ラブライブバース   作:肇奏至

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第二話「伝説の始まり」

 太陽がギラギラと光り、俺の体を突き刺してくる。

 

 そんな誰もが家から出たくないとある日、なぜ俺はこんなところにいる?

 早く帰って、エアコンの効いた部屋でゲームがしたいというのに。

 それなのに、なぜ……

 

「先輩禁止よ!」

 

 突如として告げられた一言。

 その企画を知らされていなかったもの達は皆、きょとんとした顔である。

 俺の周りには、旅行バッグを持っている9人の女の子。

 誰しもが、ハーレム状態と言うであろうこの場面。

 

 ふざけんな。

 俺は夏休み、部屋から出ません条約を結んだはずだろ。

 

「おい、先輩禁止なんかどうでもいい。まず俺を連れて来た理由から説明しろ」

 

 眉間にしわを寄せながら、自分の不満をぶちまけた。

 

「駆はもっと先輩に敬意を持つべきだわ。一応ここにいる全員先輩なんだから」

 

 俺の不満を颯爽と躱し、先程からこの場を仕切っている彼女。

 容姿端麗、スタイル抜群。おまけにクォーターで金髪。

 さらには生徒会長も務めており、非の打ち所がない。

 

 音ノ木坂学院三年、絢瀬絵里。

 

「そうよ! もっとあんたは礼儀を知りなさい!」

 

 急に横から喋りかけてきた、(自称)大銀河宇宙ナンバーワンアイドル。

 ロリっ子。ぺちゃぱい。

 

 同じく三年、矢澤にこ。

 

「はいはい、かしこまりました。銀河なんちゃらアイドルさん」

 

「こんの! あんた本当に腹立つわね!」

 

 頭グリグリやめい、痛いから。

 

 この短気少女、絵里と同い年だよな?

 

 

 いやどっからどう見ても、こいつは……

 

「ちょっと、あんた! 今失礼なこと考えたでしょ!」

 

 ちっ、変なところで勘のいい奴め。

 

「まぁまぁ、駆くんとにこっちほんま仲ええんやなぁ」

 

 おっとりとした声の関西弁。

 それに加えて、弾力のある胸。

 面倒見がよく、誰とでも気さくに喋ることができる。

 いわゆる、お母さん的存在。

 

 同じく三年、東條 希。

 

 しかしまあ、正直なところ俺の一番苦手なタイプでもある。

 ほんとに周りに気配りすることができ、メンバーのケアは欠かさない。

 メンバーでない俺までも親切に接してくれる。

 嫌いというわけではないが、扱いにくいというのが素直な気持ちだった。

 

「じゃあ、時間もないし早く行きましょうか。 それじゃあにこ、部長から一言!」

 

 絵里も痺れを切らし、とっとと電車に乗りたいようだ。

 

 やめてあげて! アイドルなのに皆の視線にたじろいでるから!

 期待の眼差しやめたげて!

 

「しゅっぱーつ!」

 

 一瞬の静寂が駅の構内全域に広がった気がした。

 

 ほら、言わんこっちゃない。

 

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 

 ***

 

 

 ガタゴトと車内が揺れ、永遠と続くのではないかと思うほどの田んぼ道を突き進む。

 窓からくる陽光も、どこか懐かしく思えてしまう。

 そんな事を物思いに耽っていると、横からすごい視線を感じる。

 

「あの、どしたの? かよちん?」

 

 横からすごい物欲しそうな視線を俺のポテチに向けている。

 

 穏やかさ溢れる顔に、ショートカットの髪が更に彼女らしさを出す。

 見ているだけで自然と心が浄化されていく。

 普段は内気でおとなしい性格だが……

 

「あの、そのカードってアイドルのトライアドプリズムじゃない!? しかも全国に数枚しかないって言われてるレジェンドカードじゃない!?」

 

 アイドルのことになるとすごい勢いで喋りだす。

 

 かよちんこと、音ノ木坂学院一年、小泉 花陽。

 

どうやら俺が食べてる、ポテチの付録のカードに興味があるらしい。

  

 それにしても、めっちゃ近いんだが。

 あと数センチすれば、顔と顔がぶつかっちゃうレベル。 

 

「かよちん、あのね、近い」

 

「あ、ご、ごめんね」 

 

 えへへと照笑いしながら俺から離れていく。

 

 危なかったわー、あとちょっとで死ぬとこだったわー。

 かよちん見てると、俺の肉体ごと浄化されそうな気がしてしまうのはなぜだ?

