前々からお伝えしてきました「浦の星女学院絶対防衛線編」の始まりです。
どうしてこんなにテンションが低いのかは本編を読んでいただければわかります。
注:この話からシリアス要素が一気に強くなります。苦手な方はブラウザバック推奨。
それではどうぞ!
第十五話~憎悪の彼方に~
~前回のあらすじ~
千歌に変わって梨子を勧誘する彼方と曜。色々脱線気味ではあったがそれぞれの胸のうちを語った。
自分でいうのもなんだけどここ最近、俺は渡辺の事を見すぎている気がする。いや、正確にはちょっとした事情があって見てしまうというべきか…
事の発端は桜内が転校してきた日。朝に色々なドタバタがあった後の授業中の事だった。
俺の席は高海の一つ前になっている。で、渡辺は高海の右。つまり俺の右下に当たるわけだ。ちなみに俺の隣は桜内である。
授業中。右後ろからなんか視線を感じるのだ(汗)
いや決して自意識過剰などではなく。じろじろってほどではないのだが…まぁ、見られたら普通気になる。だからこっちとしてもつい目が渡辺にいってしまうというわけだ。
あれから数日がたった今日も渡辺からの視線を感じる。あんまり見てくるからそろそろ聞くことにした。
「なぁ、俺の背中になんかいるのか?」
「へっ?」
昼休み。例によって桜内はそそくさとどっかに行ってしまったので高海と渡辺と俺の三人で昼飯を食べている。
「いや、なんかここ最近渡辺からよく見られてる気がするというか…」
「そ、そ、そんなことにゃいと思うけど…!?////」
めっちゃ噛んでるじゃないかバレバレだっつーの!
「うん、曜ちゃん最近よく彼方君の事見てる気がする」
「千歌ちゃん!?////」
やっぱりか。高海に気づかれるほど俺のこと見てるって…
しかしここで意外な指摘を受ける。
「というか彼方君もしょっちゅう見てない?」
「………………うんまって」
「////」
俺が渡辺を見てる?まさか。
「大体渡辺は俺より後ろなんだから見るなんて…」
「授業中に限ったことじゃないよ。お昼食べてる時とか登校中とか体育のときとかも。たまに見つめあってる時もあったよ」
「「嘘!?」」
まずいな…完全に無意識だった。というかそんなこと聞いたら余計意識しちゃうじゃん…
「お、俺そんなに見てたか…?」
「うん…なんか、見られてるなぁって思ってたけど////私の方こそそんなに見てた?////」
「かなりな。もう後ろから刺されるんじゃないかってレベルで…」
「そ、そっか…」
「お、おう…」
なんとも形容しがたい微妙な空気が流れる。
「はいはいイチャつかなーい」
「「イチャついてない!」」
「はぁ…全く、勘弁してくれよ。大体―――
ピーンポーンパーンポーンと、お馴染みの放送がなる。まだ昼休みだし誰か呼び出されるのか?と思っていると、案の定生徒の呼び出しだった。その生徒は…
『江口彼方君、高海千歌さん、渡辺曜さんの三人は至急理事長室まで来てください』
「「「俺(私)達?」」」
なんだろう、何か悪いことしたっけと疑問におもいつつも三人で理事長室に向かった。
衝撃。
理事長室に入って最初に沸いた感想だ。
そして次に沸き上がってきたのは憎悪。
忘れるはずがない、もう13年もたったが一日だってそいつの事を忘れた事など無かった。
「…どの面下げてその椅子に座ってんだ、人殺しがぁぁああ!!!!!!!!」
本来、鞠里さんが座るはずの高級そうな椅子には――――俺の父親。江口政孝が座っていた。
「やぁ彼方。久しぶりだねぇ…13年ぶりか」
「やぁじゃねえぞタコ!殺す…今すぐ殺してやる!!!!」
様々な感情がグルグルと俺の頭を支配するなかで一つだけ、はっきりと理解した感情があった。
殺意だ。
