ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡if   作:B.ナイト

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原作ではチュートリアルの面です。


序章 ~傭兵~

序章 ~傭兵~

 

「大丈夫?」

 

アイクの妹、ミストが駆け寄ってきて、心配そうに聞く。まだ少し頭がぼんやりしているが、気にするほどでもないだろう。

 

「あ、ああ」

 

アイクはそう短く返事をした。

そこへ、父グレイルがやってくる。

 

「気が付いたか」

 

グレイルの方は、全く心配などしていない様子だった。むしろ、あの程度でどうにかなるほどアイクは弱くないという自信があるのだろうか。

そんな様子の父に、まだ幼さの残る娘が声を上げる。

 

「もう! お父さん、やりすぎだよ! いくら訓練用の木刀だからって、本気で殴ることないじゃない」

 

「このくらいで音を上げているようでは、傭兵として生きていくことなどできん」

 

「でも!」

 

そんな2人のやり取りを聞きながら、アイクは口を開いた。

 

「ミスト、俺なら大丈夫だ」

 

そして、そばに転がっていた木刀を拾って立ち上がる。

 

「フン、そうこなくてはな。さあ、構えろ!」

 

グレイルも木刀を取り出して息子に向かう。ミストは驚き、兄に問う。

 

「え、ちょっと・・・まだやるの?」

 

「ああ。せめて一撃・・・親父にくらわすまでは、やめるわけにはいかない」

 

アイクの目は本気だった。絶対に父を越えてやるという強い意志が見られた。

ミストは、そんな兄が好きだった。だが、無茶しないでほしいという思いもあった。

 

「フッ、いい覚悟だ。だが、今のままでは何度やっても同じ・・・ん?」

 

グレイルが言葉の途中で会話をとぎらせる。近くの茂みから音がしたためだ。

 

 

 

 

茂みから出てきたのは、アイクと同年代とみられる少年だ。短めの緑の髪をバンドでまとめ、やんちゃな感じの笑顔をした彼は、すぐさまアイクたちのもとへ駆け寄ってきた。

 

「おお、やってるやってる」

 

ミストが、そんな彼に不思議そうな顔をする。

 

「あれ、ボーレ、どうしたの?」

 

「どうしたも何も。団長たちを呼びに出てったお前が戻ってこねえからさ。副長が見て来いって」

 

「あ、そうだった・・・ごめんごめん」

 

ミストはすっかり言われていたことを忘れていたようだ。

ボーレというらしい少年は、今度はアイクに向き直る。

 

「ま、団長にボコボコにされてるアイクを笑ってやろうと思ったんだが・・・意外と元気じゃねえか。つまんねえの」

 

「悪かったな」

 

明るい調子で話しかけるボーレに、アイクは少し怒った様子でそう返す。だが、ミストが余計なことを言ってしまった。

 

「一足遅かったね。ついさっきまで伸びてたんだけど」

 

アイクはすぐに妹の方を向く。

 

「おいミスト!」

 

「えへへ・・・ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

一連の話が落ち着いたのを見計らって、グレイルはボーレを呼んだ。

 

「ちょうどいいところに来たな。ボーレ、お前がアイクの相手をしてやれ」

 

「え、おれがですか?」

 

戸惑うボーレに、グレイルはカバンから取り出した訓練用の木斧を手渡す。

 

「そうだ。俺の見立てではお前はアイクと腕が近い。まずは近い実力の者同士戦って、コツをつかんだ方がいいだろう」

 

アイクもそれに賛同する。

 

「分かった。ボーレ、よろしく頼む」

 

ボーレもすっかりその気になったようだ。

 

「へっ! 腕が近いってのは気に食わねえが仕方ねえ、さあ、どっからでもいいぜ。かかってこい!」

 

 

 

 

 

 

グレイル流実技訓練は、基本的にお互い離れた場所から戦いを始めるという決まりがある。これは実際の戦場でも多くの場合、戦闘はある程度離れた場所から始まるためだ。

アイクとボーレもその決まりの通り、約15ヤードほど離れた場所に立って、お互い向かい合った。

 

「おーい、どうしたんだ? 早くかかってこいよ」

 

ボーレは訓練用の斧を振り下ろしてアイクを挑発する。

 

「今行く! そこで待ってろ!」

 

対するアイクは訓練用の剣を手に、ボーレめがけて駈け出した。ボーレも斧を構えてアイクの攻撃に備える。

 

「お兄ちゃんがんばれー! ボーレなんかやっつけちゃえ~!」

 

ミストの声援が届く。アイクはボーレに向けて木刀を振り下ろした。

 

「おいおい、『なんか』はねえだろ『なんか』は・・・」

 

そうつぶやきつつ、木刀の一撃をうまく防ぐ。

だが防げたのはその一撃のみ。アイクの素早い斬り返しの打撃が、ボーレの肩に打ち掛かった。

 

「やあっ!」

 

バシッ!

 

「ぐっ・・・なかなかやるじゃんか。へへっ、まだ戦いは始まったばかりだぜ!」

 

大きく隙が出たアイクの左腕に、思い切り木斧を叩きこむ。

 

ドカッ!