 

「かよちんこれが欲しいの?」

 

 俺がほれほれと言わんばかりに花陽に見せつける。

 前に出しては引き、引いては前に出すことを繰り返す。

 その度に、花陽の表情が喜んだり悲しくなったりする。

 

 楽しい。

 

「ちょっと、駆くん。かよちんで遊ばないで欲しいにゃ」

 

 かよちんの反対方向から、俺のカードが取り上げられる。

 振り向くと、目を細め頬を膨らませながら俺の顔がじっと睨まれる。

 まるで、縄張り争いをする猫のように。

 

 そう、この猫のような彼女。

 ショートカットでオレンジ色の髪型が印象的である。

 体育会系でいつも明るく、動きやすそうな服装や軽そうな短い髪型からしてボーイッシュな感じ。

 

 同じく一年、星空 凛。

 

 

「はい、かよちん。これ、あーげる」

 

 俺に断りも入れずに、花陽に俺のカードを渡す。

 

「え、でもこれ駆くんのじゃ……」

 

 戸惑っている顔をしているかよだが、彼女の手をよく見て欲しい。

 

 いや、絶対離さない手でしょそれ! 

 めっちゃ、手に力がグッて入ってるもん。

 

「いいよ、あげるよ」

 

 さすがにあの欲しそうな顔と手を見てしまったら返してとは言えない。

 まぁ別に欲しい訳じゃなかったから、あとちょっと遊んだら返したのに。

 

「それはなんていうアイドルのカードにゃ?」

 

「これはねトライ……」

 

 ちょっとこれ以上聞くと長くなりそうだったので、向かいに優雅に読書しながら座っている赤髪の方に行く。

 

「膝枕して」

 

 さりげなく横に座り、真剣な顔をして自分の欲をドストレートで真姫に言う。

 

「は? ナニソレイミワカンナイ」

 

 いただきました。

 

 すごい蔑んだ目で見てくる彼女。

 

 この子の父は西木野総合病院医院長をしていて、かなりお金持ち。

 今回行く合宿で泊まらせていただく別荘を貸してくれちゃたりしている。

 

 なんとも情熱的な赤い色の髪と、性格はとてもクール。

 どこか顔立ちも大人びている。

 勉強もできて、ピアノも弾ける。

 まさに、才色兼備。

 

 同じく一年、西木野 真姫。

 

 

 おまけに、ツンデレ。

 

 いや、もうたまらん!!

 むしろツンデレ=真姫だから。

 ピアノが弾けるとか、曲が作れるとかは二の次だね。

 

 俺がじっと真姫のほうを見つめツンデレについて考えてたら、顔を少し赤らめなら顔の 横辺りにある髪をくるくる回していた。

 

「何か用か?」

 

「こっちのセリフよ!」

 

「ちょっと、電車の中では静かに」

 

 人差し指を立て、しーっと真姫にやる。

 恥ずかしさからなのか顔を真っ赤にして、俺を睨みつけてくる。

 

 この悔しそうな顔がたまんないだよなあ。

 やめられない、止まらない。

 

「ということで、俺は寝る、おやすみ」

 

 ちょっと疲れてしまったので、真姫の肩を借りて寝る。

 人は全くいなかったので、それなりにリラックスすることができたが……

 

「この男は~!」

 

 目を瞑っていたので、顔は見えなかったが何かを察することはできた。

 今のうちにこのいい匂いを堪能しておこう。

 

 クンクン。

 

「いいから…… 

 

 とっとと…… 

 

 離れなさい!」

 

「ごば!」

 

 真姫に張り倒され、一瞬宙を舞い頭が硬い何かにぶつかる。

 

 痛い、とにかく痛い。

 

 あれ、それにしても真姫からいい匂いが消えて、平たく冷たくなったぞ?

