【完結】白童子のホグワーツ生活   作:妖怪もやし

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第7話 授業開始

 

「…早く起きすぎたな」

 

授業開始よりも2時間も早く目が覚めてしまった。

もう一度寝ようとしたが寝付けないので、仕方なくベットから起きあがる。

同室のマルフォイを起こさないように注意しながら、ゆっくりと部屋を出た。

 

 

城の中はどこに通じているか分からない階段や廊下ばかりなので、外に出るのは随分と苦労した。

廊下に居たピーブズというゴーストに道を教わったが、意地の悪い笑い方をしていたので、教えられた内容と逆の道を行った。

すると、想定よりスムーズに外に出られた。

奴と会えたのは、結果的には幸運だったようだ。

だが、この城の迷いやすさは異常だ。

日本の城は、敵に攻められた時の為に様々な工夫をしていたと聞いた事がある。

この城も、そういった考えがあるのだろうか。

仮に何者かがホグワーツに攻め入ったとしても、迷ってしまい目的を遂げることはできない。

それを狙って設計したのなら大したものだ。

 

「…朝日が眩しいな。さて、やるか」

 

懐から短刀を取り出して念じると、薙刀に変化する。

少しでも早く昔の勘を取り戻しておきたいので特訓は欠かせない。

ちなみに、わしの仮想敵は勿論奈落だ。

奴に貰った薙刀で奴を討つというのも一興だろう。

だが、この薙刀は随分と重く感じる。

わしの腕力が生前より下がったせいか、それとも奈落が何か細工をしたのか。

 

「今は考えても無駄だな。時間が惜しいしさっさと始めるか」

 

わしは暫しの間、仮想奈落を相手に懸命に薙刀を振り続けた。

 

 

 

 

30分ほど体を動かし、汗を拭きながら部屋に戻る。

まだまだ勘は戻っていないようだが、手応えはあったので継続していきたいものだ。

マルフォイは既に部屋には居なかった。

 

「好都合だな」

 

手早く授業の支度を整えると、厨子を籠から出して一つ用事を頼んだ。

厨子が大きく頷いて部屋の隅に駆けていくのを見送り、わしは一人大広間に向かう。

テーブルに着くとダフネの姿が見えた。

彼女は女友達と話して居たので、邪魔にならないように彼女の遠くに座ろうとする。

しかし、その配慮は無用だったらしく、ダフネは手招きをして近くに来るよう指示してきた。

 

 

「おはようございます、ハクドウシ。 いよいよ今日から授業開始ですわね」

「そうだな」

「初めの授業は薬草学だそうね。温室での授業と聞いていますが汗をかくのは嫌ですわね」

「温室か…貴様にはお似合いの場所だろう? 温室育ちだけにな」

「ふふ、お上手ですわね」

 

 

わしのジョークに、ダフネはクスクスと笑い、同席していた友人を紹介してきた。

パンジー・パーキンソンとミリセント・ブルストロードだ。

わしは二人の小娘とダフネを見比べ、後者の顔はとても整っていると気づいた。

パーキンソン達には興味が沸かなかったので、おざなりな挨拶を返し、その後は食事に集中した。

 

 

薙刀の練習をしたばかりで腹が減っていたのか、つい食べ過ぎてしまった。

その為、わしが食べ終わる頃には既にダフネ達は教室に移動していた。

遅刻しないよう小走りで教室に向かう。

 

「ケッケッケ! 新入生ちゃん、プレゼントだよぅ!」

 

廊下でピーブズに水風船を投げつけられたが、回避することができた。

これも鍛錬の結果だろうか?

水風船は傍に居たハッフルパフ生に当たり、彼はピーブズとわしに悪態をついていた。

 

 

薬草学の授業には、何とか遅刻せずに辿りつけた。

スプラウトという小太りの中年女が植物の種類や育て方を語り、生徒がそれを羊皮紙に書き写す。

地味な授業だが、スプラウトの教え方が良いのか、分かり易くてそれなりに楽しいものだった。

 

薬草学も終わり、次の教室に向かう。

魔法史の授業は退屈すぎて、初回なのに眠ってしまう生徒がちらほら見かけた。

わしは教科書を眺めながら、必要と思われる部分だけを書き写した。

広い城内で移動に苦労しながらも、新入生は教室から教室へと駆け回るのであった。

 

 

 

 

長い一日もやっと終わった。

ベットに腰かけて軽く体を解しているわしとは対照的に、マルフォイは明日の予習を行っている。

意外と勉強熱心なようだ。

 