 

「うっ!」

 

素早くボーレのそばから離れて体制を整え直す。アイクの左腕は打撲で紫色に変色していた。

すぐに、次の攻撃への策を思い描く。

 

(変に正面からぶつかっていったところで返り討ちに遭う・・・だったらこれだ)

 

ボーレめがけて木刀を振り下ろす・・・と見せかけ、直前で思い切りジャンプ。

 

「なにっ!」

 

そして、がら空きとなったボーレの脳天に木刀を叩きこむ。

 

「ぐわぁぁっ!!」

 

勢い余ってボーレは、後ろの草むらまで吹っ飛ばされた。

戦いの様子を見ながら、グレイルは思う。

 

(俺が教えた戦い方を、少しは理解するようになったようだな。相手の隙を突き、一気に攻め崩す・・・正面突破ばかりが戦いではない。)

 

 

 

 

 

 

「や、やるじゃねえか・・・」

 

しばらくして、ボーレが起き上がった。ミストとグレイルも駆け寄ってくる。

 

「ボーレかっこわる~い」

 

「るせえ!」

 

「えへへ」

 

顔を真っ赤にしてミストをにらむボーレに、グレイルが話しかける。

 

「ボーレ、ごくろうだった。もう戻っていいぞ」

 

「あ、はい。・・・おいミスト、待てこの~!」

 

「あはは、だって本当のことだも~ん」

 

追いかけるボーレと笑顔で逃げるミスト。全く仲がいいのか悪いのか。

 

 

 

「ボーレの油断があったにしろ、今の動きはまずまずだった。それを覚えておくがいい」

 

「分かった」

 

アイクは表情を変えずにグレイルに返事をする。グレイルは再び木刀を手にした。

 

「さあ、次はまた俺が相手だ」

 

その言葉を待っていたかのように、アイクも木刀を取った。

 

「望むところだ!」

 

だが、グレイルはそれに待ったをかけた。

 

「と、その前に・・・ミスト! 例のやつをアイクに」

 

鬼ごっこの結果はミストの勝ちだったようだ。先ほどの訓練もあってかボーレは息が上がってへとへとになっている。

 

「は~い!」

 

ミストはアイクのそばへやってきて、茶色い袋に入った丸薬3つを手渡す。

 

「はい、お兄ちゃん! きずぐすりだよ。さっきボーレに腕ぶつけられたでしょ? お父さんと戦う前にちゃんと使ってね」

 

「ああ、分かった」

 

そして、離れた場所へまた戻っていった。

きずぐすりを袋から1つ取り出して飲み込むと、アイクの腕に残っていた打撲傷は瞬く間に消え去ってしまった。

その様子を見ながら、グレイルも一言添える。

 

「小さな怪我でも、余裕のあるうちに治すことを心がけろ。ヤバいと思った時には手遅れだった・・・なんてことがないようにな」

 

 

 

 

 

 

 

再び、訓練が始まった。

今度の相手は父グレイル。アイクにとって、超えるべき相手だ。

 

「はぁーっ!」

 

一気にグレイルのもとへ駆け込み、木刀を振り下ろす。だが。

 

「フッ、甘い!」

 

特殊な構えでアイクの攻撃を受け流し、その威力を逆に利用して打ち返してくる。

 

バシィン!!

 

「うぐっ・・・」

 

グレイルの得意技、カウンターだった。アイクの攻撃はたいてい、この技で防がれてしまう。

 

「アイク、こちらからもいくぞ!」

 

素早い動きで父の木刀が襲い掛かってくる。何とかそれらをさばききったが、攻撃の機会はなかなかやってこない。

 

「ほう、少しは粘るか」

 

「えいっ! やあぁーっ!!」

 

「だが・・・その程度では傭兵の戦いは務まらんぞ」

 

瞬時に足払いをかける。対処できるはずもなく、アイクはその場に転倒してしまった。

転んだアイクにも容赦なく、強烈な一撃を浴びせようと木刀を振り上げた。

 

(・・・今だ!)

 

振り上げた、その一瞬を突いて、アイクは左手にげんこつを作り、グレイルの右腕に叩き込んだ!

 

「!」

 

グレイルが持っていた木刀は持ち主を失って、離れた場所へ飛んで行った。

この機会を逃さずにアイクは立ち上がり、体制が整っていないグレイルめがけて渾身の一撃を叩きこむ。

 

「はあぁぁぁーーーーっ!!!」

 

ドカァッ!!

