異世界探訪記 作:赤野原淳太郎
どれだけのものがこの『異世界』に憧れを抱いただろう
どれだけのものがこの『異世界』に行きたいと願ったのだろう。
私は
異世界にいってきた。
君たちは、『異世界』という言葉に、ときめきや、希望などの想いを馳せたことはないだろうか。
かくいう私もその『異世界』に魅せられたうちの一人なのだが、異世界物の小説を読んで見ていて面白い、見ていて楽しい、行ってみたい。などの想いは抱くものの、つまらない、行きたくないなどの想いは不思議と湧いては来なかった。
そして私は先日、その『異世界』から帰ってきた。
そしてこれは、私が体験した異世界での生活を思い出しつつ、君たちと共有の想いを感じたい。という自己満足で書き始めたただのリハビリ的小説である。
さて、事の始まりから語っていこう。あれはつい昨日のことだった。私は毎朝の日課であるランニングを終え、ひとり帰路についていた。その日は、やけに涼しかったというのが私の頭の中に残っている。
その帰り道の途中に何とも言えない妙な違和感を覚え、速めに帰ろうと歩を進めた。が、いっこうに家につく気配は見られず、それどころか、周りの風景まで変わっていく。周りにあった住宅や木々はきれいに消え、今走っている私の足に非常になじみのある道路も地面の感覚はあるものの視覚的には真っ白に消えていた。そしてとうとう地面を踏みしめる感覚も消え失せ、気が付くと私は、一枚の扉(これを扉と形容してもいいのかは定かではないが)の前に立っていた。
想像するなら神社の鳥居に教会によくある天使などが描かれている重厚な両開きの扉が付いているという、どう神様仏様が頑張ったとしてもなしえないような夢のコラボレーションが実現していた。その扉の前で私の足はぴたりと止まっていた。
何故だ。何故かだ。
その門が徐々に開いてゆく。門の隙間から見えたものは、『神々しい』という言葉をそのまま現実に映したような人(人かどうかはわからないが、神々しさを見る限りでは単なる人間ではなさそうな)が立っていた。
彼(彼女だったかもしれない)は、私の前まで歩いてきた。当の私は恥ずかしいことに尻もちをき、彼(女)を見上げていた。そして彼(女)は告げる
「Sən kimsən?」
多分どこかの国の言葉であろうものを彼(女)は告げる。
私はその言葉が何を表しているのかがわからずに、彼(女)を見上げていると、彼(女)は怪訝な顔をしてまた言葉を変えて告げた
「നിങ്ങ ആരാണ്?」
さっきより分からない。何と言ってるのか皆目検討すらつかない
彼(女)はいったい私に何を伝えたいのか、何を聞きたいのか。さっぱりわからず、私には
「あ、あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ?」
小学生・あるいは中学生レベルの英語カタカナの発音並の英語を口にするので精いっぱいだった
そして彼(女)ははっとした顔になり、日本語で語りかけてきた。
「あなたは何者ですか?」
どうやら私の日本なまりの英語を聞いて、英語が理解できないことを悟ったのだろう。
彼(女)はなんだか少しだけ申し訳なさそうな顔をしている。そんな顔をしないでくれ
そしてさらにもう一つ分かったことがある。性別だ。
彼(女)の声はどことなく女性寄りな気がする。私の主観、気がするだけであって、決して女性であると決まったわけではない。
「…ここはどこで、あなたは誰ですか…?」
私は少しおどおどと、彼女に聞いた。
「ここはどこか、という問いに答えると、いくつもある世界のうちの一つです。
そして私は誰か、という問いに答えるのであれば…あなた方が言うところの……やっぱり内緒です」
彼女はにこやかに答える。
「…大丈夫ですか…?」
決して大丈夫ではない。