[1]ノーゲーム・ノーライフの世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
迫る決戦
人間、誰しも大なり小なりの感情がある。
感情豊かな人、乏しい人、いると思う。
また、同じように、衝動に駆られて動いてしまう人もいる。
そして、衝動とは怖いもので、一度やってしまえばその後は意識して同じ事を何度も出来てしまう。
例えば、嘘をつき続ければ、慣れてしまうように。
物を壊したり、人を壊したりもまたしかり。
◆◆◆
ゲームは終了した。
ライラは塔になんとかたどり着き、空達を惚れさせようと甘い言葉、仕草で誘惑した。
ただ、空、白ともに全くの無反応、そして、空からは今までの鬱憤を晴らすような怒濤の悪態を浴びせられ、空達の勝利で終わった。
ただ、この場で勝ったことに対して喜ぶ人は誰一人としていない。
巫女、いの、いづな、ステフ、プラム、アミラまでもが沈黙する。
彼等に植え付けられたのは、恐怖。
獣人種組は本能的に、オーシェンド組は喧嘩を売ったことに、ステフは人が殺されるのを見たこと、そして、一同が見たあの佑馬の笑みに。
そこで佑馬とジブリールが一足先に戻ってきた。
「はぁー、楽しゅうございました……みんなに話したら嫉妬の嵐でございますね♥」
「ああ、本当に楽しかった。しかし……」
ジブリールは楽しげに、佑馬もまた楽しげに、ただ、場の雰囲気を察して言い淀む。
「たぶん、これは俺たちではなく、俺のせいだな……悪かった。」
自分が恐怖の対象として見られていることを感じ取った佑馬は、腰を軽く曲げて謝罪をする。
「くっくっくっ、ここまでやれば確実にキレるだろ。これでいいんだよな白?」
「……ん、にぃ……さすが……えくさぐっじょぶ。」
その時、夢から帰ってきた空と白は満足げだったが、場の雰囲気が変なのに気がついた。
「あー……なんだ?この空気は。」
「……にぃ、が……うざすぎ、た……とか?」
「白さん、それ地味に傷つくからやめてもらえませんかね!?」
『煽れ』と言われた手前、徹底的に煽ったのに今度はうざすぎたという理不尽な評価を受けた空は、若干傷心しながらも、場の空気をしっかりと呼んで、
「佑馬もジブリールも、いい働きだったぞ。」
ただ一言、そう言った。
「……ああ、ありがとう。一応俺らの役目はここまでだ。それじゃあ要求の件はまた後日、伝えるからな。」
「それでは、失礼致します。またこういう事をするのでしたら、是非御呼びくださいませ。」
佑馬、ジブリール共にお礼の言葉を言ってから、溶けるように消えていった。
「……そろそろかなぁ。」
「……にぃ……どう、思う?」
佑馬とジブリールがいなくなってから、意味深な言葉を交わす二人。
「どうって言われると、正直手強いな。ジブリールを取られたのがここで響いてくるとはな……。」
「……あの、そろそろとか、手強いとか、一体何の話ですの?」
空と白の会話を聞いていたステフは、なんことかさっぱりわからず聞いてみたが。
「あれ、わからねぇの?巫女さんやいづなは分かってるのに?」
「いや……その……はい。」
巫女といづなに比べられるステフも可哀想だが、今回は少し考えればわかることだった。
「つまりな、もうすぐなんよ。」
「佑馬達、神霊種連合軍との決戦が。」
「……ッ!!」
その時、女王の入っていた氷が割れた。
◆◆◆
「おかえりなのですよぉー。」
「あら、早かったじゃない佑馬。」
「まぁな。」
一先ずエルヴン・ガルドに戻った佑馬とジブリールは、そこで待っていたフィールとクラミーに出迎えられた。
「それで、どうかしら?」
「ああ、そろそろやろうかと思っている。」
目的語を使わず話すが、この場でこの会話の意味を理解していないものはいない。
「そう……私たちはいつでも準備出来てるから、いつでも呼んでちょうだい。」
「おう、期待してるぞ。」
「お話は終わりましたかー?では、ゲームを仕掛けさせてもらうのですよー。」
話が終わるタイミングまで待っていたのか、フィールが質問気味に聞いてきた。
チェス盤をもって。
「よし、俺らは97連勝無敗だったな。後903勝は軽くさせてもらうぞ。」
「そんな戯言は、今日で終わらせるのですよー。」
「こっちだってただ暇を潰していたわけではないのよ?」
フィールが全権代理者になってからというもの、エルヴン・ガルドは改革が凄まじいスピードで進んだ。
治安は良好、物資の出回りも良くなり、現在はそこまで政策に時間を取られることはなくなったため、クラミー、フィールペア対佑馬、ジブリールペアでゲームをするようになった。
