いや、どっちかっていうとアンチ、ヘイトに注意です。
◆
「ほんっと信じられないんだから!アンタ達は。私があれからどんな目にあったと思ってるの!」
ソーマファミリアの拠点、ホームの一角では輝夜は酒瓶を片手に怒鳴り散らしていた。眼前には土下座する三人。
平謝りするザニス、チャンドラ、カヌゥはばつが悪そうにしている。
ダンジョン探索で敵わない敵に遭遇し、男三人は彼女を置き去りにした。
自身の命を優先した判断は正しいと言えよう。しかし、当然その判断で犠牲となった者から不興を買うことは避けられない。
不死性をもつ輝夜は何十回もの死の果てにホームに帰り、男三人を見つけだし罵詈雑言を浴びせた。
勿論、暴力を伴う憂さ晴らしもたっぷりあった。
三人の顔面は腫れ上がり涙を流している。
現在、男三人はあらんかぎり酒を奢り、へりくだった態度と口調でご機嫌をとることに必死であった。
輝夜が剣呑な雰囲気を纏って数刻。
酒に酔っ払い陽気な空気に変わりだし、ザニスは見計らったように切り出す。
「あのう、明日からのダンジョン探索はどうしましょうか?」
彼の質問は明日の予定を聞いている。しかし同時に、これからも自分達とパーティーを組み続けるのかを問い掛けてもいた。
例え不死の体であろうと見捨てたのは事実。
薄情な男三人を嫌悪し、パーティーから抜けるとなってもおかしくない。
だが、ザニスとしては彼女程の戦力を手放すのは惜しかった。
「そうねぇ~」
陽気な口調だが悩ましげに唸る輝夜。
アルコールで顔を赤くし、腕を組んで考える仕草をとる。
火照った姿に悩ましげな仕草に目につくが、やはりパーティーから抜けてしまうんじゃないか、という不安に意識が強く向いていた。
ザニスは固唾を飲んで返事を待った。
隣ではチャンドラとカヌゥも同様に見守っている。
危ぶむ気持ちは三人とも一緒であった。
見ると彼女はニヤニヤと意味ありげに視線を寄越している。
「でもアンタ達、私見捨てたし~」
この言葉に三人は小さく呻く。
三人はどう返したらいいのか解らなかった。
彼女がパーティーから抜ける危険性が高まり、焦燥が沸きだった。
「こんな頼りない男共のパーティーにいても、何もメリットないわよねぇ。」
溜め息とともに吐き捨てられる言葉。
三人はばつが悪そうに口をつぐむばかりで何も言い返せない。
焦燥とともに諦観が沸きだち、顔も俯かせてしまう。
輝夜の怪力を痛感している彼らに彼女を引き止める勇気はなかった。
彼女のパーティー離脱を確信し、残念に思っていると、彼女は
「ねぇ、パーティーに残ってもらいたい?」
突如そんな質問を繰り出す。
その言葉を耳にして三人はばっと顔を上げる。
彼女はニヤニヤした意味ありげな笑顔は変わらない。
彼女の思惑は理解できない。しかし、彼女がまだパーティーに残ってくれる可能性があることは確かであった。
彼女は何も答えない男三人にしびれを切らしたのか、
「どうなのよ?」
と声に苛立ちを含めて再度問い掛ける。
今彼女の機嫌を損ねたらいけない。
「も、勿論です。輝夜様には是非残って頂きたい。」
ザニスは即座にひれ伏して答える。
隣の二人も便乗してひれ伏し、相槌を繰り返す。
三人は彼女に残ってもらうために必死であった。
その様子に輝夜は満足げに頷き、瞳には愉悦の色が混じっている。
また逆に、男三人も眼前の彼女の態度に僅かな希望を見出だした。
─いいわよ。
輝夜はパーティーに残り続けることを告げた。
男三人は目をパッと輝かせて喜び、手をとりあう。
彼女がパーティーに残るという事実に安堵する。
これからも高い魔石を確保し、以前より収入が増えるであろう。
嬉しくない訳がなかった。
しかし、喜ぶ合う三人に彼女は待ったをかける。
手で制して待ったをかけるその顔には深い笑みが張り付いている。
そして彼女が残り続けるための条件を三人に課した。
三人は条件と聞いて疑問符を頭に浮かべていると、
スッとザニスの眼前に彼女の片足が映る。
突然出された足を見てキョトンとする彼。
出された足の意味が分からず、彼はゆっくり上を見上げた。