 まあいい、真姫の太ももと思えばどこでも寝れる。

 

 俺はうつ伏せのまま、もう一度深い眠りにつくことにした。

 

「って床で寝るな~!」

 

 

 

「ぐぬぬ……」

 

* * *

 

 照りつける太陽が白い砂浜を第二の海のようにきらきらさせている。

 

 

 説明がめんどい。

 つまり、ここは砂浜で暑いってことだ。

 

 こんなクソ暑い中でも、彼女らは元気そうにきゃっきゃうふふしてやがる。

 

 まぢで、JKってわんちゃん最強じゃね?

 

 そんなことを思っている俺は、パラソルの中でドリンクと恰好だけ夏らしい体験をしていた。

 

「なあ、真姫はあっちで遊ばなくていいのか?」

 

 俺の隣でビーチに来たのにも関わらず、読書をしているこの方。

 

「別に」

 

「ほんとはみんなと仲良く遊びたいのに、どう接していいかわからないわ。教えてよ、ねえ駆……ってか?」

 

 真姫の言葉を遮り、海の方を見ながらあざとく言葉を投げ掛ける。

 さっきまで本にしか目がいってなかったのに、俺の言葉を聞いてこちら側に踏み入ってくるなと言わんばかりの鋭い目をしている。

 

「図星か?」

 

 にたぁーっと笑いながら更に追い打ちをかけるように、真姫を追い込む。

 

「何を言ってるかよくわからないわ」

 

 まるでどうしたらいいかわからない子供のように。

 自分の気持ちを抑え込むように、隠すようにまた読書をしてしまう。

 

 

 俺の仕事はこのぐらいでいいかな。

 後は、占い師にでも任せておこう。

 

「隣いいかしら? って、何であんたがここにいるのよ!」

 

 別にどこに居たっていいだろ、このロリっ子ツインテール。

 

「この席どーぞ。俺は向こうで遊んでくるよ」

 

 一瞬真姫がむっとした表情をしたような気がしたが、ロリっ子がうるさいので席を譲る。

 

「今、あんた失礼なこと考えてたでしょ!」

 

 ちっ、相変わらず勘だけはいいやつめ。

 

 なんか、ガミガミと怒っているが無視してビーチバレーをやっている方に歩いていく。

 

「あ、そうだ。にこ、その飲みかけのジュースやるよ」

 

「な…… 何を言ってんの! 飲む訳ないじゃない!」

 

 なぜか顔を真っ赤にして、拒否反応を示している。

 

 ロリっ子が別に気にするなよ。

 

 

 

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 ん? また唸り声か。

 何か行くときからずっとこの声が聞こえてくるんだが。

 

「って、うお!」

 

 気づいたら俺の目の前で、スゲー見てくる女の子が一人。

 

 いや、近い近い。とにかく近い。

 

「何でそんなに怒ってるんだよ、穂乃果」

 

「別に怒ってないもん」

 

 顔をふいっと横に向けるが、そのふいっでさえぶつかりそうになる。

 

 オレンジの髪で、頭のてっぺん辺りで一つ縛り。

 いつもは見るからに元気そうで嫌になるほどなのに、今日はご機嫌ななめ。

 

 

 音ノ木坂学院二年、高坂 穂乃果。

 

 

 こいつとは生まれた時からずっと一緒にいるいわゆる幼馴染というやつだ。

 

 俺はとにかく飽き性だった。

 何をやるにしてもすぐに諦め、その度に穂乃果に背中を押されたり、時には俺が怒ったり。

 

 しかし彼女は自分がやると決めたことには全力を尽くすタイプだった。

 

 その性格は、俺には輝いていて、眩しくて。

 

 

 そんな彼女に俺は憧れというのもあったかもしれない。

 

 結局、腐れ縁というやつでずるずると今この場所にいる。

 

 

 

「なあ、そろそろ機嫌直してくれよ」

 

 穂乃果がプンスカ怒っているので、ヤシの木の下に場所を移してなだめてるところだ。

 

「だから、怒ってないって!」

 

「怒ってるじゃねえかよ!」

 

 こうなったらとことん話を聞かない。

 

 昔から喧嘩はよくしていたが、最近では一方的なことが多い。

 

 特にこのメンバーでいると、よくこうなる。

 

「かけくんのバカ……」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「何も言ってない!」

 

 またお山座りをして、顔を伏せてしまった。

 

 いや、お前はガキか!

