たぶんこれで進んでいけます!(たぶん
1話1話ドキドキさせていけたらいいなと思います!
「2年ぶーりデスか……」
ヘリコプターの窓から西に落ちていく夕日が、彼女が着ている白の服を際立たせる。
帽子も白で統一され、その帽子から流れていく髪は金色に輝いている。
顔立ちはイタリア系で、まさに外国人と言ったところだ。
雰囲気や恰好からしてセレブ感が漂っている彼女。
どこか遠くを物憂げに見つめている。
ヘリコプターが向かう先は、見るからに高級感があるホテル。
隣にいる彼女、小原鞠莉ことマリーの父が運営しているチェーンのホテルらしい。
「わざわざこんな田舎にホテルなんて作らなくても……」
彼女を数秒見つめた後、窓の外を見回しながら呟く。
事実、辺りは何もない。
たまたま見えた海の家ぐらいだ。
「NO! ここだからいいのよ!」
優しい声音だったが、英語の発音は飛び切りよく、俺を諭すような声で答える。
振り向くと、人差し指を顔の前に立て、自慢げな顔をしていた。
「楽しみか? この学校のスクールアイドル」
ここに来た目的の一つであるスクールアイドルのことを、マリーに問う。
「YES! どんな子たちか早く見たいの!」
先程までとは打って変わり何かに憧れる少女のように、両手を合わせ天井を見つめている。
何に憧れ、何の為にスクールアイドルを追うのか。
なぜマリーをここまで動かすのか。
俺の中でも一つの疑問が浮かんでいた。
それを知るために、マリーと一緒に来た。
マリーがそこまで興味をもつのがあるのか。
それを確かめるために……
***
ホテルのエレベーターに乗り、俺とマリーは最上階に着いた。
辺りはもうとっくに暗くなっており、もう既に寝る時間だった。
「一部屋で、一つのベッドしかないけどいいのか?」
ふと疑問に思ったことを口に出す。
「何か悪いことでも?」
「いや、俺男だし」
「あなた、だってsyougakuseiじゃない」
きょとんとした顔で、こちらを向いてくる。
誰が小学生だ。
冗談はよしこちゃんだけにしてくれ?
……。
自分の体の下に目を向け、床との距離がとても短いことに改めて気づく。
***
俺は気づいたら、マリーの実家、小原家にいた。
マリーが言うには、玄関の前で倒れていたのを見つけてすぐ家に運んだらしい。
体は元気だったが、唯一異常な点があった。
小学一年生並みの身長になっていたことだ。
中身も記憶を失くしていたが、日常に支障はなかったので特には気にしなかったが、幸いにも、マリーの家はお金持ちだったため、ありとあらゆる手段で俺の親を探してくれたが、結局見つからず小原家に引き取られる形となった。
その後、マリーが静岡県沼津市に引っ越すということだったので、ついでに俺もついて行くことになった。
***
なるほど、ご丁寧な昔話をどうもありがとう、俺の脳よ。
「なぁ、ほんとに一緒に寝るのか?」
ベッドで先に寝ているマリーに改めて不思議に聞き返す。
いや、だめよ? 見た目小学生だからって中身おっさんだから。
おっさんはね、女の子と一緒に寝ると狼になったりするんだよ?(たまに豚もいる)
そういうとこマリーちゃんよくわかってる?
