【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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最終話 白童子

 

ダンブルドアとヴォルデモートの死から数日後。

わしとドラコとスネイプの3人は魔法省主催の式典に出席していた。

魔法省での戦いではベラトリックス・レストレンジの手によって多くの死者が出た。

今年ホグワーツの教師になる予定だったアンブリッジとかいう女もこの襲撃で亡くなったらしく、予想を上回る犠牲者に各方面から非難の声が相次いだ。

その矛先を逸らす為に、わし等が英雄として持ち上げられたのだ。

 

多くの分霊箱を破壊したわしと、ポッターに蘇りの石を渡してヴォルデモートや大量の死喰い人を相手に時間稼ぎをしたドラコ。

そして、ヴォルデモートの死の直接の原因を作り出したスネイプ。

英雄と呼ばれるには見合った活躍をしたと言えるだろう。

ヴォルデモート復活の際に使われた魔法薬や分霊箱のことは一般には公開されていない。

わし等はヴォルデモートを相手に勇敢に戦い、最終的にスネイプが腕を犠牲にして奴に止めを刺したと言うことになっている。

真実を知っているのはあの場に居た者だけだ。

 

わし等はマーリン勲章と金一封を授与され、カメラの前で大臣と握手を交わした。

会場に集まった大勢の魔法使いが拍手と歓声を送る中、貴賓席に座るルシウス・マルフォイは息子の晴れ舞台に大喜びだった。

あの様子を見るとマルフォイ家は咎を受けることは無かったらしい。

 

「君たちの名は闇の勢力と戦った英雄の一人として歴史に刻まれることになるだろう。若き英雄の勝利を私は心から歓迎し、魔法界全体の喜びとしたい」

 

わしはファッジの演説を何処か覚めた気分で聞いていた。

ドラコは愛想よく人々に手を振っているが、さっさと帰りたい気持ちで一杯だ。

この後ダンブルドアの葬式にも参加しなければならないし、面倒極まりない。

 

 

 

式典とダンブルドアの葬式を終えて家に帰った時には夜の9時を回っていた。

葬式も退屈だったが、ファッジが参列した著名人にわし等3人を一々紹介するのには辟易した。

何度握手を求められたか分からず、最後の方は手の感覚がなくなりそうだった。

 

「随分遅かったな。風呂冷めちまったぜ」

 

「沸かしなおせ」

 

「自分でやりな。そうそう、また手紙が届いているぜ。今度はロンドンの式典に出てくれってよ」

 

「もう義理は果たした。無視し続けていれば向こうも諦めるだろうよ」

 

 

 

ダンブルドアの葬式から二日後、わしはソファーにもたれ掛かって疲れた体を癒していた。

そこに奈落が現れて話しかけてきた。

 

「帰ったか白童子。その様子を見ると、またマスコミに囲まれたようだな」

 

「マスコミでは無かったが…とても疲れた。買い物一つでこれとは恐れ入る」

 

教科書のリストが届いたので、ダイアゴン横丁に買い物に出かけたところまでは良かった。

やけに視線を感じるなと違和感を感じながら町を歩いていると、一人のミーハーそうな女の子が話かけて来た。

 

「あの~、ハクドウシ・ヒトミさんですか?」

 

「ああ」

 

何の気もなしに肯定を返したのは失敗だった。

周囲は大騒ぎになり、店の人まで通りに出てきて周囲を取り囲んだからだ。

 

「ヴォルデモートの蛇を倒したって本当ですか!?」

 

「サイン下さい!できれば握手も…」

 

「私の息子は死喰い人に殺されたんです…。仇をとってくれて、本当にありがとうございます」

 

涙ながらに感謝の言葉を述べる老婆まで居たのは驚いた。

英雄らしい振る舞いをしてやるのも良いだろうと握手やサインに答えてやったが、気づけば数十メートルの行列ができていたのには絶句した。

これでは買い物が出来ない。

 

「すまないがサインや握手はもう終わりだ。わしは買い物に来たんだ」

 

「是非うちの店で買って行って下さい!お安く…いえ、ただで良いですから!」

 

勢いに負けて教科書のリストを見せると、彼らは10分も経たないうちに商品を持ってきた。

代金を払おうとするがタダで良いと断られた。

 

