「出発進行!!!」
発車メロディとの後に、悠の叫び気味に言う声が聞こえると、電車のドアが閉まり始めた。
赤く光を放つ側面灯が消えると、悠は、ドアを閉め、窓から顔を出し、出発の合図を出した。電車はインバータ音を唸らせながら速度をあげ、駅のホームが姿を消した。悠が窓を閉め、ホームを示唆確認する。
「かっこいーですね。ご主人様。姿を除いて。」
「それな。」
「「HAHAHA!!!」」
漣と曙の笑い声が響いている乗務員室にいる悠は、乗客からの目線がほとんどこっちを向いているのと、2人に馬鹿にされているため、恥ずかしくなり始めた。
「しかし、車掌なんて地味な仕事ですねー。」
「うるさい。運転士でもいいんだけどね・・・。怖いから・・・。」
「怖い?」
漣がニヤニヤしながら悠に聞いてくる。
「人身事故の瞬間見るのが。」
「まあ、このデカブツに踏み潰されたら頭蓋骨バラバラになりそうだからね。」
見た目に反して意外と黒いことを言うのは漣。しかも、その事を言う時の顔は有り得ないくらいのイキイキした顔だった。恐らく、悠をまた笑う為の材料でも集めてるのだろう。
「恐ろしいこと言うな。」
恐らく、人身事故後の遺体を思い浮かべてしまったのか、悠は体を震わせはじめた。
「あ、震え始めてるー。大草原不可避www」
漣は、またお腹を抱え、わらいぶくろの様に笑い出した。
「うるせえ、草はやすな。轢かせてミンチ肉にするぞ。」
「こっわー。でもHeart of Chicken のご主人様が出来ますかねーwww」
悠は、漣の挑発を聞かない振りをし、鍵を指していないため、ずっとマスコンが非常ブレーキの位置に止まっている運転台の横に引っ掛けてある車内アナウンス用のマイクを手に取った。
「ご乗車ありがとうございます。次の東海駅で特急電車の待避を行います。発車時刻は・・・!?」
そこまで言いかけた瞬間、急に金属と金属が擦れ合う音が辺りに響き、悠達は前の客室と乗務員室を分けているプラスチック製の壁に叩きつけられた。そう、電車が急ブレーキをかけ始めたのだ。
バギン!!!ゴリゴリゴリ!!!
電車が鳴らしてはいけない音を鳴らした後、電車は完全に停止した。
「「「・・・。」」」
完全に沈黙で包まれている乗務員室。その沈黙を破ったのは運転室から来る電話の信号音のみだ。
「も、もしもし・・・。」
悠は信号を運転室に返し、震える手で受話器を握った。
『もしもし、運転手です。』
「ど、どどどうしたんですか?」
『すみません、轢きました。』
その瞬間、悠は受話器を床に落とし、ペタンと乗務員室の床に座り込んだのだった。
悠は制服の上に反射板を付け、乗務員室からはしごを伝い、線路に降りた。防護無線が発令されているため、対向電車は来ない、さらに轢かれた人を救出する為に電車のパンタグラフは降りてるが、遺体を見るのが苦手な悠は、ゆっくりと遺体がある場所に近づいて行った。
「こ、ここかな・・・?」
青いラインの入った銀色のボディが少しへこんでいる場所についた。
悠は、しゃがみ、車体の下を懐中電灯で照らすと、居たのだ。黒髪の女性が。しかも、動いていた。生きているのだ。
「き、キャァァァァァァァァァ!!!」
気が動転した悠は叫んでいた。
「大丈夫ですか!?」
「ヒィィィ!!!動いた!!!動いたぁ!!!」
偶然、鉄道会社の社員が乗っていたため、運転室の監視を任せ、現場に近づいてきた運転手に悠は抱きついた。
「落ち着いてください!!!」
「怖いよぉ!!!怖いよぉ!!!」
運転手は、いつもと違う反応を見せる悠に少し戸惑いながら懐中電灯で床下を照らした。
「あれ?」
運転手は、そう言いながら床下に入って行くと、倒れ込んでいた黒髪の女性を助け、お姫様抱っこをして外に出てきたのだ。電車に轢かれた女性、もとい、女の子は電車に轢かれたのにも関わらず、服と肌の表面しか汚れておらず、ほぼ無傷の状態だった。
「ねえ、車掌さん。この子って・・・」
頭を抱え、線路上に座り込んでいた悠は、運転手の言葉でゆっくりと顔を上げた。するとそこには
「僕、無事なの?」
時雨が居た。しかも改二の状態で。
はい。時雨(改二)の登場です。この時雨、不幸体質かも?