[1]ノーゲーム・ノーライフの世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
クラミーside
ゲームが始まった。
あまりのバガゲーっぷりに呆れる観衆の中、だが油断のない気配で、黒い瞳に黒いベールで影を落とす少女。
クラミーの姿があった。
(・・・フィー、見えてる?)
『はぁい、感度良好、クラミーのお目々、ばっちり頂いているのですよぉ。』
クラミーの視覚を建物の外にいる森精種、フィーが同期、その上で思念会話。
エルヴン・ガルドで生まれたクラミーは身に染みていることだが・・・
(ホント、他の種族からしたらたまったもんじゃないわね、こんな魔法。)
side out
いのside
ぴくりと、いのの眉がつり上がる。
(これは・・・魔法の気配?)
人類種と同じく精霊回廊接続神経を持たないため、獣人種に魔法は使えない。
だがその常軌を逸した五感が捉える"気配"に、ちらりと視線を向ける。
(・・・クラミー・ツェル!何故ここにいるっ・・・!)
確か、国王選定戦に森精種が送り込んだ、エルヴン・ガルドの間者だったはず・・・
「誘ったのか・・・"他種族の監視"を」
今回のゲームを開催する条件として、佑馬達がゲームの内容を他言出来なくなるようになる。
しかし、その"達"の範囲は何処まで及ぶのか、人類種全員かもしれないし、空と白、佑馬だけかもしれない。
それに、ここにいるクラミーが、魔法によって遠方の他種族、森精種に報告しているとしたら。
このゲーム全てが、エルヴン・ガルドに知られていることになる。
バーチャル空間を立ち回る三人を見て、いのは思う。
(こいつら・・・どこまで用意周到なのだ・・・ッ!)
ふと、空の顔を見てみる。
その顔からは・・・
『わかりやすいチートしてみろ。テメェらのゲームのイカサマまでバレるぞ。』
目を閉じる男の薄い笑みが、そう語っていた。
side out
クラミーside
『ふふ、気付かないふりしてぇ・・・耳が魔法に反応してるのですよぉ。』
視線を向けず、だが明らかにこちらを意識しているいのに、フィーが笑う。
これで空の望み通りの展開になっているはずだ。
(フィー、行われてる空が予想してた通り、"電脳空間"という、魔法では干渉できない虚構の世界。こっちから出来ることはなさそうだけど。)
『わかっているのですよぉ。わたしたちが見てる、っていう事実が重要なのですよぉ。』
さすがはフィー。
おそらく空の『フィールの記憶を改竄する権利を貰う』という要求を聞いた日から把握していたのだろう。
(これで東部連合は、あからさま過ぎる不正はできない・・・)
ゲーム内以上に、イカサマの正体までエルヴン・ガルドにバレたら、どうにでも対策は取られ、今度こそ東部連合は終わる。
その為、盟約の穴をついて、仮に負けても絶対に記憶が消えない"フィー"を監視につけた。
(まぁ、それでも不正は見逃す気はないけどね。フィーも手伝って頂戴。)
『んーこの術式、維持するの大変なのですよぉ?でも
クラミーのために頑張るのです。』
改めて、空の記憶にあったこのゲームの攻略法。
何度見返しても、あまりに綱渡りで、肝心の部分がぶっつけ本番になっている。
だが、それをもってしてもなお、空の記憶の中燦然と輝くのは"必勝"の二文字。
その確信を与えているもの、空に人の可能性を信じさせるもの。
このゲームで、自分も触れることが出来るだろうか。
「・・・見せて貰うわよ、空。」
そう言って、画面の中を駆け抜ける空を見る。
その時、横で走っている佑馬が目にはいる。
「貴方の実力も、気になるとこだしね。」
side out
佑馬side
群がって追いかけてくるNPC達、獣人種という設定のため、足の速度も身体性能も極めて高いが、
(動きは抱きくという動作のみ。個体差もあるがこれぐらいなら余裕だ。)
射撃能力を確かめるために、頭、腕、腹、胸、と場所を指定ながら撃っていく。
その傍らで空が言った。
「NPCが消えるのと、服が消えるのに、一瞬のラグがあった気がするッ!」
そう、ラグは確かにある。
だが、それはほんの一瞬。
(よくわかったな。さすが人類最強のゲーマーの片割れってとこか。)
そう考えていると、発砲音が鳴る。
放たれた桃色の弾丸はNPCのスカートにかすり、NPCは消えずに、小さなハートを散らせてスカートだけが消し飛んだ。
「やはり、やはりそうかッ!これこそ、このゲームの醍醐味かッ!」
ふむ、俺もちょっとやってみるか。
「布の厚み、コットンパンツと仮定、平均1,5ミリ。」
そんなことがわかるのかよ。
俺でもわからんぞ。
「許される着弾誤差は1ミリ未満・・・だが、俺ならやれるっ!」
そう言っている空にNPCが抱きつこうとする。
それを最低限の動作、たった二回のステップでNPCの背後をとる。
「ここだっ!」
発射された弾丸はパンツを削り、そして消える。
が、同時にNPCもピンクのハートを散らし、『らぶパワー』になって消滅した・・・ちょっと残念。
「ちくしょぉぉぉぉぉ!んだよノーパンに出来ないのかっ!?くそぉぉぉっ!!」
「空!まだ諦めるんじゃない!」
まだ諦めてはいけない。
下がダメなら・・・上だ!