「日本人のおっさんはみんなwolfに変身できるの?」
「そーだぞー。 怖いぞー。」
ビビらせるつもりは更々なく、一つ返事で返す。
なぜか、会話が成り立っているのは怖いのでここでは置いておくぞ。
「駆がその気なら、その、wolfになっても……、
いいよ?」
とても甘い声が耳元まで届き、耳元から体中までゾクゾクしてくる。
緊張して体が固まり、どうにかして動こうと口の中に溜まっていた唾を飲み込む。
心臓の鼓動もだんだん小刻みに揺れだし、マリーにも聞こえるのではないかと思わせるほど音が大きくなっていた。
やばい、そろそろ限界かも。
「It’s joke!」
「Oh my god!!」
変なことを考えているうちに、マリーから甲高い声でお断りの通達が入る。
ついつい英語で返しちゃったよ。
「今夜は仕方ないデス。一緒に寝ましょ?」
マリーはそう言って、布団から頭をだし片手で目をこすりながら甘えたように答える。
眠たそうな顔が、マリーの可愛さを更に引き立て、これがまた俺の心臓をバクバクさせる。
どこから見ても、普通に美人で可愛いんだよ。
「早く入ってくださいデス」
「っ……」
マリーを待たせるわけにはいかなかったのでやむを得ず、布団に入ることにした。
布団は、マリーの体温で温まっておりその温もりが気になってしょうがない。
しかも、横からマリーの息がかかってきて動こうにも動けず、マリーは俺が布団の中に入ったのを確認して、すぐに寝てしまっていた。
にしても、寝顔を初めてこんなにじっくり見たな。
……。
いかんいかん、精神統一。不撓不屈。
心臓は未だにマラソン中のようにバクバクしていたが、横になるとドッと疲れが押し寄せてくる。
ふっ、体は小学生ってことか。
くさそうで全くくさくないセリフを頭に浮かべて、俺もすぐに寝ることにした。
***
「起きてください、駆」
「ん、あと、4年寝かせて……」
「いや、長すぎデス。 いいから、早くGet up!」
思いっきしおふとぅんを剥がされ、まだ寒さが若干残る春先の朝は俺が冬眠から出てくるのには早かった。
「いや~! 死ぬ~!」
大げさなリアクションをとったが、ちらっとマリーの顔を伺おうとしたらすでにいない。
誰もいなくなった部屋を見渡し、窓の外にある青い海を見つめ、白いカモメが自由に飛び回り、心が躍るような気持ちになる。
あ、ミス。あぁ~^心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~。
心も晴れ、起き上がろうとしたとき左手で柔らかいなにかを掴む。
そう、枕だ。
決して、女性が持っているものではなく、この枕はマリーが使っていた、使用済みのやつ。
ごくり。
マリーは一足先に、部屋を出て行っている。
この部屋の掃除をする人はまだ入ってこないはずだ。
大丈夫、大丈夫。
あくまでも、匂いチェックだから。
両手で枕を丁寧に持ち上げるも、手が小刻みに揺れなかなか狙いが定まらない。
鼻息が荒くなっていることが、自分でも分かる。
「いや、だめだ! 男、駆、これ以上はだめだ!」
自分の声を出し、なんとか自我を保つ。
「駆?」
ドアが開いた音と同時に、マリーが俺を呼ぶ声がする。
体からさっと血の気が引き、一瞬にして俺の時間が止まった気がした。
「はい?」
慌てて手に持っていた枕を放り、何事もなかったようにマリーに返事をする。
予想外の呼び声だったので、声が上ずってしまったことに今更気づいた。
「ど、どーした?」
「いえ、まだsleepしてるのかなって」
「お、おう。 そうかそうか、うん。 いま、起きるから。 すぐ、起きるから」
自分でもわかるくらい片言で、内容のない返事をしてしまう。
「ふふっ」
何かを見透かしたように、マリーが笑っている。
ばれてないよね? 家から追い出されたりしないよね?
***
着替えを済ませて、ホテルのレストランで朝食をとることにした。
レストランは天井にシャンデリアが付いており、それでいて高く、窓も大きい。さらにホテルはまだ営業してないらしく、マリーと二人きりなので相当広く感じる。
真ん中には、バイキング形式で料理が置かれており、たった二人しかいないのに、相当な量があった。
小原家でこういう豪華さには何回も驚いたが、それでも俺の気持ちをそわそわさせるほど、このホテルも壮観だ。
「駆、今日私は学校に行きまーす!」
食事中にも関わらず、席を立ちあがりながら大声で言う。
ふと、マリーの食事の皿を見るととっくに完食していて、食事のスピードから見ても、今日の学校が楽しみらしい。
子供っぽいところもあったり、なかったり。
いまいちマリーの特徴が掴めないんだよな。
「あぁ、理事長の件だったか?」
思い出したようにマリーに答える。
浦の星女学院。
これから、マリーのいく高校だ。
マリーの家がかなりの出資をしており、大人の権力で理事長になったらしい。
高校三年生で理事長とはなかなか関心したものだな。うんうん。
いや、大人の権限とかは触れちゃいけないから。暗黙の了解だから。
だって小学生だもん!