母さんをまるでボロ雑巾の如く扱い精神的に追い詰めた張本人である政孝を見て、小さなどす黒い感情が芽生えたのを理解した。その刹那、小さくて今にも消えそうだった漆黒の炎がまるでナイフのように鋭い炎に変わっていた。
「まって彼方君!一回落ち着いて!」
高海の制止の声が聞こえたがそんなものは知らん、俺は目の前のアレを断罪しなければならない。
親父に殴りかかろうと一歩踏み出した瞬間に誰かに抱き締められた。この感じは…前に一度経験している。
「待って、彼方君!私は君に人を殴って欲しくない…優しい彼方君がいいの!」
そこでやっと我に帰る。どうにかして拳を下ろした。
「へぇ…あの彼方に彼女か。お熱いねぇ~」
「…それで、私達はどうして呼ばれたんですか?」
「そう怖い顔をしないでよ渡辺サン。」
「なんでもいい。そこに座ってるのがマリーじゃなくててめぇな理由を教えろ」
渡辺のおかげでどうにか落ち着いた俺は最初に疑問をぶつける事にした。
「なぁに、簡単な事だよ。こんなこと政治家も大企業もよくやってるじゃないか。小原ホテルが今回そうしたように…」
「ま、さか…金で買収したとでも言いたいのか…!?」
政孝はニヤリと口角を上げる。
「さすが俺の息子だ。あのちっぽけなホテルチェーンなど俺にかかれば軽ーくほいっとねぇ…」
どうしてアレは人を怒らせるのが上手いのだろうか。しかもピンポイントで俺の怒りのツボを付いてくる。認めたくは無いが俺が嫌がる、もしくは貶されたくない点を的確に把握されている以上この男が自分の父親の他ならないと意識せざるをえない。
それが理解できたからどうにか冷静な自分を取り戻す事が出来た。
「…そうか、わかった。じゃあここに来た目的を教えろ」
「それも大した理由じゃない。この学校に男子がお前だけじゃかわいそうだろうと思ってな、もう一人男子を連れてきた」
「「「!!!」」」
別に男子一人でも困ってなどいない、そう反論しようとしたがすぐに引き下げた。あの悪鬼がまず家族に対して何かをしようとするはずがない。絶対に何か裏がある…!
「しかも嬉しい事に…そいつはお前の兄弟だ」
兄弟?バカ言え俺は一人っ子だ。いや、ということはつまり…
「…腹違いの、をつけ忘れんなよ」
「まぁそう怖い顔すんな。おーい入ってこい」
ガチャリと理事長室の重い扉を開けて入ってきたのは俺と同じかひとつ上くらい、しかしどこか昔の俺を彷彿させる少年が入ってきた。
「…江口披方。よろしく」
「いいか彼方、よく聞け。本来ならこの学校に披方だけを転入させる算段だったが凪が変な手回しをしたせいで俺の気分はすこぶる悪くなった。だから俺はこの学校を潰す」
凪―――母さんの名前を政孝はここに来て初めて口にした。変な手回しってのは母さんが遺言書にマリーの母親経由で俺を浦女に入学させたことだろう。
「お前のせいでこの学校は無くなるんだ。ったく東京のババァ共も余計なことしやがって…」
「――っ!かよねぇ達に何かしたのか!」
「あ?面倒だしあっちには有名人がいる。下手に手ぇ出すわけないだろ」
車窓から見える景色の様に流れていく状況に思考が追い付かない。浦女を潰す?ふざけるな、許せるわけがないだろそんなの。
それがわかっていてもそれが口に出ることは無かった。
「話はそれだけだ。さっさと消えろカス!」
この先どうしていいのかすらわからないまま、おぼつかない足取りで俺達は理事長室を出たのだった。
少年少女は絶望の淵に立った。
…お分かりいただけただろうか。
そりゃあテンション下がるわな!こんな鬱展開フラグたってりゃ書く方も読む方もやるせない気持ちになっちゃうよ!
まだAqoursが結成すらしてないのに、彼方たちは一体どうなってしまうのか!?そして彼方の腹違いの兄弟、被方との関係は!?
次回以降もどうぞ読んでやってくれると嬉しいです。高評価つけてくれるともっと嬉し…((
それではまた!アディオス!