「そんなわけにはいかん。払わなければ気がすまない」

 

「いえ、いえ!英雄のハクドウシさんがうちの店で買っていったと知れれば宣伝になりますんでね!今後も御贔屓に!」

 

大鍋店の店主は自ら出てきて揉み手で挨拶してきたほどだ。

フローリシュ・アンド・ブロッツ書店の店長もタダで教科書をくれたには驚いた。

 

「以前のバイト代のついでと、魔法界を平和にしてくれた礼さ。受け取ってくれ」

 

「あれはわしだけの力では…」

 

「良いって良いって!さあ!」

 

有無を言わさずに商品を押し付けてくるので、やむなく無料で受け取った。

教科書代が浮いてラッキーとか思ってない。

 

だが、これで場を離れる言い訳が出来なくなってしまった。

わしはくたくたになるまでファンへの対応に追われることになってしまったのだ。

 

 

「…というわけだ。次から出かける時は変装した方が良いかもしれないな」

 

「ククク…成程な。随分と苦労を強いられたらしい」

 

「あんたも大変だろうけど、こっちも結構面倒な目にあってるんだぜ。あんた、あたしが悪霊の炎で分霊箱を破壊したって嘘をついただろ。その時の英雄伝を聞きたがる奴や悪霊の炎の使い方を知りたがる奴が多くて困るっての」

 

気づけば神楽や神無もリビングに来ていたので、家族4人でのんびりと最近の話に花を咲かせた。

…こうして奈落と世間話ができるようになるとは数日前までは想像もしてなかったな。

 

 

 

 

ある日のこと。

鏡の前で身支度を整えていると、沢山の手紙を抱えた神楽が話しかけてきた。

 

「また取材依頼が来てるぜ。流石に若き英雄様は大人気だねぇ」

 

「捨てておけ。わしはこれから出かけてくる」

 

「あたしはあんたのマネージャーじゃねえっつうの。で、何処に行くんだ?その格好だとあんただと一目で分かっちまうぜ」

 

「人混みに行くわけではないからな。顔を隠す必要は無いさ」

 

わしは神楽にこれ以上追及される前にさっさとこの場を離れることにした。

煙突飛行粉を暖炉に投げ入れて目的地を告げる。

 

「グリーングラス家」

 

エメラルド色の炎が視界を包み、次の瞬間には高級そうな暖炉の中に立っていた。

グリーングラス家では突然の来客に家の者が応対することは無く、屋敷しもべ妖精が相手の身元と来訪の目的を確認することになっている。

すぐさま駆け寄って来た屋敷しもべ妖精は、わしの姿を見るなり要件を察したようだ。

 

「これはヒトミ様、お久しぶりでございます。ダフネお嬢様とお会いしに来たのですね?お嬢様は部屋にいらっしゃいます。呼んで参りましょうか?」

 

妖精の言葉を丁重に断ってダフネの部屋に向かう。

ノックをすると不機嫌な声が返ってくる。

 

「アステリア、貴方がドラコのことが大好きなのはもう分かりましたわ。1時間おきに自慢話をするのはやめてくださいまし!」

 

「落ち着け、ダフネ。わしだ。ハクドウシだ」

 

少しの間をおいて扉が勢いよく開かれた。

持ち前の反射神経で扉と激突することは避けられたが、次のダフネの抱擁は避けられなかった。

いや、避ける気など毛頭なかったが。

 

「ハクドウシ…?本当にハクドウシですのね?…あなたったら、ずっと私をほったらかしにして!私がどれだけ…!」

 

「…!……!」

 

「あの式典にも私は出てましたのよ?それなのに貴賓席に居る私に気づきもせず、ずっとぼんやりして…。私のことを忘れてしまったのかと思ってましたわ。アステリアはずっとドラコのことばかり話して、余計に寂しくなってしまって…」

 

「……ぷはっ。わ、分かった。悪かったダフネ。落ち着いて少し離れてくれ。これでは喋れない」

 

わしの顔はダフネの豊かな胸に挟まれていたので、何も喋れず呼吸困難に陥っていた。

それに気づいたダフネが顔を赤らめながら離れるのを確認し、呼吸を整える。

彼女の目元には涙が浮かんでおり、どれほど心配と寂しい思いをさせてたのかを改めて悟った。

 

