僕は今日のことを切り出した。

 

「そうね…。鼠でスパイしてたっていうのは本当かもしれないわね。それを知ると、ちょっと彼に不信感はもってしまうけど…」

 

「ハーマイオニーはアイツの味方、か?諦めろよ。アイツはスリザリンの女子とよろしくやってるさ。フラーも居るしな」

 

「そういう意味で言ったんじゃないわ。私は友達として彼を疑いたくないだけよ。貴方、ダンスパーティの時も思ったけど、少し男らしくないわよ!」

 

「僕のどこが男らしくないって?」

 

ロンが顔を赤くして立ち上がり、興奮した口調で自分の推理を話し始めた。

 

「…あいつの親ってマルフォイの父親と仲が悪かったよな。ほら、ワールドカップの時に険悪そうだった。マルフォイの親は元死喰い人!脅迫してたなら仲が悪いわけだよ…。それに、パパもヒトミの親を見て嫌そうにしてた!」

 

「…確かに。それだけ材料が揃ってれば、シリウスの言うようにヒトミの親が悪党ってのは間違いなさそうだね」

 

「でも、彼のお姉さんは?シリウスは死喰い人の動きが活発になってると言ったけど、元死喰い人のクラウチjrを捕まえたのはカグラって人よ。彼女が死喰い人と関わりがあったならそんな事はしないわ」

 

「…あの家族も一枚岩じゃないってことかな。ダンブルドアはどう思ってるんだろう…」

 

話し合った末、僕らの中ではヒトミの父親は黒でカグラはグレーという結論に至った。

ヒトミは鼠で僕らのことをスパイしたりと怪しい所が多いけど、今は対抗試合で忙しい筈なので余り無茶はしないだろう。

 

フレッドが悪戯グッズで皆を沸かせるのをぼんやりと見つめながら考える。

僕としてはヒトミよりもマルフォイが悪人であった方がうれしい。

リータ・スキーターの記事を片手にからかってきたり、決闘で僕らを医務室送りにしたことを思い出すと腹が煮えくり返りそうになる。

次は絶対勝つために空き教室で特訓してるけど、このままでは追い付けないかもしれない。

同い年のヒトミが対抗試合で活躍していることもあり、僕は焦り始めていた。

 

 

その日の夜、僕はチョウ・チャンとディゴリーがキスしてる夢を見て飛び起きた。

ダンスパーティの誘いをチョウに断られてから何度も見た悪夢だ。

僕は忍びの地図を手に取って例の言葉を言い、ホグワーツの地図を出現させる。

あの夢のせいで寝られそうにないし、退屈しのぎに今皆が何をしようか見てみようと思ったのだ。

すると、ハクドウシ・ヒトミの文字が8階の廊下をうろうろしたあとで突然地図から消えた。

昼間のシリウスとの会話からヒトミを怪しいと思い始めていた僕は、透明マントを手に8階の廊下に向かった。

あいつが何をしているのか突き止めてやろう。

 

「ここか…8階の廊下…。やっぱり誰も居ないな」

 

どうしても気になり、透明マントで姿を隠しながら彼が消えた廊下で待つこと数十分。

壁に突如現れた扉からヒトミが出てきて、悠々とスリザリン寮に戻っていった。

後には呆然と佇む僕だけが残された。

 

 

 

「これ、本当にただの壁だぜ。なぁハリー…見間違えじゃないか?」

 

「確かにここだよ…。どうやったら開くんだろう?」

 

翌日、8階の例の廊下でロン達と壁を調べてみたが何も起こらない。

諦めかけて帰りかけたところでドビーが現れた。

 

「ハリー・ポッターはそこで何をしているのですか?」

 

僕が代表して昨夜のことを話すと、彼は役に立てることが嬉しいという表情で答えた。

 

「それはきっと『必要の部屋』です!屋敷しもべ妖精の間でそう言われているのです!何かが欲しいと思った時にだけ現れる部屋なのです!」

 

試しに「決闘の練習ができる部屋が欲しい」と念じると広い部屋が現れた。

決闘用の人形や呪文集もあり、練習にはもってこいだ。

 

「この部屋はホグワーツの歴史には書いてなかったわ…。最近作られたのかしら?」

 

「マルフォイもこの部屋のこと知ってるのかな」

 

「だからアイツあんなに強かったんだ。僕らも負けてられないぜ」

 

ドビーに心からのお礼を言うと彼は恐縮しきっていた。

その日から僕らは決意を新たに必要の部屋で呪文の猛練習を始めた。

待ってろよマルフォイ…今度スキーターの記事でからかって来たら強力な呪いを喰らわせてやる。

 

 

 

 

 

『白童子視点』

 

魔法薬学の授業中にスネイプに隠れてドラコに耳打ちする。

 

「欲求の部屋のことがポッター達にバレたらしいな」

 

「何だって…!?」

 