ふとベットの下を見ると、用事を頼んでいた厨子が戻っていた。

厨子の額と自分の額を合わせると、奴が得た情報が頭の中に流れ込んでくる。

どうやら命令を忠実に守ってくれたようだ。

 

「ご苦労」

 

わしは厨子に夕食の残りをやると、怪訝な顔をしているマルフォイに構わず眠りについた。

 

 

次の日からわしは道に迷う事は無くなった。

厨子には城内を駆け回らせて、城の構造を覚えて伝えろと命令を出していたからだ。

鼠仲間から聞き出したのか、厨子の情報はとても正確で有用なものだった。

これからもこいつは役に立ちそうだ。

 

生前、あの世とこの世の境を探していた時、坊主や妖怪を殺して心を読み取ったことがあった。

人間の体となった今もその能力は失われていなかった。

だが、まだ小動物程度の心しか読み取れないようだ。

体が成長すれば人間の心も読み取れるようになるかもしれないが…それはまだ遠そうだな。

 

 

 

 

 

その日も早めに起きて薙刀の練習を行い、体を動かした時特有の快い気分を味わいながら時間割を眺める。

 

「今日は水曜日だったか。変身術があるな」

 

この授業は入学の日に新入生を案内したマクゴナガルが受け持っていた。

 

「初めに警告しておきます。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れません。覚えておくように」

 

彼女は見かけの通り厳格な人物らしく、開幕からこんな言葉を投げかけてきた。

模範として机を豚に変えてみせ、皆にマッチ棒を配って針に変えるよう指示してきた。

わしは少々苦戦しながらもマッチ棒を銀色の針に変える事ができた。

 

「素晴らしい!スリザリンに5点差し上げましょう」

 

マクゴナガルの賞賛をつまらなそうに見ていたマルフォイも、授業が終わる頃にマッチ棒を立派な針に変えて得点を貰って、得意げな顔をしていた。

ダフネはわしからコツを聞いて頑張っていたが、マッチ棒を銀色に変えるのが限界だったようだ。

わしは教えるのはそこまで上手くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

変身術の授業を終えて寮に戻ると掲示板に新たな情報が書かれていた。

金曜日の魔法薬学の授業はグリフィンドールと一緒らしい。

汽車で出会ったロングボトムとグレンジャーとはあれから会話をして居ないが、奴らと話す機会もあるかもしれないな。

 

「嫌ですわね…何故私たちがグリフィンドールと共に授業を受けなければならないのかしら」

 

聞きなれた声に振り向くと、ダフネが女子生徒達と嫌そうに話していた。

見れば他のスリザリン生達も不満そうだ。

 

「魔法薬学はスネイプ教授の授業だ。楽しくなりそうだな」

 

一方で、マルフォイは取り巻きのクラッブとゴイルと上機嫌に話している。

マルフォイはスネイプのお気に入りなのか、よく会話しているのを見かける。

風の噂でマルフォイの父とスネイプが親しいと聞いたことがあるのでその関係だろう。

 

 

 

そして金曜日がやってきた。

階段を何度も降り、じめじめした雰囲気の部屋に辿りつく。

壁際にある棚には動物が液体漬けにされた瓶がいくつも置いてある。

ダフネ達女性陣は気味悪がっていたが、わしはこういう雰囲気の部屋は嫌いではない。

 

少し遅れてグリフィンドール生達も教室に入ってくる。

…途端に空気が重くなったと感じたのは、気のせいだろうか?

スリザリン生とグリフィンドール生は特に仲が悪い、との情報が真実だったと実感する。

ロングボトムとグレンジャーの姿が目に入ったので片手をあげて挨拶すると、少し気まずそうにしながらも控えめな挨拶をしてくれた。

 

席は自由のようだが、2つの寮の生徒は固まって座っていた。

対立する寮の生徒と共に座ろうという者は居ないようだ。

わしはロングボトムやグレンジャーと座ることで、前例を破ろうと画策したが、既に二人の周囲の席は埋まっている。

目的をあっさりと諦めてダフネの隣に座ることにした。

暫く待って居ると、我らが寮監にして魔法薬学の教師であるスネイプがやってきた。

彼は無表情で生徒達を見つめ、出席を取りはじめた。

 

「ハリー・ポッター…。われらが新しいスターだね」

 