「今日は早打ちチェスをやるのですよー。」
「オッケー。魔法、イカサマ、どんどん使ってこいよ。全て見破って使わせて貰うから。」
「フィール!絶対に勝つわよ!」
「はいなのですよー。」
「おやおや、もう少し実力の差を弁えた方がよろしいのでは?」
実のところ、佑馬に魔法、イカサマは効かない。
眼が良すぎるため、視えてしまうのだ。
魔法は何重にかけようと、全て解析されてしまう。
イカサマすると、それをいつの間にか使われている。
力に溺れることなく、その場で必要な力のみを存分に使うようになった佑馬。
「全て予想通りだな……」
「本当でございますね。」
当然、フィールやクラミーにそれを破る術はなく、あっという間に敗北を喫した。
「もう……佑馬って本当に存在がチートよね。」
「魔法もイカサマも何一つ効かないのですよー。」
「魔法やイカサマだけで佑馬に勝とうなど、愚かな考えでございますね。」
「……でも、[ ]に届くかはわからない。」
佑馬が目指す先には、[ ]がいる。
ここまでの力を貰っても、届くかどうかわからない、正に神の領域にいる二人。
「そして、俺たちはその二人を倒す。必ず。」
その言葉に、一同は頷く。
最終決戦の時は刻一刻と迫っている。
◆◆◆
数日後、アヴァント・ヘイムの一角にて、五人の人影があった。
「さて、エルキアとの決戦に向けての作戦会議を開こうと思う。」
現在、神霊種連合になっている、主要人物。
「はいなのですよー。」
「わかったわ。」
エルヴン・ガルド組、フィールとクラミー。
「わかったにゃ。」
アヴァント・ヘイム組、アズリール。
そして、佑馬とジブリール。
「現在、エルキア連合はエルキア、東部連合、オーシェンドの三国四種族で出来ている。」
そこで佑馬が話始めたのは、現在のエルキアの状況。
「そして、こちらは神霊種の俺、アヴァント・ヘイム、エルヴン・ガルドの二国五種族。」
エルキアは人類種、獣人種、吸血種、海棲種の四種族。
佑馬達は神霊種、天翼種、人類種、森精種、幻想種の五種族。
「大戦を行うなら戦力的に最強だろうし、ゲームを行うにしてもまず劣ることはない。しかし、これが普通のゲームならだ。エルキアの全権代理者、[ ]がいることによって、戦況は大きく変わる。この作戦会議も向こうの思う壺かもしれないな。」
現在の状況を分析しながら、話を進める佑馬。
「だからといって、作戦会議をしないというのは愚行だ。そして、こっちには完全な切り札がある。」
「切り札にゃ?」
切り札に反応したのは、アズリール。
「そう、切り札だ。言ってしまうと、近いうちにある一人の神霊種が現れる。」
「……っ!?」
この言葉は、全員にとってとても衝撃なことだった。
ついに、神霊種が動くのかと。
「そして、そいつはエルキアによって、丸め込まれ、全権代理者として名乗りを挙げてくる。」
「しかし、佑馬が全権代理者なので、それは無理なのでは……。」
「俺は名乗っているとはいえ、正式ではない。いや、神霊種の正式な全権代理者になるのは不可能に近い。」
ジブリールの質問に困った表情で答える佑馬。
「そしてその神霊種と俺との全権代理を賭けたゲームが、そのままエルキアとの決戦の時になる。」
「ちょっといいかにゃ。」
今度はアズリール。
「エルキアが神霊種を狙っているのはいいとして、どうやって探し出すつもりなのかにゃ?」
「ああ、それなら探す必要もなく空達の近くにいる。」
「……ほんとかにゃ?」
「獣人種、巫女のを依り代としている神霊種が一人な。」
「……っ!?」
アズリールの質問の返答は予想を超えるほどの衝撃を与えた。
獣人種の全権代理者に神霊種が取り憑いている。
驚かない方がおかしいだろう。
「そして、それももうすぐ顕現する。」
「いつぐらいか佑馬はわかりますか?」
「正直、そこまではわからんが、力は感じるはずだ。」
そこで沈黙が場を支配した。
「……今日はここまでに……ッ!?」
そして、ここまでにしようと立ち上がった瞬間、東部連合から膨大な力が発生、そして、佑馬の脳内にある言葉が浮かび上がった。
『神を名乗る神ならざる者よ、余の前にその姿を晒すがよい。』
「……いくらなんでもタイミングが良すぎるな。」
素晴らしく良いタイミングで現れた神霊種に苦笑しながらも、その表情は楽しそうに、口はつり上がっていた。
本音を言うと、原作のノゲノラにちゃんと敬意を払った二次創作を書きたい。
シリーズが完結、または一区切りついたら書こうかな。