そこには愉悦に染まった彼女の顔。
嫌な予感が猛烈にしたザニスだが、出された足の意味を尋ねる。
「あら、簡単なことよ。私の足を舐めなさい。」
彼女はニッコリ微笑んで告げた。
出来るわよね、とでも言いたげな凄みのある笑顔と愉悦に浸る瞳。
ザニスは足を舐めなくてはならない事実に愕然とする。
周りには仲間の二人だけではなく部外者の視線もある。
衆目の中で足を舐めなければならないことに彼は強烈な圧迫感と羞恥心を感じた。
もう一度彼女に視線を向けるも、変わらない愉悦に満ちた火照った顔。
彼は彼女がこの状況に興奮していることを察した。
自分が辱しめられることを求めている、彼はもはやしないという選択はないことを理解する。
肩をワナワナと震わせ、額には多量の脂汗がでる。
そんな彼の様子に輝夜は嗜虐心を高ぶらせる。
彼女は足をフリフリと振って、早く舐めることを催促する。
ザニスの隣に控える二人はゴクリと固唾を飲む。酷い仕打ちを受けているザニスに同情する。
しかし、次は自分が同様のことをしなければならないことに二人は内心冷や汗がでた。
意を決した彼は震える両手で彼女の足を持ち、ゆっくり口元を近づける。
足を舐めるために舌を出す。
しかし、中々舐めようとはしない。彼が躊躇いに躊躇っていることは明らかであった。
彼の息が荒くなる。興奮してるのではない。
明らかに苦悩故の緊張によるものだった。
輝夜はそんな彼の苦悩を見て、さらなる愉悦で興奮を高めた。
彼女の息が熱を帯びて荒くなる。当然興奮しているのだ。
彼女は彼の困る顔が楽しかった。
そして…ついに彼は──
◆
「どれがいいかしらねぇ。…あ、これなんてどうかしら?」
輝夜がパーティーに残るために男三人が彼女の足を舐めるというプレイを強いられた翌日。
彼女は男三人を連れて防具屋に来ていた。勿論装備の代金は男三人に払わせるつもりである。
「カヌゥ、見てみなさいよ、ここってこんなのまであるのね。」
試着室から出て興奮気味にいう輝夜。
振り返り彼女の姿を目にしたカヌゥは驚く。
彼女でバニー姿であった。
うっふーん、とふざけ気味にポーズも決めている。
彼は何故そんな奇抜な格好をしているのか尋ねるが、面白いから、という答えが返ってくるだけ。
これまでは彼女のあんまりな自堕落な生活ぶりに彼女の魅力について彼が気にすることはあまりなかったと言える。
しかしここにきて、輝夜の美貌や肢体はそこらの女性と一線を画すことを改めて認識することとなった。
彼は周りの目と自身の面子を気にしてチラチラと見るにとどめる。
チラチラ見る先は程よくふっくらと盛り上がった乳房により作られる谷間。
両腕で胸を寄せるとムニュリと形を歪ませて、彼の劣情が掻き立たされる。
さらに視線を下にすると、彼女の股間に食い込む筋に自身の下腹部が怒張する。
カヌゥは男の性に勝てなかった。
当然見てない振りをして格好をつけるカヌゥ。
しかし、そんなスケベともいえる彼の視線は当然輝夜にはバレていた。
どこ見てるのよう、と格好つけの彼をからかうように彼女は胸を持ち上げたり、艶かしいポーズをとったりする。
彼女の茶化しに彼はしどろもどろに誤魔化した。
ついには輝夜には女の魅力がない、とまで言って格好をつける彼。
そんな彼に苛立ちを募りつつも彼女はふと気付く。
カヌゥの股間がモッコリ盛り上がっていることに。
輝夜は一考してニッコリ微笑むと、
「じゃあそのおっ立ててる汚いものはなんなのかし…らッ!」
彼女はカヌゥのモッコリと興奮した股間を蹴り上げた。
見事な下段蹴りが彼の股ぐらに入り、陰嚢へと接近。
そして
─グチョッ
聞いてはいけない感触音が下腹部から聞こえた気がした。
彼女の足首が彼の陰嚢にのめり込む。
彼女の足首で自身の陰嚢か潰れる感触と同時、う"ばぁ、と彼の呻き声が漏れた。
内股になって股間を押さえるが彼女の足が邪魔をする。
輝夜の蹴り上げた足が彼の股間にのめり込んだまま数秒の硬直。
蹴り上げられた彼女の足が笑顔のままゆっくり下ろされた。