マルフォイや数名のスリザリン生が冷やかし笑いをし、ポッターはムッとした顔をした。

そして出席確認を終えたスネイプが演説を始める。

 

「魔法薬学は他の授業とは違い、より繊細で優れたものである。名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法を学ぶ。教えよう、その方法を。吾輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより、諸君がまだましであればの話だが」

 

話を終えたスネイプは、鷲のように鋭い眼で生徒達を見回した。

彼の演説にあった死にさえ蓋をするという言葉に心が動かされた。

奈落なら、その術を死に物狂いで手にしようとするだろうな。

 

 

静まり返った教室で、スネイプはポッターにいくつかの問題を出した。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

「ベゾアール石を見付けて来いと言われたらどこを探すかね?」

「モンクスフードとウルフスベーンの違いは何だね?」

 

ポッターは異国の言葉を聞かされたかのように、途方にくれた表情を浮かべるだけだった。

実を言うと、わしもお手上げだ。

全ての問いに手をあげたグレンジャーは大したものだ。

マグル生まれの奴は魔法に触れている時間は比較的短い筈だが、余程努力したのだろうな。

結局ポッターは正解を答えられず、無礼な態度をとったということでグリフィンドールは減点された。

スネイプが正しい答えを述べ始めたので、羊皮紙に内容を書き写し始める。

 

「さてさて…。呆れたものだ。答えを書き写そうと考えたのがミスタ・ヒトミしか居ないとは」

 

スネイプの嫌味ったらしい指摘に、他の生徒達も慌てて羽根ペンを手にとった。

ちなみにグレンジャーも羊皮紙に答えを書いていたが、スネイプはそれには触れなかった。

 

その後、生徒達は二人一組で、おできを治す簡単な魔法薬を調合することになった。

スネイプは教室を見回りながらほぼ全ての生徒に注意をした。

 

「干イラクサの調合が甘いぞ」

「そうか。分かった」

 

スネイプの指摘に頷いて調合をやり直すと、彼は一瞬顔をしかめた。

だが、何も言わずに別の組の様子を見に行った。

 

「貴方は度胸があるのか、礼儀知らずなのか分かりませんわね」

 

ダフネが呆れた声を出した。

余談だが、わしは教師であろうと敬語は使わない。

いくつかの授業でそれを注意されたが、生前に敬語など使った試しが無いので無視していた。

 

わしとダフネはてきぱきと調合をこなし、クラスの中で一番に作業を終えた。

ダフネはスネイプから注意を受けなかった数少ない生徒の一人だ。

彼女は魔法薬学が得意なのかもしれない。

出来上がった薬を、ダフネが代表して提出する。

 

「…良い出来だ。スリザリンに5点」

 

スリザリンの生徒から歓声が上がり、グリフィンドールの生徒が悔しそうな顔をした。

2番目に調合を終えたのはグレンジャーの組だった。

わしとダフネの作品に劣らない立派な出来だが、スネイプは無言で頷くだけで点を与えなかった。

噂で聞いた、やつのスリザリン贔屓は本当のようだな。

 

それを眺めていた時、見覚えのある男子生徒が近くで調合をしている事に気づく。

ロングボトムだ。

山嵐の針を大鍋に入れようとしているが、火を止めていないので調合は失敗するだろう。

それに気づきながらも、わしは何も言わなかった。

 

スネイプがマルフォイの角ナメクジの茹で方を褒めている時、事は起こった。

大鍋からシューシューという大きな音が上がり、強烈な緑色の煙が広がり始めた。

わしは教室の隅にさっさと避難して、慌てふためく生徒達を見物し始める。

だが、大半の生徒は椅子の上に避難したので、思った程被害は大きく無いようだ。

つまらんな。

 

ロングボトムは薬を体中に被った為、腕や足におできが広がり痛みで泣きわめいていた。

スネイプは彼を怒鳴りつけると、グリフィンドール生に医務室に連れていくよう指示した。

そして、ポッターを言いがかりと言ってもいい理由で減点した。

 

「あんな簡単な調合を失敗するなんて、間抜けな方ですわね」

 

授業が終わったあと、ダフネが呆れた声を出したので同意の言葉を返し、荷物を手に教室を後にした。

魔法薬学の授業は中々楽しめたと、残酷な笑みを浮かべながら。




・8/21 誤字報告ありがとうございます。修正しました。

・9/4 文章をすこし修正しました。ご指摘ありがとうございます。

・2017/05/25 文章を修正しました。
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