「……すまなかったな、ダフネ。お前を忘れていたわけではない。ヴォル…いや、例のあの人の勢力との戦いに巻き込みたくなかったんだ」

 

涙を指で拭いながら言い訳をすると、ダフネも機嫌を治してくれた。

 

「…もう良いですわ。私の方こそ急かしてしまってごめんなさいね。…では、これからのことを考えましょう?私達は恋人同士なのですから、早速デートに行きましょう。さあ!」

 

「あ、ああ。分かった。だが今のわしは魔法界の街を迂闊に歩けない身分だからな。変装するか、マグルの街をデートすることになるが良いか?」

 

「だったらもう一度ロンドンに生きませんこと?大英博物館に行くのも良いですわね」

 

「そうだな…。あの時は時間が無かったから全部を見れなかったし、良いかもな」

 

ダフネの提案はなかなか魅力的だったので、わしは二つ返事で引き受けた。

わし等は屋敷しもべ妖精の姿くらましでロンドンに移動したあと、喫茶店でケーキに舌鼓を打ってから大英博物館で思う存分外国の芸術品を見て回った。

夜の6時ごろに彼女と共にグリーングラス家に戻り、彼女と別れのキスをして煙突飛行で家に帰った。

 

ダフネには言わなかったが、わしは先の戦いで自分の死を覚悟していた。

奈落の改心を予想していたとはいえ、土壇場になって心変わりをされたらわしは終わりだ。

悔しいが、奴が手段を選ばなければ3人がかりでも負けるかもしれない。

…結局、わしは奈落を超えることが出来ないのだろうか。

 

 

 

8月の中旬を過ぎると、無視し続けたのが効いたのか取材依頼の手紙も少なくなった。

アポなしで家に押しかけてくる無礼な記者も居たが、そういった輩は魔法省の迷惑行為取締科に通報してやった。

ダイアゴン横丁などに行くときは変装しなければいけないのは相変わらずだがな。

ダフネやドラコと出かけたりと、それなりに充実した日々を送っていた。

 

奈落との生活はわしが想像していた以上に順調だった。

わし等は元々一つの存在なので、相手を許すことが出来れば良好な関係を築けるものらしい。

奈落の体調が良い日はイギリス国内を軽く旅行することもあった。

 

「この遺跡はサラザール・スリザリンが作ったと言われている。スリザリンを信奉する者が巡礼に来ることもあるらしい」

 

ヴォルデモートの知識を吸収した奈落はとても物知りで、観光地に行くたびに面白いガイドをしてくれた。

マグルの街に繰り出して食事を楽しむこともあった。

 

「ヴォルデモートはマグルを軽蔑していた。勿体ないことだ。こんなに美味い食事や綺麗な建物があるのにな」

 

「…奈落、お前ちょっと綺麗になりすぎじゃね?あたしは何だか怖くなってきたよ」

 

憑き物が落ちたように性格が変わった奈落を不気味そうに見つめる神楽。

口調とは裏腹に彼女は笑顔を浮かべており、何だかんだで今の状況を楽しんでいるようだ。

…神楽も神無も奈落に対する印象を完全に変えたようだが、わしは彼へのコンプレックスをまだ克服できずにいた。

自分から家族となる提案をしておきながら情けないと自嘲する。

そんなわしのことを、奈落は静かに見つめていた。

 

 

 

破滅は突然訪れた。

リビングで新聞を読んでいると、神楽の悲痛な叫びが耳元に飛び込んできたのだ。

 

「奈落、おいしっかりしろ!…白童子、神無、早く来い!奈落がやばいんだ…突然倒れて…」

 

リビングに向かうと、胸を押さえて苦し気な息を漏らす奈落の姿があった。

ついにこの時が来たのだ。

 

癒者に来てもらったが、手の施しようがないと匙を投げられてしまった。

奈落が横たわる布団の周りに集まったわし等の表情は一様に悲痛なものだった。

 

「そんな顔を…するな。かつてわしを憎んだお前たちが……」

 

「…だって、せっかく家族になれたのに……」

 

