[1]ノーゲーム・ノーライフの世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
ノゲノラは考えていることをわからせず、読者に考えさせるのがいいかな、と思ったので。
たまにside使うかもですが。
バリアフリーという言葉がない世界、アヴァント・ヘイム。
その空を飛び回る一人の少年とそれを見守る一人の天使がいた。
「うん、だいぶ慣れてきた。」
空を飛び回る少年は言わずもがな、佑馬。
「さすがでございます。」
もう一人の天使もまた言わずもがな、ジブリール。
「ていうか、正直受けてくれないと思うんだよね、あのゲーム。」
「それはどうしてでございますか?あの方程度、佑馬なら簡単だと思いますが。」
軽くアズリールを貶すジブリールだが、佑馬はゲームという点において、アズリールを下になど見てはいなかった。
「なんというかさ、さすがにあいつも気づいていると思うんだよね。でもそれでも乗ったって、何か裏がありそうなんだけどなー。」
受けても問題ない、と判断されたのか、
受けた方が何かしらの見返りが大きい、と判断したのか、
それとも本当にわかってないのか。
どれとも取れるそれは、答えによっては今後に大きく関わるものだ。
「まあ、何にしたってやるからには負けるつもりはないけど。」
そう言って、また飛び始めた。
その頃、ある広間に50人もの天翼種が集まっていた。
「君たちにはゲームに参加してもらうにゃ。」
「賭けるものはなんでしょうか?」
アズリールとその精鋭達だ。
「『神霊種と同盟を組む、こちらに生きる意味を与える』にゃ。」
「「「ッ!?」」」
『こちらに生きる意味を与える』という言葉に驚きを示す天翼種達。
「なら、あちらが賭けるものはいったい・・・。」
「『俺がもつジブちゃんの全権をあげる』にゃ。」
「こちらが勝てばジブリールの全権を取り戻せて、あちらが勝てば同盟と生きる意味を与えるってことですか・・・」
「そうにゃ。でも、向こうはジブちゃんの権利を持ってないみたいだにゃ。」
そう、アズリールはちゃんとあの会話を聞いていたのだ。
「それをわかっていて何故受けるのですか?」
「主様以外の神霊種に負けるつもりはないにゃ。ジブちゃんはちょうど取り返そうって思ってた頃だったしにゃ。」
「それでも受ける理由にはなりませんが。」
アズリールは『全権代理』ではなく『全翼代理』だ。
勝手に天翼種全体に関わるゲームはできない。
「受ける代わりに、うちらが勝ったら『生きる意味を与える』を追加するにゃ。」
「なるほど。"ゲームに参加する対価"として使うのですね。」
「そうにゃ。」
これを対価にしなければ受けない、と言えば向こうは受けざるを得ない。
受けなければこちらも受けないから。
「それで、ゲームは何をするのですか?『具象化しりとり』をするにしても数が多過ぎて手間がかかりますし。」
当然の質問が飛んでくる。
ゲームの内容はこちらに決定権があるからだ。
「今回しりとりはしないにゃ。」
「それでは、いったい何を?」
アズリールはゲーム内容を明かした。
別の広間に連れてこられた佑馬とジブリール。
そこには49人の天翼種とアズリール、合わせて50人が待っていた。
「ゲームの内容が決まったにゃ。」
「ほぅ、それでなんだ?」
「その前に、こちらがゲームを受けるための条件を提示するにゃ。」
条件という言葉にピクリと反応するジブリール。
佑馬は平然を保っている。
「こちらの勝利した時、『こちらに生きる意味を与える』を追加するにゃ。ジブちゃんの権利について黙認してるし、そちらも受けてもらうにゃ。」
その言葉に、ジブリールは驚き、佑馬は ほぅ、と軽く笑った。
「ジブリール、どうやらアズリールはお前が思ってるほど頭は悪くないみたいだぜ?あ、条件は受けるから内容を聞かせてくれ。」
「わかったにゃ。ゲーム内容は。」
そこで指をパチン!と鳴らして。
「『鬼ごっこ』にゃ。」
アヴァント・ヘイムの地形をごっそりと変えた。
「これはまた、シンプルだな。」
「内容を言うにゃ。参加人数は51人で鬼は君にゃ。最初に10分逃げる時間を貰って、それが終わってから一時間が制限時間にゃ。魔法は全て使用可能。魔法で損傷したところはゲーム終了後に全て直るから気にしなくていいにゃ。それとジブちゃんは参加禁止にゃ、誰も逃げ切れないから。」
「ははは、やっぱりジブリールは天翼種公認チートだったか。」
「すみません、佑馬。出来るだけ力に成りたかったのですが・・・」
本当に申し訳なさそうに言うジブリールに、佑馬は頭をポンポンと軽く触りながら言った。
「あはは、気にすんなって。ジブリールがいなくても勝てるし、その気持ちだけで十分だよ。」
「・・・ありがとうございます。」
その言葉に少しだけ顔を赤くしながら言うジブリールに、
「それはそこまでにゃああぁぁぁぁぁ!」
その空気に耐えかねたアズリールは全力で止めにいった。
「悪い悪い。で、内容はそれだけか?」
「そうにゃ。10分後にジブちゃんに開始の合図をされたら開始にゃ。」
「面白い。乗った。」
全ての魔法の使用可能。
つまり、それだけ真似出来る魔法が増えることは、佑馬にとっても利益にしかならない。
「あ、でも一度捕まったやつはその場で待機、終了な。めんどくさいし。」
「わかったにゃ。ではそろそろ、始めるのにゃ。」
「「「「「「"盟約に誓って"!!」」」」」」
ジブリール以外の全員が手を上げてそう叫び、佑馬とジブリール以外の全員が虚空に消えていった。
「佑馬、どうか気を付けてください。」
ジブリールの心配そうな声に、はははっと笑いながら佑馬。
「おう、まぁなんとかしてみるよ。」
「先輩は頭はあれですが、力は確かです。」
ここまで馬鹿にされるアズリールに少し同情したくなるが、そこは胸の内に抑えておく。
「ああ、アヴァント・ヘイムの力は少々めんどそうだけど、なんとかするよ。」
「・・・はい。」
そして、時間がくるまでに翼を開いてその時を待った。
あの会話から10分後、開始の合図がジブリールから出された。
その時。
「ほう、面白い。」
全方向から約40もの天翼種が現れて、天撃を放った。
威力的に、約1割程度、様子見ってとこだろう。
1割とはいえ、その威力は絶大。
それが、40あり、その全てが佑馬に向かって飛んでいった。
何もしない佑馬をみて、天翼種達はとった!と思うが。
当たる寸前でそれが全て跳ね返ってきた状況に、全員が目を剥ける。
「これくらいでとったとでも思われるとは心外だな。」
様々な避けかたで、誰一人として被弾することはなかったが、声の聞こえた方向を向けて全員がその事実に恐怖する。
「君ら全員、アウトだ。」
あの短時間で40人全員捕まえたという事実に。
「そんな、馬鹿なッ!?」
「信じられないなら逃げてみればいいさ。盟約通りならそこから逃げれないから。」
そう言われて全員逃げようとするが、誰一人として動けない。
「あと10人、さぁ、楽しませてくれよ?」
口を吊り上げ、黒い翼をはためかせながら飛んでいく姿はまさしく悪魔。
ここにいる40人は悟ってしまった。
勝てるわけがない、と。
これにて中編終了です。
佑馬のチート化完了。