ラブライブバース   作:肇奏至

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第四話「そろそろ、ピンチ欲しくない?」

前回のラブライブ!

合宿をしました。

 

 

 

 合宿も終わり、自分の目から見ても分け隔てなく名前で呼ぶようになり仲良くなっている印象を受ける。

 現在19位。

 そして、残された時間は残り2週間。

 

まあここからできることは限られてくるが、彼女たちには無理せず頑張ってもらいたい。

 

 「海未ちゃーん、しゅーごー」

 

 じりじりとした日差しが強く、暑さに悶えながらもやる気のない声で彼女を呼ぶ。

 

「何ですか! その府抜けた声は!」

 

 相も変わらず、すぐ怒りやがる、この青髪ロング少女。

 

「今日は練習終わりでいいだろ、大会近いし」

 

「そうですね。ちょうど私もそう思っていたところです」

 

 以上ですか?と俺がほかの意見がないことを確認して離れていく。

 離れていく仕草から、立ち振る舞いまで見事なまでの美しさだった。

 

「みなさーん。大会が近いので練習はここまでにします。お疲れ様でした」

 

 海未の掛け声で、練習中のメンバーが給水や、暑さから逃れるために日陰に避難しにくる。

 

「疲れたよ~、かけく~ん」

 

 汗でびしょびしょになったまま、俺にくっついてくる幼馴染。

 汗特有のツンとした匂いと、女の子らしい香りが混ざって……

 

「離れろ!」

 

 くっついてくる未確認幼馴染を払い除ける。

 危ねえ、一瞬おかしくなりそうだった。

 

「えー、いーじゃんたまには。かけくんのケチ」

 

「俺は世界で175番目ぐらいにケチだ。今更気づいたのか?」

 

「また微妙な数字だね」

 

 えへへと軽く笑っているちゅんちゅんよ。その天使のような笑顔でこのあほガールどうにかしてくれ。

 

「隙ありっ!」

 

 後方の死角からのダイビングアタック。

 そのまま押し倒される形となる。

 

「ぐ、息が……」

 

 普通なら胸の感触を確かめているところだが、性欲は命には勝てそうにない。

 

「穂乃果ちゃん! 駆くん息できてないよ!」

 

「え、あ! ごめんかけくん!」

 

 危ないと感じたのか、すぐに体をどかす。

 

「殺す気か!」

 

 

 

穂乃果に説教している最中、突然ドアが開く。

建付けが悪いのか、ドアを開けるときはぎしっと音が鳴るので全員の視線がドアから出

てきた人物に集まる。

そこにいた人物はスーツでビシッと決めて、外見からは笑顔という印象しかなく普通のどこにでもいる若そうなサラリーマンだった。

 

「あ! こんなところにいたんですね、高坂穂乃果さん!」

 

「え、あの……」

 

「穂乃果、知り合いか?」

 

シンプルに穂乃果に質問する。

 

「いや、全然知らない人」

 

「よし、じゃあ警察を呼ぼう」

 

「いやいや、ちょっと待ってくださいよ!」

 

俺が携帯に手をかけた瞬間、大げさに拒否反応を示す。

 

「申し遅れました。私、346プロのプロデューサーをやっております、東 篤哉と申します」

 

「「「「「「「346プロ!?」」」」」」」

 

俺、穂乃果、海未以外の全員が同じ返事をする。

  

「なんですか、それは」

 

「なーにーそれ?」

 

何も知らない二人は困った顔を知っている。

 

流行に疎いとこうなるのか。

 

いや、俺は知ってるから! 765プロでしょ! うん、765プロ。

 

「346プロっつうのはだな……」

 

「346プロっていうのはですね、アイドルの中でも現役トップのアイドルを多く有している、アイドル事務所のことです! その中にはですね……」

 

 俺が説明しようとしていた時にぱよちんのスイッチが入ったらしい。

 

 おいおい、いまから俺が765プロを一から説明してやろうと思ったのに、これじゃあ俺が話すまでもないな。

 いや、知ってるよ? 775プロでしょ?

 

それと聞かされている二人は何がなんだかわからない様子になっているのは放っておこう。

 

「で、その346プロの人がμ‘sに何の用っすか?」

 

 強めの口調で、東というプロデューサーを睨みつける。

 これは本能的な威嚇行為なのか、それとも防衛本能なのか。

 外見からじゃ判断できない、何かが東にはある気がした。

その何かがよくわからないままので、俺の心にも不安というものが渦巻く。

 

 東は少しためを作って、ゆっくりと口を開ける。

 

 

 

「―――――高坂穂乃果さん。あなたをスカウトしに来ました。2週間後に765プロが主催するアイドル発掘イベントに参加してもらいます」

 

 東の口から出てきた言葉は誰もが想像もつかなく、皆の思考は一瞬停止した。

 

「ちょっと待ってください! どういうことですか!」

 

 一番初めに口火を切ったのが、海未。

 しかし、海未らしくない落ち着きがない口調で理由を聞いている。

 

 俺自身別にアイドル事務所がスカウトに来るのは驚くようなことではなかった。

 確かに、今までμ‘sにこういう類のスカウトはなかったが別に来てもおかしくはないと思う。

なぜならここ最近のスクールアイドルが世間一般的には徐々に有名になってきているということからだ。

背景にはA-RISEの活躍があることは間違いない。

しかし、そこにμ‘sの名前が出てきても不思議ではない。

ただ、問題なのはスカウトのタイミングの問題だ。

 

「まあ、落ち着いてください。私もラブライブの大会を知らないなんてことはございません。しかしこの件は、高坂さんだけではありません。μ‘sにとっても大きなプラスになるでしょう」