神無が泣きそうな声を出す。

彼女の言葉はわし等3人の思いを代表しているようだった。

 

「……わしはかつて、多くの人間を殺し、利用した…。そんなわしが……こうして家族に看取られながら最期を迎える……。わしには勿体無い結末、だ…」

 

奈落が咳き込み始める。

もはや数分の命であると悟り、わしはずっと胸に隠していた思いを口にした

 

「死ぬな、奈落!…わしはまだ貴様を超えていない!だから…死ぬな!」

 

誰にも知られたくなかった奈落への暗い劣等感を吐露すると、奈落は静かに笑った。

 

「貴様は……すでにわしを超えている」

 

「なんだと…?」

 

「あの時…わしを許し、家族として認めた…。それはわしには出来ないことだ…何よりも尊い、もの…だ」

 

「…奈落、貴様は……」

 

わしは目線を落として首を振った。

奈落の言葉を聞いて心の闇が消えていくような感じがしたのが悔しかった。

その間にも奈落の命の残り時間は減り続けていく。

 

「わしは…もう、逝く…。桔梗に…あの世で会える、かも…な…」

 

「奈落!」

 

「…さらば、だ…。神楽…神無…白童子…わしは幸せだった…」

 

それきり奈落は何も言わなくなった。

わし等は自然と奈落の屍に縋りつき、涙を流していた。

かつて殺したいほどに憎み、劣等感すら抱いた男の死は、今は何よりも悲しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白童子、準備は出来まして?そろそろ出ないと汽車が出てしまいますわ」

 

「もうそんな時間か…。ああ。今行く」

 

ダフネの言葉に、大蛇への餌やりを辞めてゆっくりと振り返る。

かつてバジリスクと呼ばれて恐れられた蛇も、今ではグリーングラス家の可愛いペットだ。

時々屋敷のネズミ捕りをやらせて闘争本能を発散させている。

 

奈落の死から10年以上が経過していた。

今では身長が奈落よりも伸び、それなりに筋肉もついている。

卒業後はプロのクィデッチ・チームに入って鍛えられたからだろう。

在学中はスリザリンのクィデッチ・チームが連戦連勝だったので、エースのわしがスカウトされたのだ。

イングランドの代表に選ばれ、ブルガリア代表のクラムと大歓声の中で競い合ったこともあった。

わしの放ったブラッジャーはクラムの右腕にダメージを与えたが、結局スニッチを取られて負けてしまったのだったな。

 

庭に降りると息子のビャクヤが携帯ゲームに興じていた。

グリーングラス氏は伝統あるイギリス貴族の息子に和風の名前が付けられることを渋っていたが、ダフネが賛同したことで最終的には折れてくれた。

夢現の白夜は奈落の分身の一人で、最後まで彼に従順だったらしい。

生まれ変わることが無かった白夜とやらの分までこの子には幸せになって欲しい。

 

車に乗り込んでもビャクヤはずっとゲームに興じている。

ダフネはそんな彼が少し心配らしい。

 

「ビャクヤ、たまには本でも読んだらいかが?ゲーム…というのも楽しいかもしれませんが…」

 

「ホグワーツではゲーム機は狂っちまうんだろ?今くらい良いじゃねえか」

 

神無に言わせると、口が減らないところも白夜そっくりらしい。

神無は魔法省の神秘部で働いており、今でもルーナとは仲が良いみたいだ。

神楽は随分前に魔法省を辞め、今は日本で暮らしている。

今頃は殺生丸と仲良くなってるかもしれないな。

 

 

姿くらましで来た方が早いのだが、町の景色を見せるのも良いだろうと車で移動している。

そんな父の思惑をよそに、本人はゲーム画面に見入っているのは少し困ったものだが。

車がキングズ・クロス駅に辿り付くと、ビャクヤは渋々ゲームをやめた

 

「マグル生まれの奴も多いらしいじゃねえか。電子機器が狂わない魔法とかあれば良いのにな」

 

「そうだな」

 

ビャクヤの愚痴に適当に相槌を打ちながら、一緒にゲートをくぐり抜ける。

もう10年以上たつというのに全く変わらない駅のホームを見渡していると、わしに気づいた者達が噂話を始めた。

もうすっかり慣れた光景だが、ビャクヤはこの事態に少し戸惑っているようだ。

 