「そーデス! 駆は小学校の手続きがまだなので、お留守番ね」
「小学校か……」
ずいぶん懐かしいような単語を耳にする。
学校で過ごしていた記憶はあるけど、内容がない。
誰かと一緒にいたけど、顔は思い出せない。
こんな変なもやもやがたまに自分の中で時に混乱を巻き起こす。
苦しみや怒りなどのありとあらゆる感情がごちゃまぜになり、自分自身を見失うことだってあった。
「駆、駆?」
いつの間にかマリーに体を揺らされ、心配そうな顔を浮かべられている。
マリーには心配はかけてはいけない。
俺を救ってくれた唯一の人だから。
「あ、ごめんごめん。 ちょっと考えごとしてたわ」
「もう、しっかりしてよね。 じゃあ、行ってきまーす!」
大げさに敬礼をして、スキップで席から離れていく。
誰もいなくなったレストランでふと溜め息をついてしまう。
いつか、マリーに恩返しができればな……
「あ、そうだ忘れてた」
マリーが何かを思い出し、こちらに戻ってくる。
何か忘れものか?
「ちゅっ」
柔らかい何かが俺の頬に当たる。
何が起こったかわからないまま、俺の思考回路は停止していた。
マリーはすぐに部屋を飛び出してしまっていた。
自分の頬を触り、何があったかを思い出す。
一瞬前の出来事を思いだし、みるみる体温が上がる。
顔までも尋常じゃないほど熱くなっていた。たぶん客観的に見たら顔は真っ赤だろう。
「さ、さぁ、俺も荷物の整理でもするか!」
大きな声を出して気を紛らす。
顔を赤くするぐらいだったらやらなきゃいいのに……
こんなことを考えると、また思い出してしまいそうだったので、早く部屋へ行くことにした。
***
自分の荷物を整理していたら、とっくに時計の短い針は三時を過ぎていた。
「ちょっと散歩でもしてくるか……」
荷物整理も大方片付いたから、このまま何もしないっていうのも退屈だしな。
「まずは、駅ぐらいに行っとくか」
ここらのことはなにも知らなかったので、とりあえず知っていた沼津の駅に行く。
「やっぱり、ここまでくると大違いだな……」
周りを見渡しても、人の流れが止まっているところはない。
男同士でゲラゲラと笑いながら歩いてるグループもあれば、女の子二人で女子トークしているのもいる。ついでに、カップルでいちゃついてるのも目についた。
は? ふざけんな。
カップルに嫌悪の眼差しを送っておいたが、何あの子かわいいー、と言ってスルーされてしまう。
で、でたー。彼氏の前では何でも可愛いと言う奴ー。
カップルの不満を心の中でぶちまけたところで、なにやら人の流れを止めてるところがあった。
「なんだ、 あれは?」
その賑わいが気になり、自分の足がそちらに向かっていた。
その人混みから出てきた、jkらが持っていたのはチラシのようなもの。
「ライブやります! よかったらぜひ!」
体のせいか、ついつい上を見ながら歩いていたので、後ろでしゃがんでチラシを渡してくれてる女の子に気づかなかった。
髪型はショートカットで、髪の色はオレンジをしている。動きやすそうな恰好をしており見るからに元気そうな子だった。
「あ、ありがとおねーちゃん」
ついつい反射的に、小学生探偵にも負けんばかりの小学生ボイスを使って感謝を伝える。
もらったチラシの内容は、近日ライブを開催するということの宣伝だった。
「ライブって、おねーちゃんが歌ったり踊ったりするの?」
確認の為、女の子に尋ねてみる。
チラシのイラストで三人の小さな女の子が描かれており、その中に目の前の女の子らしきひともいた。
「うん! そーだよ!」
自信満々に答え、目の奥で何かを決意したようなものが見えたような気がした。
なるほど……
この子がマリーの言っていたスクールアイドルか。
「じゃあ、私まだチラシ配りがあるから行くね!」
素直な笑顔を浮かべ、挨拶をしてまた別の人にチラシを配りに行ってしまった。
ちょっとしか顔を合わせてないのにいい子だと思ってしまうほど、裏がなく印象が良い。
「へぇ、面白そうだな……」
チラシにしっかりと目を向け、隅々まで見る。
スクールアイドルか……
ちょっとは遊び相手になるかな……