抱きつこうとするNPCの服を消しながら避ける。
そして、ブラを狙って撃つ!
消えるブラとともに腕が胸の前へ行き、手ブラになるNPC。
「ナイスだ佑馬!手ブラとかあのNPCもわかってるな!」
「よし、これで終わりな!とりあえず走るぞ!」
「おう!」
とりあえず、後ろにくるNPCを迎え撃ちながら進む。
「白、銃の性能報告。」
しばらく走ったあと、空が確認する。
「・・・全部、おおまか・・・単位は、メートル・・・で。」
と言い添えてから深く息を吸う白。
「弾速毎秒300、射程約400、風重力影響無し、直進性、跳弾性能あり、限界跳弾回数は射程に比例して無限、跳弾角度は入射角度に比例で、単純。」
はぁ、と息をはいて一言。
「・・・つか・・・れ、た・・・」
これは喋る方にだな。
「よーしよし、上出来ださすが白!」
空がわしゃわしゃと白の頭を撫で、白は嬉しそうにしている。
「ジブリール、設定されてる身体能力はどんなもん?」
空達は説明通り、普段と変わらないだろう。
だが、ジブリールの制限がなんなのかがわからなかったようだ。
「魔法が使えない、というのがどうやら"私自身"の否定になってございます。なので、物理的限界数値に設定されているようです。全く、物理的肉体とはなんとも不便でございます。」
「獣人種の身体性能は、物理限界に迫ると言ったな。今のおまえと互角か?」
「甚だ不愉快なことに、そう考えて問題ないかと思われます。ただ、以前お話したように、獣人種には『血壊』を使うものがございます。もしそれがゲーム内に反映されているとすれば、瞬間的には私をも凌駕すると考えた方がよいかと。」
『血壊』 物理限界に届く性能を有する獣人種、その中でも更に一部の者だけが使える、物理限界をすら瞬間的には突破しうるという力。
「おまえといい獣人種といい・・・この世界の連中デタラメ過ぎだろ。」
はぁ、と溜め息をつく空。
「それで、佑馬はどんな感じだ?」
「んー、わかんね。いつもと変わらんけど。」
「そうか。」
まぁ、物理限界越えてるけども。
「とりあえず、敵は仮想空間内で魔法を禁じ、自分達の本来の得意分野である『身体性能にものを言わせた戦闘』を行い、圧倒的に有利に立っている、と思い込んでいるわけだな?」
血壊がどれくらいか、自分の身体能力がどれくらいかはわからないが、おくれを取るほど差は大きくないだろう。
「いいか、どんな複雑に見えるゲームでも、究極的に取れる行動は二つしかない。」
「と、仰いますと?」
その問いに、意地悪い笑みを浮かべて空が応える。
「戦術的行動と、対処的行動。つまりは、動かすか動かされるかでしかない。」
なるほど、つまりは主導権をとったほうの勝ちというわけか。
「あいつらは気づいていない。これこそが人類が古代から最も得意なゲームだ。」
「なるほど、『狩り』だな。」
「その通り。白、用意はいいな。くれぐれも走るのは最低限に、な。」
「・・・了、解・・・」
「じゃー、そろそろ始めるか?」
そして、轟音と共にゲームは動き始めた。
side out
三人称side
「っ!?」
轟音が鳴り響いたビルの八階にいづなはいた。
(居場所を特定された、です!?そんなはずねぇ、ですっ!)