 

「・・・む!」

 

グレイルはその場にゆっくりひざまずいた。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、すっごーい!」

 

ミストが歓喜してこっちに飛んできた。だが、アイクは特に表情は動かさずに、ひざまずいたままの父に問いかける。

 

「・・・親父、本気じゃなかっただろう?」

 

「え、そうなの?」

 

するとグレイルは立ち上がり、わずかに笑みを浮かべて答えた。

 

「・・・それに気付けたなら、お前も少しは成長したということだ」

 

続いて、ボーレもやってきた。

 

「そうそう、実はおれも本気じゃなかった・・・」

 

「それはウソ」

 

「ちぇっ」

 

あっさりミストに言われて、ボーレは少しむっとする。だが、やっぱり明るい笑顔だ。

アイクはあくまで真剣に、グレイルに詰め寄った。

 

「・・・じゃあ、俺ももう一人前だって認めてくれるか?」

 

「仕事に出る話か?」

 

アイクは、グレイル傭兵団の次期団長ということになっている。だが、今までずっと見習いとして扱われてきており、実際に戦場へは出させてもらったことはなかった。

 

「ああ。ボーレだって戦場に出てるんだ。俺もいい加減、見習いは卒業したい」

 

ボーレも、アイクと同じく17歳。実は彼は1年ほど前に、兄とともにこの傭兵団に参加したばかりだ。

また幼い弟がおり、団員に参加はしていないものの、グレイル傭兵団が面倒を見ていることになっている。

 

「そりゃ、お前と違っておれは腕が立つからよ」

 

どこまでもお調子者なやつだ。

ミストが茶々を入れる。

 

「さっきは負けたくせに~」

 

「あれはたまたまだよ。た・ま・た・ま!」

 

そんなやり取りの間ずっと考え込んでいた様子のグレイルだったが、ふと腕組みを解いた。

 

「そうだな・・・まあ、いいだろう。お前も明日から傭兵団に参加しろ」

 

「本当か!?」

 

まさかここまであっさりと許可が下りるとは思わなかっただけに、アイクは驚く。

 

「ああ。ただし、無理だと思ったらすぐ訓練に逆戻りさせるからな。せいぜいがんばることだ」

 

そうは言われたが、アイクは意志が固かった。

 

「大丈夫だ。すぐに・・・みんなに追いついて見せる」

 

「どうだかな。さあ、そろそろ砦に戻るぞ。みんなが待っている」

 

 

 

 

 

明日からの一人前の傭兵としての日々に思いをはせながら、アイクは砦への帰路につく。

果たしてどんな毎日が待っているのだろう・・・。




ボーレ:戦士

グレイル傭兵団の一員である少年戦士。17歳。右利き。
三兄弟の真ん中に位置しており、明朗快活でやんちゃな性格。兄がオスカー、弟がヨファという名前。兄弟の中では一番父親に似た顔をしているらしい。

ボーレの兄弟は全員異母兄弟となっており、父親は他界、母親はみな行方がしれていない。
約1年ほど前に兄オスカーとともにグレイル傭兵団に所属し、半年ほどの見習い期間を経て、現在では自身も戦場で戦う一人前の傭兵となった。
すぐ調子に乗ってしまう気分屋で、戦いの最中も調子に左右されやすい欠点がある。

現在ネットなどでは「豆腐」と呼ばれることが多い。その理由は、「守備」の成長率がいまいちで、高いHPの割にあっさりロストしてしまうことが多いためである。
稀に守備が高く育つことがあり、その場合は「高野豆腐」などと呼ばれる。
また、3年後には「麻婆豆腐」と呼ばれるようになったが、それはまた別の話。



レンジャー・・・

兵種のひとつ。アイク専用兵種。
型にはまらずに独自の道を行く傭兵。剣を扱い、能力はバランスよく成長していく。成長率は全般的に高い。
やや力が強いため、ある程度成長したら重い武器もそこそこ扱うことができる。
ただし間接攻撃できないため、魔法や弓には注意が必要。



勇者・・・

兵種のひとつ。グレイル専用兵種。
あまたの栄光を勝ち取った熟練のレンジャーが昇格する。
剣と斧を共に扱い、一騎当千と言うべき非常に高い能力で敵を圧倒する、戦場の主役。
全てのステータスが高水準でまとまっているため、隙がない。
「手加減」のスキルを所有する。


戦士・・・

兵種のひとつ。
斧を武器として戦う「あらくれ」。一撃の威力は高いが、技のステータスが低めでやや空振りしやすい。
またHPが高いが守備はそれほど高いとは言えないため、ずっと前線を支えるのは苦手。
武器の特性上、槍を手にした固い敵の守りを崩すのが得意。
近年のFEではかなり強い兵種になっているが、昔は不遇兵種の代名詞だった時代もあった。



訓練用の剣・・・

武器のひとつ。「剣」に分類される。
木でできた木刀。本当のダメージを与えることはない。
なぜか150%という異常な命中率を誇っている。


訓練用の斧・・・

武器のひとつ。「斧」に分類される。
木でできた木斧。本当のダメージを与えることはない。
なぜか、剣の方と同じくこちらも命中率150%である。一体どんな秘密が隠されているというのだろう?


きずぐすり・・・

道具に分類される。
茶色い袋に入れられた丸薬。基本的に袋の中に3つ入っており、飲み込むことで瞬時に怪我をある程度治すことができる。
連続で飲んでしまうと腹を下してしまうため、飲むのは必ず1つずつにするようにと、この世界では定められている。
数種類の薬草をすりつぶし、それにわずかな魔力を含ませることで作られている。入れ物の茶色い袋は品質保持の役に立っているらしく、世界共通であの袋が採用されている。
原産地はテリウスからはるか西にある「アカネイア大陸」と呼ばれる大陸のタリス島という島の、とある村らしい。
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