「大声を出すな…。昨日の深夜に欲求の部屋で特訓をしていると、外に人の気配を感じたんだ。コソコソ人を嗅ぎまわるのが大好きなポッターだとすぐにわかった」

 

昨夜の晩に気配に気づいたわしは、一度部屋を出たあと寮に戻る振りをして奴の様子を観察した。

何もない空間からポッターが出てきて、マントを片手に不思議そうに壁を弄っているのを見ると、恐らく部屋のことはバレただろう。

 

「あいつらに知られてしまったのか…。どうする?」

 

「放っておくしかないんじゃないか?鉢合わせしそうになったら、あっちが避けてくれるだろう」

 

肩を竦めるわしをジト目で睨むドラコ。

「君のせいでバレたのに何を呑気にしているんだ」とでも言いたげだな。

 

去年のスネイプの研究室での出来事やペティグリューの記憶から推測するに、ポッターが持つ忍びの地図というアイテムは学校内に居る者の名前と場所が分かるようだ。

わしやドラコが定期的に8階の廊下で不審な動きをしているとバレるのは時間の問題だった。

だが、奴らが欲求の部屋を見つけるのはわしにとって歓迎すべき事態だ。

奴らは正義感が強いので、時がくれば闇の勢力に立ち向かうだろうと推測できる。

ならば奴らには強くなって貰わなければならない。

わしが駒として利用するにしても、闇の勢力を倒してもらうにしてもな…。

ドラコに3人纏めて負けるレベルでは力不足だ。

 

「ま、奴らが欲求の部屋をどう扱うかお手並み拝見と行こうじゃないか」

 

「君って奴は…でも、確かにそうだな。僕らばかり有利な条件じゃつまらない。これで対等だ」

 

余裕の表情を浮かべるわしを見て、ドラコは苦笑交じりに強気なセリフを吐いた。

そういえば忍びの地図の製作にはペティグリューも関わっていた筈。

奴の記憶から製作方法を読み取って忍びの地図の改訂版を作るのも面白いかもしれない。

あの4人の中で最も格下だったペティグリューは詳しいやり方を知らない可能性もあるので、余り期待はしない方が良いかもしれないがな。

 

 

 

イースター休暇はあっという間に過ぎ去った。

ドラコやダフネと第三の課題を予想したり、ルーナとザ・クィブラーの話をするのは楽しかった。

ダフネはホグズミードでのデートでわしのことを許してくれたようで一安心だ。

休暇が終わると山の様な宿題が出たので、生徒達は悲鳴をあげながら宿題に取り掛かった。

そんな平穏な日々を送っていると、5月の最後の週にスネイプから呼び出された。

 

「今夜の9時に競技場に行け。そこで第三の課題が発表される」

 

ついにこの時が来たか。

夕食を終え、微かな高揚感を胸に抱きながら競技場に向かう。

グラウンドには作られ始めたばかりの生け垣があり、既に2人の代表選手が揃っていた。

わしの到着に気づいたデラクールはニッコリと笑いかけ、クラムも表情を微かに和らげた。

少し遅れてバグマンが現れ、元気な声を出した。

 

「よく来た、代表選手諸君!あと1月もすればハグリッドが高さ6メートルほどに育ててくれる筈だ!さて…私たちがここに何を作っているか、分かるかね?」

 

「迷路、か」

 

「そのとおり!迷路だ。第三の課題は極めて明快!迷路の中心に優勝杯が置かれ、最初にそれに触れたものが優勝者となる!」

 

「迷路をあやく抜けるだーけですが?」

 

「障害物がある。ハグリッドが用意した色んな生き物や、呪いを破る必要がある…。これまでの成績でリードした選手からスタートとなる」

 

現在1位のわしが初めに迷路に入り、次にクラム、最後にデラクールというわけか。

1番にスタートを切れる分有利ではあるが油断は出来なさそうだ。

ハグリッドが魔法生物を用意すると聞いて少しげんなりした気分になる。

まずスクリュートは確定だろうが、わしの知らない危険な生物も居るかもしれないな…。

 

バグマンが解散の号令をかけると、わし等は城に向かって無言で歩き出した。

その沈黙を破ったのはデラクールだった。

 

「泣いても、笑ってーも…次が最後でーすね」

 

「そうだな」

 

普段よりトーンの低い声から彼女の真剣さが伝わって来た。

やがてクラムも決意を込めた声を出す。

 

「…ヴぉくは勝つ。必ずな」

 

「いや、勝つのはわしだ」

 

「わたーしです」

 

静かに睨み合うわし等の視線には敵意ではなく爽やかなライバル心が込められている。

やがて、わし等は無言で歩き出す。

クラムは船に、デラクールは馬車に、そしてわしはスリザリン寮に。

代表選手たちはそれぞれの居場所に戻り、決戦の日まで羽根を休めるのであった。




・11/07 文章を一部修正しました。
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