「これで、良し!!!」
悠はスーツから車掌の制服に着替え終えた。男みたいな顔立ちの悠が女性の制服を着ると、死ぬほど似合わない。女性用の帽子にピンクのシャツ。傍から見ると、男性車掌が女性車掌の制服を着ているか、何処かの鉄道ファンがコスプレ(笑)をしていると思われてしまうだろう。その姿を見た漣と曙が悠に指を指し、お腹を抱えながら大笑いしていた。
「何そのご主人様の格好!!!」
「死ぬほど似合わないよね漣!!!」
「「ねー!!!」」
「「ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」ゥゲホッゲホッげボーッ!!!」
漣と曙は、大笑いし、呼吸困難になりそうな程になっていた。そんな彼女達も悠と同じ制服に着替えている。まあ、漣達はどう見ても女の子だと分かるので、悠の様に笑われる事は無いと思うが・・・。
漣と曙が笑い始めて5分経ち、ようやく落ち着き始めた時、悠は「笑われるだけならまだいいよ。」と言った。
「え?どういう事なの?クソ提督。」
曙は、笑った余韻が残っているのか、息が途切れ途切れになりながら言った。途切れ途切れになっていても、ハッキリと言葉を発した。
「ああ。数ヶ月前のことだ。ある駅で、特急の対比をしていた時のことだ。」
曙に尋ねられた悠は、昔のことを思い出しているのか、遠くを眺めながら話し始めた。
「俺は便所に行きたくなって、乗務員室を飛び出し、駅の便所に向かった。当然、俺が入るのは女子便所だ。用を足した後、手を洗ってトイレから出ると、そこには1人のババアがいた。」
悠はまだ遠くを眺めている。漣と曙は、悠の曙以上の言葉の悪さを聞きながら、嫌な予感がしていた事を感じた。
「そのババアは「何で男子が女子トイレ入っているのー?」と言い、俺の身体を両手で掴んだんだ。電車の発車時刻も迫っていたからな。俺は「
「で、クソ提督はどうしたの?」
悠が、そう言いながら両腕を組み、ガタガタ震えていると、曙が、その後について聞いていた。
「その後?俺が叫んだから、直ぐに駅員が駆けつけて、そのクソババアは、駅事務室に連れてかれて、警察に逮捕されたらしい。あのババアのせいで電車に遅れが出たし、しかも、全国ニュースにされちゃったよ〝見た目男性の女性車掌、トイレで中年女性から性的暴力〟ってね。それに、俺のことについての2ちゃんにスレが立ったし。本当、最悪だったよ。」
全て話し終わると、悠は、ふーっとため息を吐いた。
「叫び声は?」
曙が、気になって悠に尋ねてみると、悠は、少し顔を赤くしながら
「キ、キャーだ・・・。」
と、答えた。
「へぇ。女らしい所もあるじゃん。」
曙がニヤニヤしながら、悠のことを見た。
「おい、漣、曙!!!その事は「曙さーん?居ますかー?」はーい!!!今行きまーす!!!」
悠が、漣と曙にその話について黙っておく様に言おうとしたが、ペアの運転士に呼ばれてしまったので、黙っておく様に言えなかった。
「おい、曙、漣。この事は黙ってろよな?絶対にだぞ!!!」
「「はーい。」」
そのため、もう一度悠が漣と、曙に言わないように念を押しすように厳しめに言った。
「行くぞ。」
悠は、漣と曙にそう言いながら女子更衣室を出た。その時、悠は見ていなかった。漣と曙がニヤニヤしながら悠を見ていた事を。