 

「ちら、ちら」

 

 すげーちらちら見てくるんだけど。

 言葉に出ちゃうほど、ちらちらしてるんだけど。

 

「あー、もう。しょうがねえな」

 

 自分の頭を掻きむしり、長めの深呼吸をとる。

 何かを感じたのか、穂乃果も顔を上げる。

 

 

 一段落ついたところで、穂乃果の手をぎゅっと握り、精一杯の甘い声で謝る。

 

「穂乃果、俺が間違ってたよ。ごめん」

 

 恥かしー!

 死にたい。一旦死んで落ち着きたい。

 

「もー! 仕方ないなー、わかればいいんだよー! わかれば!」

 

 何一つ原因はわからなかったが、顔がすごい明るく声も上機嫌に戻り、俺の肩をビシバシ叩くぐらいまでにはなった。

 

 なんだろうすごいうざい。

 そして痛い。

 

 ていうか、こいつ一応リーダーだよな。

 

 

 

「こんなところに居たんですか。二人とも」

 

 俺らを探していたらしく若干怒ってる、青髪ロングのストレートヘアー。

 一応、こいつとも幼馴染である。

 文武両道ができる子で、弓道部とスクールアイドルを兼部している。

 性格は一見大和撫子と言ったところだが、実はとてもピュアだったりする。

 

 

 同じく二年、園田 海未。

 

 

「助かったよ海未~」

 

 泣きすがるようにして海未に抱き着く。

 

「なっ、急になんですか!」

 

 かなり動揺した様子で、俺を引きはがそうとする。

 

「ちょっと、海未ちゃん! かけくんに話といちゃつかないで!」

 

「す、すいません?」

 

 未だにたじろいでいて、まだ状況を理解できていない様子だ。

 

 そう、こんな感じで遊べたりもしちゃう。

 にことはまた違ったからかい方ができるので、とても楽しい。

 

「で、何の用だ?」

 

 気を取り直すために一旦咳払いを入れる。

 別にそんな大事なことでもないだろ。

 

「よし、それじゃあ飯でも食いに戻るか! ところで海未は何しに来たんだ?」

 

 海未に抱き着くのをやめて、その場から離れようとする。

 しかし、後ろに立ってる海未の方から凄まじい殺気。

 

「か・け・る?」

 

* * *

 

 とりあえず、海未に説教されました。

 

 そんな疲れた状態、みんなが家の中が喧噪に包まれて今日この頃。

 そんな彼女らを遠目に見つめ、俺はソファに腰を掛けていた。

 

「お疲れ様。駆くん」

 

 甲高い声がどこか可愛さを感じ、とても優しく聞こえる。

 

 笑顔で俺に紅茶を差し出し、お盆を抱えたまま俺の隣に座る彼女。

 

 まあ、幼馴染だ。

 メンバーの中ではそんな目立つ方ではないが、かなりスタイルはいい。

 長くしなやかに伸びた髪も彼女のスタイルに結びついてるのかもしれない。

 そして、何と言っても服装だ。

 昔から変わらず、着ている服は洒落ている。

 

 同じく二年、南 小鳥。

 

まあ、俺リア充じゃないからあんまり現世のこと知らんけど。

 

 しかし難点なのが自分の気持ちをあまり表に出さないこと。

 もっと素直に、正直に思ってることを言った方がいいと思う。

 

「どーすんだよ。 服飾の件」

 

 俺の唐突な発言に驚いたのか、かなりはっとした表情をしている。

 

「え? 何の事かな?」

 

 目線を外し、わざとらしい逃げ方をする。

 

「いつまでもそんなんじゃ駄目だぞ。 自分が思ってるより小鳥っていう存在は大きいんだからな」

 

 俺が思っていることを率直に投げ掛ける。

 

 今小鳥に必要なのは、主張できる力だ。

 小鳥は周りに気を遣い過ぎてる。

 ある意味、μ’sメンバーとしての自覚が足りない。

 

 やはり、チームというのは難しいのかもしれない。

 お互いを下手に知り過ぎてしまっているから。

 だから、変に気を遣ってしまったり、一歩引いてしまったり。

 けれど、それでもやっぱりお互いの気持ちをぶつけ合えるこその仲間だと思う。

 

「でも、みんなは今大事な時だから……」

 

「ほんとにそう思ってるのか?」

 

 まあ、こんなことが一般論だろ?