だが、いづなの聴覚が、ビルを上がってくる足音を捉える。
(この足音は、佑馬、です。)
一定のペースで、少し力強く、ゆっくりと踏みしめる音。
いづなが、"危険ではないが人類種は要注意"と判断したプレイヤー。
だが、空も白もステフも佑馬も、人類種など戦力としてみなしてすらいない。
いづなが開始と同時に仕掛けなかったのは、天翼種であるジブリールを警戒してのこと。
どんな卓越したゲームの腕があろうが、こちらのゲームが暴かれようが、人類種は自分に近づくことも、近づかれるのを察知することさえ不可能、反応が追いつくはずがない。
だが、ふと違和感を覚える。
このビル内にNPCがひしめいているのは、音で把握している。
その中を、一切乱れないペースで、しかも二つの銃声が同時に聞こえる・・・?
いづながバッと、和服を翻して、埃舞い立つ狭い部屋の扉に銃口を向ける。
いづなが身を潜める、その唯一の出入り口。
八階フロアまで近づいてきた足音は、ふっ、と、止まった。
(・・・?)
いづなが怪訝そうに耳を立て、様子を探ろうとした、その直後。
足音が一気に速度を上げた。
それは人類種にしては早すぎる速度で。
しかも、
(どうなってん、ですッ!?)
外のフロア内を徘徊するNPC達が。
銃声一発ごとに一体ずつ、しかも、その銃声が三つ同時に聞こえるということに、寒気が走る。
正確無比な射撃、足音は一定のペースで一つなのに、三つの銃声。
(ここに来やがる、ですっ!?)
疑う余地もないその事実に。
だがいづなは、獣人種の五感をフルに稼働させ、倉庫の外、視界外の佑馬に向かって、引き金を引く。
銃口から発射された弾丸は、正確無比に、僅かに開け放たれた扉の隙間を縫って飛翔、壁に当た・・・
ろうとしたときに既に放たれていた銃弾が8回跳弾し、その壁に当たる直前で撃った弾を狙撃、その銃弾が同じ軌道で返ってくる。
「なっ!?」
それを目視で避け、再び銃を向けようとした、が。
既に足音は扉のすぐそこまで迫っていた。
(逃げるしかねぇ、ですっ!)
逃げるスキを作るため、いづなが扉の隙間から『ボム』を投げる。
だが、それが外に飛び出すよりも速く、外から侵入してきた弾丸によって、炸裂する。
(なっ!?)
ゴォォォォウッ、と。
室内で轟いた爆風を、とっさに資材の後ろに隠れ、危うくやり過ご・・・そうとしたときに。
三発の弾が侵入、それぞれ跳弾を繰り返して、弾と弾がぶつかり、いづなの方へ跳ぶ。
それを目視で避け、さらにその扉の方へ銃を向けたところで、さらに別の弾と弾がぶつかり、今いづながいる場所へと跳弾する。
「っ!?」
それを下駄でガードしたとき、佑馬が扉を蹴飛ばして侵入、同時に手近な棚を倒したことにより、着地点が耳に届かない。
呼吸音を探るが、聞こえない。
(弾幕を張るしかねぇ、ですっ)
別の資材の後ろに身を潜め、大まかに狙いをつけて乱射する。
無数に放たれる弾丸。
それが跳弾し、部屋の中を結界のような弾幕を作り出す。
だが、一瞬。
佑馬のふっと嗤う声と白のゆっくりと息を吐き出す音が聞こえ、ぞくりと背筋に悪寒が走る。
即座に飛んだ。
床が砕けるような力で蹴り、小さな窓を突き破って、ビルの外の宙空へ飛び出す。
振り返りざま、いづなが感じ取ったのは、全ての弾幕が撃墜された音。
そして更に、跳ね返った弾丸が、いづなが隠れていた場所へ収束する音。
さらに数発こちらへと跳んでくる。
(一体、なにが起きやがった、ですっ!?)
迫りくる弾丸を撃ち落としながら、考えるが。
撃ち落とした弾丸の後ろに重なるように跳んでくる弾丸があった。
(デタラメじゃねぇか、ですっ!!)