 

「どういったことが、ですか?」

 

 さっきよりは落ち着きを取り戻した海未が、早く答えろといわんばかりに言葉を被せていく。

 

 それでも東は落ち着いた様子で、未だにニコニコしている。

 

「高坂さんがアイドルになれば、μ‘sの知名度は間違いなく上がります。そして、μ’sの知名度が上がれば、この学校の廃校は阻止されます。どうです? 全く悪い話じゃないでしょう?」

 

 なるほどな。

 敵ながら天晴とは、こういうことを指すのだろうか。

 穂乃果にとっても、他のメンバーにとっても悪いことがない。

 

今、なぜ彼女たちがスクールアイドルをやっているのか。

 それは、音乃木坂高校の廃校を阻止するため。

 それ以上に彼女らがスクールアイドルをする答えは見つかっていない。

 ただそれ以上のものが彼女らの心には、できている。そんな予感はする。

 

 どうしものか……。

 

 

 

「で、どういうことなんですか?」

 

 俺の隣にいた穂乃果が沈黙を破り、意味不明なことを言う。

 

「ぷっ、はははは」

 

「あ! かけくん笑ってないで説明してよ~」

 

 思わず吹いてしまった。

 そうだよな、こいつはそういう奴だった。

 

 物事を深く考えず、やると決めたことをやる。

 たぶん、それに憧れ、ついてきた結果が今の俺だ。

 

 

だから、俺はお前にいつまでも勝てないのかもしれない。

 

 その穂乃果の言葉をきっかけに、皆に笑顔や会話が出始める。

 

 彼女らの心にある答えのヒントを出してあげることも俺の役割だ。

 まだ、ゲームは始まったばかりだったぜ。

 

「東さん。俺からの質問があるんですが聞いてもらっていいっすか?」

 

「はい、何でしょう?」

 

 ニコニコ顔で俺の目をじっと見つめる。

 

 ここからが本番だぜ? 

 

 その化けの皮剥がしてやるよ。

 

「穂乃果が有名になる確証がありません。346プロのイベントで穂乃果が審査員の目に留まらなけば本末転倒です」

 

「だからこそ! この2週間精一杯頑張っていくつもりです!」

 

「つもりか…… 困るんですよね、それで結果が出なかったら」

 

「そんなことは、ラブライブ出場して廃校を阻止することの方が無謀ですよ。だったら可能性がある方が得策では?」

 

 顎に手を当て、考える。

 

「そうっすね。それも一理あります。

 

ただ、俺には穂乃果達と一緒にラブライブに出場して、廃校を阻止する自信があります。ここまでやってきた、経験があります」

 

 東に鋭い視線を向けたまま、戦う。

 

 静かな舌打ち。

 東の顔からは笑顔が薄れ始めていた。

 

「さっきからこっちが下手で聞いていれば……」

 

 囁くような、声とともに東の顔が怒りに変わっていく。

 

「ガキが調子乗ってんじゃねえぞ! いくらお前らが努力したところで廃校なんか防げるわけねえだろ! どう考えてもこっちの方が確立が高いんだよ!」

 

 激しい言葉、さっきよりは数倍大きい声で俺たちを圧倒してくる。

 周りのメンバーも恐怖で怯えているように見える。

 

「どっちがガキだよ。 未来がある高校生に向かってそれはねえだろ」

 

 静かに、誰にも聞こえない程度にそっと呟く。

 そして言葉を紡ぐ。

 

「大人ができる仕事っつうのは、高校生に夢や希望を与えることだろうが!」

 

「何を言っている。 大人が現実を教えないで誰が教える! お前らにはわからない世界だから、俺らが教えてやってんだよ!」

 

「違う!」

 

 俺は彼女らの不安を消し払うように叫ぶ。

 

「現実がなんだ。 廃校の危機になってんのはこいつらが一番わかってんだよ! その中で必死になって、どうにか廃校を阻止しようと頑張ってんだよ! これは確率なんかの問題じゃねえ、覚悟の問題だ!」

 

 俺は持てる限りの力を振り絞る。

 

 頼む、響いてくれ……

 

「駆の言う通りです。 アイドルになるかならないか、廃校を阻止できるのかできないのか、これは私達の問題です」

 

 冷静な声で絵里が俺の発言に続いてくる。

 それにこたえるかのように皆がそうだと後を追う。

 

「これが、俺らの答えっすよ。帰ってくださいよ、大人さん」

 

 吐き捨てるように東に投げつける。

 

「そうですね。すいません私も言いすぎました。高坂さん、もし気が変わったらそこに連絡ください。それでは。」

 

 東は先程のニコニコ顔に戻り、体を反転させドアに近づく。

 

「それと、努力が無駄だってこと、忘れるなよ」

 

 ぎりぎり、聞こえる程度の言葉を吐き捨てていく。

顔は見えなかったものの、笑顔は消えていたのだろう。

何か過去にあるのではないか、そう思わせるぐらいその言葉に強い念が

込められている気がした。

 

「ふぅ、なんとかなるもんだな」

 

「に、にこは全然びびってなかったわよ」

 

「おーい、声が震えてるぞー」

 

 何よ!と反抗してくる。

 いつも通りに戻ったか。

 

「それにしても、変な人だったわね」

 

 絵里がさっきの出来事を振り返る。

 

 

 

「私決めたよ!」

 

 ここで穂乃果が何かを決断し、立ち上がる。

 

 よし、ここからは俺も気合入れていかないとな。

 

 

「私、スクールアイドルも普通のアイドルもやる!」

 

 

 

……話、聞いてた?

 

 

 

 




東P、「ひがし」ではなく「あずま」です。
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