「親父たち、何だか注目されてるみたいだな」

 

「私の夫は有名なのですわ。ね、ハクドウシ?」

 

どこか誇らしげにダフネがほほ笑んだ。

クィデッチ・チームでの活躍もあるが、ヴォルデモートを倒した英雄の一人として未だに顔を覚えられているらしい。

ダフネは英雄の妻として恥ずかしくないようにお洒落やお化粧に気合いを入れるようになった。

普段のままでも美しいのに、とは照れくさいから口に出さない。

 

何者かに突然肩を叩かれ、振り向くと10年以上の付き合いの旧友が笑顔を浮かべていた。

 

「ハクドウシ、元気そうだな。ダフネとビャクヤも」

 

「ドラコ、わしのことはお義兄さんと呼べと言っただろ?」

 

わしの言葉にドラコが苦笑した。

わしはダフネと、ドラコはアステリアと結婚したので、一応は義兄弟の関係にある。

ドラコはマルフォイ家を継いだので、必然的にわしはグリーングラス家に婿入りすることになっていた。

 

 

 

ドラコやアステリアと世間話をしていると、見慣れた人影を見つけた。

ハリー・ポッターとその仲間たちだ。

彼はあれから猛特訓を積んだらしく、今は凄腕の闇払いとして活躍している。

ダンブルドアの死の原因を作った獣の皮の男の行方を未だに追っているらしい。

彼の傍にはウィーズリー兄妹にグレンジャー、そしてシリウス・ブラックの姿もあった。

奈落から放置されていたペティグリューが発見されたことで無罪が証明されたので、今は公の場に出られるようになっている。

 

視線に気づいたポッターが少し複雑そうに笑って手を振ってきた。

わしとダフネは手を振り返したが、ドラコは露骨にそっぽを向いた。

 

「あいつの子供は多分グリフィンドールだ。スコーピウス、負けるなよ」

 

「父さんたちの因縁を押し付けないでよ」

 

スコーピウスは父の言葉に冷めた口調で言い返すと、ビャクヤとクィデッチの話を始めた。

 

発車の時間が近づくと生徒達が次々と汽車に乗り込んでいく。

ダフネはビャクヤと最後の抱擁を交わし、あれこれと注意事項を早口で伝えている。

 

「湖の大タコには気をつけてくださいね。生徒が攫われそうになったこともありましたのよ」

 

「何度も聞いたっての。大丈夫だよ」

 

母の忠告に邪険な対応を返すビャクヤだが、両親との暫しの別れを寂しがっていることがわしには分かっていた。

わしもビャクヤを抱き寄せて母譲りの金髪を優しく撫で、一つアドバイスを授けることにした。

 

「どの寮に行ってもお前はお前だ。好きに楽しむといい。あと、スネイプに挨拶しておけ。在学中世話になったからな」

 

スネイプは片腕を失ったあともホグワーツの教師を続けている。

彼が何故自らの腕を犠牲にしてまでヴォルデモートを倒そうとしたのかは明らかにされていない。

恐らく、本人と死んだダンブルドアしか知らないのだろう。

 

発車を伝えるベルが鳴り響き、ビャクヤとスコーピウスを乗せた汽車がホームから離れていく。

わしやドラコがそうであったように、彼らもまた彼らの物語を紡いでいくことだろう。

柄にもなく神妙な気分になりながら小さくなっていく汽車を見送った。

 

「行ってしまいましたわね…」

 

「あいつなら大丈夫だろう。わしとお前の子だ」

 

「…そうですわね」

 

「子供が学校に行ったくらいで大げさだな…。それより、今から食事でもどうだ?美味い店を知ってるんだ」

 

丁度小腹も空いて来たのでドラコの誘いを有り難く受けることにした。

ドラコお勧めの店の料理はとても美味で、舌鼓を打ちながら会話に花を咲かせた。

 

わしも、神楽も、神無も…それぞれの幸せをつかんでいる。

人として生まれ変わったことを最初は悔やんでいたが、今は中々いい気分だ。

奈落…もしもあの世があるなら、わし等の人生をこれからも見守ってくれ。

 

 

 おわり




ご愛読ありがとうございました。
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