それをもう片方の下駄でガードするが、さらにそのいづなの目が見開かれる。
この一連の事態にではなく、頭上から迫る気配に。
「はーい、いらっしゃいませぇ♥」
(天翼種、ジブリールッ、です!?)
飛び出すのを知っていたとしか思えないタイミングでの、空中での待ち伏せ。
(いつの間に屋上まで移動したんだ、です!?)
天翼種といえど、物理的限界に縛られる。
魔法なんてインチキは使えない、飛行能力もないはずだ。
だが、二本の足で移動したなら、自分の耳が聞き逃すはず・・・がっ!?
まだ冷静だった感覚が、ジブリールの手から、『ボム』が落とされるのを察知する。
(目眩ましっ!です!)
即座に断じる。
ボムを狙撃しても、爆発に紛れて銃弾が襲ってくる。
ならば、ボムは無視。
ジブリールを先に撃ち、二発目で処理をする!
そうして、引き金を引く、が。
「狙いが甘うございますよ♪」
いかに魔法を封じられても、天翼種の身体性能は獣人種のそれに肉薄する。
空中で、至近距離から放たれた弾丸を、体を捻り目視で避けるジブリール。
僅かに掠めた弾は、ジブリールの帯を掠め、ハートを散らして服を砕いて消える。
続いて狙撃されたボムが炸裂。
爆煙の先でジブリールがこちらに銃口を向けているが、その目が丸く見開かれる。
迫りくる三発目の弾丸によって。
いづなが放ったのは三発。
一発目はジブリールに回避運動をさせるため。
二発目はジブリールの投げた目眩まし用のボムを逆に目眩ましに利用するため。
そして、三発目こそ、本命。
「と・・・あれ?あ、飛べないんでしたぁっ!?」
咄嗟に羽を打って避けようとしたジブリールだが、その羽は虚しく空を切るだけ。
体勢は立て直せず、不可避の一撃がその額を撃ち抜く。
その直前。
ジブリールは確かに目撃した。
何の脈絡もなく、遥か彼方のビルに慌てて目を向けるいづなの姿を。
唐突に、いづなが体を捻って、可能な限り大きく回避行動を取った。
そのはためく振袖の袂を、彼方から飛来した弾丸が貫き、消し飛ばす。
間髪容れず、同じ方向から飛来した二発目の弾が、今度はいづなに撃たれたばかりのジブリールへ突き刺さった。
その事実に、ケモノじみた勘が働く。
撃たれたジブリールを、即座に取り返す、この一撃。
(ここまでが計画通りだとしたら、です!?)
ばっと顔を上げれば。
いづなが突き破ったビルの窓から、佑馬と白が銃口を向けているのが見えた。
だが、
(この体勢からじゃ、攻撃出来ねぇ、ですッ!)
先程のジブリールと同様。
最初の狙撃で回避運動をさせられたいづなに、それを狙撃する術はない。
そうして佑馬と白から放たれる、合計7発の弾を見て、
「おもしれぇ、ですっ!!」
気炎を吐く。
いづなは歯を剥き出しにして嗤った。
side out
佑馬side
いづなは『血壊』を使った。
違うとこといえば、使うのが原作よりもだいぶ早いということだ。
そう考えているうちに、いづなは腕を振り下ろし、空気を掴んで身体を受け止め、蹴りにより跳ね上がった。
「まずっ!?」
そのままこちらに銃口を向けて八発撃ち、逃げていった。
その弾はそのまま狙撃しても白に跳んでいくように計算されている。
だから、空へと身を投げ出し、そこから八弾を打ち落とす。
そのまま地面を徘徊しているNPCに一発当てる。
しかし、いづなが逃げた方向から一発飛翔しているのを見つけ、慌てて銃口を向ける。
だが、その一発撃とうとしたところで『らぶパワー』が切れた。
(・・・っ!チッ!ここで切れるか!下に予備で撃ってあるが、白は間に合わん!)
そしてそのまま白にいづなの弾が着弾。
アスファルトに着地した瞬間、上から弾が降り注いだ。
「甘い!!」
それを全て撃ち落とし、白へ銃口を向ける。
しかし、そこに白の姿はもうなかった。
「マスター・・・おお我が主様ぁん・・・どうかお側にぃん♥」
と言っているジブリールと共に、空のもとへ向かった。
オリ展開、上手く書けているか心配です・・・
後2,3話で獣人種編及び、3巻の内容を書ききります。