カヌゥは白目を剥いてガクガク足を痙攣させ、立ってはいられなかった。
前のめりに倒れ伏し股間を押さえて痙攣するカヌゥ。
陰嚢が突き上げられる感触と激痛に何も考えられない。
何とか痛みを軽くしようと四苦八苦する。
そんな彼を見ても彼女は笑顔のままそこに佇んだ。
慈悲はない。
魅力がない、などという無礼を働く彼に一泡吹かせてやったためだ。
「あらごめんなさいね、そんなもの元気にさせるから犯されると思っちゃったわ。」
「悪気はなかったのよ?オーホッホッホッホッ!」
彼女は腰に手をつき、高らかに笑った。
◆
彼女が防具屋に来た理由はひとえに昨日のダンジョン探索が原因だった。
昨日の必死のダンジョン帰還で彼女の着物はズタボロになったのである。
それ故に、この機会に姫ではなく冒険者としての装備に買い替えるのは、彼女にとって丁度良いということになった。
ここで彼女のもう一つのスキルである『永遠』というものがある。
無機物の対象に外部からの干渉を一切断ちきり、変化を行わせないという効果をもつ。
家にスキルを掛ければ老朽化せずに永遠にその状態を保ち、剣掛ければ折れたとしても再生するのだ。
しかし、このスキルにおいても、もう一つのスキル『須臾』と同様に劣化していた。
本来の効果であればボロボロになった着物は元の新品に戻る筈が戻らないのである。
ここでもまた制限がかかっていた。
スキルを発動しても効果は十分程度しか持たなかったのである。
またこのスキルは一日一回が限度のようであった。
当然効果が切れた後に発動しても、対象物が破損していたら破損のままで修復される訳ではないのである。
こういった事情からも装備を買う必要性が出てきたのであった。
女性用の装備が並ぶ中、試着室前に男三人がそろって手持ち無沙汰に立ち尽くす。
ここが女性用御用達ということもあり、この空間内で男三人は異彩を放っている。
ザニス、チャンドラ、カヌゥの男三人は輝夜の着替えを待っているが、とても気まずげな様子であった。
シャッとカーテンが引かれる音がする。
「見なさいよコレ!中々決まってると思わない?」
輝夜は試着室から意気揚々にカーテンを開けて、声高らかにそう言う。
彼女は似合ってるでしょう、と言いたげに胸を張る。
試着室前に立つ男三人はその姿を見て目を点にする。
それ程までに彼女の姿は奇抜であったのだ。
SM嬢の女王様が鞭でも持って出てきそうなデザイン。
口元に手をあて女王様笑いをする様は堂に入っていた。
彼女の美貌と露になる肢体が相まって見惚れてもおかしくないであろう。
しかしデザインがデザインであったため、男三人の胸中は興奮よりも驚愕が大きかった。
見とれてもいいのよ、と彼女は褒めることを促す。
ここに来た名目が冒険者用の装備ということであったため、男三人は本当にそれにするのか、という戸惑いが隠せない。
加えて本音としてはそんな変態染みた格好の女と一緒に歩きたくはなかった。
防御性の低さや奇抜過ぎるデザインさを男三人は指摘してみるも、
「私ほどの傾国美女となるとどんなものでも似合ってしまうのよね。私ったらなんて罪深いのかしら。オーホッホッホッホッ!」
輝夜は聞く耳持たなかった。
終いには試着したまま帰ると言い出す彼女に三人は絶句。
彼女は本気で、夜の女王様を彷彿させる格好で街を出歩くことに何の疑問をもっていないのだ。
三人はそれを察して、もはや説得することを諦めた。
周りに白い目で見られ後ろ指を指される未来を幻視する。
いつも金絡みで後ろ指を指され、こういうことには慣れていると三人は思っていたが、全くそんなことはなかったことを思い知った。
支払いの際、三人は目元に暗い陰を落とす。
とてもではないが唖然とする店員と目を合わせるなんてことはできなかった。
気まずい思いをしながはも何とか代金を払い終える。
そして、いざ外に店外に出ようとするとき、男三人の顔つきが変わる。
顔を上げ目元に差した陰が晴れる。
三人の顔つきは外国人も顔負けのように凛々しい。
そう。それは(社会的)決死の覚悟を決めた壮絶な意味をもっていた。