 

 俺は首をかなり曲げて、小鳥の方をじっと見つめる。

 

 いや、決して怠惰担当じゃないから。

 

「大事な時だからこそ、なぜ相談しない? 親友でも幼馴染でもないμ’s心のどこかでどうでもいいと思ってるんじゃないか?」

 

「そんなことない!」

 

 小鳥の怒号が飛び、周囲の雰囲気が凍る。

 皆が俺たちの方へと視線を向け、何があったのかと心配そうな目だ。

 

「だったらなぜチームメイトに相談しようとしない? 親友に裏切られるのは嫌か? 幼馴染に嫌われるのが怖いか?」

 

「違う!」

 

「じゃあ、話しに行けよ。お前らの絆は仲間って以前に親友だろうよ」

 

 ここからどうするかは小鳥次第だ。

 後は任せたぞ、リーダー。

 

「小鳥ちゃんどうしたの? かけくんにいじめられた?」

 

 誰よりも早く、小鳥の傍に近づいてきた幼馴染が二人。

 それに続いて、小鳥の元へやってくる六人。

 

 俺が心配するまでもなかったか。

 

 お前のことは、こいつらが一番わかってるよ。

 

 

 

 小鳥が穂乃果の手を握り、意を決したように口を開く。

 

「あのね、皆に聞いて欲しいことがあるの!」

 

 

* * *

 

 窓の外に見える月明りが、黒色の海を際立たせる。

 

「なーにやってんのよ。 こんなとこで」

 

 階段上にある大きな窓で夜景を楽しんでいたが、なんと振り向くとそこには、ロシア風の人形が……

 

 ではなく、金髪のクォーターがいた。

 

「絵里こそどーした? トイレでも行けなくなったか? なんなら付いて行ってもいいぞ」

 

ついさっきまで盛大に枕投げをしていた連中は今はもうぐっすりだ。

 

「駆が何かしないか監視してるの」

 

「さいですか。 で、先輩禁止は成功したか?」

 

 本来の目的の一つに話を逸らす。

 

「おかげさまで何とかなったわ。

 

 で、いつから小鳥の件は気づいてたの?」

 

 ずる賢そうな笑みとともに、温和な声で俺に尋ねてくる。

 

 あざといけど、可愛いと思ってしまう自分がいる。

 

 普段結んでるのにオフな時は何も手入れしてない髪って萌えるよね?

 

「ここに来る前からかな。執拗に携帯いじってたし、穂乃果に喋りかけようとして、何度もやっぱいいやってなってたし。 まあそれに気づかない穂乃果も悪いと思うが」

 

「それだけで小鳥の服飾の件がわかったの!?」

 

「いや、デザイナーの件は知らなかった。 まさか海外に行くなんて思いもしないだろ?」

 

あっはっは、って言いそうになるぐらい大きな口を開けたが、絵里に閉じられてしまう。

 

「相変わらずあなたのその観察眼どーかしてるわね」

 

「そりゃ、どーも。 絵里も心配ならいつでも体の隅々まで診てやるぞ?」

 

 俺の手がうにょうにょし始める。

 

「じゃあお言葉に甘えて、今日の夜診てもらおうかしら?」

 

「なっ……」

 

 ちょっと、待て。

 落ち着け俺の心臓とうにょうにょしてる手よ。

 いや、手はとっくに震え始めとったわ。

 

 やばい、もしかして、俺……

 

 

 変態?

 

「なーんて、冗談よ。 それじゃあね、駆。 おやすみ」

 

 ウインクを飛ばし、そのまま階段を下りて行く。

 

 しかし、途中で立ち止まり固まってる俺にもう一度話かける。

 

「駆いくら私が可愛いからってあんまりそういうことほいほい言っちゃ駄目よ?」

 

 まるで、貴族の女性のように上品な返しをしてくる。

 

 硬直状態で、月明りに照らされている俺は、

 

 

 

 

 紛れもない変態だったと今さらながら思う。

 




おい、駆。
俺は貴様を許さない。
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